Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
―――結局、眼魂を集合させて願いを叶えることはできなかった。
何故駄目なのか、その原因が分からない限り再挑戦もするのは危険だ。
今回は願いを叶えられなかっただけで済んだ。
が、極端な話いきなり眼魂が爆発する可能性だってあるわけだ。
詳細を理解せずに使っている以上、あり得ない話だとは言えない。
恐らく仙人ならば何か分かるのだろうが、彼どころかユルセンも出てこない。
とにかくそれならそれで原因を探りつつ、今はやらねばならない事がある。
アランの開いたゲートで眼魔世界に再度踏み入り、タケルは空を見上げた。
赤く染まった空を見ながら、アランが変身を解除する。
そうした彼が腕に、微かに戸惑いながら持ち込んだシールを貼った。
「本当にこんなもので中和できるのか……?」
「きっと大丈夫、アカリたちを信じてくれ」
生身の人間ではこの大気で神経にダメージを負う。
それを中和するために彼女たちが作った、体に貼る中和剤。
自分の腕に貼りつつも、懐疑的な視線でそれを見る。
だが、しかし。
細かいことを気にしている場合ではないと、アランは軽く頭を振った。
「行くぞ。まずは一番怪しい地下居住区だ」
「うん、分かってる」
ゴーストがフードを被り直す。
ロビン魂を宿した彼の姿が、風景に溶け込むように消えていく。
緑色のパーカー、フォレストコートの力だ。
彼はアランより先に動き出し、眼魔の拠点へと歩き出した。
姿を隠したゴーストが先行して、周囲を確認したら姿を現しアランを招く。
そのような方法で、彼らは真っ直ぐ地下居住区を目指すのだ。
「リヨン! どこだ、リヨン!
すまなかった、お前を傷付けるつもりはなかったんだ!」
悲痛な叫び声を上げながら彷徨うダントン。
自分の存在を示しながら動く彼に、防衛のための他の眼魔たちも集まってくる。
巡回しているのは、眼魔コマンドと眼魔スペリオル。
だがダントンは、眼魔ウルティマさえも歯牙にもかけないエヴォリュードだ。
それら全てを一撃で眼魂ごと粉砕しつつ、彼は叫び続ける。
―――隠れながら逃げているマコトには困惑しかない。
行動から言って自分を追っているのだろうが、意味が分からないのだ。
特に奴がリヨン、という名を叫んでいること。
誰かと勘違いした上で、この凶行に及んでいるのか。
「だが、どうする……奴を振り切らないことには……!」
「リヨン!!」
大声が届く。
同時に、吹き飛ばされてきたスペリオルがマコトの近くの壁に突き刺さる。
見つかった、と。マコトはすぐにそこから走り出した。
次の瞬間、自分の目の前に黒い怪物が出現する。
転移してきたエヴォリュードの姿。
差し向けられる黒い両腕は、まるで抱きしめるために差し出されたようで―――
「――――ッ!?」
走り出した足を切り返すこともできず、マコトはそのまま……
サクリ、と。
目の前で両肘から先を飛ばされた黒い怪物の姿を見た。
「なに……!?」
エヴォリュードが振り返る。
交戦した以上、それがガンマイザーの横やりでないことは分かる。
奴らの攻撃はこのような鋭いものではなかった。
振り返ったダントンの前にいるのは、二刀を手に提げた幽鬼。
よろめいて尻餅をついたマコトが、思わず名前を出す。
「龍さん……!?」
マコトと、それを捕まえようとするダントン。
それらの光景を前にして、アナザーゴーストが始動する。
黒い眼の中にぼんやりと光が揺らめき、剣を構え直す。
―――即座に両腕を修復し、エヴォリュードが敵に向き直った。
「なんだ、貴様は――――!」
自分を守っているようだ、という考えが果たして正解なのか。
マコトは突然出現したアナザーゴーストを前に、何とか立ち上がる。
もしその考えが正しいのなら、と。
彼はすぐにアナザーゴーストに向け走り出した。
「リヨ――――ッ!?」
マコトには反応せず、しかしそれを追おうとしたダントンに刃が振るわれる。
死力を振り絞り走っていく彼を、エヴォリュードは追えない。
そいつを飛び越え、すぐさま空間を転移すれば、と。
相手を飛び越えるための姿勢を見せて―――
その空間の歪みが切り落とされた。
「なんだと……!?」
剣の結界がそのまま進撃してくる。
そのエリアに巻き込まれた瞬間、端から刻まれていく体。
如何に彼がエヴォリュード―――不死身に等しい超進化生命体であっても。
肉体を修復するためのエネルギーは有限だ。
補給もなしに、永遠に戦い続けられるわけではない。
幾年を経た邂逅か。
最愛の子に出会えた彼を阻む怨敵を前に、ダントンは必死に叫んだ。
「なぜだ、なぜ私の邪魔をする……!」
「……ダイ……ゴ……」
ダントンから放たれる叫びに対し。
アナザーゴーストの口から、小さな声が僅かに漏れた。
それを聞いて、エヴォリュードが息を呑む。
「ダイ、ゴ? ダイゴ……ダイ……ゴーダイか!
まさかゴーダイも生きているのか!? ではミオンは!?」
剣閃が奔り、躱し切れなかったエヴォリュードの片腕が飛ぶ。
再生速度がほんの僅かだが遅くなり始めた。
このまま切り刻まれ続ければ、もしかしたら―――と。
ただでさえグレートアイに永い間閉じ込められていたばかりだ。
本来ならば一度研究所に戻り、調子を整える必要もあっただろう。
だがリヨンを目前にして今退くようなことが……!
そう考えていたダントンの背後から、複数の攻撃が殺到する。
火炎、水流、矢、斬撃、重力波、雷撃。
それは破壊の津波となって、彼を一息に呑み込んだ。
一度破壊された肉体は瞬時に復元する。
振り返れば六体のガンマイザー。
自分に傷をつけられる相手に挟まれて、彼は大きく呻いた。
「―――いい。今は生きてくれていると知れただけで……!
だが必ず取り戻す! 私の愛しい子供を……!」
ゴーダイの使者、アナザーゴースト。
イーディスの造りし番兵、ガンマイザー。
かつて友と呼んだ者たちを、ダントンはその代行者越しに憎しみをもって睨みつける。
そうした彼は、一度名残惜しげにアナザーゴーストの背後を見て―――
ガンマイザーたちの方へと走り出した。
彼らの攻撃であれば、まだ十分耐えきれる。
下手に近づけばバラバラにされかねないアナザーゴースト。
そちらに比べれば、こちらの攻撃はどうということもない。
重力や電撃で縛り付けようとしても、エヴォリュードには通じない。
並ぶ魔人たちを押し退けて、彼は強引に撤退を開始した。
『―――排除』
殺到する火炎の渦に、怒涛の水流。
それに一切反応することもなく、力任せに突き抜ける。
そこに更に射掛けられる無数の矢。
両腕を交差させながら前に掲げ、全ての矢を体表で防ぎ切る。
続けて、回転しながら迫ってくる刃。
矢の雨に続けて叩き付けられた刀身を、腕の一振りで弾き飛ばす。
六体のガンマイザーは全てダントンに意識を向けている。
アナザーゴーストの脅威のほどは、未だに観測していない。
だからこそ、ガンマイザーたちは一切の注意を彼に払わず―――
ゆらり、と。アナザーゴーストがその腕を揺らす。
ダントンに弾き飛ばされ、そのまま背後へと流れていくブレードの軌跡。
己の方へと舞い込む剣に対して、虚なる眼光がぼやりと光を灯す。
―――跳ねる切っ先が、空を舞う刀身をするりと通り抜けた。
ぱっくりと綺麗に裂かれ、飛翔していた勢いで地面に転がる二つに分かれた刃金。
そうしてブレードが完璧なまでに斬り捨てられた瞬間、全てのガンマイザーが動きを止めた。
二つに分かれたそれは、一度躯体を破棄してプレートに戻り。
そして、
残る14のプレートが、即座に状況の把握に努める。
ガンマイザー・ブレードは完全に機能を停止。
自己修復、自己進化は一切発動せず完全に破壊されていた。
灰になって崩れていく1枚のプレート。
その前でゆるりと剣を構え直す悪鬼。
ガンマイザーは選択を迫られる。
倒せるか? 現状では不明。
だが敵はダントンが突破できなかった相手。
ガンマイザーでも一体や二体でどうにかできるはずがない。
何故ガンマイザーの機能が発揮されなかった? 現状では不明。
更に不意打ちとは言え一撃でブレードを破壊した。
他のガンマイザーも一撃で破壊される、と想定するべき状況。
一撃受ければ破壊され、かつ再生できなくなる最悪を考慮するべき。
―――ここで戦うべきか? 否。
現状では情報があまりにも少ない。撤退し、祈りの間に帰還するべきだ。
仮に戦闘になるとしても、残り十四体のガンマイザーが結集してだ。
この場に来ていた残り五体が、プレートへと変形。
そのまま消え去り、即座に祈りの間へと帰還した。
それを見送り、アナザーゴーストは切っ先を下ろす。
彼は一瞬、マコトが駆けていった背後を見て―――
空間に溶けるように、その姿を消失させた。
「……妙だな。確かに警備が薄い場所を選びはしたが……
いくら何でも、巡回をしている眼魂すら一つも見当たらないのは異常だ」
地下居住区への侵入を果たし、アランはそう呟く。
ここから先は既に破棄された場所であり、一切使用されていない空間だ。
なので普段からこのエリアは、一切の警戒はされていない。
そこは予定通りなのだが、ここに至るまでに見張りがまったく見当たらなかった。
まるで何か、別の場所に集められているかのように。
祈りの間には近づかないようにここにきたが、様子を窺うべきだったか。
いや、もしアデルに事前に気付かれたら危険か。
タケルも変身を解除して、周囲を見回した。
眼魔世界にあるのは、風化しているような石造りの建物ばかり。
その中でもこの辺りは顕著だ。
眼魂や眼魔たちは普段、ここまで入ってくることすらしていないということだろう。
「ここにマコト兄ちゃんと……アランのお父さんも?」
「―――――父上がいる、などと言った覚えはないが」
「アランのお兄さんが閉じ込めてるっていうのは二人とも同じでしょ?
だったら、揃って同じところにいる可能性もあるんじゃないの?」
「…………確かに。その可能性は高いがな」
タケルから目を逸らし、アランはずんずんと先に進んでいく。
こうしてここに来た以上、どっちも助けるのが当然だ。
わざわざそんな反応する必要ないのに、と。タケルが軽く溜め息を吐いた。
どんどん奥に行ってしまうアランに小走りに着いて行く。
そんな状態で数分歩いた頃、前を行く黒い軍服が動きを止めた。
釣られてタケルも足を止めて、彼の背中を見る。
「アラン?」
「―――声だ。これは、兄上……?」
呟き、小さく振り返った彼がタケルを見る。
その後、アランは極力足音を殺しながら声の方へと歩き始めた。
タケルはそれを真似るように、その後についていく。
「―――父上、答えて頂きたい! 祈りの間とは一体なんなのです!
ガンマイザーとは、グレートアイとは!?」
「………………」
眼魂システムが完成してから一切使用されていない地下居住区。
そこに幽閉されていた生身のアドニスが、アデルに視線だけを向けた。
だが彼は無言。その質問に対する答えは与えず、目を瞑って俯く。
「―――ッ……父上、一つあなたに伝えるべきことがある。
ダントンが帰還しました。そして、グレートアイを滅ぼす、と」
「―――ダントンが!?」
切り出した石の椅子に座っていたアドニスが反応を示す。
彼はすぐさま立ち上がり、驚きにその表情を歪めた。
ようやく歪んだ父の顔に対し、アデルが小さく口の端を吊り上げる。
「我らは父上が授かった大いなる力によって、奴が排除されたと思っておりました。
だが奴はグレートアイという存在に囚われていたのだという。
そしてガンマイザーとは? 何故あのようなものが、祈りの間にあるのです!」
「…………グレートアイとは、私が祈りを捧げていた大いなる存在。
我らがこの地に訪れ、繁栄したのも全てあの方の導きによるもの……
全てはガンマの民のための我が祈りに、グレートアイが応えて下さっていたのだ」
硬く目を瞑ったアドニスが、再びゆっくりと椅子に座る。
「ガンマイザーとは、イーディスが創ったグレートアイへの干渉を防ぐ防壁。
私以外の祈りが、グレートアイに届かないようにするためのもの。
……ダントンが一度グレートアイに負け、追放された後に創ったものだ。
ダントンのような者が、二度とあの方に近づけないようにするためにな」
硬く瞑った瞼をから少しずつ力を抜きながら、アドニスは語る。
「ガンマイザーがお前の前で動いたということは、お前が祈りの間に選ばれたということだ。
これからはお前が大帝として、皆を導けばいい。
――――だから、私を解放してくれ。ダントンとは私が話をしよう。
これまでのガンマを率いていた者として、奴との決着は私がつけよう」
「……そう言って、逃げるつもりではないのですか?
アランを逃がしたように!!」
アドニスを逃がさないように覆っていたバリア。
アデルの手が、それを発生させていた眼魂を停止させる。
そのまま座っている父に迫った彼が、その胸倉を掴んで引っ立てた。
「ダントンのやり方を否定しながら、あなたはなぜ今更になって心などと言いだした!
挙句、心などというものに惑わされるアランに、心に従えなどと!
完璧なる世界のために母上を見捨て! 兄上が死に! 貴様は一体何がしたいのだ!!」
「アデル……!」
「もはや貴様などこの完璧なる世界には必要ない……!
そうだ! 父上の理想の世界は、私が完璧に成し遂げてみせる―――!
貴様が示したのだ! 完璧なる世界の統治者に、家族などというものは必要ないのだと!!」
アデルが思い切りアドニスを床に叩き付ける。
生身で受けたその衝撃に、彼は大きく咳き込んだ。
そんな父を前にして、アデルが眼魂を取り出した。
「兄上!!」
「ッ、アラン……!」
その瞬間、この空間に入るための階段から飛び込んでくるアラン。
彼に続いてタケルもまた飛び込んできた。
それを見て、構えていた眼魂をすぐさま起動するアデル。
―――そのウルティマ眼魂がスパーク。
起動することなく、沈黙した。
「―――ッ、スペクターめ……!」
ダントン以上に、ディープスペクターとの戦闘が原因だろう。
いや、戦闘とすら呼べない一方的なものだったが。
使い物にならなくなった眼魂を、彼が思い切り放り捨てる。
アデルがスペクターと口にしたということは、やはりこちらで生きている。
そう確信したアランが、きつく目を細めて彼に詰問した。
「こうして父上を。そしてスペクターを捕え、何をするつもりなのです!」
「スペクターを捕える?
ふん、何を馬鹿なことを……まして、父上を捕えたなどと。
私は眼魔世界の掟に反したものたちを正当に処分しているだけだ。
アラン、貴様の処刑も含めてな!」
彼の言葉を聞いて、アランが眉根を寄せた。
そうして取り出すネクロム眼魂。
アランはそれを構えながら、アデルに向け歩み寄り出す。
「ならば私もこの世界のため、父上を助け出し貴方を捕える。
全てはそれからだ、兄上!」
既にアデルの変身用眼魂は失われている。
そのままでも戦えない人ではないが、ネクロムで負けるほどではない。
それを理解しているのだろう、アデルが口惜しげに半歩退いた。
彼のやり取りに回り込み、床に叩き付けられていた男性にタケルが走り寄る。
アデルも気付いているが、彼はアランから目を離せない。
「大丈夫ですか……!」
「――――すべては、私が招いたことか……」
「え?」
アドニスが外見以上に年老いたように、しゃがれた声でそう呟く。
だがとりあえずは彼をここで助け、アデルを捕まえれば。
彼ら親子がまたちゃんと話す機会はあるだろう。
アランの父親である彼の肩に手を回し、何とか立ち上がらせる。
「とにかく、今は……」
後はマコトだ。アデルの物言いからして、無事だろう。
こうしてアデルを確保した以上、ここからはある程度派手に探してもいいはずだ。
〈スタンバイ!〉
ネクロム眼魂を起動するアラン。
もはやこの状況からアデルに抗う術はなく―――
その思考に、自分がガンマイザーに、祈りの間に選ばれたのだと。
そう告げた父の言葉が思い浮かんだ。
「こいつらを排除しろ……! 我らの完璧なる世界を乱すものどもを……!
ガンマイザー! こいつらを全て葬りされぇッ―――!!」
―――彼と繋がっているガンマイザーに、その祈りが届く。
祈りの間に集合した14枚のプレートが反応する。
アデルの確保もまた彼らの目的ではあった。
が、アナザーゴーストとの邂逅でそれは崩れていた。
ガンマイザーが完全破壊される可能性の考慮は、アデルの保護より重要。
差し向けたプラネットとオシレーションは目的を果たす前にすぐさま撤退。
今までアデルのことも放置して、祈りの間で待機していた。
だが直接的にアデルから指令が出され、ようやくガンマイザーが動き出す。
とはいえ、アナザーゴーストの脅威が消えたわけではない。
多くをそちらに差し向けることはできないだろう。
ならば、と。先程アデルの確保に差し向けられる予定だった二体だけ。
プラネットのプレートと、オシレーションのプレートだけが動き出す。
浮遊していたプレートが床に落ち、そのまま沈んで消えていく。
数秒と待たず、アデルの存在を目印にプレートは目的地に到着していた。
―――アデルの目の前。
急に叫び出した兄を胡乱げな目で見るアランの、その真後ろ。
出現すると同時、桃色に光るプレートは魔人へと変わった。
岩の塊のような、大地の魔人。
灰色に光るプレートは一度エネルギーの球体になり、直後に魔人と融合した。
二色に輝く融合魔人が、アランに向けて腕を向ける。
「アラン、後ろだ!!」
タケルの叫びに、アランが反応する。
彼は振り向きながら、すぐさまメガウルオウダーに眼魂を―――
その瞬間、彼の足元の床が割れた。
「な……っ!?」
大地の属性を持つガンマイザー・プラネット。
その力がアランの足場を砕き、彼の足を取ってバランスを崩させた。
続けて突き出した腕から放つのは、振動の属性たるオシレーションの力。
人間など一息に粉砕する振動波。
足を取られたアランにそれを躱す術はなく。
―――けれど。
アデルがガンマイザーに対して叫んだ瞬間、動いている人間が一人だけいて。
砕けた床を踏み締めて、アドニスが体当たりのようにアランにぶつかった。
「――――父、」
―――振動波がアドニスを吹き飛ばす。
押し飛ばされたアランの目の前で。
崩壊する肉体の様子は、それが致命傷であると明確に理解できた。
すぐに体勢を立て直し、床に投げ出された父に駆け寄るアラン。
「父上、父上―――!?」
「――――ッ、変身!!」
〈グレイトフル!〉〈ゼンカイガン!〉
父に走り寄るアランに、追撃をかけようとするガンマイザー。
その間に走り込んだタケルの姿が、黒い鎧に包まれる。
振動波と音波が激突し、周囲の壁を崩壊させていく。
『排除』
続けて放たれる衝撃波の連続。
それを音の壁で防ぎながら、グレイトフルが距離を詰める。
彼は相手が突き出した腕を掴み取り、そのまま引き寄せて壁に叩き付けた。
その状態で抑え込みながら、タケルはアデルへと顔を向ける。
「何で、何で自分のお父さんをそんな風に! アランのことだって!」
「―――それがこの世界の支配者だからだ。
そうとも……私はそれを、父上の背中から学んだ。私こそが父上の理想の体現者……
父上が死ぬのは他でもない、己の理想に自分から背を向けた結果なのだ!!」
ガンマイザーを押さえ込んでいたグレイトフル。
その足元の地面が粟立ち、岩の槍が無数に飛び出した。
不意をつかれて全弾受けた彼が、火花を噴き散らして大きくよろめく。
『排除』
更に壁からも一部がせり出し、岩の塊が弾丸となってゴーストを撃つ。
「ぐ―――ッ!?」
すぐさまガンガンセイバーを取り出し、ハンマーモードへ。
飛来する岩塊を力尽くで弾き返す。
岩の弾丸を殴り返して跳ね返して、更に大きく鉄槌を振り被り。
ゴーストは全力で踏み込んだ。
「ハァアアアア――――ッ!!」
迫りくる剛撃。それに対し、ガンマイザーが片腕を上げる。
ゆったりとさえしているその動作。
それに正面から激突したハンマーの一撃が、
敵の腕を揺らすこともできず、そこで止まった。
「――――!?」
『排除』
至近距離で振動波が炸裂する。
直撃したグレイトフルの体が、大きく吹き飛ばされた。
白煙を上げながら地面を転がる黒い鎧。
「強い……! でも、なんだこれ……それだけじゃ……!?」
単純にこちらより強いだけじゃない。
よく分からない感覚を覚えて、タケルが再び立ち上がる。
ガンマイザーが彼に再び腕を向け―――
「ガンマイザー、アランを先に始末しろ。先帝にも確実なトドメを刺せ」
『了解』
ガンマイザー、ひいては眼魔世界。
それらに対して、ゴーストは脅威ではないと認識する。
故にガンマイザーは、彼を優先して倒す対象とさえ見ない。
アデルの言葉にあっさりと振り向いて、アランに向けて手を突き出す。
「アラン!!」
だが即座に、そこにグレイトフルは割り込んだ。
連続して放たれる無数の衝撃波。
それらを全て受け止めながら、黒い鎧を大きく軋ませる。
「逃げろ、アラン! お父さんを連れて! まだ……ッ!」
まだ間に合う、なんて。それ以上は言葉に出来なかった。
傍から見てもアドニスの傷は、助かるようなものではない。
父を掻き抱き、その血に塗れながら、アランは呆けていた。
「父上……父上? なぜだ、兄上……なぜこんな――――」
呆然自失の彼は何度もそう呟きながら、動けない。
この状況で、自分が感じているものすら分からない。
そんな彼の胸に、血塗れのアドニスの手が当てられた。
「父上……? 父上!?」
「……いいのだ、アラン。間違えたのは、アデルではない……
――――私だ。私、だったのだ。だから……」
口を開けば開くほどに、最期までの時間は目減りする。
けれど彼は息子に最期の言葉を遺すために、何とか言葉を紡いでいく。
そんな中で、彼は弱々しく息子の胸を掴んだ。
―――そこにあるものを、大切にしろと。
そう伝えんがために。
最期の最後まで、彼は失敗続きだった。
何より大切に想った家族は割れた。
戻ってきたというダントンを止めることもできない。
民を守るために、何にも侵されぬ平和な土地をと願った。
グレートアイが叶えてくれた。リューライが送り出してくれた。
民により良き生活を、と願った。
イーディスとダントンが叶えてくれた。
けれどそれと引き換えに、彼らには試練が訪れた。
空が赤く染まり、その大気によって多くの同胞が息絶えた。
彼の妻、アリシアも。
アリシアの死を目の当たりにしながら、彼は顧みなかった。
彼は全ての民の命を背負う大帝。
家族とはいえ、一人に構っている暇はなかったから。
―――家族を顧みない父から、家族の心は離れていく。
イーディスが作った眼魂システムで赤い空を克服した。
グレートアイの力を借りたが、それでも何とか成し遂げたのだ。
だがダントンは借り物の力で体を捨てた生を否定した。
人間は人間らしく生きねばならないと、肉体をこの世界に適応させようとした。
その眼魂のような形ではなく、改造人間を造るという方針。
相反するやり方は衝突し、やがて戦争にまで至った。
環境とは別のところで、多くの民が死んだ。
彼の息子であり、長男であったアルゴスもその時に。
アデルの言った通りだ。
理想の世界のために、彼は妻を顧みず、息子を死に追いやった。
どうすれば正解だったのかは分からない。
どこから間違えてしまったのかも分からない。
だがダントンの方向が合っていたとも思えない。
ただ――――
多分、心を殺すことは間違っていたのだろう。
死に際して、彼は自分を抱く息子を見上げる。
―――勝手なことだ。
民を導く大帝としてこうまで失敗しながら、彼には安心さえあった。
自分には、息子がいる。自分の後に続く息子が。
心を捨てたままでは、この安心すらも得られなかったのだろう。
だから、きっと―――
「お前は、自分の心に従え……そして、願わくば……アデルを……」
死に際し、息子に裏切られた父とは思えぬ様子で。
彼はただ申し訳なさそうに、そう口にする。
アランの胸を掴む腕から、急速に力が抜け落ちていく。
眼魔の民の肉体は人間の生存限界を超えたもの。
如何にカプセルで眠らせていたものであっても。
ゆっくりと目を閉じて、力を抜くアドニス。
―――彼の体は、あっさりと灰になって崩れ落ちた。
灰となった父を見送って、アランがその灰を握り締める。
「なぜ……父上を……!」
「お前は何度同じことを訊けば気が済むのだ。
全ては――――父上の理想、完璧なる世界のためだ。
その理想は私が継ぐ。私こそが、父上の理想の体現者なのだから」
父の死を看取り、しかしアデルはそう断言した。
―――それこそが、大帝のあるべき姿なのだと。
死したのがどんなものであろうとも、大帝は揺るぎない。
心無き世界の覇者は、例え家族が死のうとも何の情動もないのだ。
アランが握っていた灰を手放し、立ち上がる。
そういう世界だったのだ、ここは。
最初から最後まで、彼が今まで信じていた理想とはそういうものだった。
それを理解して、父は常に迷いの中にいた。
アリシアは死に。
民も次々と死んでいき。
長男アルゴスを喪い。
かつて友と呼んだダントンを追放し。
その果てに築かれた理想世界。
アドニスはずっとそれに悩んでいた。
いや、自分がそれに悩んでしまうことにすら苦悩していた。
心を持たぬと決めたからには、その苦悩すら裏切りなのだと。
「―――やっと分かった。ここは、理想の完璧な世界……そうであって欲しいと願った父上が、そう築いたというだけの話だったのだ……!」
声を震わせ、そう吐き捨てるアラン。
彼の言葉に深く頷き、アデルもその言葉を肯定する。
「そうとも。この世界こそ、父上が築いた完璧なる世界。
案ずるな、アラン。お前を処分した後、私がこの完璧な世界を継続させる。
―――永遠に。それこそが……」
「違う―――ッ!」
ネクロム眼魂を再び握り締め、彼は兄を睨んだ。
目を細め、弟の叫びに耳を傾けるアデル。
「父上は苦しんでいた! 理想を、完璧を追い求め……! 常に迷いを感じていた!
心を持つから迷うのだと、心を持つから争うのだと!
心を捨てて生きることを選びながらも、それでも常に迷い苦しみ続けていた!」
「だから私が処分した。その感情は、完璧なる世界には不要なものだ」
その迷いこそが心の生む余分なのだと、アデルは一言で切って捨てる。
―――それでも。
その迷いを生む心に向き合う事が生きる事だったのだ、と。
アランはより強くアデルに対して視線を鋭くした。
「父上の選んだやり方が間違いだったのなら、違う方法で父上の理想を成し遂げる。
心を殺し、迷い続けた父上の代わりに……私は迷わない! 私は、私の心に従う!!」
「ならば私をどうする?」
起動していた眼魂をスローンにセットし、ユニットを立ち上げる。
生成された特殊溶液を眼魂に滴下し、彼はネクロムへと変身した。
「兄上……いや、アデル! 私は貴様を許さない!!」
〈テンガン! ネクロム! メガウルオウド!〉
白きボディに衣を纏い、戦士がその場で眼を見開いた。
被ったフードを取り払い、ネクロムはアデルと正面に向かい合う。
一瞬の対峙、その直後に走り出す白い戦士。
だがアランが一歩を踏み出したその瞬間、アデルもまた叫んでいた。
「ガンマイザー!!」
プラネットオシレーションが動く。
自身を必死に抑え込もうとしていたグレイトフルを殴打。
壁に叩き付けて、腕をネクロムへと向ける。
迸る波動。振動であらゆるものを粉砕する一撃。
液体金属装甲、クァンタムリキッドがそれを耐えるために性能を発揮する。
防御のために消費されるネクロムの有するエネルギー。
「ぐ、ぅ……ッ!」
瞬く間にネクロムの色が落ちていく。
ライトグリーンに輝いていたエネルギーが、一瞬の内に灰色に。
数秒と待たずにそのままネクロムの機能は停止する。
ガンマイザーという敵はそれほどのものなのだ。
だが終わる? ここで? 何も出来ないまま?
「嫌だ……! それは、嫌だ……! 私は、私は……ッ!!
このまま何も出来ずに、終わりたくはない……!
父上の無念も果たせず、アデルを止めることもできず……!
ただ、死ぬわけにはいかないんだ!! 止まるな、ネクロム―――――ッ!!」
振動波に呑み込まれた白い躯体、その胸に刻まれた眼の紋様。
そこが、アランの言葉に応えるように輝きだす。
充填されていくエネルギー。緑の輝きを取り戻すネクロム。
―――その目前に、腕を模ったロッド状の武装が出現する。
武装の名は、ガンガンキャッチャー。
それを理解して、アランをその新たなる力を掴み取った。
ネクロムに充填された神秘エネルギー。
それを纏わせて、彼は白いロッドであるガンガンキャッチャーを振り抜いた。
振動波を弾き返し、生還するネクロム。
そこで相手を見たガンマイザーが何故か、微かに退いた。
一歩にも満たない距離だが、何故か。
壁から体を引き抜いたゴーストが、その様子を確かに見た。
「あいつ……もしかしたら……!?」
相手の戦いを思い返す。
振動波は確か……ベートーベンの力でほぼ完全に相殺できた。
大地を操る力、そして大地の魔人の力には、全く手も足もでなかった。
「苦手な能力がある……? だとしたら!」
大地の魔人を気圧し、半歩下がらせたのはネクロム。
彼が今まさに放っている神秘のエネルギー。
つまり奴に通用する力は――――
アイコンドライバーGを外し、全眼魂を解放する。と、同時。
ゴーストドライバーを出現させ、ベートーベンの眼魂を掴んだ。
〈カイガン! ベートーベン!〉
黒のトランジェントに体を換装。
その上から灰色のパーカーゴーストを纏い、タケルは叫んだ。
「ヒミコ! アランのところへ!!」
その指示に応えて、桃色の眼魂がネクロムに向かう。
彼もまた、すぐにガンガンキャッチャーをヒミコへ向けた。
先端の掌を模った部分に装填されるヒミコ眼魂。
〈ダイカイガン!〉
装填されたヒミコ眼魂が、ネクロムに満ちる神秘の力を導く。
ネクロムの持つキャッチャーの銃口に集っていく光。
そしてベートーベン魂を纏い、楽譜をエネルギー体のまま広げるゴースト。
「一気に押し込む!!」
〈オメガフィニッシュ!!〉
〈ベートーベン! オメガドライブ!!〉
放たれる神秘の光線。そして押し寄せる音符の群れ。
それを前にガンマイザーが振動波と大地の隆起で対応し―――
まるでそうなるのが当然のように、ガンマイザーの方が打ち破られた。
出力も威力もこちらの方が格上。
何故そうなったのかまるで分からない、と。
疑問とともに呑み込まれていくガンマイザー・プラネットオシレーション。
二つの衝撃に呑まれ、崩れ落ちていくガンマイザー。
それを見て二人が揃って息を吐き―――
次の瞬間、再びその場に2枚のプレートが出現した。
「!?」
『脅威度軽微、だが理由が不明。この場において、確実な排除を』
再度出現したプラネットオシレーション。
彼が両腕を大きく広げ、地下居住区ごと崩壊させ始めた。
崩落し始める壁に天井。
「アラン!」
「分かっている!」
大地の属性に通用するヒミコに力を纏い、再び弾丸が放たれた。
確かに弾丸はガンマイザーへと直撃し―――しかし。
その一撃は、傷一つさえ与えられずに霧散した。
「なんだと……!?」
「効かなく、なった……!?」
『―――再測定、脅威度皆無。
速やかに排除し、他の脅威に対して備えることを推奨』
崩れ始めたこの場所を見て顔を顰め、アデルが外へと走り出す。
ガンマイザーの横をすり抜け、上層へと去っていく。
その背中を見ながら、ネクロムが叫んだ。
「待て、アデル――――!!」
「っ……! ニュートン!」
〈カイガン! ニュートン!〉
タケルがゴーストチェンジし、青いパーカーを纏った。
重力を操るその姿で彼は自分の方へとネクロムを引き寄せる。
そのまま彼の腰を抱き、自身らを斥力で吹き飛ばす。
「天空寺タケル、何を……!」
「退くしかない……! あいつらを倒す方法も分からないんだ!
いま無理にあそこで戦っても、何にもならないだろ!」
「―――分かっている……! 分かっている!!」
プラネットが圧壊させていた石の天井をぶち抜いて、そのまま外を目指して加速。
強引に突破していく敵の姿を、ガンマイザーは見送った。
アデルは確保した。追撃はかけるべきか?
現状は両方揃って脅威対象外。
今はダントンやアナザーゴーストというような、重度の脅威が確認されている。
わざわざ追い立てて処分するような必要があるか。
残りのガンマイザーたちと協議し、プラネットオシレーションは顔を上げる。
積極的に処分する必要なし。しかし故意に見逃す必要もない。
プラネットの力で天井を割り、一度プレートに変わるガンマイザー。
2枚のプレートが、斥力で飛んだ二人の姿を追撃した。
地下から地表に飛び出して、そのまま地面を転がる。
天井を力尽くで粉砕しながらの逃避行。
その衝撃を抜けて、限界を超えたゴーストの姿がタケルに戻った。
「ぐっ……あとは、マコト兄ちゃんの場所が……!」
「――――来るぞ!」
タケルを引っ張り自分の後ろに投げ、ネクロムが構え直す。
彼らが破ってきたルートを辿り、2枚のプレートもまた地上に出てくる。
再びその姿を現すプラネットオシレーション。
それを見て、ネクロムが小さく肩を揺らした。
退くためにも、マコトを見つけなければならない。
アデルの口振りからここにいるのは間違いないのだ。
だが、どこにいるかは分からない。
そしてガンマイザーと戦いながら探せるはずもない。
「……天空寺タケル! ベートーベンを渡せ!!」
故に彼はそう叫び、ヒミコを解放しながらガンガンキャッチャーを彼に向けた。
そう言われて、すぐさま手にしていた灰色の眼魂を投げるタケル。
キャッチャーの眼魂スローンでそのまま受けて装填。
すぐさま彼は銃口を上空へと向け、トリガーを引いた。
放たれる視覚化された楽譜と音波。
それが空に響き渡り、この場に彼らがいるのだと知らしめる。
マコトがどこにいても、ベートーベンの力を見るなり聴くなりすれば気付くはず。
あとはこの場で――――
『排除』
放たれる振動破。
それに対し、ガンガンキャッチャーをガンモードからロッドモードに変形。
迫る一撃を殴り返そうと、白い武器を思い切り振り抜く。
オシレーションとベートーベンの力を激突させ、何とか逸らしてみせる。
防ぎ切ることはできない。
やはり明らかに、能力への耐性を得ていた。
オシレーションはベートーベン、プラネットはヒミコ。
有効だった力は今や、何とか抵抗できるかどうかというほどの効果しかない。
その上で―――
振動波と大地の震動を同時に放たれれば、もはや防ぐ術など一切なく。
ネクロムがガンマイザーの放つ衝撃に呑み込まれる。
「―――ッ、アラン!」
「ガ……ッ!?」
吹き飛ばされながら、変身を解除され地面に転がるアランの体。
彼が手にしていたベートーベンとヒミコもまた。
それを拾おうと手を伸ばすアランの前で、ガンマイザーがそれを拾い上げた。
二つの眼魂を持ちながら、魔人は情報共有のために残るプレートと協議する。
『ガンマイザーに対応する能力を検知…………廃棄』
数秒の沈黙。
その間に交わした協議の果て、そう言って眼魂を握り潰しにかかる。
ガンマイザーの手に力がかかり、眼魂が軋むその瞬間―――
「オォオオオオオオッ!!」
青い炎が噴き上がり、崖上から銀色の影が飛び込んできた。
昏く炎上する拳が頭上が叩き込まれ、プラネットオシレーションの頭部が罅割れる。
彼はそのままよろめいた魔人の腕を取り、極めて。
その手に握られた眼魂を強引に引き剥がす。
「マコト、兄ちゃん……!?」
銀色のスペクターを前に、タケルが驚愕に声を漏らす。
彼の持っていたはずの眼魂は、スペクターも含めて全てタケルが持っている。
新たな姿に新生しているスペクターが、ガンマイザーを投げ捨てた。
地面に叩き付けられて、バウンドしながら滑っていくその体。
「アラン! ゲートを開いてくれ、こいつは俺が止める!!」
「わ、かった……!」
必死に立ち上がろうとするアランに、タケルも歩み寄って何とか抱え起こす。
ほぼ同時に起き上がったガンマイザーが、全身から光を放つ。
―――隆起する大地。放出される振動波。
それが周囲一帯を纏めて吹き飛ばすように、何の迷いもなく放たれる。
背後にタケルたちを庇ったスペクターにそれを躱す方法はなく。
彼はドライバーのトリガーに手をかけたまま、それを甘んじて受け入れた。
全てを破壊するような衝撃に呑み込まれ―――
そうして、彼はドライバーのトリガーを引き絞る。
〈ゲンカイダイカイガン! ゲキコウスペクター!!〉
深淵よりの炎が更に盛る。
彼の全身から噴き出した青い炎が、衝撃波を逆に焼き尽くしていく。
ディープスペクターの背に展開される、銀色の翼。
その翼の羽搏きが隆起し突き立つ岩の柱を粉砕し、視界を開いた。
〈デッドゴー! 激怒! ギ・リ・ギ・リ! ゴースト! 闘争! 暴走! 怒りのソウル!!〉
『――――排除』
攻撃したはずが、逆流してくる熱量の渦。
それに焼かれながらもしかし、ガンマイザーが体勢を立て直す。
スペクターに向かって突き出した両腕。そこから連続して放たれる振動波。
津波のように迫りくる破壊を前に、銀色の翼が大きく開いた。
翼から放たれる破壊の光がガンマイザーの攻撃を押し流す。
逆に粉砕されていくプラネットオシレーションの体。
その事実に、ガンマイザーが困惑のような反応を示した。
ほんの少し前に戦闘力測定した戦闘力はここまでではなかったはず。
まして、それなりに傷を負っているはずだ。
人間がその状態でまともなパフォーマンスを発揮できるはずがない―――
だというのに、むしろより強くなっているのは、何故。
〈ディープスラッシャー!〉
スペクターの手の中に青い剣が浮かび上がる。
彼がその剣を掴み取り、その手で刀身を握って捻りあげた。
剣が銃へと形状を変えて、ブラスターモードに変形する。
ゴーストのサングラスラッシャーによく似たそれは、同じように眼魂が収められる。
仮面状のカバー、ギガシェイドを開いたマコトがデュアルアイソケットに眼魂を装填。
そこに収める眼魂は当然、先程拾ったベートーベンとヒミコのもの。
〈ハゲシー! ハゲシー!〉
力を蓄えるディープスペクターの前で、ガンマイザーが出力を増す。
翼から放たれる破壊の波を突き破る、振動する大地から突き出す無数の柱。
寄せ来る圧倒的な質量に向き合いながら、スペクターがトリガーを引く。
〈ダイカイガン! オメガダマ!!〉
―――銃口から吐き出される光弾。
それは桃色と灰色の光を纏い、岩塊を粉砕しながら突き進む。
競り合うような事もなく、貫通してガンマイザーにまで届く必殺の一撃。
その破壊力に備えて、身構えるプラネットオシレーション。
耐え切れると見越した岩塊の魔人が、腕を顔の前で交差させて―――
直撃したその瞬間に、上半身を欠片一つ残さず消し飛ばされた。
バラバラに崩れ落ちていく残った下半身。
それらはすぐさまプレートに戻り、その場で躯体の再構成を行う。
耐性を得たはずの攻撃に、こうも簡単に打ち砕かれるとは、と。
それでも不死のガンマイザーが敗北する理由にはならない。
数秒足らずでプラネットオシレーションはその場に再度降臨。
そうして、
―――既にその目の前に立つ、ディープスペクターが拳を握るのを見た。
〈キョクゲンダイカイガン!! ディープスペクター! ギガオメガドライブ!!〉
「ハァアアアアア――――ッ!!」
半身を引き、拳を振り上げ、蒼銀の炎が溢れ出す。
深淵から立ち昇る嚇怒の炎が、人のカタチを得てガンマイザーに立ちはだかる。
―――直前の撃破からの再生により、ガンマイザーは更に完成度を向上させた。
大地の振動がすぐさま、ディープスペクターを圧砕するために行使される。
「ダァアアアアアア―――――ッ!!」
震撼する大地、鳴動する大気。
そんな最中に全力で踏み込んできた深淵の炎が、
踏み込んだ足で大地を砕き、振り抜く拳で大気を裂き。
ガンマイザーの胴体の中心に、その正拳を真っ向から叩き込んでみせた。
衝撃で四肢までも砕かれながら、プラネットオシレーションが飛ぶ。
背中から岩壁に叩き付けられ、それを粉砕しながらも止まらない。
数十メートルに及び、岩を砕きながら吹き飛ばされた彼。
彼が岩壁の中に完全に埋もれながら、思考を疑問一色で塗り潰す。
躯体は再び完全に破壊された。
数秒後には砕け散り、再度プレートとして還り、すぐに再構成されるだろう。
だが、何なのだこの戦況は。
仮に現状でも負けていたとして、敗北を糧に自己進化できるのがガンマイザー。
だというのに、全く性能差を詰められていない―――
否、詰めた性能差以上に、敵が更に進化しているとでもいうような。
『―――敵戦力の正確な把握が求められている。
この世界には、我らガンマイザーの計算を超える者が存在する』
大地の魔人が岩の中で完全に潰れて、消え失せた。
その外に再びプレートが2枚出現し、魔人の姿へと変わっていく。
既に侵入者たちはこの場にいない。
ネクロムで何とかガンマホールを開き、地球に帰還したのだろう。
それらがいた場所に顔を向けながら、プラネットオシレーションは無機質な声で言葉を続けた。
『スペクター、深海マコト――――
奴の存在もまた、特筆すべき異常事態である』
アナザーゴーストは武蔵が対応してるファイヤー以外は斬れないのでガンマイザーにとってもう大した脅威ではない。