Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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狩人!巨獣ハンター現る!2016

 

 

 

「この破壊痕……デスガリアンか?」

 

 爆発の起こった河川敷。

 現地へと駆け付けたマコトが、周囲を見渡しながら呟く。

 アランの場所も分からない。

 もしかしたら、と。一瞬頭を過った考えに首を横に振る。

 

「……デスガリアンならばもっと、市民を巻き込むような作戦を取る気がするが……」

 

 実際の所は分からないが、傾向としてはその筈だ。

 デスガリアンの計画を阻止する彼らより、人間を苦しめることを優先する。

 それがデスガリアンのやり方では、とタスクが考え込む。

 

「けど今んとこ、そういう被害は出てない……

 確かに爆発の直前、この辺りから殺気は感じたけど……すぐ消えちゃったし」

 

 尾ビレを微かに動かしながら、セラもまた周囲を見回す。

 デスガリアンが行動を開始すれば、その殺気は感じ取れるはずだ。

 ギフトのような機械的な存在でない限り、恐らく今は活動していない。

 

 だとすればここで誰か―――まずアランだろう。

 彼がデスガリアンと遭遇戦になった、と考えるのが自然だろうか。

 勝敗がどうなったかは分からない、が。

 

 河川敷に残された破壊の痕は、斬撃らしきものだ。

 ネクロムにはこのような攻撃能力はない。

 彼が持っているグリム、サンゾウの眼魂も同様だろう。

 

 だがその眼魂たちがアランと共にいる、という事実。

 それこそがアランが無事な証左になるとも言える。

 もし彼に何かあれば、眼魂は恐らくタケルの元に飛んでくるだろうから。

 

「……とにかく、俺たちも一度街を回ってみよう。

 デスガリアン、もしくは眼魔が何かしてるかもしれない」

 

「分かった」

 

「ええ」

 

 三人で頷き合い、彼らは行動を開始した。

 

 

 

 

「―――こちらには何もなさそう、ですね」

 

 いつでも武装できるように心構えを決めつつ、マシュは小さく息を吐いた。

 そんな彼女の背中を見て、立香が問いかける。

 

「マシュ、大丈夫?」

 

「はい……いえ、少し引きずっているかもしれません。

 ―――何があったわけではなく、自然死、ということなら。

 わたしたちが何か、気にするべきことはないと分かっているのですが」

 

 むしろ彼女を想うなら良かった、と胸を撫で下ろしていいことだ。

 こうして今、魑魅魍魎が蔓延る現世の事件に巻き込まれたわけではない。

 彼女は彼女の人生を正しく生き切った。何も悪いことはない。

 

 何かあるとすれば、マシュ自身の心の問題だ。

 

「―――良いことよ、きっと。あなたにとっても。

 失った事で素直に悲しみを覚えられる、善き人と知り合えたってことは」

 

 周囲に注意を張り巡らせていた武蔵が、そう言って微笑む。

 

「そりゃマシュくらい根が善人だと誰が亡くなっても悲しむんでしょう。

 けど。人が亡くなった事を悲しむ事と、その人が亡くなった事を悲しむことは別だもの」

 

「……それは?」

 

「故人の冥福を祈る事と、偲ぶ事は別ってこと。

 その人が亡くなったから悲しい。その人が自分の側から永遠にいなくなってしまって悲しい。

 それって、似ているようで結構違うことよ」

 

 自分はあまりそういう事態には巡り会わないけれど、と。

 そう言ってから、苦笑を交えて武蔵は話を続ける。

 

「その人が終わりまでをきっちりと生き切った事ってね。

 前者の悲しみは和らげてくれても、後者にはあまり関係ないでしょう?

 だからマシュ、あなたの悲哀はきっと正当なもの」

 

 言われたマシュが、何か考え込むように視線を下げる。

 

 フミ婆が大往生を迎えたことは、きっと喜ばしいことだ。

 けれど、彼女に会えなくなったことを悲しむべきではない、ということにはならない。

 言ってしまえば、それだけの話なのだろう。

 

「……武蔵がそういう事態に会わない、っていうのは?」

 

 そんな事を言った彼女に、立香は目を向けて尋ねてみる。

 問われた彼女は少し困った様子で、一瞬唸った。

 

「んー……私はそもそも他人の死に目に会わないもの。

 戦場で死ぬ人間は相応に見てきたけれどね。

 大往生に巡り会うほど長い付き合いをした相手って、ほとんどいないの。

 ―――ま、流れ者なんてそんなものでしょう!」

 

 だからここでは珍しく出会ったわ。

 そう言って、軽く顔を持ち上げる彼女。

 そんな彼女に対して、立香がふと問いかけた。

 

「―――ここでの出会いは、武蔵にとっても良いことだった?」

 

「そりゃあそうでしょう。

 きっと私が果てるまで忘れない、素敵な出会いの一つだったわ」

 

 少しも迷わず断言して、彼女は花が咲くように笑った。

 そこで、マシュも少し目線を上げる。

 

 亡くなってしまったことは、悲しい。

 いなくなってしまったことも、とても悲しい。

 けれど、その通りだ。

 出会えたことは、それ以上に嬉しい。

 

 悲しさと嬉しさが相殺し合うわけではないけれど。

 どちらの総量が上かと言うならば、それはきっと喜びの方だ。

 その分だけ悲しみが増しても、それでもきっと。

 

 そうして内心、少しだけ感情を決着に近づける。

 それから開いた口で、心配の種の名を告げた。

 

「……アランさんは大丈夫でしょうか。あと、門藤さんも」

 

「だいじょぶだいじょぶ。きっとね!」

 

 そう言って、彼女は特に理由もないままに断言してみせた。

 

 いや。理由ならあるのだ。

 だって彼らは根っこが善人。

 逝った彼女が託してくれたものを無下にできるような、非道な手合いじゃないのだから。

 

 

 

 

 適当な人間の頭を掴み、そのまま放り捨てる。

 そのタイミングで記憶を探るが、目当ての情報は見つからない。

 悲鳴を上げて逃げていく人間たちの動きに淀みはないように見える。

 デスガリアンという連中を知っているからだろうか。

 

「はぁー、巨獣ちゃんはどこにいるのかねぇ?」

 

 今さっき読んだ心の中に、変わった動物が見られるサーカスの存在があった。

 と言っても地球人の言う変わった動物、程度ではどうせ大したことあるまい。

 恐らく彼の目的とする巨獣とは何の関係もないだろう。

 

 だがサーカスと言えば、だ。

 周辺に船を散らしているドミドルが、サーカス用に巨獣を捕まえようしている可能性はある。

 だとしたら、まず奴を始末することも考えなければなるまい。

 

 面倒だが、仕方ない。

 彼が今狙っている地球の巨獣は、宇宙に名を轟かす破壊神を撃退したという伝説がある。

 巨獣狩り100体目記念にするには、このくらいの箔がついた奴は欲しい。

 多少の面倒は受け入れるしかないだろう。

 

 人間どもが逃げていった結果空いた椅子。そこに適当に座る。

 特に狙ったわけでもなく、つい今並べたばかりだろう料理がそこにはあった。

 

「おぉ? なんだ、バリ美味そうじゃねえか!」

 

 彼はスパイシーな香りがする料理が乗った皿を掴み取った。

 そのまま口の中に一気に流し込む。

 舌で躍る熱々の食べ物に対し、彼が肩を震わせる。

 

「―――何だよ、バリウマじゃん!

 この星にいる間、食うもんには困んなそうじゃん!」

 

 一皿で気に入った彼が、空になった皿を放り捨てる。

 そのままテラス席だけでなく、店内にも踏み入ろうと立ち上がった。

 

「何だ、無銭飲食してるチンピラがいるかと思えば……巨獣ハンターサマか」

 

「あん?」

 

 声に対し振り向けば、赤い服の男が逃げずに座っていた。

 それどころかまだ当然のように食事を続けている。

 最後の一口を食べ終えた男は、そのまま手にしていたスプーンを放り出す。

 

 カラーン、と。

 空になった皿の中に、スプーンが転がる音。

 

 食事を終えた男は立ち上がり、振り向きながら不敵に笑った。

 

「巨獣ハンターから空き巣に改名したらどうだ? バングレイ」

 

「……はっ、誰だか知らねえが言ってくれるじゃねえの!

 俺の名前を知ってるってことは、賞金稼ぎか何かかい―――!!」

 

 バングレイと呼ばれた青い怪物。

 その腹が発光して、光の砲弾が解き放たれる。

 発生するのは、周辺一帯を薙ぎ払う爆撃の雨。

 

 当然のように。

 バングレイの前にいた、赤い男はその爆発に呑み込まれた。

 

「フン……?」

 

 炎に巻かれて崩れていくテラス席。

 その中に浮かぶ人影は、既に只人の姿ではない。

 

 現れるのは、炎の中でなお赤く照り返す赤のマスク。

 

「―――ハズレだ」

 

 鍵と二本のカットラスが交わる海賊旗(ジョリー・ロジャー)

 それが描かれたスーツの上に羽織るのは、赤のジャケット。

 

 変わった彼はジャケットの襟を指で軽く弾き。

 そうして、両腕を組んで尊大に構えてみせた。

 

「巷で噂の、宇宙海賊さ」

 

 

 

 

「爆発!? あっちか!」

 

「こんなに派手にやるってことは、やっぱりデスガリアンか!」

 

 爆音が耳に届き、街が一気に騒がしくなる。

 一般人たちもそちらにデスガリアンが現れた、と感じただろう。

 そちらから逃げていく人の波に逆らって、音の方へと向かっていく。

 

「――――?」

 

 その道中、ソウゴが懐からディケイドウォッチを取り出した。

 騒いでいる、と感じたのだろうか。

 何かが始まる予感、と言ってもいいかもしれない。

 

 そういう感覚が頭を過ったのを、しかし今は気にせず前に進む。

 進むにつれ、戦闘音らしきものはどんどん近づいていく。

 

 やがて辿り着いた場所では、青い怪物と赤い戦士が戦闘を行っていた。

 

 赤い戦士はカットラス状の剣。

 青い怪物は錨のような形状をした大剣。

 それをぶつけ合い、鍔迫り合いしていた。

 

「青いのはデスガリアン? 赤いのは……」

 

「とにかく、両方止めよう!」

 

〈ジオウ!〉〈ディ・ディ・ディ・ディケイド!〉

 

 ジクウドライバーを装着し、すぐさまウォッチを二つ起動。

 ソウゴの言葉に頷き、タケルと大和もすぐさま変身の準備を整える。

 

〈一発闘魂!〉

〈イーグル!〉

 

 二つウォッチを左右のスロットに装填したジクウドライバー。

 そのロックを外し、回転待機状態へと移行。

 ライダーの時間を刻む時計を、背後に出現させる。

 

 燃え上がる赤と黒の眼魂。

 それを浮かび上がらせ、展開したゴーストドライバーに装填。

 カバーを閉じて炎上する闘魂パーカーゴーストを解き放つ。

 

 王者の資格、ジュウオウチェンジャー。

 開いて入力するのは、イーグルのジューマンパワー解放。

 閉じたキューブを回し、自身の周囲をキューブ状のエネルギーで覆う。

 

「―――変身!」

 

「―――本能覚醒!」

 

〈ライダータイム! 仮面ライダージオウ!〉

〈アーマータイム! カメンライド! ディケイド!〉

〈闘魂カイガン! ブースト!〉

〈アーァアァアーッ!!〉

 

 三人が揃い、その姿を変えていく。

 マゼンタの鎧を纏う、ディケイドという名を肩に刻んだ鎧のジオウ。

 真紅に燃えるトランジェントに、黒いパーカーを纏ったゴースト。

 鷲の顔を胸に浮かべた赤い翼の戦士、ジュウオウイーグル。

 

 そんな様子に気づいたバングレイ。

 彼が宇宙海賊を一度押し込み距離を開ける。

 そのままお互いに乱入者の方へと意識を向け、視線を送った。

 

「なんだ、そっちのお仲間か? いや……」

 

 先程適当に処理した白い奴の記憶で見た、と。

 バングレイは適当に納得する。

 巨獣に関係のない記憶は大して覗いていない。

 

 が、あれの仲間ということは恐らく、連中も巨獣の記憶は持っていないだろう。

 

「……あっちもか」

 

 そんなバングレイの前で、宇宙海賊は肩を竦める。

 黒いバイザーに隠された視線。

 それが向かう先は、マゼンタのアーマーを身に纏うジオウ。

 溜め息を噛み殺したような様子の彼が軽く首を揺らす。

 

「お前たちもデスガリアンなのか!?」

 

 ジュウオウイーグルから放たれる問い。

 それに対して、バングレイはどうでもよさそうに首を捻る。

 

「デスガリアンねぇ。まったく関係ねえな」

 

 左手のフックで胸を掻きながら、気の抜けた声での返答。

 

「だったら、お前たちは一体何なんだ!」

 

 焼け落ちた街の一角を見回し、ゴーストが問い詰める。

 そんな様子にも一切大した反応は見せず、バングレイは鼻で笑った。

 

「―――俺の名はバングレイ。

 この星にいる伝説の巨獣ちゃんを狩りにきた、巨獣ハンターさ!」

 

「伝説の、巨獣……?」

 

「そうよ。情報知ってたら教えてくれてもいいぜ?

 巨獣ちゃんさえ狩れれば、こんな星にはさっぱり興味はねえからな。

 目的さえ果たせりゃ大人しく帰ってやるよ。

 ―――言っとくが、街中で暴れるつもりだって無かったんだぜ?」

 

 そう言ったバングレイが視線を逸らし、宇宙海賊に目を向ける。

 視線を集めた赤い海賊は、カットラスの峰で肩を叩く。

 

「ほー、俺のせいだってか?」

 

「おいおい、人が飯食ってる時に邪魔したのは誰だよ!」

 

「そのセリフ、そっくりそのままテメェに返すぜ!」

 

 海賊が銃を抜く。

 連続して放たれる銃弾を、大剣バリブレイドで撃墜するバングレイ。

 銃撃を続けながら駆け出す海賊。

 距離が詰まっていく中で、双方共に剣を振り上げて交差させる。

 

 ―――その直前、二人の間に滑り込む影。

 それは両手に剣を構えたジオウ。

 ギレードとヘイセイバーでカットラスとバリブレイドを受け止め、彼は双方に問いかける。

 

「―――ところでさ。

 アランを襲ったのはどっち? さっき、川の方で起きた爆発」

 

「おっと、そいつは俺の仕業だ。

 名前なんざ覚えてねぇが、確かに雑魚を何匹か吹っ飛ばしたっけなぁッ!!」

 

 何も隠すことはないと、彼は愉快そうに声を震わせた。

 同時にバングレイの腹が青く光った。

 直後に放たれる、無数の砲撃。

 

 カットラスを止めていたギレードを手放す。

 空いた手で回すのは、ヘイセイバーのセレクター。

 

〈ヘイ! ダブル!〉

〈ダブル! デュエルタイムブレーク!〉

 

 ヘイセイバーを覆う鋼鉄棍のオーラ。

 それを回して、爆撃同然の集中砲火を強引に凌ぎ切る。

 

 横に飛んだ海賊の前、吹き飛ばされていくジオウの姿。

 入れ違うように、代わりに赤い翼が彼の前を翔け抜けていく。

 

「野性解放―――ッ!」

 

 イーグライザーを手に、イーグルは空を舞う。

 目掛ける先は当然、バングレイ。

 

 爆炎を切り裂きながら進軍してくる相手に、巨獣ハンターは剣を振り上げる。

 一直線に突き進む赤と、迎撃に入る青が激突。

 結果、膂力で上回るバングレイが飛来したイーグルを弾き返した。

 

「まだ、まだ――――ッ!」

 

 弾かれた瞬間、イーグライザーの刀身が鞭のように撓る。

 蛇腹剣はそのままバングレイの剣に巻き付いた。

 全力で羽ばたき、彼の腕ごと剣を引き寄せるジュウオウイーグル。

 

〈マブシー! マブシー!〉

〈ダイカイガン! オメガシャイン!!〉

 

 腕を引かれたバングレイが体勢を崩す。

 その瞬間、ゴーストがサングラスラッシャーを手に踏み込んだ。

 がら空きになった胴体に燃え上がる剣撃が炸裂する。

 

「チッ……!」

 

 バングレイが僅かに圧され、その足が蹈鞴を踏む。

 だがすぐさま足に力を入れなおし、拘束された剣を腕力でもって引き寄せた。

 片腕相手の綱引きだというのに、イーグルの方こそ動きを止める。

 

「くっ……! 本能覚醒!!」

 

 イーグルが己のマスクに手をかけ、持ち上げる。

 前面が丸ごと持ち上がり、中から現れるのはゴリラの表情。

 翼を失った赤い巨躯が地面に向かって落下を開始。

 しかしバングレイとの綱引きを、互角に持ち込んでみせた。

 

 地面を粉砕しながら着地するジュウオウゴリラ。

 その腕力にバングレイの腕が微かに震える。

 

「…………お手並み拝見、だな」

 

 戦う連中を前にして、赤い海賊が剣を下ろした。

 傍観者に変わった彼は、そのまま無言で戦況の変化を待つ。

 

 ゴリラに引き寄せられようとしたバングレイの足が地面を削る。

 追撃に振るわれるサングラスラッシャー。

 左腕のフックでそれを制しながら、彼は腹に力を籠める。

 

「しゃらくせぇ―――ッ!」

 

 腹部の砲口に青い光が収束し、一気に放たれ―――

 

〈フィニッシュタイム! スレスレシューティング!!〉

 

 バラ撒かれる光の砲弾。

 それに対してジオウが上げた銃口から、迎撃のための弾丸が飛ぶ。

 放たれたのは、メダル型の無数のエネルギー弾。

 

 機関銃のように連射されるそれが、バングレイの青い光弾を放たれると同時に撃墜する。

 

「ハ、やるじゃねえか―――!」

 

「ヒミコ!」

 

 スラッシャーを押さえられながら、ゴーストが眼魂を起動する。

 手慣れた動作に淀みなく、彼は即座にドライバーの中身を交換した。

 放たれるのはピンク色のパーカーゴースト、ヒミコ魂。

 

〈カイガン! ヒミコ! 未来を予告! 邪馬台国!〉

 

 赤いトランジェントのまま纏うパーカーを変える。

 彼はそのまま取り出した闘魂眼魂をサングラスラッシャーに押し込んだ。

 

〈メガマブシー! メガマブシー!〉

 

 鍔迫り合いをしている相手の剣。

 それが力を高めていると理解して、バングレイの左腕が動く。

 正面から潰すのではなく、受け流して逸らす方向へ。

 

 そして、そのバングレイの動きを予め知っていたかのように。

 ゴーストはそれに合わせて赤く燃える切っ先を導いた。

 

「――――!」

 

「はぁあああ―――ッ!」

 

〈闘魂ダイカイガン! メガオメガシャイン!!〉

 

 止め切れず、バングレイの腕を擦り抜けて胸に直撃する刀身。

 その衝撃によろめいた彼の足が、地面から離れた。

 

「オォオオオオ―――ッ!」

 

 瞬間、イーグライザーをジュウオウゴリラが引き寄せる。

 頭上で円を描くような全力のスイング。

 絡みつかれているバングレイは当然のように同じく振り回され―――

 

〈フィニッシュタイム! ギリギリスラッシュ!!〉

 

 ジオウがギレードを突き立てた瞬間、地面からバナナが剣山のように立ち並ぶ。

 それを視認したゴリラは、即座にイーグライザーへと更なる力を込めた。

 

 振り回されていたバングレイが全力で叩き落とされる。

 目掛ける場所は当然のようにバナナの中。

 大地から屹立した巨大バナナの森に、バングレイの青い体が突っ込んだ。

 

 ゴリラの剛力で叩き込まれたもので炸裂するバナナ。

 黄色い光が瞬き、爆発するように溢れかえった。

 バナナの果肉が弾けたような光の柱。

 

 その光景を見ながら、大和はイーグライザーの刀身を引き戻す。

 直剣を構え直すジュウオウゴリラに届く笑い声。

 

「―――はっ、赤! 赤! 赤! ピンク!

 そろそろ目が痛くなってきたぜ!」

 

 光の中から青い怪物は帰還する。

 砕けたバナナを確かな足取りで踏み締める様には、未だに余裕が感じられる。

 多少のダメージはあるようだが、それでも戦闘不能には程遠いだろう。

 

「ま、此処は退いとくぜ。

 生憎、巨獣ちゃん以外に興味ねえってのは嘘でもなんでもないんでな」

 

「―――させるか!」

 

 フックの腕をひらひらと振るバングレイ。

 彼はこちらの様子を伺いながら、後ろ歩きに距離を開け始めた。

 そんな彼に対して、ゴリラの足が大地を蹴りつける。

 跳ねる巨体、振り上げられる剛腕。

 

 ―――突き出される白い拳。

 その一撃に対し、バングレイが愉快そうに喉を鳴らす。

 自身が殴られる瞬間、ゴリラの手首を捕まえるフック。

 

「―――!?」

 

 腕を捻り上げ、後ろに回してその巨体を地面に落とす。

 すぐさま彼は剣を放り、右手でゴリラの頭を押さえつけた。

 

「……んだよ、結局外れかよ」

 

 ジュウオウゴリラを組み伏せたバングレイ。

 そうした彼が、何かに失望するような声を上げた。

 

 直後。無数の銃弾が連続して直撃し、その体を揺らす。

 サングラスラッシャーとジカンギレードによる銃撃。

 弾雨に身を晒され、バングレイは火花を散らして大きくよろけた。

 

「大和さん!」

 

 その瞬間、ゴリラのパワーが彼のフックから腕を引き抜いた。

 強引に体勢を引っ繰り返し、裏拳で青い頭部を殴り抜く。

 力任せの一撃を受け、地面を転がっていくバングレイ。

 

「―――っ、いま何か……!?」

 

 それでも何か未知の感覚に、大和が動きを止める。

 

「ハッ―――!」

 

 転がっていたバングレイは、すぐさま起き上がっていた。

 その勢いのままに離脱の姿勢に入る。

 

 感じた違和感を一時棚上げし、ゴリラが己の頭に手をかける。

 上げていた仮面を引き下ろせば、彼の顔は再びイーグルのものへ。

 

「逃がすか、本能覚醒―――ッ!」

 

 バングレイは近くの建物の壁を粉砕し、その中へと飛び込んだ。

 撒き散らされるコンクリートを翼で切り裂き、ジュウオウイーグルもそれを追う。

 

 そうなる、と分かっていたのだろう。

 バングレイは軽く鼻を鳴らし、壁に遮られ死角となった空間に手を伸ばした。

 直後に彼の六つの目の内、上段の二つがぼんやりと発光する。

 

 ―――すぐさま手を引いた彼が掴んでいたのは、一人の女性。

 

「そらぁッ!!」

 

「―――!?」

 

 バングレイがその女性を投げる。

 大和がすぐさま腕を畳んで彼女を受け止め、地に足を着けた。

 そんな彼の前でバリブレイドを振り上げる青の怪物。

 

「しま……ッ!?」

 

 意識を失っているのか女性に反応はない。

 両腕で抱えたままでは、庇うために肉体強度に優れるジュウオウゴリラにもなれない。

 とにかく彼女を抱えたままに相手に背中を向け―――

 

〈ファイナルフォームタイム! ダ・ダ・ダ・ダブル!〉

 

「黒ウォズ!!」

 

 ソウゴの声。

 即座の反応でイーグルと女性の周りの囲い込むストール。

 次の瞬間には、二人は揃って建物の外へと瞬間移動させられていた。

 

「祝え!! 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者!

 その名も仮面ライダージオウ・ディケイドアーマーダブルフォーム!!

 魔王たるジオウが、更なる力の記憶に目覚めた瞬間である――――!!」

 

 マスクで表情は見えない。

 だが、なんだこいつ、という態度を隠さない赤い海賊。

 

 そんな視線に晒されながら、特に気にもせず。

 黒ウォズは片手で掲げた逢魔降臨暦をぱたりと畳む。

 

「……私を呼ぶために使うのはどうかと思うけれどね」

 

 インディケーターが切り替わる。

 浮かぶ文字は、『ダブル・ファングジョーカー』

 顔面に表示されるのは、右が白く左が黒い野獣の如き顔。

 その顔と同じように、胸から下のジオウは白と黒に二分されていく。

 

 バングレイの元へと飛び込み、右の手首から発生させた刃で鍔迫り合いに持ち込むソウゴ。

 

「呼んだ時素直に来てくれるならね!」

 

 室内でそのまま二度、三度と刃をぶつけ合う。

 あの女性諸共に大和を吹き飛ばし、そのまま離脱するつもりだったのだろう。

 バングレイがその継戦状態に盛大に舌打ちを飛ばした。

 

「どうでもいい連中がどいつもこいつも……!

 バリイラついてきたぜ! なァッ!!」

 

 天井を掠めて崩しながら、大上段から振り下ろされるバリブレイド。

 左手に構えたヘイセイバーがそれを受け止める。

 双方の剣が激突し、その衝撃でジオウが足を置く床に罅が奔っていく。

 

「そう? じゃあお相子じゃない? 俺もあんたがイラついてようがどうでもいいし」

 

「言うじゃねえか! その余裕が崩れた時のテメェの面が見たくなってきたぜ!!」

 

「へえ、じゃあ先にあんたのその顔見せてもらおっかな?」

 

 ヘイセイバーが止めていた剣に、更に腕の刃(アームファング)を絡ませる。

 明らかに動きをここに止めるための動きにバングレイは身を引き―――

 

 壁を背にしていた彼の後ろから、幽霊(ゴースト)が擦り抜けてきた。

 気配を一切悟らせず、壁を壊すのでもなく透過して。

 あまりにも薄い気配に、戦闘中で気を張り詰めていたバングレイさえ気付くのが遅れる。

 

「――――チィ!?」

 

〈ダイカイガン! ゴエモン! オメガドライブ!!〉

 

「ハァァアアア――――ッ!!」

 

 黄色いパーカーをバサリと大きく翻し。

 忍び潜みし大盗賊が赤く燃える剣をその手に掲げ。

 ジオウに抑えられた相手を、背中からバッサリと一息に斬り抜ける。

 

 血飛沫の如く飛び散る火花。

 体勢を崩した瞬間、ジオウが右腕を拘束から外してセレクターを回した。

 

〈ヘイ! キバ!〉

〈キバ! デュアルタイムブレーク!!〉

〈ダ・ダ・ダ・ダブル! ファイナルアタックタイムブレーク!!〉

 

 更に続けてディケイドウォッチのスターターを押し込む指。

 白い右足のくるぶしに出現する牙。

 同時にヘイセイバーの刀身から夜闇が噴き出した。

 

 大穴が開いた建物の壁から差し込む月光を背に。

 青く輝くヘイセイバーと、肥大化した足の牙。

 それらの刃を立てて、ジオウが回転しながらバングレイに押し迫った。

 

 青い狼の白い牙が剥かれる。

 バングレイを磨り潰して砕かんとする、噛み合う牙(ガルルファング)

 双頭の獣の牙に身を晒されながら、バングレイが吼えた。

 

「調子に乗ってんじゃねぇッ!!」

 

 ゼロ距離から放たれる腹の砲口。

 無数の光弾が、発射直後に刃に接触して爆炎を巻き上げた。

 至近距離での爆発に、ジオウが吹き飛ばされる。

 

「ソウゴ!」

 

 吹き飛ばされる彼を受け止め、そのまま一緒に弾き出されるゴースト。

 

 爆発の威力が建物内部を満たし、壁も天井も全てを粉砕していく。

 柱が折れ、天井が落ち、埋まっていく室内。

 粉塵が風に乗って舞い上がり、空にかかっていた月光と夜闇も晴れていく。

 

「……逃げられた、かな」

 

「あとはもう一人―――」

 

 バングレイが消えた戦場で、海賊に向けて振り返る。

 が、そこには既に誰も残っていなかった。

 ゴーストとジオウは周囲を探るが、それらしき人はどこにもいない。

 

「……何だったんだろ? 黒ウォズ、知ってる?」

 

 と、問いかけてみるも。

 黒ウォズもまた同じように姿を消してしまっていた。

 いつものことではあるのだが。

 

 二人揃って変身を解除して、大和の元へと向かう。

 バングレイが投げつけてきた女性は、まだ目を覚ましていないようだ。

 周囲に人の気配は一切無かったのだが、どうやって隠れていたのか。

 とにかく、無事だったのなら何よりだ。

 

「大和先生から見て大丈夫そう?」

 

「―――――」

 

 女性を抱き留めた大和から返答はない。

 それを怪訝に思い、ソウゴが彼の顔を覗き見た。

 

 ―――まるでありえないものを見たかのように。

 彼はその目を大きく見開いて、女性の顔を凝視していた。

 

「大和さん……?」

 

 タケルの心配そうな声。

 それにも反応せず、彼は女性を見たままただ一言、小さく小さく呟いた。

 

「かあ、さん……?」

 

 

 

 

「ああ、バングレイは見つけた」

 

 携帯電話状の専用ツールを用い、船員に連絡を取る赤い海賊。

 その言葉を聞いて、電話先の相手は呆れたような溜め息を漏らした。

 

『……まさか、街の方のあの騒ぎはお前か?』

 

「まあな」

 

『俺たちは隠密行動して、奴より先にリンクキューブを見つける。

 お前はここに来る前、そう言ってたと思うんだがな』

 

 ガレオンとナビィを置いてきたのはそれも理由のはずだ。

 だが彼は悪びれもせず、簡潔に言い切る。

 

「仕方ねえだろ、奴が俺の飯を邪魔したんだ。

 んなことより鎧は」

 

『まだ戻ってない』

 

 まあどうせそうなるだろう、と思っていたのか。

 相手は追及もそこそこに、さっさと現状に意識を切り替える。

 

「……じゃあ仕方ねえ。

 今からは隠密行動だ、手分けしてリンクキューブを探すぞ」

 

『今更隠れるも何もないだろ。

 そういえば、サーカス野郎はどうするんだ。そろそろ動くみたいだぞ』

 

「ほっとけほっとけ。

 センパイらしく特等席で見せてもらおうじゃねえか、新しいスーパー戦隊の力をよ」

 

『だったらわざわざ俺たちがリンクキューブを探す必要もないと思うがな』

 

 マーベラスさんはそういう方ですから、と。

 電話越しに苦笑するような声が聞こえてくる。

 それに舌打ちを返し、彼は乱暴に通話を切った。

 

 

 

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