Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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親子!心に遺してくれたもの!2016

 

 

 

「っ、ぁ……!」

 

「あっ、目を覚まされたようです」

 

 意識を取り戻したアランの耳を叩く、女性の声。

 現状も分からずに必死に頭を上げる彼。

 その頭の上から、更に声がかけられる。

 

「まだ寝てた方がいいって。酷い怪我だよ?」

 

 緑ジャケットの男性はそう言って優しく肩に手をかけ、彼を寝かせようとする。

 だがそれを振り解き、アランは上半身を思い切り起こした。

 

 が、そうとはならず。

 思い切り起こそうとして、力が足らずに背中を地面に落とす。

 

「大人しく寝てた方が身のためじゃない?」

 

 溜め息混じりの声。

 それを睨みつけようとして、自分が四人の男女に囲まれていることを知った。

 

「貴様、たちは……?」

 

「お前が川の方から流れてきたのを引っ張り上げた……一般人だ」

 

「そーそー、一般人一般人。宇宙の大海原を行く普通の一般人」

 

 パタパタと手を振りながら、おかしそうに口にする黄色いジャケットの女性。

 ピンク色の上着の女性は、そんな彼女に困った風な表情を向ける。

 

「ルカさん、それでは一般人とは呼べないのではないでしょうか?」

 

「なんでよ。一般人にだって宇宙を股に掛ける権利くらいあるでしょ」

 

 川から流れてきた、と。

 そう言われて思い出す、自分の手の中でフミ婆が消えていく感覚。

 湧き上がる激情を止める方法も知らず、彼は再び立ち上がろうとする。

 

 限界以上まで痛んだ体が軋む。

 だがそんな全身から知らせられる危険信号は全て無視した。

 震える手足で、しかし少しずつ体を持ち上げていく。

 

「おい、止めとけ。本当に死ぬぞ」

 

「―――死なない、死ぬわけにはいかない……!

 私にはまだ、やらなければならないことがある……!」

 

 止めようとする青ジャケットの男を押し退ける。

 そこでようやく、自分が服を脱がされていることに気づいた。

 それを、どうしたものかという顔をしている青い男に問いかける。

 

「私の、服をどうした……」

 

「あぁー……いま乾かしてるよ、あっちで」

 

 答えを返してくるのは、緑の男。

 彼が指差した先にあるのは、たき火の上にかけられたアランの服。

 既にずたぼろで穴だらけになった、眼魔の軍服。

 

 それを取りに行くために、アランは一歩踏み出した。

 すぐに膝から力が抜け、体が落ちる。

 そんな彼を横から抱えて倒れるのを防ぐ青い男。

 

「いいから、お前はここで大人しくしとくんだな。

 今のお前は何か出来るような状態じゃない。

 自分の体がそんな状態だってことくらい、自分で分かるだろ」

 

「だからどうした! それでも……私の心が叫んでいる!

 奴は許さないと! 奴を野放しになど出来ないと!」

 

 体の悲鳴よりも、心の慟哭の方がより強く。

 アランは青い男を振り払い、自分の服の方へと歩み出す。

 言われた男は溜め息混じりに、瞑目しつつ頭を掻く。

 

「奴って……」

 

「……バングレイでしょうか」

 

 一歩ずつ、よろけて転がりそうになりながらも。

 しかし確かに進み続ける彼。

 その背中に、よく聞き慣れた声が飛んできた。

 

「アラン様!」

 

「―――――」

 

 痛む体をおして振り返る。

 そこにいたのは、袋を抱えたカノンの姿だった。

 その後ろには、オルガマリーが乗る車の姿もある。

 

 オルガマリーは停車させた車を降りて、四人の方をちらりと見た。

 

「―――すみません。彼はわたしたちの知り合いなのですが」

 

「ああ、良かった! 彼、川の方から流れてきて!

 一応は応急措置はさせてもらったんですけど、すぐ病院に連れて行った方が!」

 

 緑ジャケットの男が走り出し、干していた服を回収する。

 まだ乾いてはいないが、彼をずっと抱えているわけにもいかない。

 既に船長は行動方針を示しているのだし。

 仲間がきてくれたなら、彼は止めてもらえるだろう。

 

 ぱぱっと纏めた服。

 それが受け取りに行ったツクヨミに手渡される。

 

 青い男がアランに肩を貸し、車の方に誘導し始めた。

 そうして連れられながら、アランの視線はカノンが抱えている袋に向く。

 

「……ありがとうございます。

 状況が落ち着いたらお礼を差し上げたいのですが、よければ連絡先を―――」

 

「要らないさ。それに、その内また会うだろ」

 

 車の中にアランを押し込みながら、青い男が肩を竦める。

 そんな彼に目を細めるオルガマリーと、先程ルカと呼ばれていた女性。

 

「ちょっと、ジョー。隠密行動どこ行ったのよ」

 

「さあな、船長に訊いたらどうだ」

 

 ぱたぱたと手を振って、ジョーと呼ばれた男は踵を返す。

 そのままここを離れるために荷物を纏めだす彼。

 やれやれ、と。そんな態度に肩を竦めたルカが声を上げた。

 

「ほら、アイムもハカセもずらかる準備。

 隠密行動始めるよ。マーベラスを見習ってさ」

 

「火の始末火の始末……」

 

「では皆さん、ごきげんよう。またどこかでお会いしましょう」

 

 ルカの号令に従い、たき火の処理に入るハカセと呼ばれた緑の男。

 アイムと呼ばれたピンクの女性もちょこんと頭を下げ、片付けを始める。

 

 さっさと荷物を纏めて引き上げていく四人。

 そんな彼らを見送りながら、オルガマリーは眉を顰めた。

 

「所長さん、あの人たち……」

 

「―――まあ、何にせよ。今は追ってる暇がないでしょ」

 

 ツクヨミの声に溜め息を一つ吐き捨てて。

 車に乗るように、ぱたぱたと手振りだけで彼女に指示をする。

 少し苦い表情で車に乗るツクヨミを見て、後からオルガマリーも動かすために乗り直す。

 

 と、後ろからアランの声が聞こえてきた。

 

「バングレイはどこだ……! 奴は、どこにいる……!」

 

「ちょっと……その傷、少し大人しくしてた方がいいわ。

 カノンちゃん、そっち持って」

 

「あ、はい……」

 

 満身創痍のまま行動しようとするアラン。

 そんな彼をとりあえず縛るためなのか、ロープを取り出すツクヨミ。

 困惑しながらその指示に従うカノン。

 

 オルガマリーがそんな光景をどっかで見たな、と眉を顰めた。

 ―――アメリカか。

 

「―――ほら、これ」

 

 バックミラーでその光景を見つつ、手の中でルーンストーンを弾く。

 これだけでも最低限の治療にはなるはずだ。

 もっとも傷は治せても体力はそう簡単には戻らないだろうが。

 

 はぁ、と。

 大きく溜め息を落としつつ、通信機に声をかける。

 

『どうだい? 大丈夫だったかい?』

 

「そうね。そっちの計算通り、流された場所は合ってたわ」

 

 あの戦闘現場から川に落ちたものがどこに流れるか。

 マップと共に状況をカルデアに送り、算出してもらった結果。

 彼女たちがここに早々に来れたのはそれが理由だ。

 

「ロマニ・アーキマン……! バングレイの居場所はどこだ……!」

 

 流石に怪我人をはっ倒して縛るほどのアクティブさはないか。

 ツクヨミが苦い顔をしながら、運転席の方に詰め寄るアランを引き戻そうとする。

 

『ええと……確かにいま、バングレイとの戦闘中だけど……』

 

「オルガマリー・アニムスフィア……! 私もそちらに連れていけ……!」

 

 そっと息を吐いてエンジンを動かす。

 

「ロマニ、位置情報をちょうだい。そっちに向かうわ」

 

『―――いや、医者としての視点から言わせておいてもらおう。

 今のアランくんのバイタルを観測した限り、戦場に向かうのは反対だ。

 その車がレオナルドの造ったものだとしても、危険が大きい』

 

 通信機に手を伸ばそうとするアラン。

 そんな彼の手を、オルガマリーが止めた。

 彼女の力でさえ至極簡単に止められるほどの、弱々しい腕力。

 

 それほどに弱っているからこそ、ツクヨミも下手に力尽くで引っ張れないのだろう。

 

 魔術による治療は、外傷をほぼほぼ治すことだろう。

 だがそれによって失われた体力は、簡単には戻るまい。

 

 ジュウオウジャーが戦闘を行っていたバングレイ。

 既にそこに立香たちも合流している。

 だからこそ、ロマニの方にもきっちりと観測できている。

 その戦闘力は、満身創痍のまま戦えるような簡単な相手ではない。

 

「……あんたは何でそこまでその相手に拘るの?

 わたしはともかく、ドクターストップを跳ね除ける何かがあるの?」

 

 問われた事、その疑問に。

 アランは考えるまでもなく、すぐに答えを返していた。

 

「―――心だ。私の心が、そう叫んでいる」

 

「……アラン様」

 

 カノンの声に彼が振り返り、その腕が抱えている袋を見た。

 それを渡してくれ、と手を伸ばしたアラン。

 少しだけ逡巡してから、カノンは確かにそれを彼に受け渡した。

 

 袋を開ければ、そこには彼の服が入っている。

 フミ婆が選んでくれた―――似合いそうだと笑ってくれた。

 アランに、フミ婆が遺してくれたもの。

 

「―――私は心を教えられた。心の意味を、心の価値を。

 それを教えてくれた者も、その言葉も……私は、守りたい……!

 だからこそ、奴は止めなくてはならない……! 頼む、私を……!」

 

「……ロマニ?」

 

『……分かっているよ。そもそもボクにそれを止める権利なんてない。

 ただ言っておきたかっただけさ』

 

 彼だって無茶をする人を見送るのは慣れたのだ、と溜め息一つ。

 無茶をさせている側の人間、という自覚があるからこそ口は挿めない。

 

『―――誘導しよう。頼んだよ、所長』

 

 

 

 

〈カイガン! ノブナガ!〉

 

 銀のトランジェントに紫のパーカーを纏う。

 手に顕すのはガンガンハンド、そしてディープスラッシャー。

 負傷した体をおして、彼は死力を尽くしてザワールドの隣に並ぶ。

 

 腰からザライト―――ジュウオウザライトを引き抜く。

 そのキューブを回して、合わせる面は狼の顔。

 

「行くぞ――――ッ!」

 

「ああ、本能覚醒!」

 

〈ウォーウォー! ウルフ!〉

 

 ジュウオウザライトの底面を振り上げた膝に叩き付ける。

 ライトの放つ光に呑まれて変化する、ジュウオウザワールドのマスク。

 額にあった犀の角がスライドし、その中から銀色が顔を見せた。

 

 狼の眼光で敵を睨み、ザガンロッド―――ジュウオウザガンロッドを握り込む。

 

 釣り竿から銃へと変形したそのリールを回す。

 充填されていくジューマンパワーが、一際大きく輝いた。

 

〈ジュウオウザバースト!!〉

〈ダイカイガン! ノブナガ! オメガドライブ!!〉

 

 宙を覆う無数の青い炎。

 それがガンガンハンドと同じ形状となり、全ての銃口をドミドルに向ける。

 

「こ、これは不味いですねぇ!」

 

 シルクドウィップを放棄した結果、彼の武装はナイフくらいだ。

 そしてこの銃の数、幾らなんでも投げナイフでどうにかなる規模を超えて―――

 

 瞬間、全ての銃口が火を噴いた。

 空中に浮かぶ無数の銃。ガンガンハンド。ディープスラッシャー。

 そしてジュウオウザガンロッド。

 機関銃の如く吐き出される銃撃の雨が、瀑布の如くドミドルに押し寄せる。

 

 両腕を交差させて顔を守りながら、これは無理だろ、という判断を下す。

 今退かなければ、死ぬのはこちらだろうという断定。

 ただ逃げるのでは間に合わない。逃げきれない。

 そのためにも、完璧にチャージ出来ていなくても破壊兵器の解放を―――

 

「あらららら―――ッ!?!?」

 

 そうして視線を向けたエネルギーゲージ。

 その数値がみるみる内に低下していく。

 

 なぜ? いや、決まっている。

 エネルギー源が悲しみとは反対の感情を抱いているのだ。

 

 本来蒐集するべき感情とは別のものが、あそこで発生している。

 そんな感情から生み出されたマイナスエネルギー。

 それがせっかく溜めたエネルギーを相殺しているのだ。

 

「頑張れ、ジュウオウジャー!」

 

「ジュウオウジャー!」

 

 声援が上がる。

 それに応じてガリガリと削れていくエネルギーゲージ。

 

 悩む、いや最早悩んでいる暇などない。

 銃撃で削られていく体で踏み止まりつつ、彼は大きく腕を振り上げ―――

 

「ええい、こうなったらとりあえず一発―――!?」

 

 バクリ、と。

 その瞬間に彼の上半身に咬み付く鰐の牙。

 両腕と頭に丸ごと喰い付く顎に、ドミドルが動きを封じられる。

 

〈タカ! トラ! バッタ! オーズ!〉

〈スキャニング! タイムブレーク!!〉

 

「やらせないよ」

 

 ブレスターにコブラ、カメ、ワニと浮かべ。

 下半身を鰐のオーラで覆ってジオウが床を滑ってきていた。

 ミシミシと軋むドミドルを、彼は何とかその場で拘束してみせる。

 

 その隙にジュウオウザワールドがキューブを回す。

 振り上げた膝に押し付けるライト。

 

「本能覚醒!」

 

〈ウォーウォー! クロコダイル!〉

 

 彼のマスクの口許から、金色の部分が持ち上がる。

 それは顎を大きく開いた鰐のように、額まで持ち上がっていく。

 そうしてジュウオウザガンロッドを大きく一振り。

 長大な棍へと変形させた彼が、再びリールを一気に回転させた。

 

〈ジュウオウザフィニッシュ!!〉

 

 黄金に輝くロッド。

 それを前にして、ドミドルを抑え込んでいたジオウが腰を捻る。

 

「セイ……ッ! ヤァアアアアッ!!」

 

「ギョエ―――ッ!?」

 

 喰らいついていた鰐の首が振られ、そのまま思い切り投げ捨てられる。

 そうして放り出されたドミドルを待ち受けていたのは、また鰐だった。

 

「ハァアアアア―――ッ!!」

 

 ジュウオウザガンロッドを叩き付けた床が砕ける。

 そこから噴き上がるジューマンパワー。

 それは黄金の鰐の姿を成して、飛んできたドミドルへと喰らい付く。

 彼は突撃する鰐に喰われ、口の中に収まったままに共に壁へと激突した。

 

 テント号の壁を粉砕して止まった攻撃。

 ドミドルはそれから生還しつつ、しかし大きくよろめいた。

 

 エネルギーゲージに目をやれば、もうエネルギーはすっからかんだ。

 破壊兵器はもう、うんともすんとも言わないだろう。

 

「だ、大大大大大ピンチ……! この状況、どうしてくれましょう……!」

 

「どうもこうもない!

 お前の世界は―――此処で終わりだ!!」

 

〈ウォーウォー! ライノス!〉

 

 回して叩く、ジュウオウザライト。

 その光の中で鰐の頭が下がって、口許に戻る。

 再び黒い犀のマスクに戻った彼が、手にしていた武器を放り投げた。

 

「野性、大解放――――ッ!!」

 

〈ゲットゴー! 覚悟! ギ・ザ・ギ・ザ! ゴースト!〉

〈カメンライド! ワーオ! ディケイド!〉

 

 右腕で振るう黄金の鰐の尾。左腕で立てる白銀の狼の爪。

 両肩を覆うプロテクターに漆黒の犀の角。

 全てのジューマンパワーを解放したジュウオウザワールドが立ち誇る。

 

 纏っていた紫のパーカーを解き放ち。

 似た色の、しかしメタリックに煌めくパーカーを纏い直す。

 深淵の炎を猛らせて、ディープスペクターはドライバーに手をかけた。

 

 自身を囲むアーマーの部位を持った十のヴィジョン。

 それが中央にいるジオウに一つずつ重なっていく。

 やがて十に分かれていた鎧は一つとなり、ジオウの装甲に。

 マゼンタの鎧に覆われた彼が、ウォッチを押し込みドライバーに手をかける。

 

「ひぇ……ッ!」

 

 もうこれはどうしようもない。

 逃げる、何処へ。壊れた壁から外へ飛び降りる?

 その後にどうする。いや、もう考えている暇はない。

 命さえあればまた再起だって叶う。

 

 死力を尽くしてドミドルは壁に向かって走り出す。

 間に合う。いける。これで助かる―――と。

 

 そんな思考をした瞬間、ドミドルが壁に激突して転がった。

 確かにそこには穴が開いている。穴から外だって見えている。

 なのに彼はその外の光景にぶつかって、弾き返された。

 

「―――壁!? 何で、ここ穴開いて……!」

 

 ―――コンドルの声が響く。

 ドミドルの目の前を飛び去っていく、キューブコンドルの姿。

 

 キューブコンドルの翼は幻影を生む。

 周囲の環境をまったく違う光景に見せることが出来るジュウオウキューブ。

 彼は人間界に取り残されたジューマンを人に見せることもできる。

 故に彼の友たちは何ら心配なくサーカスをしてこれた。

 

 ドミドルが鞭を放棄したことで、力を取り戻した彼にとって。

 追い詰められたドミドルを更に混乱させることなど、至極容易なことだった。

 

〈アタック! タイムブレーク!!〉

〈ゲンカイダイカイガン! ディープスペクター! ギガオメガドライブ!!〉

 

 スペクターとジオウが跳ぶ。

 彼らの周囲に展開される、眼の紋章と立ち並ぶカード。

 その無数のエフェクトたちが、ドミドルの視界を覆い尽くす。

 

 ジュウオウザワールドの足が床を擦る。

 突撃に踏み切る前兆として、地面を均すように。

 そうしながら腰を落とした彼が、一息で床を粉砕する勢いで踏み込んだ。

 

「ワールドザ……! クラァアアアッシュ―――ッ!!」

 

 上から降り注ぐスペクターとジオウの蹴撃。

 そして地面を走るジュウオウザワールドの突撃。

 目に映るものは疑わねばならない。

 実際の攻撃がどこから来るか。どこに避ければいいのか。

 

 その答えも得られないまま、ドミドルは動くことすらできずに必殺の攻撃に晒された。

 

「わ、私の夢……がぁああああッ!?!?」

 

 三つの衝撃が同時に彼に着弾する。

 どの衝撃が誰のものなのかすら判然としない。

 ただ一つ一つが致命的なほどの威力の攻撃全てが、ドミドルを圧し潰した。

 

 

 

 

「そぉらァッ!!」

 

 バングレイの腹から迸る無数の砲弾。

 だが既にその予備動作を見極めていたマシュが前に出る。

 翳された盾に連続して直撃する光弾の嵐。

 

 しかし彼女は完全に耐え切って、砲撃の隙間に盾を跳ね上げた。

 そこから飛び出すジュウオウシャーク。

 セラは鮫の背ビレを刃に、回転鋸の如く回りながら激突しにいく。

 

 直撃を受けて、怯んだように一歩下がるバングレイ。

 彼が視線をつい、と。空に浮かぶテント号へと向けた。

 わざわざヤバングレイトまで持ち出して導火線に火を点けてこれだ。

 

「……んだよ、街が吹っ飛ばなきゃ盛り上がらねえじゃん。

 役に立たないサーカス野郎だぜ。バリ使えねぇ」

 

「ふざけたこと抜かしてんじゃねえ! 野性解放!」

 

 雷鳴と共に獅子の爪が振るわれる。

 それに対応しようとして―――背後に武蔵が付けた事に舌打ち。

 

 バングレイが斬り捨てられるなんて、まあまずないだろう。

 だが、時々そういう事を可能にする手合いがいるのはよく知っている。

 それでもって、あの人間はそっち側だ。

 

 彼のフックになった左腕、そして機械化した右足。

 それこそが教訓だ。

 

「仕方ねえ。街もこっちで焼き払うか」

 

 バングレイが剣を放り、駆け出す。

 向かってくるジュウオウライオンに自分から激突するように。

 雷撃の爪をその身に浴びながら、しかし彼は右腕を伸ばす。

 ジュウオウライオンの頭に掴みかかるように。

 

 両腕の爪に裂かれ、火花を散らすバングレイ。

 だが彼の手は確かにライオンの頭にまで届いていた。

 掴まれたレオがその腕を打ち払おうと爪を立てる。

 

「こんの、何しやがる―――!」

 

「レオ!」

 

 カバーに回るジュウオウイーグル。

 飛んでくるその相手に、バングレイがライオンを放り投げた。

 受け止めた彼が地に足を下ろして踏み止まる。

 

「何しやがる? そりゃ見てのお楽しみさ!」

 

 身構えなおす連中を前に、バングレイが楽しげに声を上げた。

 彼の目がぼんやりと光を放ち、その前方に影を生み出す。

 

 ―――現れるのは銀色のマシン。

 ワイルドジュウオウキングが粉砕した、デスガリアンの破壊兵器。

 

「ギフト!?」

 

「どうして奴がギフトを……!」

 

「っ、わたしが抑えます!」

 

 標的を探すように、ギフトの頭部が動く。

 バングレイの前言。そしてギフトの持つ攻撃能力。

 それを理解して、すぐにマシュが前に出た。

 

 目の前の存在が敵なのだと認識し、開始される砲撃。

 怒涛の火線を最前線まで出て防ぎながら、マシュが苦渋の表情を浮かべる。

 ギフトを相手に周囲に被害を出さない。

 そのためには、彼女がギフトを完全にマークする必要があるだろう。

 バングレイからの攻撃を防いでる暇は、恐らくない。

 

「―――いま、レオの頭を掴んだの……! じゃあまさか……あの時……!

 いや、でもギフトは機械で、生き返らせるなんて……!」

 

 いま見た光景を元に行きついた答え。

 それを理解して、大和が木陰に隠れている母へと視線を向けた。

 大和の心が明らかに乱れた様子に、バングレイが嗤う。

 

「お、気付いちゃった? そうよ、生き返らせたってのは大嘘。

 俺は相手の頭ン中覗いて、その記憶を再現してるだけ。

 お前が必死に守ってるママは、ただのお前の妄想の産物ってわけ。

 滑稽だったぜぇ? ただの妄想と、助けを呼ぶガキを天秤にかけて必死だったお前の顔!」

 

 放った剣を再び拾い上げ、顎をしゃくって空のテント号を示すバングレイ。

 

「俺が出したただの幻影を優先して見捨てられたガキども!

 バリかわいそー! ヒャハハハハ!」

 

 ―――空を断つ斬撃。

 すぐさまバリブレイドを翳し、それを受け止めていなす。

 人間とは思えぬ鋭さに、勘が当たっていたと彼は鼻を鳴らした。

 

「―――お生憎様。

 ちゃーんと、子供たちだって私たちの仲間が助けに行ってるので」

 

「バァーカ! 実際に助かる助からねぇなんてどーでもいいんだよ!

 ()()()()()()()()()っていう事実だけであの鳥野郎がマスクの中でどんな面してるか!

 想像しただけでバリ笑えるぜ!!」

 

 一秒に満たない鍔迫り合い。

 滑らせるように受け流される二刀による連撃。

 バリブレイドとフックによる巧みな防御に攻めきれず―――

 

 バングレイの腹が再び強く発光する。

 

「――――!?」

 

 防御を崩せない、ということはゼロ距離砲撃を見舞われるということだ。

 その攻撃、武蔵であれば直撃でなくても簡単に息絶えるだろう。

 故に彼女は単体では、彼をどう足掻いても攻めきれない。

 

 後ろに下がろうとしても追い縋り、そのまま砲撃体勢に入るバングレイ。

 

「くそ……っ!」

 

 その間に、強引にエレファントが割り込んだ。

 振り上げた象の脚で、彼の胴体目掛けてミドルキックを繰り出す。

 

 砲撃と激突する蹴撃。

 割り込んだエレファントのその体勢では、相殺するにも限度がある。

 砲撃の出力を上げて、強引に押し切るバングレイ。

 

 爆撃に吹き飛ばされるエレファント。

 その爆発から庇われながらも、共に吹き飛ばされる武蔵。

 

「生き返らせた、って大和くん―――」

 

 タイガーが振り向き、イーグルを見る。

 だが彼は肩を震わせながら俯いて、拳を握り締めていた。

 

「そんな話、あるわけないって分かってたのに……! なのに、俺……!」

 

「やま……!」

 

「アム!!」

 

 レオの声に振り向くアム。その眼前で閃くバリブレイドの刃。

 タイガーがその一撃に切り伏せられ、地面に転がる。

 

「こんの野郎―――ッ!」

 

「ハッ!」

 

 飛び掛かってくるライオン。

 バングレイはすぐさまタイガーの足をフックで捕まえ振り上げた。

 彼はそのまま、タイガーの体を武器にするかのように振り回す。

 

「うぁ……ッ!?」

 

「く、んの野郎……ッ!?」

 

 叩き付けられたタイガーを受け止め、ライオンの動きが止まる。

 その瞬間、バングレイの腹の砲口が火を噴いた。

 纏めて吹き飛ばされるライオンとタイガー。

 

「バン、グレイ……!」

 

「そうだよなぁ? んで、何だっけ。生き物は全部繋がってる?

 助けを呼ぶ声は無視しておいて、綺麗事並べるのは得意じゃねえか!」

 

 イーグライザーを取り出す動きは遅く。

 バングレイの振るう刃がジュウオウイーグルを切り裂いた。

 血飛沫のように舞い散る火花。

 

「繋がってるのに見捨てたガキどもにも教えてやれよ!

 生き物ってのはなぁ、そいつ自身がどれだけ優れてるかで価値が決まるのさ!

 繋がりだのなんだの言ってる奴は、玩具にしかなれねぇ下等生物ってわけだ!」

 

 バリブレイドが翻るたび、イーグルが火花を噴く。

 両膝を落とし、震えるジュウオウイーグル。

 

「俺、は……!」

 

 至近距離からバングレイが光弾を発射する。

 動くことすらできず、イーグルがその爆発に呑み込まれた。

 爆炎の中で限界を迎え、彼の姿が人のものへと戻っていく。

 

 倒れ伏した彼の前に、ゆっくりと歩み寄るバングレイ。

 

「ここで終わりだ、テメェの繋がりとやらはな!」

 

「―――――」

 

 大和に頭上で剣を振り上げる。

 大した感慨もなく、いつも通り相手を刈り取るために振り下ろされる刃。

 人間一匹を殺すために振るわれた乱雑な刃は、確かに人を一人分だけ斬り捨てた。

 

 ―――ゆっくりとくずれる人間一人。

 

 バングレイが記憶から再現した人形は、ある程度のダメージを負うと光と消える。

 

 だから彼女は。

 バングレイに斬られて、全身を光に変え始めた。

 

「ああ、そう。母子揃ってそういうタイプ?

 繋がってんねぇ! ま、今その繋がりは切れたんだけどよ!」

 

「母、さん……!」

 

 大和を庇うように駆け込んだ和歌子が、彼の上に倒れ込む。

 徐々に光と消えていく母の姿に、大和の声に涙が混じる。

 消えかけた手で息子の手を握り、母は口を開く。

 

「ごめんね、大和……お母さん、偽物だって……

 でも……嬉しかった、大きくなった、大和に会えて……」

 

「母さん……! 母さん―――!」

 

「もうちょっと……お話したかったな……」

 

 そこで限界を迎えたのか、彼女の体が崩れていく。

 ただの光の粒子に還り、何一つ残さず消える母。

 彼女の手があった場所を、大和の手が握った。

 

 何の感触も返ってこない場所を、ただ強く握りしめる。

 それを見て、我慢ならないとばかりにバングレイは腹を抱えた。

 

「―――ヒ、ヒヒ……ッ! ヒャハハハハハッ! 揃いも揃って、ただの記憶に振り回されすぎだろ!! 見ろよ、この有様を! なぁにがずっと繋がってるだ! テメェらの言う繋がりなんてもんは、こいつをちょっとこうしてやれば、簡単に切れちまうもんなんだよ!!」

 

 言いながら剣を振り上げ、再び大和に振り下ろすバングレイ。

 

 ―――その前に、真紅に燃えるボディが現れた。

 交錯するバリブレイドとサングラスラッシャー。

 鍔迫り合いの姿勢に持ち込みながら、割り込んだゴーストが声を上げる。

 

「何がおかしいんだ……!」

 

「あ?」

 

「大切な人を失った悲しむ気持ちの……!

 その人が戻ってきてくれた……もしかしたら、って信じる気持ちの……!

 一体何がおかしいんだ――――ッ!!」

 

〈闘魂ダイカイガン! ブースト! オメガドライブ!!〉

 

 スラッシャーが炎上し、そのままバングレイを押し込む。

 それに力押しで対抗しようとして、直後に復帰し始めた他の連中に気付く。

 小さく舌打ちし、大人しく押し飛ばされて距離を開ける。

 

 飛ばされた勢いを乗せ跳躍し、全員を視界に入れられる位置を取るバングレイ。

 マシュと立香は二人でギフトを制している。

 ほぼ完全に抑えている代わりに、こちらにちょっかいは出せないだろう。

 その二人からは意識を外し、残りの連中に視線を巡らせる。

 

「その大切な人とやらの偽物に踊らされてちゃ世話ねぇ―――」

 

「偽物なんかじゃない……!」

 

 倒れていた大和が体を震わせながら立ち上がる。

 バングレイの言葉を遮って、怒りに燃えた瞳で彼を睨みつけながら。

 

「あァん?」

 

「お前が言ったんだ。あの母さんは、俺の記憶を読んで作ったって。

 それはただの記憶じゃない……!

 俺はずっと憶えてたんだ……母さんと一緒にいた間、ずっと重ねてきた思い出を!」

 

 彼の手が王者の資格を拾い上げる。

 これは誓いだった。

 

「俺が憶えている限り、ずっと繋がってる……!

 母さんとの思い出も、母さんが俺に教えてくれたことも、無くなったりしない!

 だからまた逢えた……! 今まで俺の心の中で、俺を支えてくれていた母さんと!」

 

 母を失って。そしてあの日、鳥男に救われてから。

 この星の生き物はみんな、どこかで必ず繋がっている。

 繋がって、助け合っていくのが動物なんだと。

 

 自分を救ってくれた鳥男のように、いつか誰かを助けられたらと。

 その想いが今の大和を形作った。

 自分に根付いたその想いがある限り、この繋がりは消えない。

 今までの繋がりは、決してなかったことになんかならない。

 

「バングレイ……! お前が証明したんだよ……!

 憶えている限り、ずっと繋がってる―――その繋がりは、お前には絶対壊せないって!!」

 

「―――言ってくれるじゃねえか!」

 

 苛立ちとともに剣を振り上げ、腹に力を込めて砲口を輝かせる。

 そうして頭に血を昇らせた彼。

 その死角から、銃撃がバングレイへと降り注いだ。

 

「……どいつもこいつも、人が楽しんでるのに水差しやがってよォッ!!」

 

 銃撃の方へとバングレイが振り返る。

 振り向きざまに薙ぎ払われるバリブレイド。

 放たれる剣撃の衝撃波。

 

 ―――それを、三つの影が迎撃する。

 赤衣の猿、緑衣の河童、黄衣の豚。

 

 三頭の供の間を擦り抜けて舞う、白いパーカー。

 そのパーカーが、ふわりと浮いて男の隣で止まる。

 

 白いシャツ、白いパンツ、そして浅緑のショール。

 フミ婆が彼に似合うと言って選んでくれた、遺してくれたもの。

 それを身に着けたアランが、手にしていたガンガンキャッチャーを放り捨てる。

 

『―――誰かが遺したありがたき言葉、尊き教え、目覚めへの導。

 私たちの旅はそれを広く伝えるためのものでした』

 

「……私には、何がありがたい言葉なのかなど分からない。

 ただ一つ、私にも分かることがあるとすれば―――

 私の中の心は、彼女が教えてくれたことで、目を覚ましたということだけだ……!」

 

 自身の横に舞うサンゾウパーカーゴースト。

 そちらに視線を向けることもなく、アランは眼魂を持ち上げた。

 

『それでよいのです。

 あなたの人としての旅路は、まだ始まったばかりなのですから。

 あなたを救い、あなたに教え、あなたを導いた師の言葉を忘れずいきなさい。

 きっとそれがあなたに正しい道を歩ませるものとなる』

 

 アランがサンゾウの眼魂を起動し、メガウルオウダーに装填する。

 

〈イエッサー!〉

 

 苛立ちのままに、バングレイが砲撃を放つ。

 それは無秩序に放たれて不規則な軌道を描き、周囲に着弾して炎の柱を立てる。

 炎に炙られながら、アランは満身創痍の体をおして、その姿を変えた。

 

「変身――――ッ!!」

 

〈テンガン! サンゾウ! メガウルオウド!〉

 

 彼に追従していたサンゾウパーカーが舞う。

 白いトランジェントに白いパーカーが覆い被さり、顔をゴーグル状の単眼に変えた。

 後光の如き黄金のリングを背負ったネクロムが、その襟を正して前を向く。

 

〈サイユウロード!〉

 

「私の中に父上の願いも、フミ婆の言葉も生きている……!

 ―――私の心は、大切な者たちと共に生きている! だから私は、貴様を許さない!

 私の大切な者たちが愛したこの世界の宝物は、私の手で守ってみせる!!」

 

「死にかけの雑魚がのこのこと……! 大人しく死んでりゃ良かったのによォッ!!」

 

 バングレイの振るう剣から放たれる衝撃。

 それがネクロムへと迸り、

 

 三頭のお供が動く前に、彼の前に赤い翼が割り込んだ。

 鞭のように撓るイーグライザーの刀身が、衝撃波を打ち流して四散させる。

 再び羽搏いた赤い鷲が、そのマスクを大きく撫で上げた。

 

「みんな同じだ……! 大切なものを守るために、お前の前に立ちはだかってる!

 その繋がりは、お前になんか負けたりしない―――! 俺たちを……舐めるなよ!!」

 

 舌打ちして再び剣を振り上げるバングレイ。

 その彼の目前に、赤い顔をした猿が飛び込んできた。

 打ち払うべく振り抜くのは左腕のフック。

 

「野性解放――――ッ!!」

 

 瞬間、足元が大きく揺れる。象が一歩が大地を揺るがす。

 バングレイの足元の地面が隆起し、無数の石柱が迫り出してくる。

 その柱を蹴り、猿が彼の周りを不規則に跳ね回りだした。

 振るわれる左腕を足場を得て潜り抜け、跳ねる猿がバングレイを蹴り付けていく。

 

「バリウゼェ……ッ!」

 

 大地の柱ごと吹き飛ばすための砲撃。

 腹から溢れる極大の発光。

 発砲の衝撃を堪えるために強く地面を踏み締めるバングレイ。

 

 ―――そんな彼の真正面から、土壁を粉砕しながら黄色い豚が激突しにきた。

 

「ごぁ……ッ!?」

 

 腹に組み付くような高速タックル。

 そのまま抱き上げられ、空に放り上げられる。

 そしてそこには、既に空中に飛んでいた二頭の獣が待ち受けていた。

 

「野性―――ッ!」

 

「解放―――ッ!!」

 

 雷撃の爪と冷撃の爪。

 獅子と白虎の爪撃が、刃の嵐となってバングレイの背に無数に降り注いだ。

 滂沱と噴き散らされる滝のような火花。

 その衝撃に耐えながら、バングレイが上半身を捩ってみせる。

 

「調子に、乗ってんじゃねぇ――――ッ!!」

 

「それは、こっちの台詞よ――――ッ!!」

 

 振り上げた剣に、鮫の背ビレが激突する。

 互いに弾け合う剣とヒレ。

 双方が再び、相手に向けてその刃を突き立てんと加速させ―――

 

 バングレイの腕に、河童の腕が絡む。

 空中で急に取られた腕に、振り払うのが間に合わない。

 

「テッ、メェ……!」

 

 バングレイの剣が止まり、シャークの回転刃のみが加速を果たす。

 河童は即座にバングレイを足蹴に、距離を取るよう離脱した。

 隙を晒した青い体に、真正面から激突するジュウオウシャーク。

 

 そのまま吹き飛ばされ、彼は残っていた土の柱を粉砕しながら地面まで落ちる。

 怒りに身を震わせながらも衝撃を逃がすように転がり、すぐさま復帰し―――

 

〈ダイテンガン! サンゾウ! オメガウルオウド!!〉

 

 ネクロムが背負っていたリング、ゴコウリンが放たれる。

 体勢を立て直すことは間に合わず、無理な体勢のまま振り上げる剣。

 光輪となって押し寄せるそれを逸らす代わりに、腕の中から弾き飛ばされるバリブレイド。

 

「チィ――――ッ!」

 

「――――南無天満大自在天神。仁王倶利伽羅、衝天象」

 

 ―――背に感じる、全てを絶断する静かな気配。

 静かなれどもそのうちに嚇怒があり、気勢によって成されるのは四腕の明王。

 バングレイの背を圧迫してくる、虚実入り混じる剣圧。

 

 剣を弾かれ、背を向けている。

 その状況で剣撃を阻む方法は存在せず―――

 

「剣轟、抜刀――――! 伊舎那、大天象ッ!!」

 

 必殺の一刀が振り抜かれる。

 

 ―――バングレイが死力を尽くし、体を捻る。

 左向きに体を回すと同時、腹の砲台を速射。

 地面を爆撃し、その爆風で自分の体を吹き飛ばす。

 

 向かって右に吹き飛ばされる、衝撃に舞うバングレイ。

 その横を掠めていく、大上段から斬り降ろす剣。

 ―――逃し切れなかったバングレイの左腕。その肘から先が宙に舞う。

 

 吹き飛んだ衝撃のまま体を向け直し、武蔵へと腹の砲口を向ける。

 威力よりも速度を重視し即座に連射。

 人間から大きく外れない強度なら、それでも簡単に始末できる、と。

 

 そう考えていたバングレイの前に、巨大なラウンドシールドが飛び込んでくる。

 ギフトを止めていたマシュの盾が何故かそこに。

 どうせ止めるので精一杯だ、と。意識を外していたせいで気付かなかったか。

 だがこいつをこっちに回すなら、今は好都合だと。

 

「ギフトォ――――ッ!!」

 

「アラン――――ッ!!」

 

 バングレイが自らが再現したギフトに指令を下し。

 マシュをフリーにするためにそちらに回っていたタケルが叫ぶ。

 

 ギフトが砲塔全門を開放し、無差別砲撃体勢に入る。

 あれを一度に止められるのは正面からぶつかれるマシュだけ。

 だからこそ彼女はマンツーマンで足止めしていたのであり―――

 

「今!!」

 

〈エクシードチャージ!〉

 

 ギフトが砲撃の()()に入った瞬間、アランと共に到着していたツクヨミが銃を抜く。

 赤い光の弾丸は彼をほんの少し檻に閉じ込め―――

 ギフトを破壊を封じるに足る、数の力を揃えるための時間を稼ぐ。

 

「―――行け!」

 

 メガウルオウダーのサンゾウ、そしてグリム。

 二つの眼魂だけでなく、空のテント号からも眼魂が降り注ぐ。

 ゴーストドライバーが消え、アイコンドライバーGへ。

 流れ込んでくる眼魂とパーカーゴーストと融合し、ゴーストが黒と金に変わっていく。

 

〈グレイトフル!〉〈ゼンカイガン!〉

 

 変わったゴーストが、そのままドライバーのトリガーを連続で弾いた。

 

〈ムサシ! エジソン! ロビンフッド! ニュートン! ビリー・ザ・キッド! ベートーベン! ベンケイ! ゴエモン! リョウマ! ヒミコ! グリム! サンゾウ! ラッシャイ!〉

 

 ―――拘束から解き放たれたギフトが砲撃を放つ。

 方向も定めず無作為に、ただただ破壊して目晦ましにしてやる程度の思考で下された命令。

 

 だがその砲撃を前にして、パーカーゴーストたちが立ち向かう。

 己の持つ能力を十全に発揮して、周囲に散った光線を迎撃する。

 

 噴水の如く空に撃ち出された光線は、一筋たりとも地上に降ってこない。

 

「ぞろぞろ群れやがって……ッ!」

 

「そうだ―――俺たちは群れて、繋がって!

 過去から現在に繋がれた想いを受け取って、それをまた未来に繋ぐ!

 そうやって魂を繋いできたのが、俺たち人間だ!

 ――――その魂は、永遠に不滅だ!!」

 

〈剣豪! 電動! アロー! リンゴ! カウボーイ! 巨匠! 無双! 怪盗! ダゼヨ! 女王! 読書! 僧侶! オメガフォーメーション!!〉

 

 グレイトフルがドライバーのトリガーを押し込む。

 同時に飛び上がるグレイトフルに、10人の英雄が続く。

 

 全砲門斉射直後のクールタイム。

 その合間に、ムサシが、エジソンが、ロビンが、ニュートンが、ビリーが、ベートーベンが、ベンケイが、ゴエモンが、リョウマが、ヒミコが。

 黄金の曼荼羅を背負ったグレイトフルとともに、ギフトへ蹴撃を同時に見舞った。

 

 迫りくる黄金の光を纏った11のキック。

 それが直撃した瞬間、ギフトの装甲が拉げて割れ始めた。

 限界を超えたダメージを受け、光となって消えていくギフト。

 

「チィ……ッ!」

 

〈デストロイ!〉

 

 退くための目晦ましにする戦力が失われ、バングレイが舌を打つ。

 その彼の前で、メガウルオウダーに眼魂を戻したネクロムが紋章を浮かべた。

 横に並ぶグリムとサンゾウもまた、彼に合わせるように腰を落とす。

 

「貴様は言ったな……! 死んだ者が私を置いていくかどうか、私次第だと……!

 答えを見せてやる……私の中に息づく理想が、夢が、あの言葉がある限り―――!

 私の心と、それに寄り添ってくれた者の想いは死なない!!

 私の……ッ! 心の叫びを聞けぇえええ―――――ッ!!」

 

〈ダイテンガン! ネクロム! オメガウルオウド!!〉

 

 三人が跳ぶ。飛来する蹴撃の矢。

 それを前にして、敢えてバングレイは直撃を受ける事を選んだ。

 

 剣は弾かれ、左腕が落とされ、しかも周囲は敵に囲まれている。

 遊び過ぎたということを認めなければなるまい。

 右腕の記憶読み取り能力はあるが、この人数で囲まれていては簡単ではない。

 

 だからこそ、もう一切の遊びなく、これからの方針の舵を切る。

 

 ネクロムの一撃は自分を殺すには足りない。

 ならば躱すより、これの直撃と共に大きく飛び退り距離を取る方がいい。

 その後、即座にヤバングレイトで自分を回収する。

 

 そこの切り替えを致命的に間違えるほど、バングレイは甘くない。

 インパクトの瞬間、後ろに大きく吹き飛ばされるためのタイミングを計る。

 

 そう。彼はそこは絶対に間違えない。

 そうだろうと思っていたから、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「マシュ!!」

 

「了、解―――! “いまは遙か理想の城(ロード・キャメロット)”!!」

 

 マスターの声に応え、マシュが盾を解放する。

 屹立する高き白亜の城壁。

 ―――それが展開されるのは、バングレイのほぼ真後ろで。

 

 視線を向けず、その気配に唖然とした。

 真後ろに壁が張られ、正面からはネクロムが迫っている。

 ()()()()()()()()()()()

 

「テ、メェら……ッ!!」

 

「オォオオオオオオ――――ッ!!」

 

 三人が必殺の一撃を重ね、バングレイへと直撃する。

 その威力で押し込まれた体が、キャメロットの城壁へと激突。

 

「ぐ、が、ァアアアアア――――ッ!?」

 

 なお突き進もうとするネクロム、グリム、サンゾウが重ねたキックの威力。

 そしてけして先へ通さない無敵の城壁との挟み撃ち。

 完全に間で潰されようとしているバングレイが、ネクロムの足を掴む。

 頭を掴める距離ではない。だからこそもう、彼に逆転の一手はなく―――

 

「ハ、ハハハ……! けどなぁ、テメェも死にかけだ!!

 だったらァ――――!!」

 

 バングレイの腹で光が膨れる。

 自爆同然の圧倒的な破壊の奔流の前兆。

 頑丈さならば、どう考えたってバングレイに軍配が上がる。

 自爆であってもその勝負で勝つのはバングレイだ。

 

 ここで攻撃を続ければ、お前は死ぬ。

 そう断言されたアランが、即座に吼えた。

 

「やれるものならやってみればいい―――! やれるものならば、な!!」

 

「ほざくじゃねぇか――――、ッ!?」

 

 一切迷いなく、自身を巻き込む破壊力をバングレイは解き放った。

 それは真正面にいるネクロムに直撃して二人纏めて―――

 

 ―――ということにはならなかった。

 バングレイが放ったその大砲撃の向かう先は虚空。

 何にも当たらず、ただ地上から空へと堕ちていく彗星のように。

 

「んだとッ!?」

 

 砲撃だけが逸らされたのではない。

 突然何かに引っ張り上げられ、バングレイが空中に引きずり出されていたのだ。

 

 ―――城壁と必殺に挟まれていた彼を引きだしたのは、彼に巻き付いた蛇腹剣。

 双方が激突するその間へ。

 城壁より高くから降り注いだ、ジュウオウイーグルの嘴に他ならない。

 

「―――俺がやらせない!

 お前と戦ってるのは誰か一人じゃない―――俺たち全員だ!」

 

 バングレイに巻き付いた刃が蠢動する。

 徐々に食い込んでくるその剣に、バングレイが息を呑んだ。

 ジリジリと巻き取られる擦過音が響く。

 それに合わせて強く、イーグライザーを引き戻すジュウオウイーグル。

 

「ライザースピニングスラッシュッ!!」

 

「ガァアアアアア――――ッ!?!?」

 

 蛇腹剣で独楽のように回され、引き裂かれる青い体。

 彼はそのまま、受け身も取れないまま地面に叩き付けられた。

 白煙を上げながら転がるバングレイ。

 

 そんな彼の前に降り立つ、翼を畳んだジュウオウイーグル。

 この場に集った戦力全員が、バングレイを囲う。

 

「これで終わりだ……! バングレイ!!」

 

 

 

 

「ありがとう、君たちのおかげで勝てた」

 

 キューブコンドルをジューマンの少年、ペルルの手に返すザワールド。

 それを受け取りながら、少年はキラキラとした目で見上げてくる。

 何となく居た堪れなくなり、操はスペクターの後ろの方へ隠れようとした。

 困惑しながら遮蔽物にされるマコト。

 

 ウィザードアーマーが開いた転移の魔法陣。

 それを通され、子供たちは攫われたジューマンサーカスのテントまで戻されていく。

 一息吐いてその光景を見守りつつ、マコトが口を開いた。

 

「……だが少し困ったな。この宇宙船はどうするべきか……」

 

「星を壊せる兵器らしいし、壊した方がいいんじゃない?」

 

「それはそうなんだが」

 

 子供たちの姿が全部見えなくなった頃、ザワールドがスペクターの陰から頭を出す。

 拳を強く握り掲げた彼が、二人を前に宣言する。

 

「なら俺のトウサイジュウオーに任せてくれ! 間違いなく壊してみせる!」

 

「そうか。なら早速……」

 

 壊した壁からトウサイジュウオーに乗り移るべく。

 三人が牢屋から踵を返し、歩き出した。

 その前に――――

 

「―――ジニス様の細胞から抽出したエネルギーです。

 精々ジニス様を楽しませる公演をしてみせるのですね」

 

「ナリア―――ッ!?」

 

 デスガリアンとは関係ないだろうこの場に、何故かジニスの側近の姿があった。

 彼女はいつも通りメダルを手に、絶命したドミドルの傍に立っている。

 

 だが彼の体にコインの投入口などない。

 一瞬だけ逡巡し、しかしその宇宙人の口の中に強引に押し込んでしまう。

 ドミドルの死骸だったものが、瞳に再び光を取り戻す。

 それだけではなく、フライングテント号までもが揺れ始めた。

 

 オーナーの指示を達成したナリアは、すぐさま帰還する。

 

「なんかこの宇宙船ごと動いてる―――!」

 

「すぐに脱出だ!」

 

 即座に判断し、真っ先に走り出すスペクター。

 その後ろに続くように、ジオウとジュウオウザワールドも続く。

 彼が飛び出し、トウサイジュウオーに飛び乗ると同時―――

 

 フライングテント号の中央に、ドミドルの顔が生えてくる。

 それだけでなく、船の下にはドミドルの肩から下がまるまると。

 フライングテント号がそのまま頭になったような形状の巨大な怪物。

 70メートル近い身長の化け物になったサーカス団長が、その口を開いた。

 

「ではアンコールにお応えして。

 宇宙大大大大大サーカス団長ドミドル! 大大大大大復活でございまぁーす!!」

 

 今度の彼は、両腕の手首から先が完全に鞭になっている。

 それを大きく振り回して、地面を打ち付け震撼させた。

 

 

 

 

 大地が揺れる。

 攻撃の余波で、トウサイジュウオーまでもがよろめいた。

 意識を逸らしてはいけないと思っても、誰もがそこで意識を巨大な怪物に向ける。

 

 ―――だからこそ、彼はここで命を拾えた。

 

「ヤバングレイトォ―――ッ!!」

 

「しまっ……!」

 

 彼の愛船・ヤバングレイト号が放つ、乗組員を回収するためのトラクタービーム。

 トウサイジュウオーならば船の方を攻撃して邪魔できるだろう。

 だがあちらはあちらで、ドミドルの相手がある。

 

 故に彼の回収は邪魔されることなく成功し、確かに離脱することができた。

 

「ク、フフ……! ハハハ―――! ああ、本命は後回しだ……!

 まずはテメェらの繋がりを、完膚なきまでにぶっ壊してやるよ―――!」

 

 バングレイを乗せた船が、即座に撤退する。

 煮え滾る怒りを抱えたまま、彼は一切迷わず退いてみせた。

 

 その船の逃走を見ながら、大和が拳を握り。

 しかしすぐにトウサイジュウオーに加勢するため、キューブを取り出した。

 

「―――行こう、みんな!!」

 

「ああ!」

 

 解き放たれるジュウオウキューブ。

 彼らの許から解き放たれたキューブたちが、巨神へと合体する。

 

 

 

 

〈ワイルドジュウオウキング!!〉

 

『完成! ワイルドジュウオウキング!!』

 

『みんな!』

 

 聳え立つワイルドジュウオウキングに、トウサイジュウオーが歩み寄る。

 その様子に、コックピットでレオが腕を組んだ。

 

『操、お前……どうかしたのか?』

 

『―――ああ、俺は覚悟を決めた……!

 ジュウオウジャーとして、世界の王者ジュウオウザワールドとして、戦う覚悟を!』

 

『世界の王者って、随分大きく出たわね……』

 

 呆れるようなセラの声に、操が肩を震わせる。

 

『そ、そうだろうか……? やっぱり、もう少し狭い範囲にしておくべきか?

 日本の王者、くらいにしておいた方がいいだろうか……?』

 

『操くんって意外と尊大なのか謙虚なのか分かんないよね……』

 

 彼の態度に首を傾げるアム。

 それはそれで勝手に名乗るにはでかい名前だろうに。

 

『……そんな話は後だ! まずはあいつを倒す!』

 

 タスクがキューブを回し、ワイルドジュウオウキングをドミドルに向ける。

 大和もその言葉に大きく頷いて、キューブに手をかけた。

 

『よし、一気に決めるぞ!』

 

 そんな彼の号令に、操がすぐさま口を挟む。

 

『そ、その! その、だな。こうして俺もジュウオウジャーになって、それでその……

 だから、その、こっちに一人だけなのは、なんか、あれだし……

 もし、良かったら仲間になったんだから、みんなで合体、とか』

 

『……合体? ワイルドジュウオウキングとトウサイジュウオーでか?』

 

 操の言葉に自分の搭乗している機体を見回すレオ。

 そういうことが出来そうな時は、王者の資格が伝えてくれる。

 これまではそうだったので、出来るならそう感じる筈だが―――

 

『……出来るの?』

 

『で、出来ないのか……?』

 

『多分……』

 

 提案が否定され、彼がトウサイジュウオーの中で肩を落とす。

 

「いつまでやっているのですかぁー!?」

 

 ―――そんなやり取りをしていた連中に、ドミドルの鞭が飛んだ。

 それが両腕を振り回し、二機の巨神を殴打する。

 まともに直撃を受けて、轟音と共に転倒する二大巨神。

 

『ああ、くそ! とりあえずその話は後だ!』

 

 すぐさま起き上がろうとするワイルドジュウオウキング。

 だがそれを邪魔するように、ドミドルの追撃が襲い掛かってくる。

 

 同じように転がったトウサイジュウオーからは、微妙に力が抜けていた。

 

『もしかして操……あいつ、あんまり変わってないのか……!?』

 

『そりゃすぐには変われないでしょうけど……もう!』

 

「このままバラバラにして、私のサーカスの目玉にしてさしあげますよ!!」

 

 盛大な破裂音、二機を打ち据える鞭の連続。

 その衝撃に揺れるトウサイジュウオーの中で、操が体を震わせた。

 

『そうだ……例え合体出来なくても一緒に戦ってることに変わりないのに……

 仲間なのに……なのに、ショックを受けてる俺はなんて情けないんだ……!』

 

 鞭が鳴らし続ける破裂音を聞きながら、自然と体が体育座りの姿勢に丸まっていく。

 そのままいつものように―――

 

『ッ、待って……何か聞こえる……!?』

 

 真っ先に気付いたのは、聴覚に優れたセラ。

 その言葉を聞いて、操が下げていた頭をふと上げる。

 トウサイジュウオーの頭が横を向き、声の方向へと視線を向けた。

 

 ―――彼らが逃がした子供たち。

 そんな子供たちが、声を張り上げている。

 子供を救われた親と一緒に、喉が張り裂けんばかりに声援を送っている。

 

 頑張れ。立ち上がって。勝って。

 ―――ジュウオウジャー。

 

 その光景を目の当たりにした操が、トウサイジュウオーのステアリングを握る。

 

『―――そうだ……! 例え合体出来なくても、例え俺はこっちに一人でも!

 俺は世界の王者、ジュウオウザワールド!

 あの子供たちの生きる世界を守るために戦う事を選んだんだ……!

 こんなところで、負けられるかぁああああ――――ッ!!』

 

 ジュウオーが右腕を振り上げる。

 開かれたクロコダイルの口が、ドミドルの鞭を両方銜え込んだ。

 

「なんと!?」

 

『トウサイジュウオー!!』

 

 そのまま一気に立ち上がり、鞭を封じたまま激突しにいく。

 全力のタックルに対し、今度はドミドルの方が仰向けに転がった。

 

 後から立ち上がることになるワイルドジュウオウキング。

 その中で、タスクが困惑の声を上げる。

 

『勝手に落ち込んで勝手に立ち直った……』

 

『もしかして、これから操くんってずっとこんな感じ……?』

 

『う、うー……ん。いや、うん! 今度こそ、一気に決めよう!』

 

 とりあえずこの話を置いといて、まずは決着を望む大和。

 再び立ち姿を並べた二体の巨神。

 

 ―――だがその前に、紫色の翼が舞い込んでくる。

 

『え、キューブアニマル……?』

 

『キューブコンドルだ……!』

 

 二体の巨神の周囲を回る、巨大化したキューブコンドル。

 それだけではない。

 コンドルに追従するように飛ぶ、もう一体のジュウオウキューブがやってきていた。

 

 色はコンドルによく似た、しかし種別がまるで違う翼持つキューブ。

 

『コウモリ……キューブコウモリ?』

 

 二体のジュウオウキューブが場に増えて。

 その瞬間、彼らの王者の資格とジュウオウザライトが熱を帯びた。

 まるでそれで揃った、と言わんばかりに。

 

『この感覚って……』

 

『―――よかったじゃねえか。操のわがまま、叶えてくれるってよ!』

 

 彼らの前に広がっていく、四角形のリング。

 潜れと言わんばかりに配置されたそれは、キューブアニマルが通るべきもの。

 

『え? じゃあこれは……!』

 

『ああ、行けるよ! 操くん!』

 

 大和たちがワイルドジュウオウキングから王者の資格を抜く。

 操がライトをトウサイジュウオーのコックピットから引き抜く。

 そうして入力するのは、新たなる巨神に至るためのもの。

 

『動物大合体!!』

 

〈キューブイーグル! シャーク! ライオン! エレファント! タイガー! ゴリラ! クロコダイル! ウルフ! ライノス! キリン! モグラ! クマ! コウモリ!〉

 

 一度、二体の巨神が分解してリングを潜る。

 キューブに戻ったジュウオウキューブたちが、新たな繋がりを成していく。

 

〈3! 4! 9!〉

 

 キューブライノスが後部の荷台を切り離し、立ち上がる。

 ライノスの足に履かせるように、下から接続される二体のキューブ。

 右足の下にキューブライオン、左足の下にはキューブエレファント。

 

 切り離された荷台はトウサイジュウオーと同じように、横向きでライノスの上に乗る。

 

〈5! 2! 7! 8!〉

 

 右肩にキューブタイガー、左肩にはキューブシャークを積載。

 荷台から展開された腕部接続用のアームが降りてくる。

 右腕にはキューブクロコダイル、左腕にはキューブウルフが接続された。

 

〈6! 1!〉

 

 荷台の中央部分に、キューブゴリラとキューブイーグルが降りてくる。

 隙間を埋めるように合体した二つの赤いキューブ。

 

 後から飛び込んできたキリン、モグラ、クマ、コウモリ。

 四体のキューブアニマルたちが、ライノスである脚部へと装備される。

 更に右腕に装備されるビッグキングソード、左腕にはビッグワイルドキャノン。

 最後にキューブライノスの角が、頭部となって赤いキューブの上に合体した。

 

〈ワイルドトウサイキング!!〉

 

『完成! ワイルドトウサイキング!!』

 

『おお、おお! 合体出来た!』

 

 横並びになった操縦席で、首を左右に振る操。

 席を並べられたことに嬉しそうにはしゃぐ彼の前で、更にキューブコンドルが変形した。

 そのままワイルドトウサイキングの手の中に納まるコンドルセイバー。

 

 宇宙船が丸ごと頭になり、バランスの悪いドミドルが起き上がる。

 邪魔なことこの上ないキューブコンドルを見て、彼の顔が大きく歪んだ。

 

「ぬ、ぐ……ッ! またそいつですか!」

 

『―――もう一度言ってやる。

 お前の世界も、お前のサーカスも―――此処が最終公演だ!!』

 

 新たなる巨神が一歩踏み出す。

 キューブコンドルが運んできた声援が、その刃に集っていく。

 振り上げた剣が虹色に輝き―――

 

『コンドル! ジュウオウインフィニティ――――ッ!!』

 

 その刃が放つ光が斬撃となって、ドミドルを切り裂いた。

 振るわれた鞭も纏めて、その極光は吹き飛ばす。

 両断された体を押さえながら、彼が口惜しげに―――今度こそ、断末魔を上げた。

 

「私の最期の公演―――大大大大……! 大、失敗……!

 夢の……空中、ブランコォオオオオ――――ッ!?!?」

 

 ずるり、と。両断された体が滑り落ちる。

 崩れ落ちていく体は、そのままそこで爆発した。

 弾けるように盛大に空中に打ち上がっていく、無数の花火が空に咲く。

 

 振り返るワイルドトウサイキング。

 巨神は爆発を背に、ゆっくりとコンドルセイバーの切っ先を下ろした。

 

 

 




 
がんばえー
 
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