Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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激震!不死身の侵略者!2016

 

 

 

「お待ちください、アデル様……!

 ダントンが再び襲撃に来る可能性も―――!」

 

「仮に奴が攻めてきたとして……お前に何が出来る?」

 

 呼び止められ、足を止めたアデル。

 彼はゆっくりと振り返ると、冷めた目でジャイロを見据えた。

 事実として、ジャイロはダントンに手も足もでなかったのだから。

 

 現時点で眼魔の持つ戦力―――

 その中でダントンに抗し得るのは、ガンマイザーのみ。

 ならばジャイロなどこちらに置いておく必要はない。

 人間世界に送り、イゴールの補佐にするくらいしか使い道はない。

 

 肩を震わせながら、ジャイロは跪く。

 そんな彼を見下ろして、視線を外したアデルは再び歩み始めた。

 

 入るのは当然、大帝のみが入ることを許される祈りの間。

 ガンマイザーの本拠地。

 

 空中に浮かぶ14枚のプレート。

 それを見上げながら、アデルは腕を掲げた。

 

「ガンマイザーよ。

 大いなる力の根源……グレートアイに祈りを届けるにはどうすればいい。

 その力を我が物とし、この世界を真に完璧なものとするために」

 

 アデルの問いを聞き、プレートが1枚降りてくる。

 それは鏡のように姿を写し取り、アデルの顔を持つ人型に変わった。

 無表情かつ無感動の表情で、自分に向き合う自分。

 そんなものに僅かに眉を顰めつつもアデルは返答を待つ。

 

『―――我らは大帝以外による力の根源へのアクセスを遮断するもの。

 自らアクセスする方法は持っていません』

 

「……ならば父上はどうやって接触していたのだ」

 

『―――大いなる力の根源は、人の意思に反応し願いを叶える。

 ですが我らガンマイザーが創造されて以降、前大帝アドニスは一度も力の根源との干渉は行っていませんでした。故にどのような方法でアクセスが成されるか、情報もありません』

 

「なんだと?」

 

 ―――ガンマイザーの創造は、ダントンの追放後。

 眼魔百年戦争以降、一度もグレートアイと干渉していない。

 

 やらなかった……いや、出来なかった?

 人間世界も含め、この不合理な世界を再編する。

 グレートアイの力は、その目的のために必要な力だ。

 何としても接触しなければならない。

 

『ですが、一度だけ。眼魂を揃えた天空寺タケルという人間が、我らガンマイザーを擦り抜けアクセスに成功した事があるようです。

 その方法による力の根源への干渉には、既に対応を完了しています』

 

「眼魂……英雄の眼魂か。なるほど、グレートアイへのアクセス権……それがあの眼魂が持つ、本当の存在理由だったというわけか」

 

 だとすれば、やはりイーディス長官は何らかの暗躍をしているということだろう。

 眼魂技術の発端は彼だ。未知の眼魂など、彼以外から出てくるはずがなかったのだ。

 ガンマイザーを飛び越え、グレートアイに接触するための裏口。

 それが英雄の眼魂だったに違いあるまい。

 

「その眼魂を揃え、私がグレートアイに接触しようとする分にはガンマイザーの邪魔は入らない。そう考えていいのだろうな?」

 

『―――はい』

 

 だとすれば話は簡単だ。

 まずは人間世界の英雄眼魂を全て手に入れる。

 その後にグレートアイに接触し、大いなる力を手に入れ世界を変える。

 

 イーディスが何か企んでいたことなど分かり切っている。

 恐らくは彼も、何らかの目的でグレートアイを利用しようとしていたのだろう。

 だがイーディスを重用していたアドニスは死んだ。

 

 グレートアイへの防壁であるガンマイザーへのアクセス権も継いだのはアデル。

 ならば、もう何も出来はしない。

 

「よかろう。ならば狙うべきは英雄の眼魂を持つ連中……

 アランの始末も共につけてやろう」

 

 その場で小さく笑い、アデルが踵を返した。

 

 イゴールとジャイロ。彼らに英雄の眼魂の入手をさせるためだ。

 最大の問題は強大な戦闘力を手に入れたスペクターだろうが―――

 それでも生身の肉体。間断なく攻め立て続ければ、いずれ限界を迎える。

 

 休まずに攻め続けることが、眼魂である自分たちなら出来るのだから。

 

『―――眼魂の回収及び天空寺タケル、深海マコトの処分。

 その件につき、我らガンマイザーより提案があります』

 

「なに?」

 

 背後からかけられた声に足を止め、アデルが振り向く。

 その目の前に降りてくる、全てのプレート。

 全プレートが先程のプレートと同じように、アデルの顔を持つ人型に変わった。

 

 ―――ガンマイザー最大の脅威。

 それは不死身のガンマイザーを破壊した、この世界に現れた幽鬼だ。

 あの幽鬼が出現したのは、ガンマイザーの認知する限り二度。

 

 一度目はガンマイザーの再起動時。

 15の眼魂を集めるという方法でのグレートアイへの干渉。

 一度は見逃してしまったが、二度同じ方法で接触などさせるはずもない。

 だからこそ、15の眼魂が集まり力が高まった瞬間、ガンマイザーは起動した。

 

 天空寺タケルの許に15の眼魂が集い現れたグレイトフル魂。

 ガンマイザー・ファイアーは、そこにいた眼魔スペリオルをボディにして降臨した。

 

 ―――その場にいたのが、あのアナザーゴースト。

 

 二度目はこの眼魔世界でだ。

 ガンマイザーがダントンを脅威と捉え、戦闘行為をしている最中。

 それは恐らく深海マコトを逃がすために、ダントンに立ちはだかるように現れた。

 

 つまりはあの二人だ。

 あの二人に何らかの干渉をすれば、姿を現す可能性が高い。

 ガンマイザーを―――ひいては眼魔世界を脅かす存在。

 それを排除するのは、ガンマイザーにとって急務。

 

 だからこそ、ガンマイザーたちはアデルと同じ顔を14並べ。

 無表情のままに彼へとその作戦を提案した。

 

 

 

 

「巨獣ハンター・バングレイ……狩った巨獣の数は、確認されているだけで九十九。

 百体目の獲物を求め地球に来た、宇宙の荒くれ者のようです」

 

 ナリアが調べた情報を聞きながら、ジニスは手の中でグラスを揺らす。

 

 己の顎に手を添えて、クバルがモニターに映ったバングレイの情報を見上げる。

 そこには、今まで彼が狩ってきた巨獣のリストもあった。

 宇宙にその名を轟かせていたような野生の獣の名前も混じっている。

 事実であれば、それこそがバングレイの能力の証明だろう。

 

「巨獣ハンターですか……つまり、この星に巨獣と呼べる存在がいる、と?」

 

「ええ。詳細は不明ですが……伝説の巨獣と呼ばれる存在が噂されているようです。

 何でも、宇宙の破壊神と呼ばれた怪物を退けるほどの存在だとか」

 

「宇宙の破壊神だぁ? 随分と大仰な名前の怪物だぜ」

 

 つまらなさげにテーブルを叩くアザルド。

 そんな彼に肩を竦め、ナリアは画面を操作して情報を次々と映していく。

 

 地球の巨獣がそれほどに名高くなった理由。

 それを眺めたアザルドは、叩いていたテーブルに頬杖をついて鼻を鳴らす。

 そこで微かに笑ったジニスが、ゆっくりとグラスを傾けた。

 

「面白いじゃないか、宇宙の破壊神を封印するほどのパワー。

 その巨獣、是非とも見てみたいね」

 

「――――……?」

 

 クバルがゆっくりと、ジニスの視界から出るように一歩退く。

 そうしてから、悟られないように横目で王を見上げる。

 

 ―――クバルの目には。

 酷く機嫌の悪かった彼が、唐突なほどに機嫌を直したように見えた。

 

 彼の言葉を聞いたナリアが深く頭を下げる。

 ジニスが意思を示した以上、デスガリアンの行動方針は決定だ。

 と言っても、バングレイが探しているならそう無理な行動もない。

 

 これからの方針にクバルが口を出す。

 

「バングレイが探しているのです。

 でしたら、奴が見つけたのを横取りすればいいのでは?」

 

「じゃあ俺たちは今まで通りだな。さぁて、次のゲームは……」

 

 細かいことはどうでもいい、と。

 次のゲームの内容を考え出すアザルド。

 せっかく投入したクルーザが何も出来なかった苛立ちもあるのだろう。

 彼は次のプレイヤーを選別するため、退室していった。

 

 そのまま少しジニスの様子を窺っていたクバル。

 彼はやはり機嫌が良さそうに、グラスの中の液体を見つめていた。

 

 ―――アザルドに続くように、クバルもまた頭を下げてから退室する。

 玉座の間から少し離れたところまで歩いて離れ、そこで彼は一度足を止めた。

 

「―――巨獣に何かある……?

 いえ……藪をつついて竜の逆鱗に触れる必要もないでしょう―――」

 

 理由が分からずとも、確かにジニスの機嫌は持ち直した。

 ならば今はそれでいいのだ。

 わざわざ自分から命を危機に晒しに行くなど、馬鹿のすることなのだから。

 

 

 

 

「これ、何か変わったの?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんから受け取った服を着直しながら、立香が問いかける。

 少なくとも、見た目何かが変わったようには見えない。

 確かめるようにところどころをぽんぽんと叩いてみるが、実感は何もない。

 

「機能の追加だよ。もちろん整備と調整もしたけれど」

 

 散らばった道具を片しながら、そう言って微笑むダ・ヴィンチちゃん。

 着終わった体をちょいちょい動かしてみるが、やっぱり何か変わった気はしない。

 

「まあ、現状だとあまり意味のない機能だけれどね。

 あくまで次の特異点のための装備さ」

 

「ふぅん……」

 

 この特異点には随分と長く滞在しているが、ここで終わりというわけではない。

 次にして、最後。七つ目の特異点が待っている。

 その戦いの準備だって、カルデアでは同時に進行しているのだ。

 

『―――と、言ってもだ。まあ、そんなに急く必要はないよ。

 何せこちら側でまだ第七特異点は観測できていないからね……』

 

 そう言って苦笑するロマニ。

 こちらの存在証明をしつつ、彼らの業務は次の特異点の特定に移っている。

 しかしそれなりの期間探索しているというのに、その状況は芳しくない。

 

『ここまでそれらしいものが見つからない、となるとだ。

 まず間違いなく西暦以前……下手をすれば、神代に近い年代になる。

 そうなってくると、それほど遡った時代の観測ではシバの精度が安定しない。

 範囲を余程絞らなければ、最後の特異点は発見できないだろう』

 

「……範囲を絞るための情報が必要、ってこと?」

 

 首を傾げる立香に対し、苦い表情を浮かべるロマニ。

 

『……まあ、正直なところそこは心配していないんだ。

 多分、君たちが帰還すると同時に見つける方法があると思ってる』

 

「ウォズ―――もちろん黒ウォズの方だ。

 彼は恐らく答えを知っている、と思われるからだね」

 

 言葉を濁したロマニ。

 それに対し、ダ・ヴィンチちゃんはさっさと答えを口にした。

 まあ彼なら知っているだろうし、必要なら伝えてくるだろう。

 

 そういえば、と。いつぞや見た顔を思い出す。

 見た顔、と言っても彼は複数の顔を見せていたが。

 

 恐らく名前は、仮面ライダーディケイド。

 黒ウォズは門矢士、と呼んでいただろうか。

 

 『俺の待つ最後の特異点には、俺のウォッチを手に入れてから来い』

 確か、そんな感じの雰囲気の事を言っていた気がする。

 つまり彼は最後の特異点の場所を知っている、どころか今もいるのだろう。

 

「つまり黒ウォズに話を聞けばいい、と」

 

「そうそう。だからこそ、今は焦らずこっちの問題に取り組もうじゃないか。

 さて……こっちの作業も区切りがついたことだし、私もそろそろリンクキューブとやらを見に行こうかな?」

 

 軽く体を伸ばしながら、そう呟くダ・ヴィンチちゃん。

 

 ―――リンクキューブ。

 機能を停止している人間界とジューランドを繋ぐもの。

 停止の原因は、鳥のジューマンが王者の資格を一つ盗んだこと。

 

「新しい王者の資格を作ってみる、とか?」

 

 ならば代わりになれるものがあれば一応は解決を見る、と。

 そう言いながら視線を振ってみると、彼女は小首を傾げてみせた。

 

「ふむ。操くんの例を見るに、作るだけなら私でも出来るかもね。

 まあ、そのためにはジューマンを犠牲にする必要があるかもしれないけれど」

 

 ジュウオウザライト―――ジニスが作りだした、疑似的な王者の資格。

 それを思い描き、軽く指を回しながらダ・ヴィンチちゃんは片目を瞑る。

 その上で仮に作れたとして、必ずしも王者の資格と同じ働きをしてくれるかは不明だが。

 

「ま、とりあえずは現場を見てから判断しようか。

 ロマニ、話を聞いて地図上にマーキングはしてあるんだろう?」

 

『まあね。けど、直接案内してもらった方がいいんじゃないかい?

 特にタスクくんなんかは、キミの話に乗ってくれそうじゃないか』

 

「大和さんたちは今日、サーカス行ってるよ」

 

 ジューマンたちに案内してもらえばいい。

 そう口にしたロマニに、×を示す。

 

 最近の騒ぎの中でよく聞いていた単語、サーカス。

 それを改めて聞いて、ロマニが眉を顰めた。

 

『サーカスって、あの宇宙サーカス? に襲われたジューマンのサーカスかい?』

 

「うん。今日が最終公演でもうすぐ次の街に行っちゃうから、是非見に来て欲しいって誘われた、って言ってたよ」

 

 コンドルのジューマンの少年、ペルル。

 彼からの誘いで、大和たちはサーカスを見に行ったのだ。

 これから仲間として戦っていくことを決めた操。

 彼と友好を深める意味も込めて。

 

 友達と遊びに行く、ということで操はスーツを着ていたのが記憶に新しい。

 果たして彼以外にサーカスをスーツで見に行く人間はいるのだろうか。

 ついでに。操の先日の発言から、渾名をつけて呼ぶ事にした大和に対して狂喜して、大和の手を握り顔を輝かせていたのも特に印象的だった。

 

『なるほど。じゃあ、キミたちと……マシュも休みだったろう。三人で行くのかい?』

 

「そうなる?」

 

「いや、アカリちゃんも誘うとしよう。優秀な助手だからね」

 

「そっか。じゃあ折角だし他のみんなも誘おうか?」

 

 言いながら、そのままリンクキューブを調べるための準備に入るダ・ヴィンチちゃん。

 じゃあ私は声をかけてくる、とそのまま部屋を退室。

 ピクニック気分で、これからの予定を消化するために彼女たちは動き出した。

 

 

 

 

「……美味い。フミ婆のたこ焼きそのままだ」

 

「そうですか? お祖母ちゃんのたこ焼きをいっぱい食べてたアランさんにそう言ってもらえると、なんだか自信がつく気がします」

 

 そう言いながら手慣れた様子でたこ焼きを作り続ける女性。

 名を福嶋ハルミ、フミ婆こと福嶋フミの孫娘だ。

 そんな彼女の焼いたたこ焼きを食べながら、アランは小さく笑った。

 

 別に何かがおかしかったわけではない。

 ただ当たり前のことだ。

 

 幼い頃からフミ婆と一緒にたこ焼きを焼いていた彼女は、フミ婆のやり方を知っている。

 だから彼女の作るたこ焼きは、フミ婆のたこ焼きと同じ味がする。

 本当にただそれだけの事が―――とても尊いことなのだと、彼は知った。

 

 もしかしたらハルミもまた子へ、孫へ。

 このたこ焼きの味を伝えていくのかもしれない。

 

 ―――その繋がりは、命を懸けて守るに足る。

 自然とそう思えた。

 

「……変わったな、アラン」

 

「―――ああ」

 

 一緒にたこ焼きを食べていたマコトが、彼の横顔を見て微笑む。

 そんな言葉に、思うところがあって空を見上げる。

 

「私はこうして変わった。だが、父上やアデルだって民の事を考えていたのは、変わらないはずなのだ。その意思が、私とは反対の方向に変わってしまっただけなのだ、きっと。

 ……父上を止められなかったことは変わらない。だが、まだ兄上は止められるかもしれない。兄上の罪は、それを止められなかった私たち大帝の一族全て罪だ。だからこそ……私は、兄上を止めたい。共にその罪を背負い、眼魔の民を導くために」

 

 見上げていた顔を下ろし、彼はそのままマコトに向き直った。

 

「頼む、スペクター。そのために、協力してほしい」

 

「マコトだ。前のように、友としてそう呼んでくれ」

 

 マコトから差し出される手。

 出された手を握って、アランは大きく頷いた。

 

「ねえ二人とも、食べてばっかじゃなくて手伝ってよ」

 

「む?」

 

 ゴミを集めて纏めつつ、ソウゴが二人に声をかけた。

 “フミ婆の味”が蘇ると知った人たちが、今日ばかりは押し寄せたのだ。

 そうなれば便乗している彼らの店も自然と繁盛し、手が足りない。

 

 せっかく久しぶりの味に浸っていたというのに。

 小さく息を吐きつつ、仕方ないと立ち上がるアラン。

 

 そんな彼に苦笑しつつ、マコトもそれに続く。

 そのままソウゴの手伝いに回ろうとした彼が、ふと足を止めた。

 何かを感じたかのように、懐から取り出すのは眼魂。

 

 ―――ディープスペクターのものだ。

 

「どうした?」

 

「―――この……眼魂から伝わってくる、この感覚。まさか……?」

 

 取り出した深淵の瞳からは、強い力が伝わってくる。

 まるで何かに共鳴しているかのように。

 これに似たような感覚を、一度覚えた事がある。

 

 ―――ガンマイザーだ。ガンマイザーと対峙した時に。

 

「ガンマイザー……!?」

 

「―――なんだと?」

 

 アランが驚愕すると同時に、彼ら二人の持つ英雄眼魂が飛び出した。

 恐らくはタケルが、アイコンドライバーGによる集合をかけたのだ。

 つまり、彼が今ガンマイザーとの戦闘に入ったということ。

 

「タケル……!」

 

 その感覚に導かれるままに、マコトがすぐさま走り出した。

 一瞬だけ遅れて、アランもまたその背中に着いていく。

 

 二人を見送り、ソウゴは店の方へと振り向いた。

 きつく目を細めたオルガマリーは、彼に対して小さく一度頷く。

 ゴミ袋をその場に落とし、そのまま走りだすソウゴ。

 

 ―――そんな彼の前に、

 

「やあ、魔王。久しぶりじゃないか。

 君たちがお店を出したと聞いてね、つい足を運んでしまったよ」

 

 ふらり、と。

 白衣の男がどこからともなく割り込んだ。

 思い出すまでもなくよく見た顔に、ソウゴが眉尻を上げる。

 

「この特異点にもいたんだ、白ウォズ」

 

「必要なら私はどこにでも行くさ。我が救世主のためにね。

 もちろん。今回だって必要だから顔を出したまで、だ」

 

 言いながらドライバーを取り出す白ウォズ。

 

 敵対の意思は明らかだ。

 前回共闘したからといって、いつでも味方である存在ではない。

 ソウゴにとってはむしろ、敵としての活動の方が多い相手なのだから。

 

「……今回の戦い、俺がその場に行くのを邪魔したいんだ?」

 

「さて、どうかな。

 ただ今日は何となく……君の邪魔をしたい気分なだけかもしれないね?」

 

〈ビヨンドライバー!〉

 

 白ウォズはドライバーを腰にあて、ベルトを装着する。

 

 ―――その光景を見ていたツクヨミが、懐からファイズフォンXを抜く。

 車の陰に隠れつつ、引き抜いた銃を即座に発砲。

 赤い光弾が周囲へと飛んでいく。

 

「うん?」

 

 発砲しておいて、自身は狙っていない弾丸。

 その状況に白ウォズが僅かに眉を顰めた。

 

 ツクヨミの放った銃弾は公園の地面の適当な場所に着弾。

 その場で大きく火花を散らした。

 瞬間、彼女は大声で周囲の人間に叫びたてた。

 

「爆発よ! また怪物が出たのかもしれない! みんな逃げて!!」

 

 彼女が声を張り上げた瞬間、俄かに騒がしくなる行列。

 確かに突然爆発音のようなものが聞こえた。

 怪物の襲撃が日常的に訪れる今ならば、それはありえる話なのだ。

 少し間を置いて、パニックに発展する集団。

 

「落ち着いて! まだ爆発の音は遠かったわ! 今逃げればきっと大丈夫!」

 

 それに対して声を張り上げ、無理矢理落ち着かせて誘導を始めるツクヨミ。

 

 そんな光景を目の当たりにし、白ウォズは肩を竦めた。

 少し残念そうにしつつ、彼はその手の中にミライドウォッチを取り出す。

 

「少し残念だね。せっかく()()に使えると思ったんだが」

 

〈キカイ!〉

 

 起動するウォッチは、仮面ライダーキカイ。

 クランクインハンドルのスロットにキカイウォッチをセット。

 その後即座に、彼はハンドルを押し込んだ。

 

〈投影! フューチャータイム!〉

 

 背後に展開されるスクリーン。

 周囲に展開されるのは、銀色のライダーウォズ本体の装甲。

 その上から更に展開される、黄金のキカイの装甲。

 

 それが白ウォズの体を覆い、彼の姿を変えていく。

 

〈デカイ! ハカイ! ゴーカイ! フューチャリングキカイ! キカイ!〉

 

 ゆるりと構える仮面ライダーウォズ・フューチャリングキカイ。

 それを前に、顔を顰めながらソウゴはジクウドライバーを装着した。

 

 

 

 

「しかし……どうかされたのですかな、タケル殿。突然、こんな……」

 

 言い淀む御成の声。

 タケルの背にかけていた言葉が、そこで途切れた。

 御成が見つめている先で、タケルはぼんやりと野原を見ている。

 

 大天空寺の裏山。

 その中でタケルは、ただ立ち尽くしていた。

 

 ここは父が死んだ場所だ。

 彼はここで、天空寺龍から武蔵の刀の鍔を受け取った。

 それを知っているからこそ、御成の言葉も続かないのだろう。

 

「……分からない。けど、何だか呼ばれた気がしたんだ。父さんに」

 

「先代に、ということはもしや……!?」

 

 慌てて御成が周囲を見回す。

 アナザーゴーストがここにいるやも、という焦り。

 が、実際にあの幽鬼がここにいるということはなかった。

 胸を撫で下ろし、大きく息を吐く御成。

 

 何が原因なのか、本当に呼ばれたのか。

 そんなことさえも分からない。

 けれど、ここに来なくてはならない気がした。

 

 その場で立ち尽くし、目を瞑るタケル。

 そんな彼の様子を見て、倣うように御成も黙祷を始めた。

 

 ―――懐の中で、眼魂が騒ぐ。

 同時にタケルの中の何かが、確かに異常を感知した。

 眼を見開いて、タケルが声を上げる。

 

「……何か、来る!」

 

「な、なにがくるのですかな!? やはり、先代が……!」

 

 身構えるタケル。彼の声に慌てふためく御成。

 周囲を見回す彼らの前で、空に眼の紋様が浮かび上がった。

 

 それが眼魔がこちらに来るための次元の歪み。

 眼魔ホールであるということに、一切の疑いはない。

 タケルはすぐさまアイコンドライバーGを取り出していた。

 

 ―――ふと、目の前で開いた眼魔ホールに既視感を覚える。

 確か一度、此処で、正にあの眼魔ホールが開くのを、見たような。

 

 呆けているタケルの前で眼魔ホールが巨大化していく。

 

 ―――現れるのはプレートだ。

 それぞれ14の違う色を持つプレート。

 眼魔ホールの中からそれらは現れ、ゆっくりと地面に降りてくる。

 

「―――ガンマイザー!」

 

『優先目標、天空寺タケルを確認。最優先目標の出現を考慮しつつ、排除開始』

 

 14のプレートが全て魔人、あるいは武器、あるいはエレメントに変わる。

 その破壊力は、たった二体を相手にしただけのタケルにもよく分かっていた。

 

 集結する15の英雄眼魂。

 それがアイコンドライバーGに力を宿らせ、タケルをグレイトフル魂に変身させる。

 

「逃げろ御成! ―――変身!!」

 

〈グレイトフル!〉

〈ケンゴウ ハッケン キョショウニ オウサマ サムライ ボウズニ スナイパー!〉

〈大変化!!〉

 

 黒と金のゴーストが両手に剣を取り出す。

 ガンガンセイバーとサングラスラッシャー。

 

 十四対一などという状況で、下手に踏み込めるはずがない。

 グレイトフルの能力を駆使し、とにかく時間稼ぎを―――

 

『―――ガンマイザーへの影響を確認。対応を開始』

 

 炎の魔人がそう口にして、ゆっくりと手を振るう。

 その瞬間―――ギシリ、と。タケルの体が大きく軋んだ。

 

 何かの障害物に思い切り激突したような、そんな衝撃が体を走る。

 グレイトフルで向上した全身に漲る力。

 まるでそれが全て重しに反転したかのように、体へ負荷としてかかってくる。

 

「……ッ、なん、だ、これ――――!?」

 

 立っていることすら出来ず、両膝が落ちる。

 それを支えようとした腕にも力が入らない。

 

 ―――そこでふと。

 ガンマイザーが、英雄眼魂の力を一種類だけ弱点としていた事を思い出す。

 だとすれば、同じことが英雄眼魂にも起こり得るのではないか。

 ガンマイザーの存在は、対応した英雄の力を相殺するのではないか。

 そんな考えに思い至った。

 

 だとするなら、グレイトフルではそもそも戦えすらしない。

 そのままうつ伏せに倒れたグレイトフルに対し、御成が駆け寄る。

 

「タ、タケル殿!? タケル殿、お気を確かに!」

 

「御成……早く、逃げろ……ッ!」

 

 ガンマイザーが進行を開始する。

 だがゴーストは動けない。

 倒れたまま、僅かに震えることしか行う事ができない。

 

「タケル殿を置いて逃げられますか! ど、どうすれば……!」

 

 瞬間、グレイトフルが跳ねた。

 地面にうつ伏せで倒れていた体が、地面が爆発したように持ち上がる。

 

 ―――アイコンドライバーGから、ムサシのパーカーゴーストが飛び出したのだ。

 その勢いで、うつ伏せ状態から仰向けに引っ繰り返るゴースト。

 

 ムサシはそのまま単騎でガンマイザーに斬り込んでいく。

 だが数秒保てばいい方だろう。

 ガンマイザーがそれほどの脅威だというのは、分かり切ったことだった。

 

「御、成……! 俺の、ドライバー、外して……!」

 

「こ、こうですかな!?」

 

〈カイサーン!〉

 

 御成の手によって外される、アイコンドライバーG。

 そのまま足元に転がるムサシ以外の眼魂たち。

 転がり落ちたそれらを、慌てた御成が掻き集め始めた。

 

 そんな彼の様子を横目に。

 グレイトフルの鎧を消したタケルが、未だに痺れる体を立ち上がらせる。

 

 出現させるのはゴーストドライバー。

 手に取り出すのは、闘魂ブーストゴースト眼魂。

 タケルはすぐさまそれを操作し、己を真紅のトランジェントに変えた。

 

〈闘魂カイガン! ブースト!〉

 

 そのまま放たれた黒のパーカーを纏わず。

 彼はすぐに眼魂を差し替えてドライバーのトリガーを引いていた。

 

「……ムサシ!」

 

〈カイガン! ムサシ!〉

〈決闘! ズバッと! 超剣豪!〉

 

 ガンマイザーに容易に弾かれ、吹き飛ばされてきたムサシパーカー。

 だがその勢いのまま、赤いパーカーはゴーストの上に被さった。

 赤いトランジェントの上から、赤いパーカー。

 それを纏ったゴーストが、一気にフードを取り払う。

 

 拾い上げるのは先程落とした武装、ガンガンセイバーとサングラスラッシャー。

 

 二刀を構えながら、赤のゴーストは十四体の怪物に向き直った。

 背に庇った御成を一度だけ振り返り、彼は痺れる体に熱意を込めなおす。

 

「―――命、燃やすぜ……ッ!」

 

『―――消去、実行』

 

 

 




 
やめて!ガンマイザーの特殊能力で英雄の眼魂を無効化されたら、グレイトフル魂で英雄と繋がってるタケルの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでタケル!あんたが今ここで倒れたら、龍さんや御成との約束はどうなっちゃうの?
オレゴースト眼魂はまだ残ってる。ここを耐えれば、ガンマイザーに勝てるんだから!
次回「タケル殿死す」デュエルスタンバイ!
 
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