Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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粉砕!戦士の魂!2016

 

 

 

 ギュルリ、と。

 重力のエレメントが渦を巻き、炎の魔人と融合する。

 直後。迸る炎の渦が重量を伴い、ゴーストに振りかかってきた。

 

 圧しかかってくる炎の天蓋。

 潰されそうになる体を、双剣を杖代わりに堪えようとして―――

 その膝が地面に落ちる。

 

「が、ぁ……!」

 

 手から零れ落ちた双剣が、そのまま地面を潰して埋まっていく。

 

「タケル!!」

 

 即応しようとするディープスペクター。

 その前に水の魔人が立ちはだかる。

 更に魔人の中に溶け込む、雷のエレメンタル。

 

 深淵の炎を纏った拳が、水の魔人―――リキッドを粉砕する。

 が、それはそのまま液体となってスペクターに纏わりついた。

 同時にスペクターの全身を襲う雷撃。

 ガンマイザー・エレクトリックリキッドは、スペクターを確実に押し留める。

 

「邪、魔だァアアア―――ッ!!」

 

〈ゲンカイダイカイガン! ゲキコウスペクター!!〉

 

 雷に痺れる肉体を無理矢理動かし、銀の炎が溢れさせる。

 リキッドを蒸発させ、エレクトリックを消し飛ばし。

 スペクターは銀色の翼を得て、即座にゴーストの許へ向かい―――

 

 その前に、竜巻の如き形状の魔人が立ち塞がる。

 減速などするはずもない。

 飛翔の勢いでそのままそれを粉砕せんと、スペクターは拳を振り上げた。

 

 だが目の前で竜巻の魔人―――ウィンドに、時計のような光球が融合する。

 

『脅威対象を確認。直接戦闘を回避』

 

 融合するガンマイザー・タイムウィンド。

 合一した二基のガンマイザーが、スペクターの目の前で発光を開始する。

 

 結果、ガチリと。

 何かが巻き戻ったような感覚とともに、スペクターが翼を失った。

 飛び出した勢いのまま、彼は地面へと叩き付けられる。

 

「ぐっ……なにッ……!?」

 

 ディープスペクターの強化変身形態、ゲキコウスペクター。

 その発動を無効にされた?

 いや、発動前に巻き戻されたのだ、と。

 

 一瞬遅れて理解して、マコトはすぐに再びドライバーに手をかける。

 

 だが構えたスペクターの背後、再びエレクトリックリキッドが出現していた。

 何ら損傷なく、消し飛ばしたはずの二基のガンマイザーはそこにある。

 再出現したその手には槍―――ガンマイザー・スピアー。

 

 同時に地面を隆起させ出現する大地と震動の魔人、プラネットオシレーション。

 プラネットオシレーションの手には、鉄槌たるガンマイザー・ハンマー。

 

 更にタイムウィンドが手を伸ばす。

 その手の中に飛び込んでくるのは、紅弓ガンマイザー・アロー。

 

 現状、この場における最大の脅威ディープスペクター。

 それを完全に封殺するべく、九体のガンマイザーによる同時攻撃が行われる。

 

 槌が唸り、弓が撓り、槍が振るわれ。

 水流に雷撃が奔り、大気が震え、大地が割れ、周囲の全てが砕けていく。

 

 ―――そんな修羅場の中。

 銀色の戦士が全身から火花と白煙を噴き、膝を落とした。

 

「マコト! タケル!」

 

 空中にあるのは叢雲の魔人―――クライメット。

 それをグリム魂のショルダーで迎撃していたネクロムが足を止める。

 その瞬間、ネクロムの横をガンマイザー・マグネティックが擦り抜けた。

 

「なに……!?」

 

 敵の接触に対し身構えたネクロムだが、何のダメージもない。

 困惑したアランの前で、クライメットは空中を舞う。

 その手に現れるのは青い銃身、ガンマイザー・ライフル。

 

 クライメットは狙いもつけず、ただその銃弾を適当に撒き散らした。

 避けるまでもないその攻撃はしかし。

 全て、ネクロムに向けて異常な軌道で迫ってくる。

 

「くっ……!?」

 

 ニブショルダーでの迎撃を加速させる。だが足らない。

 マグネティックの発した磁力が、ネクロムに纏わりついている。

 弾丸を引き付けているのは、ネクロム自身だ。

 

 回避に意味はない。弾丸が最後に到達する場所こそがネクロムだ。

 迎撃しても意味はない。弾かれてもすぐに再びネクロムに向け進み出す。

 永遠に続くかのような、終わることのない迎撃戦。

 

 ―――その中の、通してしまった一発が着弾。

 

 そこで体勢を崩し、迎撃が遅れて続々と着弾する。

 無数の弾丸に撃ち抜かれ、彼の白い体が灰色に染まり出す。

 

 クライメットが更なる発砲。

 最早迎撃のための体勢すら整えられず。

 全ての弾丸を浴びたネクロムが、全身から火花を噴いて地面に投げ出された。

 

 

 

 

 そんな光景が下に拡がっていると理解して。

 戦場の上を飛ぶキューブイーグルから、皆で一気に飛び降りる。

 御成から送られてきたSOSを受け取り、ジュウオウジャーは最速の移動手段を選んだ。

 大天空寺の裏山の中に飛び込んだ彼らが見たのは、地獄のような戦況。

 

「―――みんな、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

 その戦場の中に、すぐさま飛び込もうとするジュウオウジャー。

 とにかく合流して、タケルたちを助けることが先決だ。

 だからこそ山の中に着地した彼らは、脇目も振らずに飛び出して―――

 

「おおっと、悪いがそうはいかねえんだ!」

 

「うわ……ッ!?」

 

 ―――死角を突き、木の陰から飛び出してくるバングレイ。

 彼の伸ばした右腕が、ザワールドの頭に触れていた。

 すぐさま掴んだ頭を押しやり、操を思い切り押し飛ばしつつ。

 彼はジュウオウジャーの前に立ちはだかった。

 

「バングレイ……!? なんであんたが―――!」

 

「まさか手を組んでやがるってのか!」

 

 押し返されてきた操を受け止めつつ、セラとレオが相手を睨む。

 

 攻めてきた眼魔と同調するような動き。

 これではまるで手を組んでいるようだ、と。

 それを聞いたバングレイが、くつくつと喉の奥を笑い声で揺らした。

 

「オイオイ、せっかく遊びに来た知り合いにその態度はないんじゃねぇか?

 バリ悲しいねぇ、まあいいけどよ」

 

 武蔵の剣に切り落とされ。

 しかし同じようにフックの義手を接続した左腕。

 それを動かしカチカチと鳴らしつつ、彼は大仰に声を上げた。

 

「残念ながら外れだ、俺も戦闘見つけて急いで駆けつけたのさ。

 なんせ、今あそこで死にかけてるのはお前らのお友達だろ?」

 

 首だけでくい、と。背後で行われている戦闘を示す。

 ガンマイザーはこちらに一切興味を示さない。

 あくまで目的は、今襲っている連中だけだとでも言うように。

 

「丁度いいと思ったのさ。

 ―――なあ、赤いの。記憶の繋がりを断ってもテメェらは壊れないんだろ? だから試させてもらおう、ってわけ。あの連中が目の前で殺されて、記憶の中でだけ生きる存在に変わったら―――その時、テメェらはどんな面を見せてくれるか、ってさぁ?」

 

「お前……!」

 

 新たに拵えたバリブレイドを構え直し、そう言って嗤うバングレイ。

 

 彼の前に出ようとする大和を、しかし銀色の腕が押し留めた。

 拳を握り締め、バングレイに対峙するザワールド。

 

「みっちゃん……!」

 

「大和たちはアランたちを助けに行ってくれ……! こいつは俺が―――!」

 

 そんな助け合いを前にし、鼻を鳴らすバングレイ。

 彼が六つ目の内の二つを輝かせ、その場に一つの影を顕した。

 先程触れた操の頭と、その記憶。

 そこから再現されるのは、操がよく知る存在に他ならない。

 

「残念、テメェの相手はこっちだ」

 

 現れる顔は、黒犀のマスク。

 金鰐の右腕と、銀狼の左腕で。拳を力強く握るトリコロールの戦士。

 バングレイの前に立ちはだかるジュウオウザワールド。

 彼と全く同じ姿かたちをした、同一の存在。

 

 ―――名を、ザワールド。

 門藤操の記憶から転写された、デスガリアンのエクストラプレイヤー。

 ただジニスを愉しませるためだけに戦うものが、その姿を現した。

 

「俺……っ!?」

 

「お前が俺の相手か?

 勝負にならないな……今のお前と俺とじゃ、レベルが違うからなァッ!!」

 

 三つの命を喰らい生まれた戦士、ザワールド。

 彼がジュウオウザワールドの前で笑い、一気に踏み込んできた。

 遺憾なく発揮される犀の突進力。

 

 隙を突かれた自分と同じ力を持った者からの激突。

 そんなものに晒されて、ジュウオウザワールドも咄嗟に身構えた。

 

「う、ぐぉおおお――――ッ!」

 

 ぶつかり合っても、純粋なパワーは互角。

 だが助走の分だけ上乗せされた衝撃に、操の方が体勢を崩した。

 そのまま押し込まれて、バングレイたちから離されていく二人の姿。

 

「操くん!」

 

「―――ッ! バングレイ!!」

 

 イーグライザーの切っ先が跳ねる。

 蛇の如くのたうちながら迫る刃を、バリブレイドが切り返す。

 直後に迫るのは、鮫と獅子。

 

 彼らが手にしたジュウオウバスターの刃が、バングレイに向けられる。

 剣を振り抜いた姿勢のバングレイはしかし腹の砲口から光を放ち―――同時に。

 象と白虎が銃モードのジュウオウバスターの引き金を引いた。

 

 バングレイの砲撃を撃ち落とすキューブ状の弾丸。

 互いの光弾が相殺し合い、発生する爆発。

 その炎の中を突き抜けた剣閃が、バングレイを確かに斬り付けた。

 

 火花を散らし。蹈鞴を踏んで。

 それでも退く足の距離はたった一歩分。

 

 絶対にあちらへ助けに割り込ませない。

 そう言うかのように、バングレイはそこで愉しそうに喉を鳴らした。

 

 即座に翼を広げ、激突しに行くジュウオウイーグル。

 だが同時に、バングレイもまた即座にそれに反応を示す。

 イーグライザーがバリブレイドと交差する。

 

 鍔迫り合いの姿勢。

 そのままバングレイが、突き合わせた鷲のマスクに問いかける。

 

「なあ赤いの。お前、名前は?」

 

「ッ、この……ッ!」

 

 火花を散らし、盛大な擦過音と共に唸る刃金。

 そのまま二度、三度と激突する互いの剣。

 剣が散らす火花越しに、バングレイが呆れるように大和を見る。

 

「あーらら、俺の名前は呼ぶくせに自分は名乗るの拒否るわけ?

 ま、いいけどな。今さっきあいつの記憶から一緒に貰ったからよ」

 

「飛べ、大和!!」

 

 レオの声に応え、赤い翼が飛翔した。

 競り合っていたバリブレイドが狙いを失い、イーグルの足を掠めるに留まる。

 空いたバングレイに対し、四人はバングレイを挟み銃撃を放つ。

 

〈ジュウオウシュート!〉

 

 キューブ状のエネルギー弾。

 それが四つ同時にバングレイへと着弾し、爆炎を上げる。

 その光景を眼下に見ながら、大和は己のマスクへと手をかけた。

 

 跳ね上げられる鷲の面。下から姿を現すゴリラの顔。

 上半身を筋肉で膨れ上がらせ、彼は炎の中のバングレイに躍りかかる。

 

「本能覚醒―――ッ!!」

 

 叩き付けられるゴリラの拳。

 立ち上る熱気ごと圧し潰さんとする、剛力の一撃。

 だがバングレイは剣を盾として構えることで、それを正面から受け止めた。

 

 拳がバリブレイドを叩く衝撃で弾け飛ぶ炎。

 千切れ飛んだ炎の残り火が舞う、晴れた視界の中。

 再び至近距離で視線を交錯させて、バングレイは高らかに叫んだ。

 

「なあ、風切大和ォ――――ッ!!」

 

 

 

 

「本能覚醒!」

 

〈ウォーウォー! ウルフ!〉

〈ウォーウォー! クロコダイル!〉

 

 互いに掲げるライトの光が、マスクの形状を変化させる。

 

 ザワールドの額に現れるのは銀狼の眼光。

 そのまま彼は腰を落とし、疾走体勢へと入った。

 

 黄金の鰐を額に現した操は、ジュウオウザガンロッドを構える。

 直線に伸ばし棍となったその武装。

 

 それを軽く首を回しながら見やったザワールドが、一息に踏み込んだ。

 狼の速度で彼が踏み込んだとほぼ同時、彼我の距離は瞬時にゼロまで詰まり。

 ―――瞬間、それに合わせて振るわれたロッドが空を切る。

 

「フンッ!」

 

 横薙ぎに振るわれたガンロッド。

 それを潜り抜けるザワールドが、膝で操を蹴り上げる。

 突きあげてくる衝撃に、足を地面から離して浮く操。

 

「くっ……! この―――!」

 

 掬い上げるように振るわれるジュウオウザガンロッド。

 下から上へと跳ねるそれが、半身を退いたザワールドの眼前を掠めていく。

 

「どうした? 俺の割に随分弱いじゃないか!

 それじゃあ、死んだ三匹のジューマンも浮かばれないなぁ!」

 

「黙、れぇッ!!」

 

〈ジュウオウザフィニッシュ!〉

 

 振り上げたロッドを、そのままの勢いで切り返して叩き付ける。

 溢れるジューマンパワーが、鰐のエネルギー体を作り出す。

 地面を割り、地上に突き出してくる鰐の顎。

 それの接近を目の前にして、ザワールドはザライトを回して膝で叩いた。

 

「本能覚醒!」

 

〈ウォーウォー! ライノス!〉

 

「野性大解放!!」

 

 頭部を再び黒い犀に変え、彼は両腕に金鰐の尾と銀狼の爪を発現させる。

 突き出した肩に装着するのは角の生えたショルダーアーマー。

 彼はその角でもって、殺到する鰐を正面を粉砕した。

 

 粉砕され、千切れ飛ぶ黄金のエネルギー片。

 それを振り払いながら、ザワールドの侵攻は続行される。

 

「……ッ! 野性、大解放ッ!」

 

〈ウォーウォー! ライノス!〉

 

 操もまた三つの力を呼び起こし、最大限の力を発揮。

 全力で突撃してくるもう一人の自分に対し、逆撃を試みた。

 激突した瞬間に炸裂する空気。

 

 互いに踏み砕いた地面が爆ぜ、土塊が撒き散らされる。

 

「どうした、お前を受け入れてくれた仲間を守るんじゃないのか?

 やっと出来た仲間の役に立つんじゃなかったのか?」

 

「―――言われるまでもない! お前を倒して、すぐに……!」

 

「すぐにどうする? どこまで守る? お前は本当に仲間を守れるのか?

 デスガリアンと戦い続ければ、やがてはジニス様とも戦わなければならないのに?」

 

 ザワールドの言葉に揺らぐ。

 その瞬間、金鰐の尾が操を殴り飛ばしていた。

 地面を踵で削りながら、後ろへ滑っていく彼の体。

 それを必死に押し留めて、操が体勢を立て直す。

 

「―――ッ、決まってる! 俺はみんなと戦うと決めたんだ!

 犠牲になった三人のような被害者をもう二度と出さないために……!

 相手が例え、あのジニスだとしても!!」

 

 操が地を蹴り、突撃(チャージ)を仕掛ける。

 それに対し、ザワールドは胸を張って立ち姿のまま待ち受けた。

 激突する一撃は、威力が足らずただザワールドを押し込むだけ。

 そんな攻撃を受け止めて、失笑する声。

 

「震えているな? 怖いんだろう、ジニス様が」

 

「うるさい、黙れェッ!!」

 

 我武者羅に振り上げられる狼の爪。

 足掻く操のそれを打ち払い、ザワールドが頭突きを行った。

 突き付けられる、お互いのマスク。

 

「お前は本当に誰かを助けるためにそこにいるのか?

 本当はジニス様の恐ろしさから、ただ逃げたいだけなんだろう?

 お前が仲間と呼ぶ連中はみんな、ジニス様から自分を守る盾なんじゃないのか?」

 

「そん、な……筈が……!」

 

 優しげにさえ聞こえた、彼の心の闇に染み込む声。

 そして命を消されていく、三人のジューマンたち。

 命をゴミのように消費するジニス。

 だが確かに、ジニスは門藤操の心の中を理解した。

 

 理解できない強大な力を持った化け物。

 そんな相手から、自分の事は心底まで理解されている。

 その事実が恐ろしい。

 

 踏み込みが緩んだ瞬間、操の体がぐるりと回る。

 足を刈り、その勢いで操を投げ飛ばしたザワールド。

 その腕の鰐尾が、ジュウオウザワールドを地面に叩き付けた。

 

 大地を砕き、地面に埋もれるトリコロールの体。

 

「ぐぁ……ッ!?」

 

 仰向けに埋まった彼の胸を、ザワールドの足が踏み付ける。

 砕かんばかりの勢いで下ろされた足に、操の体が軋んだ。

 

「俺はお前だ……お前の恐怖だ。お前は何も変われてなんかいない。

 仲間を助けるどころかジニス様に怯えて何も出来ない……

 あの三匹のジューマンを見捨てた時と同じ、ただの役立たずのままなんだよ!!」

 

 

 

 

〈ビルド! デュアルタイムブレーク!〉

〈ジカンデスピア! ヤリスギ!〉

 

 刀身を覆うドリル状のエネルギー。

 槍となったジカンデスピアと打ち合うそれが、大量に火花を散らす。

 そうして三度武器同士をぶつけ合い―――直後。

 

 ライダーウォズが一瞬武器に切り返しを遅らせた。

 直撃するヘイセイバーに黄金の装甲、キカイアーマライナーの表面が弾ける。

 ―――が、フューチャリングキカイは揺るがない。

 

 体で剣を受け止めた直後に、切り返すジカンデスピア。

 槍の穂先がジオウを捉え、押し返した。

 

 攻防のリズムがずれる。

 互いの攻撃が攻撃を相殺し合う事がなくなる。

 双方共に、行う攻撃は全て相手に直撃。

 全身から火花を噴き出しながら、削り合いになった。

 

 ディケイドアーマーが押し込まれる。

 だがフューチャリングキカイは平然と攻撃を続行する。

 

「っ……!」

 

「どうだい、魔王。このパワー、中々のものだと思うのだがね」

 

 叩き付けられるヘイセイバーの刀身を体で受け止めて。

 ライダーウォズは、ジカンデスピアのタッチパネルに指を添えた。

 連続スワイプすることで、必殺のエネルギーがその穂先に集う。

 

〈フィニッシュタイム!〉

〈エクシードチャージ!〉

 

「白ウォズ!」

 

 彼がデスピアを持ち直した瞬間、弾丸が奔る。

 赤光の弾丸は過たずフューチャリングキカイの胴体に着弾。

 その体を赤い光で拘束してみせた。

 

〈ヘイ! エグゼイド! デュアルタイムブレーク!〉

 

 動きを停止させるライダーウォズ。

 その前でジオウの指がセレクターを弾き、ヘイセイバーのトリガーを引いた。

 振るわれる刀身が黄金の装甲に激突すると同時、浮かぶ“HIT!”のエフェクト。

 攻撃の数だけそのエフェクトが舞い―――しかし。

 

「残念。その程度の攻撃は、フューチャリングキカイには通用しない―――!」

 

 ファイズフォンXによる拘束が、打ち破られるまでもなく消えていく。

 エネルギーの散華を大人しく待ち、加えられる攻撃を耐え切った後―――

 その腕が、エネルギーを滾らせるジカンデスピアを突き出した。

 

〈爆裂DEランス!!〉

 

 切り替えす剣を盾に、その刺突撃を受け止める。

 

 受け止めた瞬間、切っ先から溢れる歯車状のエネルギー塊。

 それがジオウを圧し潰すように回転を始め、アーマーが削られていく。

 回る歯車は車輪のように、巻き込んだディケイドアーマーを轢き潰す。

 

「ソウゴ!」

 

 撥ねられ、吹き飛ぶマゼンタのボディ。

 彼は地面にぶつかり、衝撃で跳ねて、そのまま転がっていく。

 そんな姿を前に、ライダーウォズがドライバーに手をかけた。

 

〈ビヨンドザタイム!〉

 

「少しの間眠っているといい。

 安心したまえ、君が起きる頃には事態は収束しているはずだからね」

 

〈フルメタルブレーク!!〉

 

 一度引いたハンドルを再びドライバーに叩き付ける。

 ミライドウォッチの力が解放され、フューチャリングキカイに漲っていく。

 展開される両肩のショルダーアーマー。

 そこから現れたフックのついたアンカーが、ジオウを目掛けて射出された。

 

「―――悪いね、白ウォズ。それ待ってたんだ」

 

〈ファイナルフォームタイム! フォ・フォ・フォ・フォーゼ!〉

 

「―――――!」

 

 ジオウの姿形が変わる。

 インディケーターに表示されるのは、フォーゼ・マグネット。

 ヘッドギアに浮かぶ表情は、胴体と頭部を一体化させた宇宙服のようなマスク。

 右半身には赤いライン、左半身には青いライン。

 

 ディケイドアーマー・フォーゼフォーム。

 変わった彼の前方に生成される、U字磁石を二つに割ったような砲台。

 突然前に現れたそれが、放たれたアンカーへの身代わりとなる。

 

 ジオウを捕まえるために放たれたフックは、両方が砲台へと接触。

 その結果―――()()()()()

 強力な磁力を帯びた砲台は、キカイのフックを完全に固定してみせた。

 

「チィ……ッ!」

 

〈フォ・フォ・フォ・フォーゼ! ファイナルアタックタイムブレーク!!〉

 

 砲台が動き、アンカーの動きを阻害する。

 強引に引き戻しにかかるライダーウォズの前で、ジオウはディケイドウォッチを押し込んだ。

 更に続けてそのウォッチを抜き、ヘイセイバーへと装填。

 

〈フィニッシュタイム! カブト! スクランブルタイムブレーク!!〉

 

 解放され、ヘイセイバーに纏わる赤いエネルギー。

 それが巨大なカブトムシ状の光に変貌。

 ヘイセイバーが丸ごと巨大カブトムシとなり、空中へと飛び立った。

 

 砲台とライダーウォズによる綱引きになっているアンカー。

 そこに飛び込んだカブトムシは、角にワイヤーを絡め捕るような動きを取る。

 

「なに……ッ!?」

 

 砲台がカブトムシの足に見える部分に引っかけて、そのまま空への飛翔を開始する。

 角に絡んだワイヤーごと引きずられるライダーウォズ。

 空中へと投げ出されたライダーウォズを振り回すように、カブトは不規則な軌道を描く。

 

 それを頭上に見上げながら、腰を落として構えるジオウ。

 既に解放していたフォーゼウォッチの力。

 その力が赤と青の磁力エネルギーになり、フォーゼフォームを包み込んでいく。

 

 ―――準備が出来た。

 その途端に空舞うカブトが機首を下げ、落下するように地上まで降りてくる。

 引きずられる白ウォズが、丁度ジオウに激突するような軌道を描き―――

 

「超電磁宇宙―――! ロケット頭突きィ――――ッ!!」

 

 ―――その軌道に重なるように。

 赤と青の光に包まれたジオウが、上半身を全力で振り抜いた。

 激突した瞬間、磁力と化していたコズミックエナジーが爆発する。

 

 全てのエネルギーを破壊力に転化して、ライダーウォズを打ち据える一撃。

 何であっても圧し潰すような磁力の渦に、軋むフューチャリングキカイ。

 彼の体は大地を割る勢いで叩き落とされ、埋もれながら滑っていく。

 

 役目を果たして地面に落ちるヘイセイバー。

 それを拾い上げながら、ジオウは大地に沈む白ウォズに視線を向けた。

 

「っ……」

 

 黄金の装甲から白煙が噴き上がる。

 流石のフューチャリングキカイにも、今の一撃は堪えたようだ。

 それでも立ち上がる彼の背からかかる、張り上げた声。

 

「―――祝うがいい!

 全ライダーの力を受け継ぎ、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者―――

 その名も仮面ライダージオウ・ディケイドアーマーフォーゼフォーム。

 その力の前に、もう一人の私がこうして地に這い蹲った瞬間である!!」

 

 現れた黒ウォズは手に広げた『逢魔降臨暦』を掲げつつ。

 幾分か普段よりも機嫌が良さそうに、そう叫んでいた。

 

「……それってソウゴを祝ってるの?

 それとも白ウォズが酷い目にあったことを祝ってるの?」

 

「両方さ」

 

 ツクヨミからの質問には肩を竦めつつそう返して。

 彼は手の中の本をパタリと畳んだ。

 黒い自分のそんな反応に失笑し、ライダーウォズが体を起こす。

 

「―――やれやれ、まだもう少し簡単に足止めできると思ったが……

 流石に、魔王の力は伊達ではないようだ。

 まあ、この程度でも十分な時間を稼いだという事にしておこう」

 

 言って一歩退き、白ウォズは退却の姿勢を見せる。

 

 ―――追撃をしている場合ではない。

 彼がこのまま退くというなら、ソウゴ達はタケルたちの許へ行くだけだ。

 ただ、その前に。

 

「……それは一体、何のために?」

 

「自分の目で、確かめるといいさ」

 

 タケルたちが窮地に陥り、一体何が変わるというのか。

 出した疑問に、白ウォズが答えを返す事はない。

 彼はあっさりと踵を返して、撤退していく。

 

 一瞬だけ悩み、すぐさま横に置いて振り向く。

 考えるまでもなく、彼に追い縋って浪費している時間はない。

 白ウォズの撤退を見たオルガマリーが、車で一気に乗りこんでくる。

 

 飛行するための準備も、その飛行機能に対する認知阻害も準備済み。

 彼らはその車で、現場まで飛翔するのだ。

 

「―――行こう」

 

 

 

 

 ピクニックのつもりなどとんでもない。

 出立した彼らを待っていたのは、敵襲撃による招集。

 すぐさま武装したマシュを先頭に、彼らは全力疾走で現場へ向かった。

 

 息を切らしながらの到着。

 そんな彼女たちの目の前で繰り広げられていたのは―――

 

 14体のガンマイザーによる、三人の仮面ライダーの蹂躙だった。

 

 ネクロムが膝を落とし、その変身が解けた。

 浅緑のショールと白い服を土と血で汚し、アランが地面に転がる。

 

「アラン様!?」

 

 カノンの悲鳴。

 同時にガンマイザーから放たれる、雲霞の如き衝撃波。

 生身で受ければ死体すら残さないだろう一撃。

 その前に割り込むのは銀色の体。

 

 ディープスペクターには更に、他のガンマイザーたちからの衝撃も見舞われる。

 アランの事は確かに守り抜き――――しかし。

 十を超える守護者からの攻撃を浴び、スペクターもまた遂に地へ伏せた。

 彼の変身も、地に転がった瞬間に解除される。

 

「マコト……!」

 

 アカリが彼の名を漏らし、すぐさまバッグを漁る。

 彼女が作り出したゴースト視認用の装置である不知火の改良型。

 武器としての威力も持たせたものを、引っ張り出そうとする。

 

 だが間に合うはずもない。

 間に合ったとして、十を超えるガンマイザーに何が出来る筈もない。

 だからこそ、その道理を覆すために―――

 

「マシュ!!」

 

「了解! マシュ・キリエライト、出ます―――!」

 

 何者に侵されぬ守りを持つ少女が、マスターの声に応えて疾走した。

 無敵の盾を有する彼女ならば、この逆境でさえも。

 今まさに追い詰められている仲間たちを守り抜けると―――

 

「そうなるよなァ――――ッ!!」

 

 ―――だからこそ。

 この状況ではそうするしかないと知っている巨獣ハンターが嗤う。

 ジュウオウジャーを相手取っていたバングレイが、一瞬の内に狙いを変えた。

 

 既に絶体絶命の危機の二人のために、彼女は全力で踏み込んでいた。

 

 こちらには非戦闘員がいる。

 下がっていた御成。アカリにカノンに立香。

 それにリンクキューブ解析の雑用に連れてきていたナリタとシブヤ。

 バングレイの無差別砲撃を防ぐには、広範囲を守れる盾は必須―――

 

「そらよォ――――ッ!!」

 

 バングレイがジュウオウジャーの攻撃に晒されながらも、砲撃を放つ。

 迸る青い光弾の雨が、無数に降ってくる。

 それは生身の人間が耐えられるような爆撃ではなく―――

 

「―――まあ、有効的な攻撃だと言えるだろう。

 私がいなかったらの話だけれど」

 

 杖がこん、と軽く地面を叩く。

 途端に、その杖の先端に飾られた星から溢れ出す無数の光線。

 その杖の持ち主であるダ・ヴィンチちゃんが、一つ笑みを浮かべた。

 

 散らばった光線がバングレイの砲撃を相殺しにかかる。

 空中で激突して爆発していく砲弾と光線。

 

 武蔵を前に置き。

 バックアップをダ・ヴィンチちゃん。

 

 この布陣であればバングレイでさえ容易には踏み込めない。

 前回の戦いで、バングレイの戦闘データは十分集まっているのだ。

 

 武蔵の刃は彼に届き得る。砲撃はダ・ヴィンチちゃんが防げる。

 更にジュウオウジャーと共に戦うのであれば。

 ここから勝利に持ち込むのは、けして不可能な話ではない。

 

 剣を抜いた武蔵が踏み込む。

 その刃に注意を払いながらでは、ジュウオウジャーの相手も一気に難易度が上がる。

 バングレイにとって、ここが死地となりえるだけの状況には持ち込んだ。

 

 ガンマイザーの相手は、マシュの防御で時間を稼ぐ。

 その状態でまずはバングレイを撃破あるいは撤退まで持ち込む。

 とにかく今の敵の数では、何をするにも余裕がない。

 

 だからこそ彼女たちは急いて―――

 

 その心情を。それを解消するための彼女たちの行動を。

 ―――そうなるだろうと、バングレイはよく分かっていた。

 

「―――盾女が前に出る。

 その時よぉ、他の戦えねえ人間の中で……()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「――――っ、立香ちゃん下がって!」

 

 バングレイの呟きに反応したアムが叫ぶ。

 一人だけマシュとの距離を最低限保つために、他の人間より一歩踏み込まざるを得ない彼女に。

 

「行かせる、かァッ!」

 

 イーグライザーが唸り、バングレイに巻き付かんと伸びる。

 それを容易に潜り抜けて、彼は蛇腹剣を左腕のフックに引っ掛けた。

 ジュウオウイーグルをそのまま振り回し、残りの連中に投げ飛ばす。

 

「ぐぁ……ッ!?」

 

「二度も三度も同じ攻撃食らうかよ!」

 

 走り出すバングレイが目指すのは、マシュに続いた立香。

 しかしすぐさまその間に武蔵が割り込んでみせる。

 

「通すわけないでしょ―――!」

 

「テメェは適当に撃ちゃ終わりだよ、バリ簡単だぜ! なあ!」

 

 バングレイの腹が光る。砲撃の予兆に武蔵が身構える。

 確かに彼女にあの砲撃は耐え切れない。

 だがそれを覆すために、ダ・ヴィンチちゃんが後ろにいるのだ。

 

 砲撃を放った瞬間に相殺するべく、既に杖の星には光が満ちている。

 

「させると思うのかい!」

 

「させねえよなぁ? 撃つのが俺ならな!」

 

 ダ・ヴィンチちゃんが砲撃を無効化すると確信し。

 武蔵は剣を振るうことに集中し、その刃に全霊を注ぐ―――寸前。

 

「!?」

 

 本能のまま、彼女は苦渋の顔で横に跳ばざるを得なかった。

 彼女が跳んだ次の瞬間、その場所に機関銃の斉射のような弾丸の雨が降り注ぐ。

 

 回るリールに反応して弾丸を放つのは、銃へと変形したザガンロッド。

 操を踏み付けながら、ザワールドはその銃身を武蔵へと向けていた。

 

「やめ、ろぉ……ッ!」

 

 ジュウオウザワールドがザワールドの足を掴み、引き倒す。

 だが既に武蔵でバングレイの足は止められない。

 

 足を止めないままに、バングレイがチャージしていた砲撃を放つ。

 立香に向けて放たれる光弾の嵐。

 

「そらよ―――ッ!」

 

「―――――ッ!」

 

 ダ・ヴィンチちゃんが解き放つ光線。

 砲撃は確かに相殺される、だが立香に向け走っている彼の足を止める術はなく。

 

 アカリが取り出した不知火改から放たれる光弾。

 それもまたバングレイが疾走を緩める理由にならず。

 

「っ!」

 

〈ブリザードホーク! 凍っタカ! タカ!〉

〈コダマビックバン!〉

 

 立香が懐からウォッチをばら撒く。

 冷気を纏ったタカの飛翔、スイカ状のエネルギーボールとなるコダマスイカ。

 だが、それらを前に当然のようにバングレイは怯まない。

 バリブレイドが軽く一閃し、ライドガジェットは薙ぎ払われる。

 

「―――、マスターッ!」

 

 マシュが足を止める。全力疾走を止める急ブレーキ。

 彼女の体が、一気に速度を失う。

 そのブレーキは、タケルたちの方への援軍として致命的なミスだ。

 一秒すら遅れてはいけない状況で、やっていいことではなかった。

 

 だがマシュは足を止め、その事実にバングレイが喉を鳴らした。

 もちろん彼女が今更足を止めても、こちらのカバーにだって間に合わない。

 バングレイの腕が立香を掴む。

 

 回避しようとする動きを見せようが、もとより地力が桁違い。

 何の抵抗もないのと同じだ。

 

「くぁ……っ!?」

 

 左腕を捕まえた彼女の首に回し、いつでも首を落とせる状態に持ち込む。

 そうしてみれば、他の連中の足は全て止まった。

 当然。ガンマイザーたちの戦場に、それは何の関係もなかったが。

 

 マシュがカバーに入れない以上、マコトとアランの盾は一つだけ。

 

 ガンガンセイバーが砕け散る。

 サングラスラッシャーが折れ崩れる。

 14のガンマイザー全てを前にして、ゴーストがぐらついた。

 

「ま、だだ……俺は、俺を……!」

 

 再度行使されるガンマイザーの攻撃。

 無数の衝撃を浴び、タケルもまた膝を落とした。

 ムサシのパーカーが消え、彼の姿もまた変身解除される。

 

 ―――そこでガンマイザーたちが周囲を窺うように頭を動かす。

 何かを待っているかのように。

 

「タケル!」

 

「タケル殿!?」

 

 その光景を横目に、バングレイがマシュへと拘束した立香の顔を向ける。

 

「あーあー、どうすんだよあっち。

 あいつが足止めなきゃ、あっちは助かったかもしれねえのになぁ?

 こっちはあいつが足止めようが止めまいがもう助からねえのにさ!」

 

 バングレイが立香の首にかけた腕に、少し力を籠める。

 ミシリ、と。彼らに比べれば脆弱な人間の体が、大きく軋んだ。

 締め上げられる首に、彼女が呻く。

 

「か、はッ……!」

 

「先輩!?」

 

「おっと、動くんじゃねえぞ?

 あっちの死にかけの連中を助けに行くのも当然ナシだ。

 ま、こいつを犠牲にして戦うならそれはそれで止めねえけど?」

 

 バングレイの腕に更に少し、力が籠る。

 震える立香の体。

 その生命力を維持するカルデアの礼装が全力で稼働する。

 が、この状況では焼け石に水でしかない。

 

「―――バングレイ……ッ!!」

 

「いい声になってきたぜ、風切大和。後は目の前で死んでいく仲間に、テメェがどれだけ絶望するかがバリ見物だぜ!

 どうする? こいつを見捨てて戦うか、誰も見捨てられねえと尻込みして全員死ぬか! 好きな方を選ばせてやるよ!」

 

 ―――そちらの様子に一切興味を示さず。

 ガンマイザーが再度動き始めた。

 アナザーゴーストが出現しないなら、この作戦自体に意味が薄い。

 ダントンの事もある。早々に片付けて、祈りの間に帰還するべきだ。

 

『―――最優先目標の実行を困難と判断。優先目標のみ達成し、帰還する』

 

 グラビティファイアーが腕を掲げて、重力場を形成する。

 それが取り込もうとするのは、周囲に転がっている眼魂だ。

 

 ガンマイザーの総意としては、本来なら破壊したいところである。

 が、管理者であるアデルの命だ。英雄の眼魂は全て回収する。

 

 三人の懐から転がり落ちた眼魂。

 その全てがグラビティが作り出した重力空間に取り込まれていく。

 闘魂ブーストも、ディープスペクターも、ネクロムも。

 選別する手間を省くため、ついでのように取り込まれていった。

 

『優先目標の達成を確認』

 

 残るガンマイザーへの指令は一つ。

 アデルから下された、アランとマコトの排除だけだ。

 眼魂は回収し、巻き込んで破壊するようなことはもうない。

 全てのガンマイザーが倒れ伏す二人を向き、その力を解放する。

 

 放たれる14の衝撃波。

 その全ては彼ら二人を滅ぼすためのものであり―――

 しかしその前に、満身創痍ながらも彼は飛び込んできた。

 

「俺は……俺を……信、じる……ッ!」

 

〈カイガン! オレ!〉

 

 タケルが再び体をトランジェントに換装する。

 黒いパーカーを身に纏い、顔面をぼんやりとオレンジに灯らせて。

 彼はその体を攻撃の前に身を投じ―――

 

 千切れ飛ぶパーカー。

 砕け散るトランジェント。

 まるで中に何も入っていないかのように、ゴーストが崩れていく。

 

 ―――文字通り。

 全身全霊で破壊の嵐を塞き止めたゴーストが消える。

 そこに人がいた、などと感じさせないくらい何もなく。

 ただそこに、砕けたオレゴースト眼魂の残骸だけを残して。

 

「―――タケ、ル……? タケル――――ッ!?!?」

 

 消え失せたタケルを前にして、アカリが叫ぶ。

 当然返ってくる言葉はなく―――

 

 その場に、愉快そうに笑うバングレイの声だけが響いた。

 

 

 

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