Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
1年くらい経ったらしいな
「うぉー! すっげー! ガンマイザーがどんどんぶっ壊されてるー!」
ひょいひょいと周囲を飛び回るユルセン。
それを手にした杖で殴り飛ばしつつ、仙人は戦場を見下ろした。
「儂の想像を遙かに超える奇跡……! タケルの奴め、やりおったわ!」
ガンマイザーの防壁を擦り抜け、グレートアイに接触するための英雄眼魂。
だがガンマイザーはそれにさえ対応して進化した。
もはやここまでか、と正直なところ諦めていたのだ。
だがまさか、このような奇跡を起こしてガンマイザーを破壊してみせるとは。
「ってーな、なにすんだよ!」
「龍よ……お前の信じた息子は、奇跡を起こしたぞ!」
「無視すんなよ!」
殴り飛ばされたユルセンが戻ってくる。
それに対してしっしっと手を振りながら彼は訳知り顔で戦場を見据えた。
「行けタケル! ガンマイザーを倒し、世界を救うために!」
「こいつぜーんぶ人任せ」
現金な態度に呆れ、ユルセンは首を横に何度か振った。
「んだと……?」
バングレイに降りかかる光の雨。
ダ・ヴィンチちゃんの放つ魔弾を浴びながら、彼は鬱陶しそうに身を捩る。
目の前で繰り広げられた復活劇。
何がどうしてそうなったかは知らないが、復活された事には変わりない。
しかも明らかにその戦闘力は常軌を逸している。
「奇跡の復活ってか? バリ面白くねえ。そろそろ退き時かねえ!」
あちらの戦場を絶望的にしていたガンマイザーは崩れた。
こうなっては最早、残って風切大和を責め倒すどころではない。
癪ではあるが、撤退を考えて動くべきだろう。
地を這うように疾走し、奔る白刃。
それに対して退いた彼に、拳型に圧縮された熱量の塊が飛来する。
胴体に激突したゴリラの拳弾。
その熱が一気に炸裂し、バングレイは大きく吹き飛ばされた。
「逃がすと思うか―――!」
「―――調子に乗るなよ、遊ばれてるから生き伸びてる奴らがよ!!」
弾き飛ばされ、着地して。
その瞬間にバングレイが加速する。
巨体に見合わぬ速度で、ジュウオウゴリラへと迫る青い体躯。
間に滑り込んだジュウオウエレファントが剣を翳す。
激突するジュウオウバスターとバリブレイド。
一気に押し込まれそうな体。それを象の脚で地面に強く踏み止まらせるタスク。
「ぐ……ッ!」
「は―――ッ!」
鍔迫り合いの姿勢から、エレファントの体勢を崩しにかかる。
ある程度崩せれば、そのまま右手で頭を掴んで―――
そう思考していたバングレイに横合いからエネルギー球が押し寄せた。
飛来した球体に対し、バングレイが口笛を鳴らすように囃し立てる
「ヒュウ、味方ごとかよ! その気になってきたか?」
「お生憎様、君専用さ。今の私の“
右腕の籠手を突き出した姿勢で固まるダ・ヴィンチちゃん。
彼女がバングレイに言い返すと同時、エネルギー球が炸裂した。
周囲に拡がる光の爆発。
それには物理的な破壊力はなく、ただ拡がっていく光だけ。
光の中で一瞬訝しんだバングレイが、しかしそこで膝を揺らした。
「ッ―――!?」
右足、そして左腕。
その光に呑まれた次の瞬間、バングレイの義手義足から力が抜ける。
だらりと垂れる左腕。がくりと落ちる右の膝。
すぐに感覚は戻ってくる。力が抜けたのは一瞬ばかりのことだ。
だが今の状況でそれは、十分に致命的な隙足り得た。
「大和!」
バスターを手放し、弾き飛ばされながら。
タスクは象の足でバングレイの左足を刈り取りに行く。
力任せに薙ぎ払われる左足。
大きくよろめき、彼は体勢を維持する事が出来なくなる。
「オォオオオオ―――ッ!」
そこに飛び込むジュウオウゴリラ。
その拳がバングレイの顔面へと突き刺さり、全力で殴り抜いた。
吹き飛ばされる先で待ち受けるのは、一刀を両手に構えた宮本武蔵。
「その首、貰った――――ッ!」
「いつまでへこんでんだ! さっさと行くぞ!」
「だが……俺が奴に負けたせいでみんなが追い詰められた……
やはり俺には、ジュウオウジャーとしての資格が……」
言って蹲り、甲羅にこもる亀のように丸くなるジュウオウザワールド。
「ホントにもう! こいつはホントにもう!!」
「今はそれどころじゃないから!」
タイガーの前にクロコダイルの力が押し寄せる。
手にしたザガンロッドで繰り出される棒術がタイガーを打ち据えた。
白虎が地面に叩き付けられ、バウンドして転がっていく。
「アム!」
「何を言ったところで無駄だ! 俺はそいつの記憶!
俺が口にする言葉こそが、そいつの中に今なお息づく確かな恐怖さ!」
回転鋸の如き鮫の背ビレが襲来。
それをザガンロッドで横から叩いて逸らし、手にしたロッドを放る。
すぐさま腰から引き抜くのはザライト。
そのキューブを回し、彼は膝へと叩き付けた。
直後に、入れ替わるように襲撃しにかかってくるジュウオウライオン。
「んの野郎―――ッ!」
「本能覚醒!」
〈ウォーウォー! ウルフ!〉
マスクが変貌し、引き出す力が狼に変わる。
放り投げていたロッドを掴みガンモードへと変形。
次の瞬間に彼は加速し、飛び掛かってくるライオンの横に回り込んだ。
回るリール。吐き出される機関砲。
空中で撃墜されたレオが地面に転がり、のたうった。
「くそ……っ! やっぱこいつ、強ぇ……!」
「言ったはずだ。レベルが違う、ってな!」
〈ウォーウォー! ライノス!〉
再びザワールドがマスクを変え、黒犀の角を額に立てる。
大きく円を描きつつ戻ってくるセラの突撃。
それに対して腰を落としたザワールドが、一気に踏み切り加速した。
正面からぶつかりあうシャークとライノス。
拮抗することすらなく、一瞬で勝負が決する。
当たり負けたセラの体が、宙へと大きく投げ出された。
「くぁ……ッ!?」
「セラちゃん……!」
地面に落ちて転がり、やがて止まるシャークの体。
それを見ながらふらふらと立ち上がり、アムが操を見た。
「操くん!」
「俺は……少しでも変われたと思っていた。仲間のために戦えると……
でも違った。俺はただ、本当の自分を忘れてただけなんだ……」
ザワールドの言葉。
ジニスと戦うという想定が頭を過っただけで、全身が凍った。
自分が相手だからこそ、全力で戦わなければ勝てないと分かっているのに。
その勝敗が戦況を左右すると理解していたのに。
「あいつの言う通りだ……いずれジニスと戦うと、それを意識しただけで体が一気に重くなった……! その結果足を引っ張ってタケルが……! あの時と同じだ。俺が何も出来ずに、犀と鰐と狼が犠牲になったあの時と……! 俺は、怖がって何も出来ずに……!」
「タケルくんは無事だよ! だから今度こそ……!」
「違う!! タケルが無事だったのは、タケルが凄かっただけだ!
俺が足を引っ張ったことには変わりないんだ……!」
アムの言葉を遮り叫び、握り締めた拳で地面を叩く。
殴り砕かれ、飛び散る土塊。
それを見ながら起き上がりつつあるレオもまた、地面を殴った。
すぐさまジュウオウバスターを拾い上げ、ザワールドに向け走り出す。
ザガンロッドによる迎撃はない。
ザワールドはただ獅子の突撃を見過ごして。
大上段から振り抜かれる剣を上半身を軽く反らして躱し、振り上げた足で蹴り返した。
蹴り飛ばされたレオが押し返され、その膝を地面に落とす。
「―――っ、操! 怖ぇから何だってんだ!
言っとくがなぁ……ッ! 俺だってテメェが怖かった!」
レオに並び、バスターを構えたセラ。
彼女は驚いたように、操を怒鳴り付けた彼を見た。
俯いていた操もまた顔を上げ、震えながらレオを見やる。
「俺が……?」
「ああ、そうだ。こうして今、目の前にいやがるザワールド!
つまり俺たちの前に姿を現した時のお前!
正直に言うぞ! 俺は……とんでもなく強ぇお前に、滅茶苦茶ビビってた!」
ザワールドの手元でザガンロッドが撓る。
釣り竿状の形態から放たれる糸が、レオの腕へと強く絡み付いた。
そのまま彼を引き上げ、セラも纏めて巻き込むように振り抜く。
レオを受け止め、そのまま耐えようとするセラ。
だが二体一でありながら、ザワールドの力はライオンとシャークを凌駕した。
押し切られ、思い切り吹き飛ばされる二人。
追撃をかけようとしたザワールド。
その全身を撃ち叩くジュウオウタイガーからの銃撃。
受けたところで大したダメージもない、というように。
彼は軽く肩を竦め、竿を軽く振り抜いてみせる。
「くっ……!?」
奔る釣り糸がアムの手の中から、ジュウオウバスターを奪い去った。
その勢いで彼方へと投げ捨てられる武装。
そんな中で操に顔を向けて、声を上げるレオ。
「お前を助けたい、って言われた時! マジでありえねぇと思った!
確かにお前も被害者だって分かってた! けど、相手が悪すぎんだろって!
全力で、命懸けて戦って、それでも勝てるかどうかわからねぇ相手だ!
そんな余裕なんかあるわけねえ、ぜってー無理だって思ってた!」
「レオ、あんた……」
バスターの刀身を杖替わりに、体を持ち上げる。
そうして立ち上がった彼が、未だに倒れている操に目を向けた。
「―――けど、俺もそっち選んだ。仲間が命を懸けてでも、って選んだ答えだ。一緒に命懸けなきゃならねえって。そう思って、ビビりながらお前に立ち向かった!
別にいいだろ、ビビりながらでも! 震えながらでも! ビビりすぎてお前の足が止まったら、ケツ蹴り飛ばして前に進ませてやる! 俺たちは、そのために一緒にいるんだ! それが群れって、仲間ってもんだろ!!」
レオの言葉を聞き、ザワールドが鼻で笑う。
「そんな言葉で動けるようになる? 俺が? 有り得ないな!」
「言っただろ、言葉だけじゃ足りねえなら……蹴っ飛ばしてでも動かしてやるってよ!」
疾走を開始するジュウオウライオン。
そんな相手の様子を見て、ザワールドがザガンロッドを撓らせる。
差し向けられる釣り糸。その前に滑り込むのは、ジュウオウシャーク。
「させるかっての!」
「ふん……!」
ザワールドの手元がスナップし糸が跳ねる。
縦横無尽の釣り糸が、彼女が構えたジュウオウバスターを絡め取った。
直後、シャークの後ろで跳び上がるタイガー。
「野性解放―――!」
白虎の腕を解放し、放たれる極寒の爪。
それが剣ごと絡んだ糸を凍らせ、柔軟さを失わせる。
手首の動きに反応せず、糸はそこから動かない。
そんな有様になった主武装を見たザワールドが、小さく鼻を鳴らす。
「どれだけ時間を稼いだところで無駄だ。門藤操はジニス様には逆らえない。
そうなった時の事を考えるだけで動けなくなる、情けない人間なんだよ!」
「―――こんなこと……言わせたままで、いいわけねーだろ!!」
そうして、辿り着いたレオが足を振り抜いた。
膝と手を落とし、地面に丸まっていたジュウオウザワールドを後ろから蹴りつける。
ごろりと転がった操が、地面に引っ繰り返ってレオを見上げた。
「レオ……」
「俺はジニスがどんだけ怖ぇかなんて知らねえ。
けど、お前と……ザワールドと戦ってると思うと、まだ少しブルっちまうとこがある。
ちょっとだけな。ちょっとだけだが……だから俺とお前は同じだ。
俺はビビってるお前を助ける。お前はビビってる俺を助ける。
そうすりゃ……多分こう……今まで通りに、どうにかなる。きっとな!」
寝転がった操に対して手を伸ばすレオ。
少しだけ迷い、おずおずと腕をゆっくりと上げる操。
すぐにその手を掴み取り、レオは強引に引き起こした。
「俺は……!」
「野郎に教えてやんぞ!
ビビりながら戦ってる情けねえ俺たちでも、こうして一緒に戦えば―――
お前なんかに負けるわけねえってことをよ!!」
ザワールドの背中を叩き、更にもう一度尻を蹴飛ばし。
そうしてから両の拳を打ち合わせて、ジュウオウライオンは前に出た。
彼の背中を見ながら、ジュウオウザワールドが拳を握る。
「そうだ……俺だってビビりだ! 常にビビりながら生きてきた!
常日頃からやっちゃいけないことをしてはいないかと、細心の注意を払ってる!
ビビりで、小心者で、友達になろうと誰にも言い出せず……それが俺だ!!」
立ち上がる、黒と金と銀のトリコロール。
その姿に舌打ちしたザワールドが、釣り糸を強引に引き戻す。
氷結した糸を殴り砕き、絡んだジュウオウバスターを放り捨てる。
「そんなお前に、一体何が出来る」
「何も出来ないかもしれない! そうだ、何も出来ないかもしれない!
何も出来ないかもしれない、何も変わらないかもしれない!
そうやってビビって何もしようとせず、ただ一人で蹲っていたのが俺だ!!
けど俺は、そんな俺から変わるって決めたんだ!」
ジュウオウザワールドの全身に力が漲る。
ザワールドに負けぬ圧倒的な力の奔流。
それを発しながら、彼が腰を落として身構えた。
「ジニスは怖い! ジニスだけじゃない、他にも怖いものは数え切れないくらいある!
それでも俺は、ビビりながら前に進む! ―――仲間と一緒に!」
「お前はそうやって、自分が変われると思っているのか? お前如きが!」
「変われないかもしれない……それでも! 恐怖に怯えることにさえ恐怖して、ジニスに全てを委ねて変わろうとすることすら諦めるよりは―――ずっとマシだ!!」
「―――なら。もう一度、目にするがいいさ! お前の失敗をな!!」
ザワールドの腕を上がる。
撥ねる竿から放たれた糸が、こちらではない戦場へと放たれていく。
その軌道を視線で追えば、糸の向かう先はバングレイに他ならない。
吹き飛ばされたバングレイを、武蔵が放つ白刃が襲う。
首を落とさんと振り抜かれる刃。
バングレイが吹き飛んでいく速度と、武蔵が剣を振るう速度は完全に合致する。
―――だからこそ。
糸がバングレイの足に絡みつき、彼が吹き飛ぶ方向を変えさせた瞬間。
その刃はけしてバングレイに届くことはなくなる。
「オーライ!」
引き戻されつつ、バングレイがその腹に光を溢れさせる。
強引に軌道を切り返されながらの、無作為の乱射。
降り注ぐ光のスコールを前にし、武蔵が歯を食い縛った。
首を落とす心算での踏み込み。
第三者の介入で強引に外された以上、修正は間に合わない。
一息に爆撃範囲からの離脱、など出来るはずもない。
無論、ダ・ヴィンチちゃんは宝具直後で弾幕を張る余裕はない。
そして躱し切るには距離が近すぎる。
それでも躱すために後方へと大きく体を逸らす。
「まずった、かもね……!」
迫りくる光。狙いも付けずに放たれる破壊の雨。
その着弾を前に決死の覚悟で彼女は剣を握り締め―――
瞬間、彼女の前方に白銀の光が集結する。
光が凝り固まり、出現するのは白銀の鎧。
突き出した掌へと無数の弾丸が直撃し、爆風で純白の衣の裾を揺らす。
衝撃で舞い散る白い羽。
その直中に佇む進化したゴーストがゆるりと裾を翻し、武蔵に顔を向けた。
小さく首を縦に振って、彼は再び正面へと向き直る。
「わお」
その姿はすぐさま光と変わって、ガンマイザーとの戦場に舞い戻る。
苦笑しつつ、握り直す双剣。
体勢を立て直したダ・ヴィンチちゃんからの援護射撃が再開。
後から迫りくる砲撃を、何とか撃ち落とし始めた。
「んだと……ッ!」
釣り糸に引かれながら、バングレイが息を呑む。
―――そうして空中にある彼に対して、ジュウオウイーグルが飛来した。
「バングレイ――――ッ!!」
発砲を続ける彼の胴体に、強引に叩き付けられるイーグライザー。
至近距離で砲弾が刀身へと着弾し、爆発。
その場で発生した爆炎の柱が、バングレイ自身も呑み込み膨れ上がる。
同時に伸長したイーグライザーがザガンロッドの糸に絡む。
刀身がギリギリと軋みながら、糸を出来るところまで引き寄せる。
そこに滑り込むように振るわれる、武蔵の剣。
糸が断たれ、引き寄せる相手を失ったバングレイが地面に落ちた。
「―――なに……っ!?」
「いつまでもそうそうやりたい放題させるかっての!
俺たちを……舐めるなよ!!」
糸が切れ、テンションが失われる。
その反動でザワールドが大きく体勢を崩し、蹈鞴を踏んだ。
瞬間、バランスを崩したザワールドの足場が崩壊する。
大地が割れ、地割れの中から溢れ出す緑色のジューマンパワー。
それによりザワールドが更に大きく体勢を崩す。
レオと操がその出所に視線を向け、タスクと頷き合う。
「野性解放―――ッ!」
シャークが波を引き連れ、刃となって押し寄せる。
その波を凍らせながら流氷の上を駆けるのは、冷気を伴う白虎。
氷混じりの津波に呑まれ、ザワールドの全身が氷結していく。
「チィ……ッ!」
「オォオオッ、ラァアア―――ッ!!」
流氷を砕きながら奔る、弾け飛ぶ黄金の雷光。
それが周囲諸共、ザワールドを吹き飛ばす。
襲い来る天災の渦の中、彼は全身に力を漲らせて姿を変える。
「野性大解放――――ッ!」
姿を現す三頭の力。犀、鰐、狼。
それらの力を同時に解き放ち、彼は氷河を砕いて雷光を引き裂いた。
降臨する真のザワールド。
その姿を前にして、操もまた全身に力を漲らせる。
「俺が一人で閉じこもっていた俺だけの世界は―――此処で、終わりだ!!
野性、大解放――――ッ!!」
全身に解放される三頭の獣。
左腕の狼爪を振るい斬撃を飛ばし、左腕の鰐尾を奮い打撃を飛ばし。
―――その足で全力で前に踏み出し、彼はザワールドへと突貫した。
「ワールドザクラァアア―――ッシュ!!」
「調子に、乗るな――――ッ!!」
全く同じ動作で攻撃を起こし、ザワールドが突進に繋ぐ。
互いに全力で踏み込んだ加速からの、正面突破以外に考えない激突。
ぶつかりあった瞬間、力が拮抗して両者共に足を止める。
力をかけられた地面が踏み砕かれ、大きく揺れた。
ぶつけ合った肩のショルダーアーマーが、互いに同じように軋む。
その威力を感じながら、ザワールドが舌打ちした。
「俺と貴様が……互角だと……!?」
その言葉に、ジュウオウザワールドはすぐに反応を示した。
「互角……? お前と互角なのは……!」
ジュウオウザワールドの背後に四人が飛び込んでくる。
彼の背中を押すように、ジュウオウシャークが、ライオンが、エレファントが、タイガーが。
彼らが一気に力を籠めて、操を力尽くで押し込み始めた。
拮抗が崩れ、勝利は操たちの方へと傾いていく。
「互角だったのは―――! 俺が! 独りだった時の間だけだろう―――ッ!!」
「行け、操ォ――――ッ!!」
犀の角が砕ける、鰐の尾が千切れる、狼の爪が折れる。
ザワールドの持つ全ての力を凌駕して、ジュウオウザワールドが突き進む。
―――完全に粉砕されたザワールドは断末魔もなく。
光の粒子となって、その場から消えていく。
ダメージが限界を超えたバングレイの作り出した幻影は、そうして消える。
それを見たバングレイが盛大に舌打ち。
イーグルと剣を交わし、その隙を狙って背後に首を取りに来る武蔵を躱す。
ダ・ヴィンチちゃんは弾幕を緩め、先程の義手を機能停止させる力を再装填している。
それを横目で見て理解して、動きを決めた。
イーグルと武蔵の剣が振るわれる。
それに対して最低限、命を獲られない程度の回避だけで対応。
深々と肉を抉っていく刀身。が、動けなくなるほどじゃない。
すぐに帰還して治療すればいいだけだ。
そう動いたのだ、と理解して。武蔵が強く顔を顰める。
斬り裂かれた肉と血液を撒き散らしながら、バングレイが一直線に駆け抜けた。
目指す先は、ザワールド撃破の瞬間に気を抜いた連中。
「っ、みんな!!」
大和が叫ぶが遅い。
高速で駆け抜けたバングレイの右手が、レオの頭部に伸ばされた。
「強い……!」
ムゲン魂が白衣を揺らし、ガンマイザーに立ちはだかる。
その圧倒的な戦闘力に、シブヤとナリタに肩を借りたマコトがそう口にした。
彼と対峙するガンマイザーたち。
特に直接正面にいるクライメットが、小さく後退りのような反応さえ示す。
機械的に行動していただけのガンマイザーが、まるで人間のように。
ゆっくりと一歩、ムゲン魂は前に踏み出して―――
何かに気付いたように、微かに頭を揺らした。
次の瞬間の彼の姿が光と消えて、その場から消失した。
「タ、タケル殿!?」
御成が驚いているほんの一瞬の間に、再び同じ場所にゴーストが出現する。
エドモンがちらりとバングレイに対応している方の戦場に視線を送った。
何を見る事も、何を聞く事もなく。
彼の感覚はこの戦場の全てを理解し、そちらに必要な助けを出しに行ったのだ。
最早その感覚は、人間の範疇にはない。概念存在のそれだ。
復讐者の概念と化している彼には、その力がよく伝わってくる。
ゴーストがそのまま、グラビティファイヤーに視線を向けた。
グラビティには全ての眼魂が回収されている。
それを取り返すために彼はナギナタモードのガンガンセイバーを構え―――
「―――――!」
タケルが動く前に、グラビティファイヤーが両断された。
破壊され、プレートに戻る二基のガンマイザー。
グラビティが形成していた重力場が一時消失し、全ての眼魂が地面に散らばる。
「ハァアア――――」
それが、アナザーゴーストの胸へと取り込まれていく。
彼の胸に納まるのは、15個の英雄眼魂。そして、闘魂ブーストゴースト眼魂。
残され、転がるディープスペクターとネクロムの眼魂は無視し―――
〈グレイトフルゥ…!〉
アナザーゴーストは新たな姿に変貌し、タケルの前に立ちはだかった。
「父さん……」
「何故、今ここで先代殿が……!」
アナザーゴースト・グレイトフル魂が両腕を掲げた。
瞬間、ファイヤーのプレートが銃弾に蜂の巣にされ砕け散る。
同じく、グラビティのプレートが重力場に押し潰され砕け散る。
―――更に追加で二基。完全なる機能停止。
そして今ここには、それを成したガンマイザーへの絶対的脅威が二つ。
その事実に対し、ガンマイザーは即座に撤退を選択した。
撤退して何が変えられるかも思考せず、ただこの場から離脱することだけを優先した。
残された7基のガンマイザーがプレートに変わり、そのまま眼魔世界に帰還する。
それを撃墜しようとゴーストは剣を振り上げ―――
しかし突撃してきたアナザーゴーストと切り結んだ。
至近距離で交錯し、意識が繋がる。
『父さん、これで――――最後かな?』
『ああ。これで、最後だ』
互いに剣を振り抜き、二人の距離が開く。
その瞬間、グレイトフルが背後に浮かべた光輪を回す。
回転する光輪が差し向けられる。
それを片腕を突き出して受け止め、振り抜いた腕で粉砕。
直後に放たれるのは、グレイトフルが背後に無数に浮かべた銃口の一斉射撃。
ナギナタを回し、その弾幕を力任せに突破するムゲン。
アナザーゴーストが背後に浮かぶ銃を二挺、両手で掴み取る。
すぐさま正面に構え、迫るゴーストに向け発砲。
剣の迎撃を擦り抜けて着弾する銃弾。
僅かに怯んだタケルに対し、龍が銃を一挺捨てた。
手の中に残した一挺を両手で握り、その銃口にエネルギーを集中させる。
引き金を絞り、すぐさま銃撃は果たされた。
殺到する高密度のエネルギー光弾。
〈イノチダイカイガン!! イサマシュート!!〉
―――それを、サングラスラッシャーからの銃撃で相殺する。
激突した互いの銃撃が炸裂し、撒き散らされた熱波が地上を舐めていく。
その熱の中で、もう一面の戦場の事を察知した。
すぐさま彼はその場から消え、そちらの戦場へとワープする。
出現すると同時、目の前にいるバングレイ。
彼の右手が、ムゲン魂の頭に接触する。
一瞬驚いた彼が、しかし儲けものだと笑う気配。
―――そうして。
記憶に接触したバングレイは、自分の意識に流れていく記憶の光景を見る。
選び取るのは、ゴースト・ムゲン魂の光景。
つい今さっきから始まった光景を選び、その記憶へ触れるように手を伸ばし―――
伸ばしたその手を横合いから掴む、ムゲン魂のビジョンに襲われた。
『なに……ッ!?』
『俺に誰かの記憶が見えるようになったのは、きっとその心を正しく未来に繋ぐためだ。
お前みたいに……誰かを苦しめて笑って、楽しむためなんかじゃない!』
相手の記憶に接触する力は、バングレイだけのものではない。
タケルはずっとそうやって、英雄の眼魂を集めてきた。
その力は時間を経るごとに強くなっていて―――今、この瞬間こそが最高潮。
自身の記憶に割り込んだバングレイを、記憶の中で迎え撃つことすら可能とする。
バリブレイドをガンガンセイバーで叩き落とし、拳をそのまま胴体に叩き付けた。
くの字に折れ、吹き飛ばされるバングレイ。
記憶の中での接触が解除され、揃って現実へと引き戻される。
全身へと伝播している拳撃の威力に、バングレイの膝が揺れた。
もはややり返す余裕などない。
対応が一瞬でも遅れれば、死ぬのだと理解している。
ムゲンからの追撃にバリブレイドを盾として、母艦からのトラクタービームを即撃たせる。
「ガ……ッ、ギ! ヤバン、グレイトォ……ッ!!」
剣一閃、ガンガンセイバーにバリブレイドを粉砕されながら。
しかし彼は空中で待機させていた母艦に回収された。
即座の撤退を選んだ本能の選択に逆らわず、彼は一気に舵を切り―――
〈平成ライダーズ! アルティメットタイムブレーク!!〉
―――同じく空を行く、空飛ぶ車の上に乗ったジオウから極光が放たれる。
ヤバングレイトに向かって迸る光の剣撃。
バングレイは即座に舵を蹴り飛ばし、一気にヤバングレイトの頭を横に振らせた。
船の胴体を大きく削り取っていく光。
操舵室が一瞬でアラートで赤に染まり、問題が山のように噴出してくる。
だがそれを無視して、ひたすら逃げるためだけに彼は最善を尽くした。
宇宙艦であるヤバングレイトがスピードを出せば、あんな車に追いつかれるはずもない。
すぐに全力で加速して―――バングレイは、ダメージを負った体を床に投げ出した。
音楽が響く。雷鳴が襲う。
光と変わったムゲンが音も雷も超える速度で、それらを掻い潜る。
光さえ、時間さえも歪めるピラミッドが聳え立つ。
それを正面から両断する、ガンガンセイバーの斬撃。
その斬撃ごと圧壊させんと振るわれる鉄槌。
手の中から剣を放り投げ、握り締めた拳で鉄槌に対し鉄拳を見舞う。
砕け散ったのは、鉄槌の方だった。
舞い踊るペンが空想を描く。描かれ、現出する童話の森。
鬱蒼を茂る森の中に幽鬼が溶け込む。
姿を消したアナザーゴーストは狩人となり、四方から矢を雨のように降らせた。
だがそんな矢の雨にさえ足を止めずムゲンは疾駆する。
矢を掻い潜り、森に侵入し、そこで、
―――突然現れた四本の鎖に、四肢を拘束された。
ムゲンの動きが止まった瞬間、剣を逆手に構えたアナザーゴーストが襲来する。
身軽に森を飛び回り。一切動きを止めず。
彼は幾度もムゲンに対して斬撃を叩き込み続けた。
「オォオオオ――――ッ!!」
鎖を強引に引き千切る。
同時に迫りくるアナザーゴーストに剣を振るい―――
まるで、未来が見えているかのように完璧に掻い潜られる。
『どうしたのですか、タケル? あなたの力はこの程度ですか?』
『まだまだじゃ! そうじゃろう、タケル!』
斬り合う度に聞こえてくる声。
今までずっと一緒に戦ってきた英雄たち。その声。
それに意識を取られた瞬間、首を刃が掠めていく。
光と変わる余裕もなく、大きく体を捻り、そこから放たれる横薙ぎを躱す。
『隙だらけだ。我らが刃を前に随分と余裕だな―――!』
アナザーゴーストが二刀を構え、そのまま疾走を開始した。
サングラスラッシャーと合わせ己も二刀。
構え直して、その疾走を迎え撃つ。
剣を交わす。二合。三合。四、五、六合。
そこまで刃を打ち合わせ、徐々に押され始める。
交わした剣撃が二十に届く前に、ムゲンの方が後ろに押し飛ばされた。
追うことなく足を止め、剣を構え直すアナザーゴースト。
「はぁ、はぁ……ははっ」
『まだ笑う余裕があるのですか』
つい笑った声に、呆れたような声がかかる。
後ろで待っている皆からも、その態度に訝しげな反応をされた。
タケルはそのままサングラスラッシャーを放り、ガンガンセイバーを掲げる。
ナギナタモードへ変形する刃を大上段に構え、彼は笑う。
「余裕なんかないけど、俺……嬉しいんだ。
俺が今まで一緒に戦ってきたのは、本当に凄い英雄たちだったんだって」
剣を構えたままに、彼はドライバーのトリガーに手をかけた。
「命を燃やして、この世界を生き抜いた英雄たち―――
その魂は永遠に不滅で、遺してくれたものは今も世界の色んなところに根付いている」
文化、学問、芸術、技術―――
そうやって大層に語るほどでもない、ただ何でもないことでも。
例えば―――親から子へ、ただ一言言って聞かせる教えでも。
ずっと繋がってる。多くのものが残って、続いてる。
誰かから影響を受けた誰かが、また誰かへ。
特別取り立てて声にするほどでもないことだって、ずっと繋がっていくものだ。
自分たちもそんな中で生きている。その輪の中に息づいてる。
「俺たちは今までの人達が遺してくれた想いを受け取って、未来に繋いでいく。
過去を生きた人たちがいて、
人間の可能性は――――無限大だ!!」
〈イノチダイカイガン!! ヨロコビストリーム!!〉
劇的なエネルギーを迸らせる刀身。
それを振り上げたまま、ゴーストはアナザーゴーストに向き直った。
対するアナザーゴーストもまた、二刀を構え直す。
「俺は―――そんな風に多くの人の想いを未来に繋げる人間として、みんなと一緒に生きたい!
生きる事の喜びを、みんなと一緒に分かち合いたい!!」
両者が踏み込んだ。
踏み込む鋭さは、アナザーゴーストの方が余程上。
放たれるのは、ムサシ魂の力を十全以上に発揮した絶断の刃。
―――それを正面から、喜びの感情を載せた刃が粉砕していく。
人は繋がっているが故に無限の可能性を持つ。
その人の無限の可能性が今此処にある以上、人の繋がりはけして断てない。
二人のゴーストが交錯する。
擦れ違った二人の静止は、数秒もなく。
砕け散ったアナザーゴーストの二振りの刃が、地面に破片を撒き散らし―――
英雄眼魂たちが同じように、地面にばら撒かれて転がる。
それに混じり、アナザーゴーストウォッチの破片も散らばった。
幽鬼の姿が、人の姿へと戻っていく。
思わずと言った風に、御成が口元を手で覆った。
最後に見たのは十年以上前になる、天空寺龍の姿に相違ない。
彼はゆっくりと震えながら空を見上げ―――震えたままの手で、印を切った。
龍の前に生成されるワームホール。
霊力を用い、十年前に繋いだ時空の歪みだ。
彼にはこれから、生涯最期の役目がある。
それを理解して、変身を解いたタケルも空を見上げた。
タケルと龍は戦闘を終え、背中を向け合ったままそこで立ち尽くす。
「俺……いっつも父さんに守ってもらってばっかりで……!
俺にとって、父さんは、ずっと……! 一番の、英雄で……!」
「―――私にとっても、そうだった。父というのは、ずっと……一番の英雄だった」
答えてくれた父に、タケルが言葉を詰まらせる。
「―――だが、それも今日までだ。今日から……私の一番の英雄は、父じゃなくなった」
ワームホールが目的の時間に繋がり、龍はゆっくりと歩き始めた。
2005年12月20日―――天空寺龍の命日。
その先にはきっと、幼いタケルとあの白い眼魔がいる光景が待っている。
このまま彼は踏み出し、その生涯を終えることになる。
―――その前に。一番の英雄が変わった事を、彼は誇らしそうに語った。
「今の私の一番の英雄は、私を超えた……息子だ。
父に憧れそれを目指し―――やがて息子に憧れられ、追い越される。
これ以上、私の人生に喜ばしいことはない。いつかお前にも、分かる日が来る。
だから……それまで生きろ、人として。私の、一番の英雄―――!」
「父さん……!」
振り向き、父の背を見るタケル。
だが彼は言うべきことは言ったと、既に走り出していた。
本来ならばあり得ない邂逅。遺すことはなかったはずの言葉。
それをこれだけ遺しておいて、これ以上甘やかす気はないと言うように。
―――その父の
タケルは涙を零さないように必死に空を見上げた。
・ダヴィンチ眼魔から致命傷を受けた天空寺龍。
・龍がタケルにムサシの刀の鍔を渡し、タケルは助けを呼びに走る。
・アデルと遭遇したタケルが殺されそうになる。
・それを知らされた龍がスウォルツの誘いに乗り、アナザーゴーストとなる。
・アナザーゴーストとしてスウォルツに2016年に送られた龍がタケルたちの前に現れる。
・グレイトフル魂になったタケルと交戦し、龍自身の意識が少し戻る。
・大悟との約束を果たすため、薄れた意識の中でマコトを助けたりする。
・タケルの成長を感じ、ムゲン魂の前に立ちはだかり敗北する。
・彼はアナザーゴーストになっている間に体力と霊力が回復し、瀕死ながらも命を永らえるだけの力を取り戻していた。
・その自身の霊力を使い2005年にタイムワープした龍が、タケルを守るためアデルの攻撃への盾になる。
・この過程をもって龍のダヴィンチとアデルによる二度の死が編纂され、ダヴィンチに殺されかけたが生き永らえ、その後アデルに殺されたという一つの歴史として確立。二つあったムサシの刀の鍔も消えた。
終わり!閉廷!以上、皆カイサーン!