Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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栄光!40ヒーローズスピリッツ!2016

 

 

 

 宝箱を両手で抱えながら、銀のジャケットを羽織った青年が山道を走る。

 借りて回るのに随分かかったが、何とか使命は果たした。

 後はスーパー戦隊の先輩として、後輩の戦隊に色々と教える。

 それで目的は達成され――――

 

 そんなことを考えていた彼の頭上を二つの赤い影が飛び越えていく。

 

「え?」

 

 思わず見上げれば、炎を思わせるマスクとマントの戦士。

 そして、六枚の翼を広げて空を行く赤い装甲の戦士。

 

 それはよく見知った姿で……

 彼はすぐさま抱えていた宝箱を開けて、中身を確認した。

 中身をかき回して探すのはマジレッドの―――

 

「……レンジャーキーがない。勝手に始めてるー!?

 っていうか、え、なんで? なんで戦ってるんですか?

 今回は全然そんな話じゃなかったはずですよね、マーベラスさーん!?」

 

 慟哭に近い声を上げる男。

 そんな彼の言葉に対し、戦闘する二人は一切意識を向けない。

 

 地上からの叫び声が届かぬ上空で、炎の翼が互いに加速した。

 

「マジ・マジ・マジカ! レッドファイヤーフェニックス!」

 

 燃え盛る魔法使い。

 マジレッドへと変わったゴーカイレッドが更に火力を増幅した。

 炎が形作った鳥が大きく羽搏き、ジオウへと殺到する。

 

〈オ・オ・オ・オーズ! ファイナルアタックタイムブレーク!!〉

 

「セイヤァアアア―――ッ!」

 

 オーズフォームへと変わったディケイドアーマーもまた炎に燃える。

 足を猛禽の鉤爪へと変形し、三対六枚の赤い翼が羽搏いた。

 

 空を舞う二体の火の鳥が正面から激突。

 その場に大規模な火柱を屹立する。

 

 跳ね返ってくる衝撃に弾き飛ばされ、吹き飛んでいく二人。

 互いに受けたそれぞれの攻撃の威力。

 それを浴びて、追加変身していた形態が揃って解除された。

 

「やるな! いつぞやを思い出すぜ」

 

「思い出すって、ディケイドのこと?」

 

 赤の魔法使いから再び海賊の姿に戻り、落下を始めるゴーカイレッド。

 同じく炎の鳥の翼を失ったジオウもまた、同じく落下していく。

 

「さぁな? ディケイドかオーズか、もしかしたらフォーゼやメテオかもな!」

 

「――――!」

 

 言い返し、彼はゴーカイバックルを押し込んだ。

 くるりと回り、バックル内部からレンジャーキーが現れる。

 新たに現れた赤いキーを引っ掴み、ゴーカイレッドはモバイレーツを構えた。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

〈アバレンジャー!〉

〈ファイナルフォームタイム! ダ・ダ・ダ・ダブル!〉

 

 それに続くようにディケイドウォッチにダブルウォッチを装填。

 

 赤い恐竜と化したゴーカイレッドが着地と同時に疾走。

 白と黒の牙獣と変わったジオウもそれに対抗する。

 

 ジオウが白い右腕を大きく振るう。

 その手首から伸びている牙のような刃。

 対し、赤い恐竜は腕のヒレを刃にしてみせた。

 

 互いが腕から生えたもので斬撃を繰りだし、衝突させる。

 二度、三度、四度、と。

 何度か刃を打ち合わせたところで、マーベラスが体勢を低くする。

 踏み出したのは、腰に組み付くような低いタックル。

 

 それを撃墜しようと膝を振り上げるジオウ。

 ―――迫りくる足を、しかしアバレッドは掴み取った。

 

「……っ!」

 

「そら、よ―――ッ!」

 

 まるで尾を振り回すように、掴んだジオウを思い切り振り上げる。

 そのままスイングしながら手放して、すっ飛んでいく彼を見送り―――

 

「本能、覚醒―――ッ!」

 

 飛んできたジオウの手元に、伸ばされたイーグライザーが飛び込んでくる。

 彼がそれを掴むと同時、全力で回転を始めるジュウオウゴリラ。

 掴まったジオウごと、イーグライザーをハンマー投げの如く振り回す。

 

「ソウゴ―――! 行っ、くぞォ――――!!」

 

 一際大きくゴリラの腕に力が籠る。

 更なる加速を得ながら、ジオウの姿が別物へと変わっていく。

 

〈ファイナルフォームタイム! フォ・フォ・フォ・フォーゼ!〉

 

 フォーゼフォームへと変わり、彼の体が磁力に覆われる。

 超常的なエネルギーに覆われた砲弾と化したジオウ。

 彼がそのままジュウオウゴリラに振り回されるまま、止め処なく加速していく。

 

「ゴリラパワー……! スイング、バァ――――イッ!!」

 

「―――ゴーカイチェンジ!」

 

 ジオウという砲丸を振り回すジュウオウゴリラ。

 それはもはや竜巻を起こし、触れただけで全てを粉砕する嵐だ。

 そんな壁を目の前にして、マーベラスが新たなレンジャーキーを解き放つ。

 

〈ボウケンジャー!〉

 

「ボウケンボー!」

 

 白と赤のスーツの戦士に変わったゴーカイレッド。

 彼は巨大なマジックハンドのような武装を手にし、腰を落とす。

 

 瞬間、マーベラスの目の前で大和が剣から手を放した。

 撃ち出される砲弾、ディケイドアーマーフォーゼフォーム。

 超磁力の塊に攻め込まれ、彼は即座にボウケンボーを突き出していた。

 

「超電磁宇宙―――! ロケットゴリラボンバ――――ッ!!」

 

 最高速で撃ち出されたジオウが、マジックハンドのアームに激突。

 衝撃を支え切れずに押し込まれ始めるマーベラス。

 舌打ちしつつ、何とかボウケンボーを抱えて踏み止まろうとする彼に―――

 

「オォオオオ―――ッ!!」

 

 ジオウの後ろから、更にショルダータックルで押し込みにかかるジュウオウゴリラ。

 追加で増した、圧倒的な過重。

 それを抑え込み切れず、そのままボウケンレッドの足が浮いた。

 

「く……っ!」

 

 吹き飛ばされていくマーベラス。

 その姿を見送りながら、ジュウオウゴリラが横に立つジオウを見た。

 

「その……いちいちゴリラって名前に付ける意味ある?」

 

「せっかくだし?」

 

 まあいいけど、と。

 

 そんなことより、何がどうして彼と戦闘することになっているのか。

 それを問い質すために、大和は吹き飛んだマーベラスの方へ歩き出す。

 

 ソウゴとマーベラスの戦闘を追い、リンクキューブからは大分離れてしまった。

 もしかしたらあちらでも残りのメンバーが戦闘を―――

 

 ちらりとそんな事を考えていた大和の前で、突如。

 炎と雷が暴れ出した。

 

「ッ!?」

 

 暗くなる空。

 その空から雷撃が降り注ぎ、地上からは炎が噴き上がる。

 

「天火星! 稲妻炎上破――――!!」

 

〈ダイレンジャー!〉

 

 吹き飛ばされた先で、龍を模したマスクに変わったゴーカイレッド。

 彼の動きに合わせて天地から噴き出す炎雷の渦。

 その熱に足を止めたイーグルの前で、リュウレンジャーの腕が円を描く。

 

 腰を落として突き出された赤い戦士の掌。

 そこから溢れ出した業火が、一気に雪崩れ込んできた。

 

〈ファイナルフォームタイム! ウィ・ウィ・ウィ・ウィザ-ド!〉

 

 大和の背後で同じように竜の怒りが巻き上がる。

 龍の気力が生み出す雷撃と炎波を塞き止めるのは、同じように暴れる竜の魔力。

 炎と雷を従えて、ウィザードフォームが飛び立った。

 

「本能覚醒! 野性、解放―――ッ!!」

 

 ジオウが相殺するゴーカイレッドの攻撃。

 それを潜り抜けて迫るため、ジュウオウイーグルもまた飛び立つ。

 互いに激突して引き裂かれる炎と雷が、雨のように周囲に飛散する。

 

 そんな嵐を突き抜けて迫りくる二人の姿を見て。

 マーベラスはマスクの下で、小さく唇を歪めた。

 

 

 

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

〈ギンガマン!〉

 

 ゴーカイブルー、ジョーのマスクがゴリラを思わせる青いものに変わる。

 右腕に握るのは直剣、星獣剣。

 その状態で左腕は腰の後ろに回し、彼はシャークに対峙した。

 

「この……!」

 

 ジュウオウバスターを手に踏み込むジュウオウシャーク。

 待ち受け、捌き切るギンガブルー。

 鋼を打ち合わせる甲高い音と火花を散らし、セラが小さく舌打ちする。

 

 刃を三度だけ交差させて。

 彼女は苦渋の声を上げながら、背後へと大きく跳び退った。

 

 追わずにそれを見送り、ジョーは右手の剣を構え直す。

 

 交わして理解する、突出した剣の腕。

 そもそもがジューマンである彼女は、戦いは武器より己が身一つの格闘こそ得手だ。

 明らかに剣での戦いを研鑽してきたろう目の前の相手に、剣での戦いは早々に捨てる。

 

「剣では不利、か……!」

 

「剣だけか?」

 

 そこで挑発するように、星獣剣の切っ先を揺らすジョー。

 言われた彼女は即座にジュウオウバスターを放り捨て、背中に鮫のヒレを出現させる。

 その状態で鼻を鳴らし、大きく踏み切った。

 

「言ってくれるじゃない、野性解放―――!」

 

 鮫の背ビレを刃と変え、己の身を高速回転させるジュウオウシャーク。

 彼女は回転鋸染みたものになり、一気に相手へと突撃する。

 

 それを前にしながら、ジョーは両の掌を重ねて突き出してみせた。

 

「流水の鼓動!」

 

 その名と共に、重ねた掌から瀑布が迸る。

 溢れ出す水の壁はしかし、当然ジュウオウシャークを止めるには足りない。

 むしろ水を得て更に加速した彼女がゴーカイブルーを目掛け―――

 

 彼が直前までいたはずの場所を擦り抜けた。

 

「!?」

 

 水流で一瞬視界が塞がった。

 ほんの少しのその瞬間に彼は姿を消し―――

 イルカの如き動きをもって、自分の放った水流に乗って舞い上がっていた。

 

〈ライブマン!〉

 

「ドルフィンアロー!」

 

 イルカの顔らしきマスクに変わり、シャークの頭上を取るブルー。

 その手の中に握られているのは白い弓。

 放たれる光の矢は、彼女の頭上から雨のように降り注いだ。

 

「くぁ……っ!?」

 

 背ビレだけでは弾き切れず撃墜されるシャーク。

 地面に落ちて泥の中に沈む彼女を見送り、ブルードルフィンも着地した。

 

「セラ!」

 

 その様子に視線を向けたレオが走り出そうとして、

 

「ゴーカイチェンジ! レッツ、モーフィン!」

 

 黄色と銀色のバスタースーツを纏い、左手のブレスを起動。

 ゴーグルを装着したルカが、ジュウオウライオンの前に跳び込んだ。

 兎の跳躍で割り込んだ彼女はレオに向き直り、腰に手を当てる。

 

「あんたの相手はあ・た・し!」

 

「っだぁああッ! 女相手に本気出せっか!」

 

 手足四本を使い、四足獣らしい疾走形態に入るレオ。

 兎を狩る事を拒否する獅子。

 見せる対応は、彼女を相手せずに抜き去ることを目的とした疾走。

 

「なにそれ、今時そういうの流行らないでしょ。

 っていうか、本気出せれば勝てるって思われてるわけ?」

 

 そんな態度に対してルカは失笑。

 大きく踏切り、彼の頭上へと跳び込んでみせた。

 

「うぉ……ッ!?」

 

 獅子を踏み付ける兎の足。

 背中から押し込まれ、地面へと圧し潰されるジュウオウライオン。

 そのまま背後から連続で蹴りつけたイエローバスターが、更に大きく跳んだ。

 

 空中に舞い上がったイエローが、バックルから新たなキーを取り出す。

 

「女子供とは戦わない主義ならどうぞご勝手に!

 あたしがあんたを見逃す理由にはならないけど! ゴーカイチェンジ!」

 

〈トッキュウジャー!〉

 

 黄色いスーツの上に線路が引かれ、新たな姿へ変貌する。

 彼女の手の中には赤と青のランプがついた鉄槌。

 それを思い切り横に振り上げながら、トッキュウ3号はライオン目掛け殺到した。

 

「シンゴウハンマー!」

 

「ぬが……ッ!?」

 

 横合いから腑抜けの獅子をぶん殴る鉄槌の一撃。

 その直撃を受け、ジュウオウライオンが吹き飛ばされて転がる。

 近くまで転がってきた彼の頭を泥の中に押し付けながら、セラが体を起こした。

 

「バカ! 何やってるのよ、あんた!」

 

「いや……っ、ほら、だってよぉ……!」

 

 泥の中でじたばたと足掻く二人。

 

 そんな彼らを見ながら、タスクはマスクの下で頬を引き攣らせる。

 

「何をやっているんだ、あの二人は……!」

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

〈オーレンジャー!〉

 

 目を逸らした瞬間、彼が相手をしていたゴーカイグリーンが変わる。

 頭部を覆うのは、形状が長方形になっているゴーグルのマスク。

 

「よっし、ドンと行くよ!」

 

 エレファントの前で両の拳を握り締め―――

 ボクシングのようなフォームから、彼はその場で軽くシャドーを決めた。

 足運びもまたボクシングのそれに違いなく、オーグリーンはタスクへ迫る。

 

「く……っ!」

 

 ジュウオウエレファントの腕がぐるりと。

 鼻を振り上げる象のように、迫りくるゴーカイグリーンを薙ぎ払う。

 だがそれをスウェーバックし躱し、軽快なフットワークが彼我の距離を詰め切った。

 

 躱し、躱し、躱し、躱し、ジャブを刺す。

 反撃をすぐさま躱し、躱し、躱し、踏み込み―――やっぱ止めて。

 躱し、躱し、ちょっと休んで、一気に踏み込みストレート。

 

 小刻みに削ってくる相手に、タスクが体を震わせる。

 

「う、鬱陶しい……! どこがドンと、だ……!」

 

 捉えきれない動きは脅威で。

 されど余りにも腰が引けていて、鬱陶しい止まりだ。

 

 確かに数度直撃を貰った。

 だがダメージは大きくない。これでは泥仕合だ。

 そんな悠長なことをしている気はないエレファントが、苛立ちながらそう呟く。

 

 タスクにそんなことを言われ、ハカセが足を止めた。

 

「そういうこと言う!? じゃあいいよ、デカいの一発ドーンと……!」

 

 ぐるぐると腕を大きく回しながら、グリーンがエレファントに向き直る。

 力を溜め込むようなその動作の直後。

 

 ―――踏み切るゴーカイグリーン。

 それに合わせるように、ジュウオウエレファントは足を振り上げた。

 

「野性解放――――ッ!」

 

「おわっ!?」

 

 振り下ろされるのは象の足。

 踏み付けられた地上が大きく震動し、相手のフットワークを崩壊させる。

 続けて、完全に体勢を崩したハカセの足元からエネルギーが噴き出した。

 

 彼はそのまま思い切り空へと打ち上げられる。

 

 空にあってハカセはゴーカイバックルを動かし、新たなレンジャーキーを呼び寄せた。

 それをモバイレーツへと突き刺し回せば、彼は次の姿へと変貌する。

 

「だったら、こっちもヘビー級! ゴーカイチェンジ!」

 

〈ジュウレンジャー!〉

 

 緑であったゴーカイグリーンが黒く変わった。

 マンモスを思わせる黒いマスクが、巨大な戦斧を手に落ちてくる。

 振り上げられる刃を前にタスクは小さく息を呑んだ。

 

「モスブレイカー!」

 

「っ、はぁああああ―――ッ!」

 

 振り下ろされる大戦斧と振り上げられる巨大な脚。

 マンモスレンジャーとジュウオウエレファント。

 二頭の巨象が力をぶつけ合い、その場で衝撃が弾けた。

 

 爆発でも巻き起こったかのような衝撃波。

 その威力に近くにいたアムが足を止め、踏み止まる。

 そんな彼女の対面で、ゴーカイピンクがキーを取り出す。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

〈ゴーグルファイブ!〉

 

 桃色の戦士が姿を変えた。

 白いマフラーを靡かせる、同じ色でも違う姿へと。

 彼女の手の中に現れるのは、新体操ででも使いそうな長いリボン。

 

「ピンクリボン! リボンシャワー!」

 

 掛け声と共に腕を振り抜き、奔る桃色のリボン。

 ひらりと風に乗って舞う桃色のヒモ。

 その外見には全く見合わず、それは相当な威力でもってアムを襲撃した。

 

「っ……!」

 

 ジュウオウバスターで対応し、しかし捉えきれず弾かれる。

 手の中から飛ばされる剣を追う暇もなく、彼女は両腕を振り上げた。

 

「野性解放―――ッ!」

 

 冷気を伴う白虎の爪。

 その威風に凍え、波打つ動作が硬くなる。

 しなやかさを失ったリボンを殴り飛ばし、ジュウオウタイガーが一気に跳んだ。

 踏み切った彼女は吹雪のようにゴーグルピンクに迫り―――

 

「ではこちらも爪には爪を。ゴーカイチェンジ!」

 

〈ガオレンジャー!〉

 

 ゴーカイピンクが白く変わる。

 被るマスクはジュウオウタイガーとよく似た形状―――白い虎のもの。

 ガオホワイトとジュウオウタイガーが同時に爪を振るい、激突させる。

 

 吹雪の中に火花が散り、至近距離で絡み合った。

 

 ―――水が飛沫き、雷が轟き、大地が揺れて、冷気が吹雪く。

 

 そんな戦場を後ろから見ながら、オルガマリーが顔を顰める。

 

 同時に、ジュウオウザワールドが木に寄りかかった。

 そのまま木肌をずるずると滑り、へたりこむ操。

 彼はいつものようにそのまま体育座りの姿勢に入ってしまう。

 

「……俺だけ色が、余ってる……」

 

「……さっきまで緑だった人が今は黒いけど」

 

 黒い犀のマスクを見ながら、ツクヨミが呟く。

 緑の戦士として登場した一人が、今は黒い戦士になって戦っている。

 黒と金と銀の戦士であるザワールドは、一応余ってはいない―――かもしれない。

 

 そもそも色が余っているから何なのか、という話なのだが。

 操だからこうなった、としか言えない。慣れである。

 

 そんなことは置いといて、ツクヨミはオルガマリーを見る。

 相手はアランを助けてくれた存在だ。

 何かあるとは思っていたが、こうまで突然攻撃されるとは思っていなかった。

 

 彼女は振り返り、リンクキューブを見る。

 先の会話ではジュウオウジャーとリンクキューブに用があるような様子だった。

 一体何を―――と。

 

「あれは……?」

 

 半壊した石造りのリンクキューブ。

 砕けて内部が覗いたその中心辺りに、何か光るものが見える。

 即座に意を決し、彼女は川の中へと踏み込み走った。

 

 後からついてくるツクヨミの目の前で、オルガマリーはリンクキューブに手を突っ込む。

 

「あ、ちょっと。先越されちゃうじゃん!」

 

 その様子を目にして、ルカが間抜けに声を上げる。

 彼女の隣で仕方なさそうにドルフィンアローを構えるジョー。

 だが直後。その二人の前で泥ごと渦潮が舞い上がった。

 

「オラァッ!!」

 

 水と共に迸る雷撃。

 雷を帯びた水流が周囲に飛散し、二人纏めて押し流す。

 

 痺れさせると同時に溺れさせる鉄砲水。

 それに呑まれる直前のルカの言葉を聞き、ツクヨミが眉を顰める。

 

「所長さん、それ……!」

 

「なんかあるわよ、これが……狙い!?」

 

 砕けた石を撒き散らしながら引っこ抜かれるリンクキューブの中心。

 

 ―――それを横目に見たタスクが絶句する。

 出てきたのは宝石のような輝きを持つキューブ状の物体。

 

「王者の資格……!? しかもデカい―――!」

 

 今の彼らが所持しているジュウオウジャーの力の源、ジュウオウチェンジャー。

 それが今の形状に変わる前の王者の資格。

 オルガマリーが引っこ抜いたものは、正しく王者の資格に相違なかった。

 

 ただしサイズ感がまったく違う。

 タスクらが知っている王者の資格は手の中に納まるサイズだ。

 だが今出てきたものは、脇に抱えなくてはならないような巨大さ。

 

 それを両手を抱えたオルガマリーが、どうしたものかと眉を上げる。

 

「これが狙いなら、とりあえずこれを持って撤退を―――」

 

 こちらにはまだマシュやゴーストたちという戦力がいる。

 もう気付いてこちらに向かっているかもしれないが。

 現状では互角程度でも、合流できれば一気にひっくり返せるだろう。

 

 とにかく相手を制圧して、話を聞きだすことが優先だ。

 そうして一度山から退こうとした彼女に―――

 

「悪ぃがそうはさせねぇよ!」

 

〈カーレンジャー!〉

 

 瞬間、赤い影がオルガマリーの前へと割り込む。

 車のフロントのようなマスクを被った戦士。

 彼は高速の疾走でその場に駆け付け、オルガマリーの持つ物体に手を伸ばし―――

 

〈ファイナルフォームタイム! ド・ド・ド・ドライブ!〉

 

 横合いから激突され、そのまま大きく吹き飛ばされた。

 ブレーキングで泥を跳ね飛ばしながら、ジオウが一気に減速する。

 地面に転がった相手を目で追い、彼は息を切らしながら問いかけた。

 

「今度はカーレンジャーっていうんだ……赤いからカーレッド?」

 

「はっ、さあな! バイブレード! フェンダーソード!」

 

 起き上がりつつ、レッドレーサーがその両手に直剣を呼び出す。

 機関を内蔵した剣に、持ち手が覆われた剣。

 その二刀を構えて激走する相手を前に、ジオウがギレードとヘイセイバーを抜く。

 

 互いに高速機動から繰り出す双剣の乱舞。

 足元から盛大なスリップ音を鳴らしながら、双方の剣が鍔迫り合いに持ち込まれる。

 

 ―――その隙に、空から差し向けられるイーグライザー。

 伸ばされた蛇腹剣はマーベラスに巻き付くような軌道を描く。

 拘束するための剣筋を見て、彼はすぐに剣を手放し大きくスウェーバックした。

 

 ジオウに弾かれ吹き飛んでいく双剣。

 その状況でゴーカイレッドはゴーカイバックルを押し、中からレンジャーキーを出す。

 

「ゴーカイチェンジ!」

 

 彼がモバイレーツにレンジャーキーを突き刺し回し。

 その次の瞬間、イーグライザーがレッドレーサーの姿を包み込んだ。

 刃金の鞭が絡み付き、マーベラスを締め付けて―――

 

「えっ……!?」

 

 大和がその手応えの無さに驚愕した。

 イーグライザーが締め付けていたいたのはゴーカイレッドではない。

 彼が残していったと思われる、一着の赤いスーツだけ。

 

〈ハリケンジャー!〉

 

「超忍法・空駆け!」

 

 消えたゴーカイレッドがハリケンレッドと変わり、ジュウオウイーグルの背後を取った。

 空を駆ける隼の如き赤い忍が、忍者刀シノビマルを背中から引き抜く。

 

 途端に、イーグルが飛ぶ空中の光景が障子戸に鎖される。

 色もなく、障子越しに映る影の中で忍が舞った。

 

「超忍法・影の舞!」

 

 影のみの世界の中で、マーベラスが大和をすれ違いざまに切り裂く。

 障子戸が引かれて消えて、イーグルが火花と共に失墜する。

 

「ぐ、あ……!」

 

 ゴーカイレッドは空中で体勢を立て直そうとする彼に追撃を仕掛け―――

 しかし途中で空を駆ける動きを止め、眼下のジオウを見下ろした。

 

〈フィニッシュタイム! ディケイド!〉

 

 剣を放り捨て、ベルトに手をかけて回転させるソウゴ。

 ライドウォッチ内部のエネルギーが解放され、最大の一撃を放つための輝きをを発する。

 

 ディケイドアーマーからハリケンレッドまでを繋ぐように、展開される無数のカード。

 エネルギーで形勢されたその巨大なカードは、必殺の一撃のための道標。

 回避されてもカードで軌道を操作すれば追えるだろう。

 

 足裏に力を集束し、ジオウが飛び込むために腰を低く落とす。

 

「面白れぇ! ゴーカイチェンジ!」

 

 その必殺の前兆を確かめて、マーベラスが大きく肩を回す。

 直後に空に足を置くことを止め、ゴーカイレッドはジオウに向け飛び込んだ。

 

 手にしたキーでモバイレーツを起動。

 マスクを炎上させて、“火”と文字が描かれた顔に変わる。

 

〈シンケンジャー!〉

 

「烈火大斬刀! 百火繚乱!!」

 

「だぁあああ――――ッ!!」

 

〈アタック! タイムブレーク!!〉

 

 体を大きく捻り上げ、振り上げるのは身の丈を超える赤い大刀。

 マーベラスはそのまま、カード越しに見える相手に炎上する刃を向けた。

 カードのヴィジョンを通りながら、加速するジオウ。

 

 蹴撃と斬撃が正面から激突し、放出された熱量が周囲を焼き払う。

 振り下ろすシンケンレッドと、蹴り上げるディケイドアーマー。

 その体勢から競り勝つのは、火の剣士。

 

 全力で振り抜いた刃が、ジオウを眼下へと叩き落とす。

 

「おっと……!」

 

 ―――そうして振り抜いた剣に絡みつく、イーグライザーの刃。

 ジオウを叩き落とした直後。

 大刀を制しつつ、横合いから回転突撃しにくるのはジュウオウイーグル。

 その直撃を受けて、ゴーカイレッドもまた地面に叩き落とされた。

 

 泥水を跳ね除け、青と黄の海賊が戻ってくる。

 何度か相手と交錯し、弾かれたように緑と桃の海賊が跳んでくる。

 そんな彼らの目の前に、撃墜された赤の船長が落ちてくる。

 

 変わっていた姿からは、既に元に戻っていた。

 全員揃って、ジョリー・ロジャーを示した海賊の衣装。

 ゴーカイジャーの姿に戻り、彼らは再び地上に集結した。

 

 首を回しながら、倒れた体をゆるりと起こす。

 汚れたジャケットを軽く叩き、マーベラスは不敵に鼻を鳴らした。

 

「やるじゃねえか。もう少し簡単に手に入ると思ってたがな」

 

「……何故、リンクキューブの王者の資格を狙う!

 君たちの目的は一体なんなんだ!」

 

 同じく揃ったジュウオウジャーの中で、タスクが真っ先に声を上げた。

 

「海賊がお宝を前に、わざわざ狙う理由なんて必要あるか?

 お宝を見過ごしてのこのこ帰る事があるとすれば、それは……

 狙わない理由があった時だけだぜ!」

 

 ゴーカイレッドが銃を上げる。

 すぐさま身構えるジュウオウジャーとジオウ。

 

 そしてそんな彼らの間に割り込む、宝箱を抱えた一人の男。

 

「待ってください! ちょっと待ってください!

 なんで皆さんが戦ってるんですか!? 同じスーパー戦隊じゃないですか!」

 

 彼は間に割り込むと同時、マーベラスにそう叫ぶ。

 割り込まれたゴーカイレッドが、仕方なさそうに銃口を上げる。

 そんな彼の後ろで、ゴーカイブルーが肩を竦めた。

 

「……ライダーも混じってるけどな」

 

「遅かったな、鎧」

 

 彼が持っていた宝箱を見て、腰のバックルを軽く叩くマーベラス。

 

「俺一人で滅茶苦茶頑張りましたよ!?

 トッキュウジャーさんとか探し出して! それで土下座してきました!」

 

 そう叫び、宝箱をバンバンと叩く鎧と呼ばれた彼。

 

「土下座してレンジャーキー貸して貰ったんだ……」

 

「海賊としてどーなの、それ」

 

「海賊らしくはないですが……鎧さんらしいです」

 

 褒められているのか貶されているのか。

 アイムの言葉に顔を引き攣らせる。

 そんな顔をしつつも、彼は両手で背後のジュウオウジャーを示した。

 

「ジュウオウジャーさんは栄えある40番目のスーパー戦隊!

 俺たちの後輩じゃないですか! 俺たちがそうして貰ったように!

 先達のスーパー戦隊として! 彼らに道を示すことこそが……!」

 

「別に俺たちは道なんざ示されるまでもなく、俺たちがやりたいようにやっただけだがな」

 

「ほらマーベラスさんそういうこと言う! そういうこと言う!」

 

 ぎゃーぎゃーと言い合いを始める六人。

 厳密には新たに登場した彼が喚いているだけではあるが。

 

「……で。そのスーパー戦隊だのなんだの、何なのよ」

 

 心底疲れたようなオルガマリーの言葉。

 それを耳に入れた瞬間、マーベラスたちと言い合ってた鎧がぐるりと振り向く。

 

「気になります? 気になっちゃいます?

 では35番目のスーパー戦隊であるゴーカイジャーのゴォオオオカイシルバァーッ!

 不肖この伊狩鎧が! スーパー戦隊とは何なのか、説明させて頂きます!!」

 

 大和たちもその光景に顔を見合わせて、オルガマリーは眉間に指を当てた。

 

 そんな中でジオウが小さく顔を他所へと向ける。

 彼の視線を追うようにツクヨミが顔を動かし―――その先に、人影を見た。

 彼は足場が泥だらけなのを厭いながら、真っ白い服でこの場に歩いてくる。

 手には大きく膨らんだビニール袋。

 

「白ウォズ……?」

 

「やあ。この前ぶりだね、ツクヨミくん。

 これから彼らの話を聞くんだろう? 長い話になるだろうから、差し入れだよ」

 

 こちらに向かって歩いてきながら、彼はくいくいとビニール袋を小さく揺らす。

 ついこの前も敵として立ちはだかっておきながらこの様子。

 顔を顰めるツクヨミだが、ソウゴはそれには何も言わない。

 

 ふと気付いたように、ゴーカイレッドがその袋へ視線を送る。

 

「この匂い……」

 

「ご明察。これはカレーだよ、君たちの分もあるけれど?」

 

 目の前で揺らされるビニール袋。

 確かにそこからかなり良い匂いが香ってはくる。

 そちらに顔を向けている船長に対し、まさかだろ? という視線を向けるゴーカイブルー。

 

 だが彼はさっさと変身を解除し、そちらに向け歩き出した。

 楽しげな様子で口を開くマーベラス。

 

「どうやら……そのお宝を今、狙わない理由は出来ちまったみたいだな」

 

 嬉々として白ウォズに向かって行くマーベラス。

 ジョーは溜め息を吐きながら、顔を手で覆う。

 

「前食いに行ってただろ……」

 

「バングレイのせいで食い足りなかったんだよ」

 

 結局何なんだこいつら、という視線を浴びるゴーカイジャー。

 

 そんな視線を浴びせられる彼らもまた呆れながら顔を見合わせる。

 そうして四人揃って肩を竦めながら、仕方なく船長に従った。

 

 

 




 
天空寺龍をジョーが見てたらどういう反応したんでしょうね。

ゴーカイチェンジとかいうジオウやディケイドの200倍くらい戦闘内容考えるのが難しい能力。
この能力を5(6)人は無理ですわ。
ゴーカイ以外へのゴーカイチェンジは多分あと二回くらいしかやらんな。
鎧はまだなんもゴーカイチェンジしてないが……ままええわ。
 
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