Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
「つまり! スーパー戦隊とは今まで何度も地球の危機を救ってきたヒーローなんです!!」
鎧がそう言って話を締め括る。
彼が長々と話してくれた内容は、頭の隅に追い出しておく。
必要だった情報は、ただ一つ。
スーパー戦隊とは、今まで地球規模の事件を何度も解決してきた存在、という事実だけだ。
つまりは更に別口。
彼女の知る歴史に含まれるはずもなく、恐らく仮面ライダーとも離れている。
そんな別の歴史が更に混じり込んでいた、ということだ。
2016年のジュウオウジャー以前にもそういう事態があったなら、そういうことになる。
まあ何となく分かっていた、と。
オルガマリーは遠い目をして木々の葉に覆われた空を見上げた。
「話は終わったか? じゃあ続きと行くか」
マーベラスがそう言って立ち上がる。
彼の足元にはカレーの容器が転がっていた。
その数は一つどころじゃない。
延々話をしている鎧の分。
更に大人しくしてもらうためにオルガマリーも彼に譲った。
それだけではなく、ツクヨミとタスクとアムと操。
自分の分に加えて、更に六人前を彼は一人で完食している。
「食いすぎだろ、お前……」
「確かに凄い美味しかったけどねぇ」
呆れるジョーに、気持ちは分からんでもないと首を横に振るルカ。
ハカセがゴミを纏めるために容器を袋の中に入れながら呟く。
「地球で食べたカレーの中で一番美味しかったかも。どこのお店のだろ」
そう言って、これを持ってきた相手にちらりと視線を向ける。
自分に送られる視線に対して、白ウォズは木に寄り掛かったまま肩を竦めた。
ハカセの言葉に少し驚いた様子を見せる鎧。
「ドンさんがそんなに言うほどなんて、俺も食べれば良かった……」
マーベラスの足元に転がっている空の容器を見て、惜しげに呟く鎧。
そんな彼らの様子に珍妙な顔を浮かべるソウゴ。
口にするべき情報か少しだけ彼は悩み―――
しかし大人しく黙り込み、とりあえず流れを見守ることにした。
そんな中、地面に置いたレジャーシートから一気に立ち上がるレオ。
「そういう連中がいる、ってのはよく分かった!
けどお前らがリンクキューブを狙う理由になってねえだろ!」
「言っただろ。理由があるとすれば、それは俺たちが海賊だからだ。
狙う理由はなくても、お宝を前にしたら狙わない理由の方がないってわけだ」
言いながらオルガマリーの方へ歩いてくるマーベラス。
その目的が、彼女が横に置いている大きな王者の資格なのは明白だ。
すぐに立ち上がり、大和はその前に立ち塞がった。
目を細め、マーベラスが大和と睨み合う。
「なんだ、退け」
「退きません。あれはジューマンであるみんなにとって大切なものです。
この世界とジューランドを繋いでくれる、大事な鍵なんだ。戦いが終わったあと、自分たちの居場所にみんなが帰るためには必要なもの。だから……!」
「知るか」
横を抜け、そのまま進もうとするマーベラス。
彼の肩を掴んで止める大和の腕。
鬱陶しそうに払おうとするが、それでも彼の腕は離れない。
「―――絶対に渡せない」
マーベラスの視線が大和に向く。
一触即発の空気に、後ろで見ている鎧があわあわと体を揺らす。
その隙に、レオが立ち上がって一気に走った。
オルガマリーの横にあった王者の資格を拾い上げる彼の腕。
「当たり前だろ。これは元から俺たちジューマンの物だ!
それを奪おうっていうなら、スーパー戦隊だかなんだか知らねぇが……!」
―――瞬間。
レオが手にした王者の資格。その表面が罅割れた。
まるで初めて王者の資格を手にして、ジュウオウチェンジャーに変わった時のように。
「うぉおおっ!?」
驚愕に叫ぶレオ。
彼の手の中で表面が割れ落ちていく。
姿を現すのは先程までとは全く違う形状。
巨大な金色のキューブに赤い持ち手がついたような。
突然の変形を前にして、レオが唖然とする。
「変わった!?」
その光景を見てマーベラスが目を細め。
そんな彼を見たソウゴもまた、小さく目を細めて周囲を窺った。
巨大キューブの先端から、光が溢れる。
投射されるその光は、彼らの前で立体映像を作り出した。
浮かび上がるのは、クジラのジューマンらしき人物。
「なんだ、立体映像……?」
『初めまして。私の名はケタス……君たちの遠い先祖にあたるジューマンです』
ケタスと名乗ったクジラのジューマン。
その自己紹介に対して顔を見合わせるセラとアム。
軽く息を吐いて、マーベラスが一歩下がる。
そんな彼の脇腹を、前に出てきたルカが肘で突いてみせた。
鬱陶しそうに彼女の腕を払う彼。
「僕たちの先祖……リンクキューブの中の王者の資格から出てきたということは、リンクキューブが造られる以前の……」
『もしもの時に備え、この大王者の資格の中に記録を残しておきます。
いつかまた、この星に危機が迫った時のために―――』
優しげな声の中に、悲愴な気配が混じる。
そんなケタスの浮かべた感情に、ジューマンたちが顔を顰めた。
「大王者の資格……っていうんだ、それ」
「割とまんまだな……」
ちらりとレオの持つ物に視線を向けるセラ。
レオは自分の手の中で輝く大王者の資格を軽く叩く。
『かつて、この星には未曽有の大災害が訪れました。
星の外―――宇宙から、凄まじい力を持った怪物がやってきたのです。
その怪物は、この星で破壊の限りを尽くしました』
そんなやり取りをしている間に、ケタスの声が次の話を始めていた。
彼の姿は映像の中から消え、代わりに怪物が破壊の限りを尽くす映像が浮かぶ。
多くのジューマンが逃げ惑い、そして怪物に蹂躙されていく。
その光景に皆で目を細める。
『やがては生き物だけではなく、この星そのものが破壊される。
そんな事を予感させる光景の中……
―――ひとりの勇敢な若者が、怪物の前に立ちはだかりました』
怪物が大きく体を揺すり、全身から閃光を放つ。
破壊範囲は一気に拡大して、目に映る場所全てが火の海に変わる。
そこでカメラが切り替わるように映像が変わった。
怪物ではなく、怪物に立ち向かう者を映すように。
その姿は剣を構えたクジラのジューマンで―――
『私です』
「お前かよ!」
ケタスの言葉にレオが咄嗟に突っ込む。
そんな事をしている間に、映像の中でケタスが吹っ飛んだ。
怪物に迫る事すら出来ず、彼は地に伏していた。
『私は果敢に怪物へと立ち向かいました。
ですが怪物の圧倒的な力の前に成す術はなく……何も出来ず、敗北しました』
映像の中で口惜しそうに、しかし何も出来ずに伏せるケタス。
彼の拳が地面を叩き―――その瞬間だった。
『もはやこれまで。そう思った時、奇跡が起きたのです。
……この星が生み出した命のパワー。
それが結集して生み出されたものが、大王者の資格として私に授けられた』
大地から噴き上がる光、地球のエナジー。
それが倒れたケタスを包み込み―――その手の中に、大王者の資格を生み出していた。
ケタスが立ち上がり、大王者の資格を大きく掲げる。
大王者の資格が展開し、大砲のような形状へ変形。
そこから溢れ出すジューマンパワーが、彼の姿を変えていく。
赤いスーツに身を包んだ、クジラのマスクを被った戦士に。
『大王者の資格を手にした私は、地球を守る戦士……
ジュウオウジャーに変身する事ができました。
そしてその力に導かれ現れたジュウオウキューブ―――キューブホエール。
彼と力を合わせ、私は怪物を地球のパワーで封印して宇宙に吹き飛ばしたのです』
空の彼方から巨大なキューブアニマル。
ケタスの言うキューブホエールが押し寄せ、怪物を吹き飛ばした。
生まれたその隙に、ジュウオウジャーとなったケタスが砲口を向ける。
―――迸る虹色の極光。
怪物はその光に呑み込まれ、全身を結晶化されて吹き飛んでいった。
空を超え、そのまま宇宙の彼方まで。
そこまで語った所で、再びケタスの顔が映像の中に戻ってくる。
小さく息を吐いた彼が、続きを語る。
『……怪物に破壊され尽くした星では、安寧なる生活は望めません。
私は大王者の資格の力を使い、地球に隣り合った世界であるジューランドを創り出しました。
そして最初の大王として、ジューマンの皆を守ってきたつもりです』
「ジューランドを創った……彼が……!」
驚きに目を見開くタスク。
だがまだケタスの言葉を聞くために、彼はすぐに黙って手で口を覆った。
『あの怪物を見た多くのジューマンが恐怖しています。
いつまた怪物のような存在がやってくるとも分からないと、怯えています。
……我々は二度と、かつて生きていたあの地球には戻れないでしょう』
―――ジューランドは地球の裏にある世界だ。
通常の手段では干渉できない。
仮にあの怪物が再び地球を訪れても、ジューランドにいる限り手出しはされない。
恐らく地球ごと滅ぼされれば、ジューランドもまた滅びる。
それは分かっていても―――
ジューランドならば襲われないという安心感を、捨てることはできない。
ケタスもまた、そんな彼らを守る―――守り抜いた大王として、動くことはできない。
『いつか。その恐怖が晴れた時、我らの子孫である君たちには……
私たちを生み、育み、助けてくれた……地球という故郷を見て欲しい。
そしてもし……私たちの時と同じように危機に晒されているならば―――
勝手ながら、今度こそ助けてあげて欲しい』
きっと彼自身は生まれ故郷を離れることに多くの想いがあったのだろう。
それでも、大王として彼は己を頼る者のためにその想いを封印した。
どれほどの時を超えるか分からない願いを、大王者の資格と共に遺して。
『だからこそ、私は残します。
今は離れるしかない地球への繋がり、二つの世界を行き来するためのリンクキューブを。
その鍵となる、大王者の資格を元にして作り出した六つの王者の資格を。
王者の資格に選ばれる心を持つ者ならば、きっと正しく繋がってくれると信じて』
万感の想いを乗せ、彼が大きく息を吐く。
もしかしたら、この映像を遺すことこそが彼の最期の仕事だったのかもしれない。
それほどに重く息を吐いてから、彼は最後にただ優しく声を出した。
『恐らくこれを見ているだろう、ジューマンの子たちよ。
君たちがどうかこの力を、我々の世界に生きる命を守るために使ってくれる者であることを……切に願っています』
―――その言葉を最後に、映像が切れた。
静寂に包まれる中、顎に手を当てたタスクが呟く。
「……妙だ。これだけの歴史がありながら、こんな歴史は聞いた事がない。
リンクキューブの番人がいて、王者の資格がそれの鍵だと伝わっている。
なら何故その大元であるこの建国の話が伝わっていないんだ?」
「んなことどうでもいいだろ。
大事なのは、これは俺たちが地球を守れって。ご先祖様から託されたもんらしいってことだ。
お前らなんかに渡せるか!」
そう言って大王者の資格を抱え直し、追い払うにマーベラスに向け手を払うレオ。
そうされたマーベラスはゆっくりと首を回し、後ろの船員へと目を向ける。
真っ先に彼の視界に飛び込んでくるのは、伊狩鎧。
「ケタスさんと言う方も……!
地球を守るために戦った、古代のスーパー戦隊だったんですね……っ!」
拳を握り、体を震わせている奴は無視することにした。
更に後ろの四人。心配そうに見てくるアイムに、残りの肩を竦める三人。
そんな彼らに鼻を鳴らしてから、マーベラスは正面に向き直った。
手にしたゴーカイサーベルを肩に乗せ、不敵に笑う彼。
「渡せないってなら―――」
「奪うだけさ」
その瞬間、木々を擦り抜けてシアンの影が駆け抜けてくる。
認識範囲外からの高速移動が目掛けるのは、当然のようにレオが手にした大王者の資格。
驚愕に対応の遅れる皆の中、知っていたソウゴが即座に動き―――
「【常磐ソウゴは泥に足を取られ、初動が遅れた】」
白ウォズが未来ノートにそう記し、ソウゴの未来をそちらに導く。
地面が沈んでつんのめり、彼の動きが完全に止まる。
「……っ!」
もはや止める者はなく、青い影はレオの腕から大王者の資格を奪ってみせた。
「ッ、テメェ……!」
そのまま跳び上がり、彼は木の上へと飛び乗ってみせる。
そんな相手の姿を追い、マーベラスが忌々しげに舌打ちした。
彼の姿を前にしたジョーが、驚いたようにその名を口に出す。
「仮面ライダーディエンド……海東大樹……!」
「やあジョー、それにハカセ。
僕の心尽くし、カレーは満足してもらえたかな? いつぞやの食事の御返しさ」
銃のようになっている大王者の資格の持ち手。
そこを掴んで回しながら、シアンの仮面ライダーが楽しげに笑った。
そういえばガレオンで確かに一緒に、と。
ハカセが納得したように手を叩く。
「お前が作ったのか。悪くなかったぜ」
顔を顰めつつもカレーの味は褒めるマーベラス。
作った相手で味は落ちない、と。
それはそれとして、やはり表情をきつく顰めることには変わりないが。
そんな彼の横から前に出たルカが、ディエンドを怒鳴りつける。
「あんた、何すんのよ!」
「お宝があれば手に入れるのは当たり前。
さっきから自分たちがそう言ってたじゃないか。僕も同意見だね。
特に今回は僕にとってはリベンジみたいなものだし」
くるくると大王者の資格を回す彼。
そんな海東に対して、ソウゴが体勢を立て直しつつ問いかける。
「リベンジって……前にもそれ盗もうとしたことあるの?」
「いや? 前は
ただ烏賊よりもクジラの方が海のお宝として大きくて上等だろう?
ならこっちを盗めれば、リベンジしたも同然じゃないか」
言いながらディエンドライバーを軽く動かし、鎧の足元に置かれている宝箱を示す。
その態度を見てハッとした様子の鎧。
「そういえば……! シンケンゴールドさんは仮面ライダーディエンドに烏賊折神を盗まれそうになったことがあったと聞いたような……!」
「へえ、そういう話も知っているのかい。じゃあ分かってくれるだろう?
僕がこの世界で狙っているのは―――」
先程見たケタスの映像。
その中に一度だけ顔を出した、巨大な赤いジュウオウキューブ。
それを思い出しながら、マーベラスは舌打ちした。
「―――キューブホエールか……!」
「ご明察」
そう言って手をひらひらと振ってみせるディエンド。
彼を見上げながら、大和が叫ぶ。
「何故あなたはキューブホエールを!?」
「お宝を欲するのに理由なんか要らない、って話をしてたと思うけど。
……仕方ない。しいて言うなら―――ジュウオウジャー」
大和からの問いに対し、海東は大和たちに大王者の資格を向けた。
次いで、ゴーカイジャーたちへ。
「ゴーカイジャー。そしてバングレイ、デスガリアン」
その後は頭上に持っていき、バングレイとデスガリアンの名を上げる。
そんな様子に困惑を見せる大和に、海東は笑った。
「これほどの勢力から同時に狙われているお宝だ。
是非とも、僕が全ての連中を出し抜いて手に入れたいね」
「そんな理由で……!」
―――今の言葉を真実とするなら、バングレイ。
彼が狙う地球の伝説の巨獣とは、キューブホエールということなのだろう。
バングレイにまで狙われているなら、すぐにでも保護しなくてはいけない。
「……だがまだキューブホエールは目覚めちゃいないはず……!」
「残念だよ、キャプテン・マーベラス。
目覚める切っ掛けがあれば十分なのさ。私にとってはね」
「白ウォズ……!」
木に寄りかかったままの彼が、未来ノートを持ち出す。
すぐさま銃を抜き、発砲するツクヨミ。
だが放たれた赤い光弾は全て、ディエンドの銃撃が撃ち落した。
「【大王者の資格がジューマンの手に渡り、その影響で海底に眠るキューブホエールが目覚める。キューブホエールは浮上して、周囲の状況確認に努めるのであった】ってね」
―――瞬間、大地が震撼する。
起きる可能性が存在することで無理矢理起こされ、キューブホエールが目覚めたのだ。
目の前で行われたことを見て、そう確信する。
「って、不味いよ! 今キューブホエールが出てきたらバングレイに狙われて……!」
ハカセが慌てながらルカの肩を掴み、思い切り揺する。
その行動に眉を吊り上げた彼女が、相手の腹に即座にエルボーを撃ち込んだ。
腹を抱え込んで、撃沈するハカセ。
「逆に。キューブホエールがいるとこにバングレイが湧いてくるってことでしょ。
―――丁度いいじゃない!」
そう言いながら、ルカの腕がワイヤーを手にする。
ゴーカイサーベルを引っかけたままに奔るワイヤーが向かうのはディエンド。
高速で迫るその刃に対して、ディエンドは即座にカードをドライバーに滑り込ませる。
〈アタックライド! インビジブル!〉
「じゃあお先に。誰が最初にキューブホエールを手に入れるか……競争と行こうじゃないか」
ルカの一閃が擦り抜け、ディエンドが完全に姿を消す。
舌打ちしながら剣を引き戻し掴み取る。
すぐさま白ウォズの方へと視線を向けて―――
彼は小さく笑いながら、両手を上げて降参とでも言わんばかりな姿勢をとっていた。
「どういうつもり、白ウォズ」
「どうもこうも、私はキューブホエールの覚醒まで力を貸していただけさ。
私と海東大樹の協力体制はここまでだよ。
後はジュウオウジャーたちが確保するのを手伝うとも」
凄まじく胡散臭いものを見る目を浮かべるオルガマリーとツクヨミ。
その視線に不利を感じたのか、肩を竦めてソウゴを見る白ウォズ。
「そもそも、魔王は私と海東大樹が繋がっているのを察していただろう?
彼を止められなかった責任は、魔王にもあると思うがね」
「……ソウゴ?」
「うーん……まああのカレー、前に食べた海東大樹の料理に味付けが何か似てたから。
それに、止めようとしたのを白ウォズに止められたんじゃん」
そう言ってハカセがまだ持っているゴミ袋を見る。
そうしてソウゴは、白ウォズの協力するという言葉を否定することもなく歩き出した。
彼の背中を見る目を細め、顔を顰めるツクヨミ。
ライダーたちのやり取りを横目に、海賊たちも動き出す。
アイムが歩き出す船長に問いかける。
「……どうしましょう、マーベラスさん」
「どうもこうもねえ。獲物が今から出てくるんだ、行かないでどうする」
「―――キューブホエールをどうするつもりですか」
マーベラスの肩を掴む大和の腕。
再び彼に引き留められた彼が、それを振り払いながら向き直る。
「どうしようが。手に入れた奴の勝手だ」
「……バングレイみたいに、命を弄ぶようなことでもですか!?」
「お前がここで何を言おうが、そう考えてる奴はいるってことだ。
そうなって欲しくなきゃ、お前たちがキューブホエールを捕まえるんだな。
もちろんバングレイだけじゃなく、俺たちよりも早く……な」
追い縋ろうとする大和に対し、サーベルを突き付けるマーベラス。
睨み返してくる彼に、小さく鼻を鳴らして切っ先を下げる。
剣を肩に置いて振り向き、マーベラスは歩き出す。
「守ってみせる……! この星を守るために戦ってくれたケタスさんの願い……!
ケタスさんと戦っていた、キューブホエールのことも……!」
マーベラスの後に続き歩き出していたハカセが、ハッと表情を変える。
そのまま彼はジョーに近づき、小声で話しかけた。
「ねえ、もしかして……」
「俺たちがいちいち言う事じゃない。ま、その気のお節介がいるみたいだがな」
ジョーはそう言い切って目を瞑る。
クジラが眠っていたということは、当然のように海岸だろう。
まずはガレオンなしでバングレイを宇宙船から引きずり下ろさなければならない。
軽く拳を握り直し、ジョーは目を開いて足取りを早くした。
―――去っていくゴーカイジャー。
そうしている間にも、キューブホエールに危機が迫っているのだろう。
だからすぐにでも動かねばならず、オルガマリーは耳に手を当てた。
「ロマニ、聞こえてる? すぐにダ・ヴィンチたちに……」
『―――あ、すまない! そちらは大丈夫かい!?
状況が許すなら、すぐに戻ってくれ……あ、いや! 不味い……!
すぐに位置の補足を……! 聞こえてるかい!?
レオナルド! マシュ!? 立香ちゃん!?』
「―――――」
もう片方。あちらの方でも、異常事態が発生している。
それを否が応でも理解させるロマニの声。
その声を聞きながら、オルガマリーは強く唇を噛み締めた。
「ジニス様!」
「分かっているよ、どうやらあれが……伝説の巨獣らしい」
頬杖をついて画面の中で浮上する赤いクジラを見る。
単体で全長60メートルを超える巨大クジラ。
それが海を割りながら、嘶きとともに空中へと飛び立った。
「ほー、中々強そうじゃねえか」
「ふふふ、宇宙の破壊神とやらを封印するほどのパワーだ。
アザルド、君でも危ないかもしれないね」
テーブルに寄りかかり、感嘆の声を上げるアザルド。
そんな彼に機嫌良さそうに言葉をかけるジニス。
戦いたいとでも思っているのだろう、アザルドは両腕を打ち合わせて体を震わせる。
「……それで、どうなさるのです? 相手の方から出てきてくれましたが」
「―――ふむ。ギフトを使って捕獲しようか」
問いかけたクバルに対し、ジニスは視線をナリアに向ける事で応える。
彼女は一礼し、すぐさまギフトを取り出しに行く。
そんな背中を見送り、クバルが再度問いかけた。
「……ギフトの戦闘力は分かっていますが、対抗できるでしょうか。
あの巨獣を押さえるには、巨獣自体とバングレイ、そしてジュウオウジャーが相手だ。
正直、奴らの今の戦力にギフトで戦えるとは……」
「だったら俺も出せよ、オーナー!
ギフトがあのクジラを捕まえる間、俺がジュウオウジャーどもを相手してやるぜ!」
楽しげにテーブルを叩くアザルド。
そんなアザルドとクバルの間で視線を巡らせたジニスが、軽く手を振った。
「クバル、君の心配ももっともだ。そしてアザルド、残念ながら今回はお預けだ」
言われたアザルドがテーブルに体を投げ出す。
上に乗っていた諸々が弾かれ、床に転がった。
「―――ギフトはギフトでも、今度のは新しいものなのさ。
ザワールド用に捕獲し、改造したキューブアニマル。トウサイジュウオー。
そのデータを元に、ジュウオウキューブ捕獲に特化した専用ギフトを用意しておいたのさ。
当然、戦闘力も元のギフトとは比較にならない程度には向上させたがね」
「んだよ、そりゃねえぜオーナー!」
拗ねてテーブルを拳で叩くアザルドに笑い。
―――そうしてジニスが、クバルの方へと視線を送った。
「そういうわけさ。安心したかい、クバル。
最近はジュウオウジャーたちにしてやられてばかりだから、気にするのも分かるがね」
「―――はい。流石はジニス様……あのギフトを更に進化させていたとは……」
そう言いながら恭しく頭を下げ、クバルは跪く。
これは―――試金石だ。
ジニスはギフトをわざわざジュウオウジャーの戦力に特化し、強化した。
ジニスというデスガリアンのオーナーは激しく高いプライドを持っている。
自分が造った兵器―――ギフトのみならず、ザワールドもだ。
それらが負けたことが許せなかった、ということだろう。
こうなれば、一切の加減なくギフトを強化しているはずだ。
これを打ち破るようならば、デスガリアンの敗北も見えてくる。
目を離せないな、と。
そう思考しながら頭を下げているクバルを、ジニスはただ愉しそうに見つめていた。
「邪魔なんだよ…ジューランドと人間界を繋ごうとする奴は全て…!」