Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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再生!かつての悪夢!2012

 

 

 

 海面を破り、空に舞う巨体。

 巨大な赤いクジラ、キューブホエール。

 

 海上で遠吠えするその姿の前に、巨大なコインが積み重なっていく。

 ジャラジャラと音を立てて重なる、光のコインタワー。

 それが割れて姿を現すのは、既に巨大化を完了したギフトだった。

 

 通常のギフトとはカラーリングが変わり、緑色のラインが入ったもの。

 その巨体を動かすのは自律行動システムではなく、ナリアによる操縦。

 彼女は操縦桿に手をかけながら、画面に映るキューブホエールを睨み付けた。

 

『実験動物としてジニス様に求められる事を光栄に思いなさい、伝説の巨獣』

 

 鳴くキューブホエールに向け踏み出すギフトカスタム。

 ジニス直々に積み込んだデータ収集装置が稼働を始める。

 その事を確認しながら、ナリアは全ての兵器をアクティブにした。

 

 開始される撃ち合い。

 ギフトカスタムの火器だけではなく、キューブホエールの反撃も始まる。

 飛び交う光線とミサイル。

 

 そんな光景を愛船、ヤバングレイトの中から見るのはバングレイ。

 

『ヒュー! バリいいじゃん、巨獣ちゃん!

 さあて、どうやってデスガリアンを出し抜いてやろうかねぇ!』

 

 距離を置いて状況の推移を見守る彼。

 既にあのゴーストの存在がこの星から消えたのは確認済み。

 運が良いと言える。

 この状況であれば、まずは巨獣を狩り、風切大和をぶっ壊すのが目的になるだろう。

 

 天空寺タケルの方も後々ぶっ壊したいところだが―――

 あっちはこっち以上に順序立ててやらねば、崩せないだろう。

 もどかしいが、やり甲斐があって何よりだ。

 

『ま、地道にやってやろうじゃねえか。まずは……』

 

 呟き、ヤバングレイトのモニターを切り替える。

 戦場の近くまで走ってくる、ゴーカイジャーたち。

 彼らは首を回し、周囲に誰かの姿を探しているようだ。

 

『この状況をよく知ってそうな奴らから、記憶を貰うとするか』

 

 立てかけていたバリブレイドを握る。

 ヤバングレイトを自動操縦に切り替え、彼は凄絶に笑った。

 

 

 

 

『ふん、どれだけ強大だろうと所詮キューブアニマル……

 ジニス様の造り上げたギフトカスタムの前では、その程度の力に意味はない!』

 

 ギフトカスタムが雷撃を放ち、キューブホエールを焼く。

 悲鳴を上げて身を捩る赤いクジラ。

 そのまま行動不能まで追い込もうと、ナリアはギフトの出力を上げる。

 

 ―――そんなギフトカスタムが、横から巨神に殴りつけられた。

 大きく揺らぎ、雷撃が打ち切られる。

 ギフトの顔をそちらに向ければ、立ち誇るのはワイルドトウサイキングの威容。

 

『く……っ、ジュウオウジャー!』

 

『キューブホエール! 今の内に逃げるんだ!』

 

 大和がそう叫びながら、キューブを回転させる。

 その操縦に応え動くトウサイキング。

 右腕に装備されたビッグキングソードの一撃が、ギフトを直撃した。

 

 盛大に火花を散らして、ギフトカスタムが更に押し飛ばされる。

 その隙にギフトとキューブホエールの間に割り込むワイルドトウサイキング。

 

『ナリア、珍しいじゃねえか! こんな風に直接お前が戦うのは!』

 

 レオがキューブに手を添えながら、目の前に立つ新たなギフトに視線を向けた。

 

『私の行動は全てジニス様のためのもの……ジニス様がそれの捕獲を望んだのです。

 邪魔をするな、ジュウオウジャー!!』

 

 ギフトカスタムが開く砲口。

 対し、ワイルドトウサイキングが左腕と共にビッグワイルドキャノンを上げた。

 両者が同時に砲撃を開始し、その威力を空中でぶつけ合う。

 

『邪魔するな? するに決まってんでしょ―――!』

 

 セラが叫び、キューブに触れる。

 彼女が発した意思が、トウサイキングの脚部に伝わっていく。

 呼応すつのは、足に装備されていた四体のキューブアニマル。

 キリン、モグラ、クマ、コウモリ。

 

 四体のジュウオウキューブがそれぞれ動物形態に変形。

 砲撃が激突している合間を縫って、ギフトの横へと回り込む。

 そのまま体当たりを慣行するキューブアニマルたち。

 

『チィ……ッ! 小癪な真似を……!』

 

『幾らギフトが強くなっていようと、今の僕たちが負けるわけが――――ッ!?』

 

 言葉を打ち切り、タスクがキューブにしがみつく。

 突然ワイルドトウサイキングを襲ったのは、背面からの砲撃。

 つるべ撃ちされるミサイルの雨が、トウサイキングを薙ぎ倒した。

 

 連続して訪れるその威力の攻撃。

 それに対して、同じくキューブにしがみ付いていたアムが後ろを振り向く。

 

『なに!? 今の……まさか、キューブホエール!?』

 

 驚愕する声に対し、遠吠えを返すキューブホエール。

 赤い巨体から連続して吐き出されるミサイル。

 それがワイルドトウサイキングの背中に直撃し、更に盛大な爆炎を上げる。

 

『なんで……! 何をするんだ、キューブホエール!?

 俺たちは敵じゃない! 君を助けに……!?』

 

『まさか……もう俺みたいに操られて……!』

 

 大和の声に、操がステアリングから放した自分の手を見る。

 そこの言葉をすぐさま切り捨てるのはレオ。

 

『だったらナリアが戦ってる理由は何だよ! どうなってんだ、ちくしょう!』

 

『僕たちを敵視している……?

 いや、だが同族であるキューブアニマルを攻撃するのは何故……ッ!?』

 

 攻撃は更に加速し、苛烈になる。

 背中に受けるキューブホエールの爆撃だけではない。

 その隙に立て直したナリアが、キリンたちを薙ぎ払い攻撃を再開した。

 

 挟み撃ちの状況に陥ったワイルドトウサイキング。

 こんな状態では反撃を行う事も出来ず、一気に追い詰められていく。

 

『不味いよ……! このままじゃ、ワイルドトウサイキングでも保たない!』

 

『でもキューブホエールを攻撃するわけには……!』

 

 両腕を交差させ、ギフトからの攻撃を耐えるトウサイキング。

 だがその状態でも容赦なく、背中にホエールからの攻撃が突き刺さる。

 巨神を構成するキューブアニマルたちが、限界を知らせる悲鳴を上げた。

 

 ―――やがて、ワイルドトウサイキングは砕け散る。

 構成していたキューブが全部分割されて。

 バラバラになって地面に転がるジュウオウキューブたち。

 

 その光景を見て、ナリアが小さく鼻を鳴らす。

 

『……奴はジュウオウジャーの仲間じゃない?

 ―――まあどうでもいいことでしょう。

 これから奴はジニス様の玩具、それ以上でも以下でもない』

 

 砕けたトウサイキングを無視して、ナリアは再びキューブホエールと相対する。

 赤いクジラの攻撃は止まない。無差別にミサイルを吐き出すまま。

 慟哭染みた声を上げ、ひたすら彼は周囲を拒絶し続ける。

 

 

 

 

「やべぇな、ありゃ」

 

「で。そのやべぇのをどうするんだ、船長」

 

 サーベルを片手にゴーカイブルーが問いかける。

 問われたレッドが周囲の転がった巨大キューブを前に、小さく舌打ちした。

 

「……仕方ねえ、全員あそこから引っ張り出すぞ」

 

 言って、ゴーカイバックルを押し込む。

 そのバックルが回転して出てくるのは、ゴーゴーファイブのレンジャーキー。

 彼の様子に頷いた他の船員もまた、ゴーカイバックルを押し込んだ。

 

 そんな中、ゴーカイシルバーとなった鎧が腕を組む。

 

「じゃあ俺は……やっぱりゴーゴーファイブと言えばゴーライナー!

 その繋がりで言えばマジシャイン!

 いやここはしかしトッキュウ6号という選択肢も……!」

 

 そう言いながら取り出すマジシャインとトッキュウ6号のレンジャーキー。

 それを持ちながらあーでもないこーでもない、と。

 いつも通りの船員に溜め息一つ。気にもせずにモバイレーツを取り出し―――

 

 瞬間、鎧の後ろに放たれた光線に動きを止めた。

 

「鎧!!」

 

「へ?」

 

「記憶、いただきィ―――ッ!」

 

 ヤバングレイトから放たれた光で降りてきたバングレイ。

 彼の右腕が後ろからゴーカイシルバーを鷲掴みにした。

 

 即座に反応し、ジョーとルカが振るう剣。

 さっさと相手の頭を手放し、バックステップでバングレイはそれを躱す。

 そうして着地すると同時、彼の目が怪しく輝いた。

 

「チッ……! 何を読み取られた!」

 

「分かりません! ごめんなさい!」

 

 ―――バングレイの前で空間が揺らぐ。

 

 現れるのは銀色の装甲。

 その存在は右手に銃を握り、赤い目を明滅させる。

 ゴーカイジャーたちを見回した彼は、低い声で状況を口に出した。

 

「―――戦隊粒子反応確認。破壊! 破壊! 破壊!」

 

 仇敵を見つけたようにそう捲し立て、彼は光線銃・バイバスターの銃口を跳ね上げる。

 迸る閃光。超速の発砲により放たれる光線が、ゴーカイジャーを襲った。

 攻め寄せる光線をサーベルで切り払い、揃って蹈鞴を踏む。

 そんな中で、マーベラスが舌打ちした。

 

 地面を必死に転がってその攻撃を躱しながら、ハカセが声を張り上げる。

 

「マーベラスの部下だった奴!」

 

「フリだったって言ったろ! 久しぶりじゃねえか、シルバ―――!」

 

 敵の名を言葉に乗せながら、ゴーカイレッドがゴーカイガンを向ける。

 それに呼応し、動き出す他の船員たち。

 息を合わせ、ゴーカイジャーたちが一斉に銃撃を浴びせる。

 

 その攻撃の最中にありながら、シルバと呼ばれた戦士がマーベラスを見た。

 

「我が名はシルバ! 戦隊、そしてライダーを狩るハンター!

 海賊戦隊ゴーカイジャー……キャプテン・マーベラス! 貴様たちを破壊し、俺は再び大ザンギャックを創り上げ―――この世界に蔓延る戦隊とライダーの粒子を全て消滅させてやる!」

 

 ゴーカイガンでの一斉射撃をものともせず、シルバは立ち誇る。

 その姿を見ながら肩を竦め、ゴーカイイエローが船長を見た。

 

「……だって。どうすんのよ、大ザンギャックの初代皇帝的に」

 

「……はぁ。決まってんだろ、やれるもんならやってみやがれ!」

 

 マーベラスがゴーカイレッドのレンジャーキーを手に取る。

 それに従うように、船員たちも己のレンジャーキーを手にした。

 キーを差し込むのは、手にしたゴーカイサーベルのシリンダー。

 

〈ファイナルウェーブ!!〉

 

 起こしたシリンダーにキーを差し、倒す。

 解放されたレンジャーキーの力が刀身をそれぞれの色に輝かせる。

 

「ゴーカイスラッシュ!!」

 

 五人揃えて振り抜く刃。

 斬撃が光の軌跡を描き、衝撃となってシルバへ向け押し寄せる。

 

「ゴォオオオオカイッ! シューティングスタァアアアアッ!!」

 

 一人、サーベルではなくゴーカイスピアを手にしていたシルバー。

 彼も同じように自身のキーを武器に差し込み、エネルギーを解放する。

 力を高めた槍を手に跳んだ彼が、全身を捻りその槍を投擲した。

 その名の通り流星の如く降り注ぐ銀色の光芒。

 

 押し寄せる六つの光を見据え、シルバは両腕を交差させる。

 

 直撃する斬撃と流星。

 着弾と同時に弾ける圧倒的なエネルギー。

 その只中にあり、しかしシルバは揺るがず耐えきってみせた。

 

 ガラン、と。

 音を立てて地面に落ちるゴーカイスピア。

 それを踏み付けながら、シルバが両腕を振り上げる。

 

「この程度で……私を倒せると思うな!」

 

 光るバイバスターの銃口。

 回避の合間に何とか銃撃で反撃を差し込みつつ、しかし敵の発砲速度に圧倒される。

 押し切られると判断し、即座に回避に移るアイム。

 彼女が口惜しげに呟いた。

 

「私たちだけでは難しい相手かもしれません、ね!」

 

 数で勝るこちらの銃撃と比べてなお、銃撃の密度で押し込んでくる。

 そんなシルバへ斬り込む隙を窺いながら、アイムの言葉に肩を竦めるジョー。

 

「仮面ライダーを全員倒すためにマーベラスが従えてた奴だからな」

 

「うるせえな! お前らいちいち!!」

 

 そんな船員たちに怒りながら声を張り上げ、マーベラスは銃撃を撃ち返した。

 

 シルバはそれを意にも介さず逆に反撃の密度を濃くする。

 そうしている中で、微かにその首を揺らして乱入者を事前に察知。

 新たなる敵にも銃を向け、攻撃を開始した。

 

「ライダー粒子反応検知! 破壊! 破壊!」

 

 バイバスターの光線が降り注ぐ。

 全てを焼き払い、消滅させる破壊の光。

 

 ―――それを全て正面から受け止め、彼は踏み止まった。

 

〈デカイ! ハカイ! ゴーカイ! フューチャリングキカイ! キカイ!〉

 

 ―――銀色の装甲の前に立ちはだかるのは、黄金の装甲。

 光線銃の雨を浴び、しかしフューチャリングキカイは持ち堪えてみせる。

 全身から白煙を上げながら、その場で堪えるライダーウォズ。

 

 その肩を足場に、ジオウが空に跳ぶ。

 

〈ファイナルフォームタイム! ガ・ガ・ガ・鎧武!〉

 

 空中にで大橙の鎧に換装し、ディケイドアーマーが落下する。

 背に現れた二振りの旗を手に持ちながら目掛けるのは当然、ハンター・シルバ。

 

 即座に銃口を上げたシルバの放つ迎撃の光線。

 そして大上段から振り抜かれるカチドキ旗。

 それらが激突。光線が爆ぜて周囲に散らばり、一帯を焼き払った。

 

「っ……!」

 

 弾かれたジオウが着地。

 その場に落ちていたゴーカイスピアを踏み付けながら、後ろへと滑っていく。

 拾いに出てきた鎧に対し、彼はその槍を蹴り飛ばす。

 

「ライダー粒子反応増大! 戦隊! ライダー! 共に完全に抹殺する!!」

 

 ライダーを前にした事で余計にヒートアップするシルバ。

 爛々と輝くその赤いゴーグル状の目を見て、ソウゴが横に並んだ鎧に振り向いた。

 

「で、何こいつ?」

 

「マーベラスさんの昔の部下です!」

 

「いい加減にしとけよテメェら!!」

 

 言い放った鎧の脛を蹴り付け、マーベラスが前に出る。

 足を蹴られたゴーカイシルバーが、脚を抱えて跳び上がった。

 

「酷い、マーベラスさん! 俺だけ!」

 

「こういう時はギリギリまで見極めてからかうのよ。あんたはやりすぎ」

 

 そんな彼の肩を叩き、ゴーカイイエローがサーベルを担ぎ直す。

 

「敵だ、敵! 俺たちとオーズで倒した奴だ!」

 

「オーズ? へえ」

 

 目の前のやり取りを見ながら、シルバがバイバスターを構えた。

 銃口に集う光。それが臨界まで高まり―――

 

「二度とは敗れん―――! 次に消えるのは、お前たちの粒子だ!!」

 

 言いながらバイバスターが向くのは地面。

 吐き出される光線が大地を裂き、粉塵を巻き上げる。

 まるで姿を隠すような破壊の軌跡。

 

 それを前にして、ゴーカイレッドが体勢を低くした。

 

「―――バングレイのための目隠しか! 近づかれんぞ、注意しろ!」

 

 シルバのコントロールはバングレイにあるのだろう。

 だとすれば、彼が有利に動くために行動させられるはずだ。

 バングレイからすれば、記憶から再現する戦力は多い方がいいに違いない。

 これはそのための煙幕であり―――

 

「半分正解!」

 

「――――!」

 

 声を張り上げたマーベラスの背後から、バングレイが声を迫る。

 即座に振り向き、ゴーカイサーベルを振り上げる彼。

 

 ―――その背後に、爆炎が巻き起こった。

 

「なに……っ!?」

 

「宇宙船―――! 白ウォズ!!」

 

 構え直した瞬間、ゴーカイレッドの背後に着弾するヤバングレイトの支援砲撃。

 その爆風に背を押されたマーベラスが、バングレイの方へ吹き飛ばされた。

 それを右手で受け止めてみせるバングレイ。

 掴まえる場所は当然、マーベラスの頭に他ならない。

 

「やれやれ―――!」

 

 ソウゴの声に仕方なさそうにライダーウォズが動く。

 フューチャリングキカイからヤバングレイトに向け放たれる力。

 それが無人操舵となっていた彼の宇宙船のコントロールを奪い取る。

 

 ゴーカイレッドの腹に足を叩き込みつつ、バングレイが舌打ちした。

 ヤバングレイトが乗っ取られた、と理解したが故に。

 

「やってくれるじゃねえか! んじゃまあ、こっちも追加オーダー入れとくぜ!」

 

「チィ……ッ!」

 

 間合いを離される直前、振り抜かれるサーベル。

 それを左腕のフックで打ち払いながら、バングレイは右腕にバリブレイドを握り直した。

 レッドの背中を受け止めるブルー。

 ジョーはマーベラスを押し返しながら、彼に問いかけた。

 

「何を読まれた!」

 

「知るか!」

 

 銃撃の雨に対抗するバングレイが腹から放つ砲撃。

 砲弾が空中で相殺し、拡がる爆発の中。

 笑い声混じりにバングレイが彼らの問いに答えを投げつけた。

 

「俺の選ぶ記憶はいつも、そいつにとって強烈に焼き付いた苦い記憶さ!

 テメェの心に訊いてみな! どんな奴を出されたらテメェが一番苦しむかをよ!」

 

「生憎だな! 俺は、そんな殊勝な心はしてねえぜ!」

 

 ゴーカイレッドがサーベルを跳ね上げ、バングレイに向け走り出す。

 更にバックルから二本のレンジャーキーを取り出そうとし―――

 

「へぇ! つまり今でも俺が一番怖いわけ。

 ザンギャックの皇帝や、ダマラスのオッサンよりって事でしょ?

 そんなに俺の事忘れられないなんて、嬉しいこと言ってくれるじゃないの!」

 

「―――――ッ!!」

 

 その間に立ち塞がった相手と、途中でサーベルの刃を重ね合わせた。

 人間態のまま立ちはだかるよく見知った顔に、マーベラスが言葉を詰まらせる。

 

 ゴーカイサーベルと鍔迫り合いする刃、カリブレード。

 二振りの刃越しに視線を交わし、乱入者は楽しげに微笑んだ。

 

「久しぶり、マベちゃん!」

 

「バスコ……ッ!」

 

 黒い海賊帽に深緑のシャツ。

 その上から赤いショールを引っ掛けた優男。

 彼は外見からまるで想像のつかない力で、ゴーカイレッドと斬り結ぶ。

 

「どう? 二度と顔を合わせないと思ってた相手とこうしてまた会う体験。

 喜んでくれると、俺も嬉しいんだけどねぇ!」

 

「……ッ、は! 大人しく死んでりゃ黒星増やさねえで済んだのによ!」

 

「言うねぇ。ま、先に死んだのはこっちだから仕方ないけど。

 ―――けど、もう前と同じやり方は食らわない」

 

 金属の擦過音を響かせ、互いの剣が弾け合う。

 その瞬間、バスコと呼ばれた男―――バスコ・タ・ジョロキアは変貌した。

 両肩に髑髏をあしらった赤い怪物に。

 

「マベちゃんを調子づかせたまま死んでるのもあれだしさぁ……

 今回はそっちが死のうか、マーベラス」

 

 瞬間、赤い怪物が音さえ置き去りにして奔った。

 マーベラスがゴーカイバックルを動かす暇さえなく、赤い閃光は彼を斬り刻む。

 全身から火花を散らし、ゴーカイレッドがくずおれた。

 

「ぐぁ……ッ!」

 

「マーベラス!!」

 

 駆け寄ろうと剣を構え直すジョー。

 そんな彼が一歩目を踏み出した瞬間、バスコはそこにいた。

 振るわれるカリブレード。即座にゴーカイサーベルが迎え撃つ。

 刃を二度交わし、その手応えに更に斬り込もうとしたゴーカイブルー。

 が、次の瞬間には火花を上げて、地面に沈む。

 

 彼を撃ち沈めた銃、カリブラスターをくるりと回して肩に乗せ。

 バスコは軽く鼻を鳴らした。

 

「ハカセ!」

 

 ルカが声をかけながらゴーカイガンを投げる。

 慣れた手順での戦闘準備。

 ルカがガンをハカセに渡し、ハカセがサーベルをルカに渡す。

 二刀のルカと双銃のハカセに陣形を変えるための行動。

 

「行くよ、ルカ!」

 

 だからこそハカセもそれに対してサーベルを投げ―――

 

 そこに割り込んだバスコが、空中で交差するサーベルとガンを掴み取った。

 カリブレード、カリブラスターを既に収めている。

 ゴーカイサーベルとガンを手に、まずその銃口をハカセに向けた。

 

「ぅわッ……!?」

 

 飛んでくるはずの銃を掴み取ろうとしていたゴーカイグリーンを撃墜。

 すぐさま次にゴーカイイエローへと視線を向ける。

 

「ッ、あんた……!」

 

「―――ルカさん! こちらを!」

 

 アイムから投げられるゴーカイサーベル。

 ルカは即座に自分からそれへと飛び込み、掴み取る。

 更にバックルから呼び出すのは、ゴーカイイエローとキレンジャーのキー。

 

 元々手にしていた剣と受け取った剣。

 両方のシリンダーに呼び出したキーを差し、持ち手をワイヤーに絡めた。

 黄色の輝きを刃に帯びる剣を、縦横無尽に奔らせバスコに向ける。

 

〈ファイナルウェーブ!!〉

 

「一気にぶっ倒してやるわ!」

 

 宙を舞う刃を見上げるバスコ。

 彼の視界の端を飛んでいく、一丁のゴーカイガン。

 

「アイム!」

 

 それを投げたハカセからの声で、ゴーカイピンクが掴み取る。

 自身のと合わせ二丁拳銃。

 二つの銃のシリンダーに装填するのは、ゴーカイピンクとモモレンジャーのキー。

 

〈ファイナルウェーブ!!〉

 

「ルカさん! 合わせます!」

 

 ルカとアイムと、そしてもう一人。

 バスコを三人でトライアングルに囲い込む位置取り。

 そこを陣取った鎧が声を上げ、ゴーカイバックルを押し込んだ。

 15のレンジャーキーが飛び出し、彼の手の中に一つの黄金のキーを創り出す。

 

「同時に仕掛けます! ゴーカイチェンジ!」

 

 ゴーカイセルラーに差し込まれる、ゴールドアンカーキー。

 シルバーの姿を錨から変形したような黄金の鎧が覆う。

 胸に15の伝説の戦士の顔を浮かべ、ゴーカイシルバーが力を漲らせた。

 

〈ゴーカイシルバー! ゴールドモード!!〉

 

 彼の手の中でゴーカイスピアが変形し、錨になる。

 ゴーカイスピア・アンカーモード。

 そのシリンダーに差し込まれる、ゴーカイシルバーのレンジャーキー。

 ゴールドモードに宿る力全てを解き放ち、彼は錨を大きく振り上げた。

 

〈ファイナルウェーブ!!〉

 

「ゴーカイスラッシュ!!」

 

「ゴーカイブラスト!!」

 

「ゴォオオオカイッ! レジェンドリィイイイイイイイムッ!!」

 

 囲まれた中心に押し寄せる三色の光。

 それを首を巡らせ眺めながら、バスコはつまらなそうに腕を胸の前で組んだ。

 黄色の斬撃。桃色の銃撃。黄金の極光。

 全てが同時に着弾し、バスコの立つ地面が捲り上がり、光の柱がその場に聳え立った。

 

「これなら……!」

 

「―――悲しいなぁ。もう忘れちゃった?

 マーベラス抜きの五人で必死に力を合わせて……俺に手も足も出なかったこと。

 五人でどうにもならなかったのに、三人でどうにかなるわけないっしょー」

 

 ―――光の中から、赤い怪物が歩み出る。

 歩み出ながら彼は片手に持ったゴーカイサーベルを投げ捨てた。

 代わりにカリブラスターを抜き、ゴーカイガンと共に双銃として構える。

 

 開始される銃撃。

 まずはゴーカイシルバーが沈み、次いでピンク。

 最後にイエローが撃墜される。

 

 倒れ伏した相手たちを見下げ、バスコはカリブラスターを肩に乗せた。

 そのままトドメを刺して回るために歩みだそうとして―――

 

「―――まずは、俺との黒星を返上してから行くんだな」

 

「……前に負けた時は、足を縫い留められたからだったなぁ……

 ―――言ったっしょ、二度と同じ手は食わないって。

 お前に勝ち目はないよ、マーベラス。それどころか、お前は俺に追いつけすらしない」

 

 真っ先に復帰してきたゴーカイレッド。

 首を動かし彼を見て、バスコはゴーカイガンを放り捨てた。

 代わりに抜くのはカリブレード。

 再びカリブレードとカリブラスターで武装し、彼はゴーカイレッドと対峙した。

 

 サーベルとガンを引っ提げ、ゴーカイレッドが微かに頭を揺らす。

 

「……お前はもう勝てねえよ。俺どころか、誰にもな」

 

「はぁ?」

 

「お前にはもう、何かを得る為に捨てるもんが何も残ってねぇだろ。

 だから、今のお前じゃ勝利は得られねえのさ。二度とな」

 

 そう言ってサーベルの切っ先を突き付けるゴーカイレッド。

 カリブレードの柄を指で叩きながら、バスコは体ごとマーベラスに向き直る。

 

「―――教えてやるよ、バスコ。

 お前は捨てるべきじゃねえもんまで捨てたから……永遠に俺に負け続けるんだってな!」

 

「……言うじゃない。その説教臭いとこ、あの赤いオッサンによーく似て来たよ。

 だったら、教えてもらおうか。俺をお前が負かせるかどうか!!」

 

 ゴーカイレッドが駆け出し、振るわれるゴーカイサーベル。

 バスコが待ち受け、振るわれるカリブレード。

 二振りの剣が激突し、火花を散らした。

 

 

 

 

 フューチャリングキカイのショルダーから射出されるアンカー。

 それをシルバが肘から飛び出したニードルで迎撃する。

 地面に叩き落とされ、転がっていくアンカー。

 

 ワイヤーを巻き戻し、引き戻しながらライダーウォズがジカンデスピアを掲げた。

 

〈フィニッシュタイム! 爆裂DEランス!!〉

 

「破壊! 破壊! 破壊!」

 

 投げ放たれる力を纏った槍。

 それに対するのは破壊光線の雨。

 

 圧倒的な破壊の奔流に呑まれ、ジカンデスピアが突き進めずに地に落ちる。

 槍を押し流し、逆にライダーウォズまで届く光線の嵐。

 それに見舞われ、彼は地面に転がった。

 

「思った以上のパワーじゃないか……ライダーハンター・シルバ。

 流石は大ザンギャック皇帝、マーベラスの親衛隊だ」

 

「あっちも大変そうだからツッコミはないよ?」

 

 ジオウがジカンギレードをジュウに変えながら、彼にそう言う。

 ちらりと背後に視線を向けてみる。

 すると、ゴーカイレッドとバスコ・タ・ジョロキアの死闘が開幕したところだった。

 

 やれやれと手で示し、白ウォズが立ち上がる。

 

「そもそも私は君たち待ちなんだがね?」

 

「そう? じゃあ行こうか」

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

 鎧武フォームとなったディケイドアーマーが一歩前に出る。

 腰だめに構えたジカンギレードに装填するのは、バースのウォッチ。

 前に出てきたジオウに対し、バイバスターの銃口が向く。

 

〈スレスレシューティング!!〉

 

「ライダー粒子反応は全て―――破壊だ!」

 

 光線の雨。それに対し、オレンジ色のメダルが無数に吐き出された。

 マシンガンの如く吐き出されるメダルの津波。

 銃撃のぶつかり合いが互いの間で拮抗し―――

 しかし少しずつ。衝突点がジオウ側へと寄っていく。

 

 徐々に圧され始めたその状況で、ソウゴが叫んだ。

 

「ツクヨミ!!」

 

〈エクシードチャージ!〉

 

 ジオウと撃ち合うシルバの背後で、白衣が翻った。

 その手に握られたファイズフォンXの銃口が、強く赤く輝いた。

 

「はぁあああ――――ッ!」

 

「ッ!?」

 

 シルバが驚愕して首だけ振り返らせる。

 相手は何の粒子反応もなかった場所にいた、ただの人間だ。

 だというのにその人間が放った攻撃から、ライダー粒子反応を極めて強く検知した。

 

 だが反応するには既に遅い。

 シルバの射撃は圧倒的速度を誇るが、今まさにジオウと撃ち合いの最中だ。

 事前に察知できていれば違っただろう。

 だが相手は、ライダーと戦隊の粒子反応を探れる彼の死角から現れた人間。

 彼女を撃ち落とすには、余りにも反応が遅れていた。

 

 背中に突き刺さる赤い光。

 それがシルバの体を覆い、一瞬だけだが彼の動きを完全に止める。

 

「白ウォズ!」

 

「では、ご案内だ」

 

 ―――シルバの頭上に影が出来る。

 

 上から落ちてくるのは青い船体。

 キカイの力でコントロールを奪った、ヤバングレイトに他ならない。

 単純に圧倒的な質量の塊であるそれを、白ウォズは最大船速で突撃させる。

 

 墜落、撃沈、爆発、炎上。

 その場に巨大な炎の柱が立ち、シルバの姿が呑み込まれた。

 

 戦隊及びライダーの狩人、シルバ。

 その最後はゴーカイジャーと仮面ライダーオーズが力を合わせた結果の撃破。

 仮面ライダー単体、あるいはスーパー戦隊単体では倒せないほどの強敵だ。

 

 だがしかし。今目の前にいるシルバは、バングレイの作ったコピー。

 痛打を与えれば光になって消える、という特性を持つ存在だ。

 ならば――――

 

「これほどの威力の攻撃であれば、十分に条件を……」

 

「―――破壊……! 破壊! 破壊!

 目の前に広がる戦隊とライダーの粒子を破壊するまで、俺は消滅しない!!」

 

 白ウォズの言葉を遮り、銀色のボディは炎の中から舞い戻る。

 灼熱に照らされ赤く輝きながら、ハンター・シルバは目の前の敵を見据え銃口を上げた。

 

 その執念に白ウォズが肩を竦め、腕を構え直す。

 

「こいつは、ライダーと戦隊と力を結集しないと倒せないかもね」

 

 ジカンギレードをケンに変え、ヘイセイバーを抜くジオウ。

 ソウゴは爆炎の中で崩れ落ちていくヤバングレイトを見て、軽く息を吐く。

 あれほどの質量に直撃され、シルバは未だにピンピンしている。

 

「いま白ウォズがバングレイの船落としたのに。

 白ウォズとバングレイで何か違う力同士が少しでも結集したことになって、ちょっとくらいダメージを受けてることになったりしない?」

 

 適当な事を言いながら剣を構え直す彼に、ツクヨミは背後で溜め息を吐いた。

 

「ならないでしょ……」

 

 

 




 
こいつまたキカイダーとハカイダーやってるな。
 
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