Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
真骨彫タジャドルを買えたので初ギガスキャンです。
「寄越せ―――!」
「っ!?」
アランに背後から飛びつき、その手からスペクターの眼魂を奪う。
大悟は即座にそれをドライバーに投入し、姿を変えた。
〈カイガン! スペクター!〉
〈レディゴー! 覚悟! ド・キ・ド・キ! ゴースト!〉
スペクターと同じトランジェントに体を換装。
そうしてから、黒と紫のパーカー。
ゼロスペクターパーカーゴーストを身に纏う。
スペクターが二本角のところ、ゼロスペクターは三本角。
スペクターが青い戦士ならば、ゼロスペクターは紫の戦士。
彼の顔面にスペクターとは僅かに違う、しかしよく似た模様が浮かび上がる。
「マコト! お前の狙いは俺だろう!」
疾走するゼロスペクター。
彼はすぐさま地面を踏切り、大きく跳躍した。
飛び越えるのは、暴れ狂うディープスペクターを遮るマシュ。
盾を飛び越えてマコトの背後に着地する大悟。
ディープスペクターが炎を引きずりながら、一気に振り返る。
二人のスペクターの視線が交錯し―――
対面した怒りが燃えるように、深淵の炎が加速した。
「マコト。俺たち家族の問題に、他人を巻き込むな。
お前が問題を抱えているからといって、よそ様を傷付けていい理由にはならない」
「―――何が俺たち家族だ……!
ただ命を弄んでいただけの奴が、父親面するな―――ッ!!
挙句にはそうやって造った俺たちを捨てて、今まで何をやっていたァ――――ッ!!」
ディープスペクターが拳を握る。
それに応え、ゼロスペクターもまた同じく。
互いの拳を正面から激突させ―――僅かな拮抗もなく、吹き飛ばされる大悟。
「……ッ! マコト!」
〈テンガン! ネクロム! メガウルオウド!〉
〈クラッシュ・ザ・インベーダー!〉
その光景を前に、ネクロム眼魂とメガウルオウダーを起動。
姿を変え、駆け出すアラン。
ネクロムへと変わりパーカーを纏った彼が、ディープスペクターへと後ろから組み付く。
「どうした、マコト!? 奴はお前の父ではないのか!?」
「うるさい! お前たちには関係ない! 邪魔をするなァッ!!」
力尽くでその組み付きを切り、押し退ける。
即座に二人のスペクターの間に割り込み、盾を構えるマシュ。
しかしそんな彼女の肩を押し退けて、大悟が前に出る。
「そうだ。これは俺たちだけの問題だ、手を出すな」
「っ、ですが……!」
マシュの前に出て、構えるゼロスペクター。
それを前に深淵の炎が燃え滾り、一気に加速した。
ディープスペクターの拳が、ゼロスペクターの胸に叩き付けられる。
盛大な破砕音と共に、吹き飛ぶ大悟。
最早何の感情が燃えているかも分からない。
ただ銀色の足が、地面に転がるゼロスペクターとの距離を詰めていく。
「俺たちを造り、俺とカノンを捨てて……!
何が究極の命だ! 何が進化した人類だ! 何なんだ、俺たちは―――!?
命を弄んで出来不出来を語り……! お前たちは何なんだ!!
よくできた人形を造れて満足か!? 答えろ……! 答えろぉッ!!」
倒れていたゼロスペクターのパーカーの襟を両手で掴み。
ディープスペクターが思い切り彼を引き起こす。
吊り上げられる黒と紫のスペクター。
「……そうだ。俺たちは、命を弄んだ。間違ってた……間違ったんだ。
そして、間違いを正すことが、できなかった」
「―――――!!」
思い切り振り下ろされる腕。
ゼロスペクターが背中から地面に叩き付けられ、盛大に跳ねる。
その顔面を殴打する、ディープスペクターの拳。
「だから逃げたのか!? 俺から! カノンから!
ダントンから逃げて! 俺たちから逃げて! 間違いを正すことから逃げて!
何が家族だ……! 何が父親だ――――!!」
幾度も拳が叩き付けられ、ゼロスペクターの角が砕ける。
トドメとばかりに、大きく振り上げられる炎の拳。
―――それが振り抜かれる前に。
ディープスペクターを、横合いから衝撃が襲う。
突撃してきたのはネクロム。
彼が全力でタックルを行い、ゼロスペクターを組み敷いたマコトを押し倒した。
すぐさまそれを振り解き、ネクロムを蹴り返すディープスペクター。
「―――ッ! 邪魔をするな!」
「……マコト、お前の感情の理由は私には分からない。
だが私にも分かることがあるすれば……自分の意思で家族を手に掛けようとするのは、辛いということだ。落ち着け。まずはそれから――――」
「黙れ―――ッ! そんな男は家族でも、父親でもない……!
俺に父はいない……! 父も、母も……! いるのはカノンだけだ!!」
ディープスラッシャーが現れる。
それが向けられるのは、ネクロムの背後で武蔵に引っ張られている大悟。
ディープスペクターの乱打によって、既に彼の変身は解除されていた。
「父と母と……! 兄と姉と!
そんな中に、人間として生まれてきたアラン……お前とは違う!!」
爆炎を押し固めたような弾丸が放たれる。
それは一直線に大悟へと向かい―――
その前に立ちはだかった、大盾に激突して霧散した。
押し込まれて地面を削りながら、しかし踏み止まるマシュ。
「マコトさん、一体なにが……!」
「―――お前たちには……関係ない!」
放り捨てられ、地面に叩き付けられるディープスラッシャー。
空いた手で拳を握り、彼は炎の翼を噴き上げた。
「フォーウフォー、フォフォーウ! フォー!」
べしべしと頭の上で足踏みするフォウ。
分かってるから、と。
頭の上を撫でまわしながら、立香は牢屋の外を見る。
そこにいるのは、変身を解除した男女。
ダークネクロムR、ジェレド。そしてダークネクロムY、ジェイだ。
彼らはアルゴスの指示で彼女たち―――正確に言えば、カノンだけだろうが。
その見張りをさせられているようだった。
「これから一体どうすれば……」
牢屋の中をふらふらと歩きまわる御成。
そんな彼に眉尻を上げ、アカリがその背中を叩いた。
「落ち着きなさいよ。まずは冷静になって―――」
「この状況で落ち着いていられますか!
いいですか? 我らは人質! しかもあのアルゴスという男は、眼魂を100個も集めると言っているのですぞ!」
両手で頬を押さえ顔を震わせる。
「15個でもあのような事が起きるのに、100個! 100個とは!
我らが捕まったせいで、世界は一体どうなってしまうのか……!」
「ごめんなさい……私のせいで、御成さんたちまで……」
「あいや! カノン殿のせいではございませんとも!
ええ、しかしどうしたものか……! ほんとにもう……!」
御成の様子を見ながら、立香は顎に手を当てる。
この牢屋は相手の本拠地にある空間。
ならば、ここから脱出した後は踏み込むことも選択肢だ。
あとはタイミングを見計らって動くだけだが……
バギリ、と。盛大な破砕音が響く。
咄嗟にそちらを見れば、黒い炎が牢屋の前で渦巻いていた。
「―――どこまでも牢屋に好かれているな、お前は。
だからこそオレとの邂逅があったと見るべきか……
フン、まあいい。いい加減、さっさと動き出せ」
彼は壊した牢の扉を投げ捨てながら、そう言って二人の敵に向き直る。
「エドモン殿!?」
「まだ呼んでないのに!」
すぐさま反応した二人が、ダークネクロムに変身。
迫る二色のネクロムを眺めながら、エドモンは面倒そうに表情を歪めた。
「助けを呼んだらそのタイミングで来る、などという幻想は捨てておけ。
少なくとも、今回はお前の指示など待っている余裕はない」
言って、軽くコートを翻す巌窟王。
―――コートの下で光に還り始めている体が見える。
ダメージを受けて消え始めた、などという状態ではない。
「エドモン、消え始めてる……!?」
「どうやらこの体を作った奴が死んだようだ。
少しくらいはオレの方で維持するが、そう長くは保たんぞ。
使い方は決めておけ、
「―――バングレイが……?」
光となって崩れた部分を黒炎で覆い隠し、エドモンが身構える。
ダークネクロムへと変わり、駆け込んでくる二人。
ネクロムRが黒い炎を見据え、周囲を探るように小さく首を振った。
「貴様、どこから……!」
「―――クハハ!
この身は貴様らの集めている英雄の魂と同類、されど真っ当なる魂とは相容れぬもの。
地獄よりこの世に生まれ落ちた呪い。即ち、
炎と共に黒い衣が翻り、相手に向け殺到した。
呪詛に燃える拳が叩き付けられ、腕を軋ませながらネクロムRが床を滑る。
即座にイエローから放たれる光弾。
対して放たれる黒炎を押し固めた光線。
二つの光が空中で激突し、炸裂した。
牢屋の前から押し返すように、苛烈に攻勢をしかけるエドモン。
彼の体の崩壊は止まらず、力を使えば使うほど進行していく。
「ああっ! エドモン殿!?」
悲鳴を上げる御成。
相手の様子を理解してか、ネクロムたちは無理な攻めはしない。
ただエドモンが自滅するのを待つように、防御を崩さずに戦い続ける。
「不味い……! 早く何か、逃げないと……!」
「でも、どこへ……!」
この建物が外観だけは見れたあの塔だというのは分かる。
だが、その塔の内部がどうなっているかなど分かるはずもない。
ここは相手の本拠地。
いまエドモンをおとりに逃れても、その後がどうしようもない。
出口も分からずに彷徨っている内にまた捕まった、では話にならないのだ。
「だったら――――!」
立香が自身の胸に手を当てて、目を細めながらサーヴァントの背中を見据えた。
「―――つまりマコトくんは、何らかの研究成果。
人造人間と言うべき存在、という理解でいいのかな?」
武蔵に引きずられてきた大悟。
彼の頭上から声をかけたダ・ヴィンチちゃんが、視線を向ける。
先程の会話で出てきた彼が人間世界に逃げて授かった子供、というのも嘘だろう。
それ自体に言うことはないが、こうなったからには説明が必要だ。
大悟が一度俯いて、しかし顔を上げてディープスペクターを見る。
盛大な激突音を立てながら、拳と盾が何度となく衝突。火花を散らしている。
「……ああ。マコトは……マコトと、カノンは。
俺とダントンが……究極の人類を創るための研究の中、生まれた子供だ」
大悟が口を開く。
その声が届いているだろうマコトが、動きを止める。
彼と戦闘していたマシュとアランもまた、足を止めて意識をそちらに向けた。
「自身の肉体を改造し、凄まじい性能の肉体を得たダントン。
奴の細胞を使い、培養カプセルの中で造り出された命。それが……」
「―――培養カプセル?」
いまいちピンと来ない武蔵が、片目を瞑って首を傾げる。
だが余程とんでもない事なのだろう、と。
とりあえず黙り、続きを促す。
「―――失敗した数は覚えていない。それでも、何千ではきかないはずだ。
眼魔の大気を克服した人類を創るため、俺たちは何万と……人間を造ることに失敗した」
「……失敗した? お前はあの光景を……!
あのカプセルの中で浮いてる連中を、失敗したで済ませるのかァ―――ッ!!」
ディープスペクターが加速する。
それに反応できたのはネクロムだけ。
マシュはその場で足を止めたまま、彼に横を抜き去られる。
立ちはだかったアランとマコトが組み合い、すぐさまネクロムが軋みを上げた。
「マコト……!」
「聞いただろう、アラン……! 俺は人間じゃない……!
―――人の命を弄ぶそいつや、ダントンに造られたものだ!!
分かった筈だ! そいつは放っておいちゃいけない……退けェッ!!」
ネクロムの両腕を弾き、その顔面を掴むスペクターの腕。
そのまま彼を地面へと叩き付け、深淵の炎が爆発する。
すぐに彼を手放したマコトは、顔を倒れたままの大悟へと向けた。
大悟を放り、即座に腰の刀に手を添える武蔵。
彼女が背に庇う大悟だけを見据え、更に炎を噴き上げるディープスペクター。
「そいつらのやってきたことが、デスガリアンやバングレイと何が違う……!
自分たちの望みのために命を弄んで……! そんな奴らに造られた俺は―――ッ!」
スペクターが飛ぶ。
炎を推進力にして、武蔵に構う事なく彼は一気に突っ込み―――
盛大な激突音と共に衝撃を撒き散らし、その突進を止められた。
自身の拳を塞き止めた巨大な盾を前にして、仮面の下で彼が歯軋りした。
「邪魔を―――! するなと言っているのが……ッ、分からないのかッ!!」
「分かりません―――!」
ラウンドシールドが振るわれ、スペクターの拳が逸れる。
そのままの勢いで地面に叩き付けられた銀色の体。
そんな状態からでもパーカーが炎を噴き出し、強引に体勢を立て直す。
マシュは盾を引き戻し、地面に突きたてながらスペクターと睨み合う。
「―――だったら教えてください。
マコトさんは、何を邪魔して欲しくないんですか?」
「なにを……!」
「マコトさんはいま、何のためにお父さんを傷つけようとしているんですか!
命を弄ぶ悪だから? 二度とそんなことをさせないため?
―――そんな自分でも納得していない事で、誰かを傷つけることは絶対に間違っています!!」
そうして盾を握り直すマシュ。
彼女の背を見ながら、ゆっくりとダ・ヴィンチちゃんが目を細める。
「だからわたしは絶対に退きません―――!
マコトさんのお父さんを守るためじゃない、マコトさんの心を守るために絶対に退けない!!」
一切の虚飾なく、真摯に自分を見据える少女の目。
その光に、ディープスペクターが微かに身動ぎした。
「守る価値なんかあるものか……! そいつも! 俺も!
……あんな研究の中から生まれた俺が……! 一体、何だっていうんだ……ッ!」
「―――私の友だ……ッ!」
叩き付けられ、変身が解除されたネクロム。
そのダメージに体を震わせながら、アランはしかし立ち上がった。
マコトが首だけをそちらに曲げ、そちらを見やる。
「マコト……憶えているか、私とお前が二度目に会った時だ……」
「……………」
黙り込むスペクターは、言われた過去を想っているのか。
立ち上がり、ネクロム眼魂を握り締めながら。
アランは目の前のマコトに叫ぶ。
「私は大帝の一族として、眼魔の民に傅かれていた。
戦闘訓練さえも誰もが手を抜き、私に負かされるために戦っている者ばかり。
そんな中でお前は、初めて私の前に立ちはだかる好敵手になってくれた。
大帝の一族ではない、私という個人に向き合ってくれる初めての相手だった!」
拳の中で、ネクロム眼魂が熱を帯びる。
高ぶる感情が神秘エネルギーを生成し、周囲に熱気を放出していく。
それを気にするでもなく、アランはただマコトへと向き合った。
「お前の生まれなど、立場などどうでもいいと私に言ってくれたのがお前だろう!!
だから言わせてもらうぞ! お前の生まれがどうしたというのだ!
それが私とお前が友であることに、何の関係がある!! ないはずだ!!」
ネクロム眼魂が白煙を吐き出し、熱量の中で黄金に輝く。
その眼魂を握り締めながら、アランはゆっくりと腕を上げた。
「そして、友を守りたいという想いに理由など必要ない……!
お前の生まれなど関係ない……! お前を守るためなら、私は何度だって立ち上がる!
それが……お前の前に立ちはだかるためであってもだ!!」
心の生み出す熱の中で、ネクロム眼魂がカタチを変える。
その熱に導かれるようにアランはそれを起動し、メガウルオウダーへ装填。
ユニットを立ち上げることなく、メガウルオウダーを動作させた。
想定されていないエネルギーに反応し、メガウルオウダーがエラー音を吐く。
―――が、それを凌駕して眼魂が光を放った。
「―――変身!!」
〈友情カイガン! バースト!〉
アランの体がトランジェントに覆われる。
ネクロムの白だけではない。
その上から更に、黒と金の装甲が装着された新たなる姿。
そこに同じく黒と金のパーカーを身に纏い、彼は変わった。
〈俺らバースト! 友情ファイト! 止めてみせるぜ! お前の罪を!〉
黄金の炎が燃え上がるような造形の、ネクロムの新たな顔。
それを見て、微かにディープスペクターが肩を揺らした。
「お前の心が叫んでいる。苦しい、と。
マコト……自分の心を殺すな。お前が望んでいるのは、こんなやり方ではないはずだ!」
「アラン……お前に―――っ! 何が分かる!!」
奔る銀色。
炎を引きずり、スペクターがネクロムに向かう。
だがその前に立ちはだかるのは、ラウンドシールド。
「また……!」
「何度だって――――!」
盾と拳が激突し、スペクターが僅かに押し返される。
瞬間、盾を跳び越えネクロムが躍りかかった。
金色に燃える拳を振り被り、大上段から振り下ろす。
「私に分かるのは……!
今ここでお前を止められなければ、きっと誰もが後悔するということだ!
父を手にかけたお前も、それを止められなかった私たちも!
だから止める。絶対に! 私の心はそう望んでいる! お前の心はどうだ、マコト!!」
「知った風なことを――――!!」
銀と金。それぞれの色に発光する拳を振り上げ、突き合わせる。
ネクロムの腕を払い、その胸に一撃を叩き付けようと振り抜くスペクター。
だがその拳を手首を掴んで止め、ネクロムが反撃に再び拳を握る。
振るわれる拳撃を同じように手首を掴んで止め、組み合うようなかたちに。
拮抗する両者。
力を最大限発揮しているゲキコウスペクターと互角。
その事実に対して、マコトが息を呑んだ。
組み合った体勢から相手を引き込んで、頭突きを慣行するネクロム。
互いの角が相手の頭部に炸裂し、揃って吹き飛ばされる。
「ッ、―――俺の心は、ただひとつ……!
止められるものなら、止めてみろォ――――ッ!!」
〈ゲンカイダイカイガン! ディープスペクター! ギガオメガドライブ!!〉
深淵の炎が噴き上がり、ディープスペクターが舞い上がる。
跳んだ彼が取る体勢は、蹴撃のもの。
両翼が勢いよく噴き出し、その推進力を全て蹴りの威力に変えた。
破壊の槍と化したディープスペクターを前に。
盾を構えて、マシュが前に出る。
「―――それは全ての瑕、全ての怨恨を癒す我らが故郷……!
顕現せよ、“
立ち誇るのは白亜の城塞。
円卓たる盾を基点とし、その威容がスペクターの前に立ちはだかる。
正面から城門へと激突したことで、拡がっていく衝撃の渦。
無敵の城は揺るがない。
それを支える少女の目が前を向いている限り。
盾を通して伝わってくる衝撃に耐えながら、マシュが叫ぶ。
「たとえ、始まりが人形のようなものだったとしても……!
わたしたちは今、此処にいる……! 人間として、此処にいる!!
どんな理由で造られたのだとしても、わたしはわたしとして望んで此処にいる―――!!」
「……っ!」
白亜の城を蹴り付ける足から返ってくる感覚。
絶対に揺るがぬという意思が、ディープスペクターを押し返していく。
「……わたしは、人として当たり前のものを、生まれ持ってはなかったけれど……!
生まれてから出会った、当たり前の人として生きる人が、わたしにくれた……!
だから、きっと……! わたしには、生まれのせいで足りないものなんてない……!
それは―――マコトさんだって同じはずです!!」
「だと、してもォ――――ッ!!」
びくともしない城に対し、それでも死力を尽くす。
ディープスペクターの力でさえ、それを揺るがすには足りない。
マシュの足が地面を蹴り、その腕が盾を手にしたまま大きく押し込まれる。
蹴撃の威力が殺し切られて、銀色の体が吹き飛ばされた。
それでも負けじと、マコトはドライバーのトリガーに手をかける。
その彼の前に、黄金の光が飛び込んできた。
「友よ……! 心の叫びを聞けぇ――――ッ!!」
〈友情ダイカイガン! バースト! オメガドライブ!!〉
迫る黄金の光。
それに対して跳び上がる暇はなく、マコトがトリガーを引くと同時に拳を握る。
深淵の炎で燃え上がる拳を掲げ、彼は大きく一歩踏み込んだ。
「――――ォオオオオオッ!!」
〈ゲンカイダイカイガン! ディープスペクター! ギガオメガドライブ!!〉
空を裂き殺到する金色の流星に、炎の拳が激突する。
互いの力がせめぎ合い、勝利を得るのはより強い力を生む想い。
競り勝ったのは、仮面ライダーネクロム・友情バースト魂。
彼の一撃を止めきれず、スペクターの体が宙を舞う。
「ぐ、ぁ……ッ!?」
地面に落ちて、勢いのままに転がっていく銀色の体。
その回転が止まった頃、限界を超えたディープスペクターの変身が解除された。
それを見届けて、すぐさま大悟は歩き出す。
武蔵がちらりとダ・ヴィンチちゃんを見て、首を横に振る彼女に肩を竦める。
盾を支えに立つマシュの横を過ぎ。
息を切らしたアランの横を過ぎ。
大悟が何とか、一人でマコトの前にまで辿り着いた。
「マコト……すまなかった。俺たちの間違いが、お前たちを苦しめた」
彼がそう言いながら、ゆっくりと手を差し伸べる。
しかし歯を食い縛ったマコトは、その手を払って自分だけで体を起こす。
「黙れ……! 何がすまなかった、だ……!
間違いから逃げることしかしてこなかった奴が、反省してるふりで誤魔化すな……!」
そう言って、マコトは顔ごと父から視線を逸らす。
―――そうして、
「―――そうとも。私の許から逃げて、お前たちの親である事からも逃げた男だ」
閃光が大悟の胸を食い破る。
撃ち抜かれた彼の胸の中で、眼魂が爆発して破片が散った。
ぐらりと大悟の体が揺れて、マコトの方へと倒れ込む。
それを受け止めながら、彼は呆然と父の姿を見る。
その父は必死に自身を撃ち抜いた相手を見上げ、口を開く。
「ダン、トン……」
「久しぶりだな、ゴーダイ。いや、大悟だったか。
―――ああ、勘違いしないで欲しいのだが。
私の許から逃げたお前に思うところはあるが……さっきまでは殺すつもりはなかったんだ」
そこまで口を開いたダントン。
彼の首を目掛けて、双剣が疾駆する。
ダントンがそんな攻撃に対して示した反応は、片腕を上げるだけ。
黒い鎧甲に覆われるダントンの腕。
しかし閃く二刀によってそれは容易に斬り飛ばされて―――
次の瞬間には新たな腕が生えていた。
「っ!?」
「だがな? マコトたちを生んだ私たちの研究を間違いなどと……そんな物言いを許すわけにはいかないだろう」
ダントンの体の変化が全身に及び、黒い怪物へと変貌する。
進化した肉体、エヴォリュード。
彼は腕を一振りして武蔵を追い払うと、歩みを始めた。
「あの研究を経て、マコトたちは生まれてきてくれた。
何より大切な息子たちを得た、奇跡だったんだ。
確かに失敗の方が遥かに多かった。犠牲にした命は数え切れないほどだろう。
辛い思いをした、悲しい思いをした。けれど、間違ってはいなかった」
エヴォリュードが腕を上げ、大悟へと向ける。
即座に割り込んだマシュの盾。
そこに衝突するのは、神秘エネルギーの弾丸。
「ダントン……! 貴様―――!」
「お前も久しいな、アラン。
昔のお前は私に手も足も出なかっただろうが……少しは成長したかな?」
マシュが守りに入ったところで、ネクロムが動く。
黄金の光を纏い、突き出される拳。
それに対してエヴォリュードは同じく拳で返し―――
激突させた拳の勢いで、ネクロムだけが押し返された。
―――致命傷を受けた父を抱え、マコトの動きが止まる。
治療などという話ではない。
眼魂が砕けた以上、彼はここから消える。
それだけならば、問題ない。
眼魂とは肉体を封印した状態で活動するためのだけのボディ。
壊れたら一度肉体に戻り、再び眼魂を起動するだけ。
深海大悟が、肉体を寝かせて眼魂で活動しているだけならば。
「―――マコト」
「…………」
「……マコトと、カノン……この名前はな、龍がつけてくれたものなんだ。
眼魔世界からあちらの世界に行って、右も左も分からない俺には……あっちの人間らしい名前が分からなかったから」
今にも消えそうな体を動かし、マコトを見上げる大悟。
「あいつみたいな、父親が良かったよな……
俺も、あんな父親になりたかった……でも、なれなかった……
タケルくんは元気か? きっと、龍みたいな強い人間に成長したんだろう……?
……俺は、お前たちに、何も遺してやれなかった……名前すら」
「だったら、なんで……俺たちを……!」
「―――何も遺せない父親なりに、せめて、お前たちには平和に暮らして欲しかった……
眼魔のことなんて何も知ることなく、ただの人間として……
結局……何の意味もなかったがな……」
自嘲するように息を吐き、何とか彼は手を伸ばす。
そうして伸ばした手が取るのは、マコトの手。
掌を重ねて、彼は今残っている力で精一杯に握り締めた。
「龍を見ている内に、気付いたんだ。眼魔は……間違えていたんだと。
誰かと結ばれ、子を作り、親になり、育んで……いつか死ぬ。
自分がいなくなることに備えて、子に全てを受け継いでいく。
そんな当たり前のことが、誰にも出来なくなっていた」
眼魔世界の大気汚染が原因で起きた生活の変化。
肉体を保存して、眼魂で生活すること。
それに対抗して打ち出された、究極の肉体による人間の進化。
どちらも不死身を得て変わる事を目的としたもの。
「イーディスのやり方も、ダントンのやり方も、どこかが間違っていた。
最初の想いは、何も間違っていなかったはずなのに。
どっちも、眼魔世界に住まう人を救うためのものだったのに」
「不老不死は間違っていた、と?」
マコトの抱えた大悟。
その胸を覗き込み、ダ・ヴィンチちゃんが眉を顰める。
眼魂は完全に粉砕されており、修理が見込める状態ではない。
そして、この眼魂はただ活動するためのものではなく……
「今いる人間だけで不死身になって、永遠に正しい世界を回していける。
そんな世界に生きる連中にとって、子供は必要なものか?
そうじゃないっていうなら、俺にとってはそんな世界間違いでしかない」
大悟は皮肉げに笑い、再びマコトを見上げた。
「これでも何百年と生きたが……最期に思い出すのは、子供との思い出ばかりだ。
この幸せが得られない世界は、御免だな……」
マコトと、カノンと。
その奥に誰かを見るように、大悟はゆっくりと目を細めた。
「悪いな、マコト。俺は何も出来ずに勝手に死ぬ……カノンを頼む。
そして、間違えたのは、俺たちだけだ。あの命は全て、全部俺たちの罪だ。
生まれてきてくれただけのお前が、気に病む必要はない。
どんな方法で生まれてきたのだとしても、お前たちは、人間として生きて……」
彼の体が砕けていく。
そのまま消えていく深海大悟。
「―――父さん……」
―――最期に、大悟の口元が緩んで微笑む。
その姿が完全に腕の中から消えた後、マコトが両の拳を握り締めた。
そんな彼の懐から零れ落ちる、三つの眼魂。
眼魂が一つふわりと浮き、マコトの背後に紫色のパーカーが浮かぶ。
『いつまでそうしておる。マコトよ』
「ノブ、ナガ……」
『あの男が遺したものは、本当に何も無かったか?
そうでないと信じるならば、立ち上がれ。わしらと共に。
もはや、思い悩んでいる時間など残されてはいないぞ』
飛び回るツタンカーメン、そしてフーディーニ。
彼らがマコトの様子を窺いながら、飛んでいる。
彼らの視線の先では、ダントンと皆の戦闘があり―――
そこで、マシュの体が突然発光を開始した。
「――――っ、先輩……!?」
「オーダーチェンジ……!」
その反応をいち早く見極め、ダ・ヴィンチちゃんは声を上げる。
それはつまり、この場からマシュが消えるということだ。
入れ替えるサーヴァントがいない今、どうやって使用したのかは分からない。
代わりの戦力がこちらに来るならいいが、確実にそうなるとは限らない。
だとすれば、ダントン相手の戦線が決壊する。
マシュという盾がなければ、武蔵の攻めも消極的にならざるを得ない。
そうすれば援護し切れず、ネクロムが押し切られるのも時間の問題。
いや、それ以上に―――
「ノブナガ……ツタンカーメン、フーディーニ。
力を貸してくれ。父さんたちが遺してくれた全部を、俺は受け取って進む」
『うむ』
ツタンカーメンのパーカーが力を発揮し、頭上に時空の歪んだピラミッドを作る。
そうして、すぐさまツタンカーメンとフーディーニの眼魂が飛んだ。
飛んでいく先は、マシュのところ。
光に包まれ消え始めた彼女についていくように、二つの眼魂は光となって消えていく。
「うん?」
ダントンがネクロムを弾き、足を止める。
マシュと共に消えていくのが、英雄眼魂であると理解してだ。
あれらはカノンの命との交換条件。
それを逃がすわけにはいかず―――
しかし、追おうとする彼の前にマコトが立ちはだかった。
「どうした、マコト。あの眼魂はカノンと引き換えにするもの。すぐに追わねば」
「ダントン。あんたに友はいるか?」
息子からの静かな問いかけに、首を微かに傾けるダントン。
「かつてはいた。アドニス、イーディス……ゴーダイもそうだったとも。
だが奴らは私の考えを否定し、私の友ではなくなった」
「そうか……」
そこで止まった彼の前で、ダントンも首をひねる。
そのタイミングで、ツタンカーメンの残した時空の歪みが砕け散った。
中から降ってくるのは、二つの眼魂。
「……俺には、俺の過ちを命を懸けて止めてくれる友がいた。
だから……あんたに友がいないと言うのなら、息子である俺がその間違いを正す」
マコトがドライバーを開く。
降ってくる二つと合わせ、ノブナガもまた眼魂となり彼のドライバー目掛け飛んでくる。
三つの眼魂が融合して、そのままゴーストドライバーへと装填された。
「私の間違い? 何を言うんだ、マコト。私は何も間違ってなどいない。
どうしてしまったんだ、やはり大悟が死んだのは辛かったか?
だが仕方なかったんだ。奴は私たちの研究を……お前の生まれを否定した」
「―――ああ。間違ってしまったんだ、あんたたちは。
何も間違ってなかった夢のために、間違った道を進んでしまった。
だから……息子である俺が、あんたたちの夢と罪を全部纏めて背負ってやる」
マコトがドライバーのトリガーを掴み、作動させる。
放たれるのは黄金のパーカー。
黒いトランジェントに変わったマコトが、そのパーカーを身に纏う。
〈カイガン! ノブナガ! ヒデヨシ! イエヤス!〉
〈果たすのはいつ! 天下統一!〉
両肩、そして頭部を覆うフードにあるのはホトトギスの顔。
脛まで伸びた黄金の衣の裾を翻し、スペクターはエヴォリュードに向き直る。
「あんたたちが本当に願った夢を……
眼魔の人達を救うという夢を……俺たちが今度こそ、本当の意味で叶えてみせる。
無理に進化する必要なんかないんだ。
たとえ道中で俺が果てても、夢を共にした誰かがいつか辿り着いてくれる。
それが……人間なんだ」