Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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昔日!在りし日の愛の行方!2016

 

 

 

「―――――」

 

 瞑目し、墓前に手を合わせていたマコト。

 彼がゆっくりと、目を開きながら立ち上がる。

 大天空寺にある天空寺家の墓、天空寺龍が眠っている墓だ。

 

 タケルについて、埋葬できるものはない。

 体も、眼魂も。

 何かが残っていたとしても、全て眼魂島と共に失われてしまっただろう。

 

「……この星の生き物は、みんなどこかで繋がってる」

 

 マコトがその声に振り返る。

 すると、同じく手を合わせていた大和が奇妙な顔をしていた。

 

「命同士が繋がりあって、この世界を未来を繋ぐために生きていく。

 そうやってみんな、ここまで生きてきて……タケルくんもそのために生きて。

 ―――それでも、辛いね」

 

「……そうだな。だが、あいつが果たせなかったものは俺が果たす。

 アデルを止めて、あの世界の人間を救う。そのためにもガンマイザーを破壊する。

 それが俺のやるべきことだ」

 

 マコトはすぐに前を向く。

 彼の後ろで大和もまた立ち上がって―――ふと、思いついたように。

 視線を別の方向を向けた。

 

「どうかしたか?」

 

「―――うん。ついで、って言い方はあれだけど。

 母さんのお墓、行ってこようかなって」

 

 彼の母親の眠る場所が大天空寺にあるわけではない。

 少し、歩くことになるだろう。

 

 だがバングレイのおかげで顔を合わせていたからだろうか。

 ちゃんとこれまでの事を報告しておきたい。

 ふとそう思ったのだ。

 

「そうか、ならこっちの片づけは俺がやっておく」

 

 マコトは頷くと片付けを始めた。 

 そんな彼の背中を見て、大和が視線を少しだけ下げる。

 

 二つの戦場。地球と眼魂島でほぼ同時に起きた戦い。

 その内容は、当然共有している。

 マコトはその戦いの中で知った全てを、皆で共有させた。

 彼の出生―――そして、彼の家族。

 

 問うべきではないかもしれない。

 彼が話してくれたからと言って、踏み込んでいいものかは別だ。

 そうと分かっているのに、大和は問わずにはいられなかった。

 

「……マコトくんの、お父さんを恨む気持ちってまだ残ってる?」

 

 遠慮がちに、しかし確かに言葉にされた問いかけ。

 その言葉を聞いて、彼は空を見上げるように顔を上げた。

 

「……そうだな。きっと一生、消えることはないと思う。

 どうあれ、子供の頃抱いた感情に嘘はないんだ」

 

 ―――あえて深海大悟の事にだけ、彼はそう言及した。

 

「だが仮にそれが恨みだったとしても、それは繋がりなんだ。

 それがどんな気持ちであれ、強い想いだからこそ……

 自分の中に収まりきらないくらい、強い感情になるんだ」

 

 分別しようと思えば、幾らでも良いも悪いもあるけれど。

 それでも一つに纏めようと思えば、“強い想い”と呼ぶことができる。

 だから、その想いを否定することだけはしない。

 

 荷物を纏めて、マコトが踵を返す。

 

「だから俺は目を背けない。

 愛情を持っても恨んだ事実は消せないし、逆に恨みがあっても愛情は消えない。

 綺麗に整ってはいないかもしれないが……どんなに歪でも、それが俺たちにとっての正しい繋がりだって信じてる」

 

「そっか……ごめんね、変なこと訊いちゃって!」

 

「いや……」

 

 大和に視線を合わせ、マコトは続けて何事か言おうと口を開き。

 しかし、彼はそのまま口を噤んだ。

 そうして一度頷いて、彼は歩き去っていく。

 

 歩き出すマコトの背を見送ってから、大和は空を見上げた。

 

「―――繋がることを拒否してたのは……母さんの最期の言葉を蔑ろにしてたのは……恨むってカタチですら繋がろうとせず、叔父さんのとこに逃げたのは……俺の、方か……」

 

 やり直せる。間違えたことは正せばいい。

 そんなことは分かっている。

 

 きっと彼らに比べて、自分は恵まれている。

 ジューランドに帰れず、家族に会えない仲間たちと比べても。

 自分の意思で一歩踏み出せば、すぐ解決する問題なのだろう。

 

 けど、それでも―――

 

 大和は大きく頭を振って、母の墓所を目指して走り出した。

 

 そうして走り抜け、辿り着いた墓地。

 そこには、二つの人影があった。

 大和はそれを認めて、思わず声を張り上げた。

 

「ラリーさん!?」

 

「うん? おお、大和! 久しぶりじゃないか、ユー!」

 

 母の墓前に立っていたのは、ゴリラのジューマンであるラリーだった。

 ―――更に、その奥にもう一人。

 

「それに……」

 

 大和の視線が向くのは、白髪の男性。

 いつか見た鷹のジューマン。

 最後の王者の資格を持っているはずの、大和の恩人。

 

「あなたは―――」

 

 彼はちらりと大和を見て、そのまま踵を返した。

 歩き去ろうとするその背中を見て、大和は必死に追い縋ろうとする。

 

「待ってください! 何でここに……!」

 

「バド……」

 

 ラリーが漏らしたバド、というのが彼の名か。

 歩き去ろうとした彼を追い抜いて、その前に飛び出した。

 そうして、正面から視線を交差させる。

 

「あなたは……昔俺を救って、この王者の資格を渡してくれたジューマン。

 そう、ですよね」

 

 自身の王者の資格を懐から取り出し、バドに見せる。

 子供の頃の大和は、これを通じて彼のジューマンパワーを貰った。

 注ぎ込まれた命の力の暖かさを憶えている。

 

 命だけではない。大和はあの日、勇気をもらったのだ。

 何の関係もない大和を、あの鳥男は助けてくれた。

 もう大丈夫だ、と。励ましてくれた。

 

 彼が、実践してくれた気がしたのだ。

 母の言葉―――この星の生き物は、みんなどこかで繋がっている。

 その言葉を証明するように、彼は大和を助けてくれたのだから。

 

「―――それが、どうした?」

 

 低く、平坦な声で問い返される。

 

「……ありがとうございました。

 あの時、あなたがこれを俺にくれてなかったら……多分、そのまま。

 あなたは俺の命の恩人です」

 

 言いながら深々と頭を下げる大和。

 自身の前で腰を折る彼を見て、バドは微かに目を細めた。

 

 数秒そうしていた大和は、頭を上げると同時にバドを問い詰める。

 

「でも、どうして王者の資格を盗むようなことをしたんですか。

 俺の仲間たちも、ラリーさんも、他にもこっちの世界にジューマンはいた。

 何で彼らをこっちの世界に閉じ込めるような事を……」

 

 大和の言葉にバドが眉を顰めた。

 

「……取り残された者には悪いとは思っている。

 だが、再びリンクキューブにこれを嵌める気はない」

 

 対して、バドが懐からキューブを持ち出した。

 それは王者の資格。

 ジュウオウチェンジャーに変化する前の、王者の資格そのものだ。

 

 大和たちが持つ五つの王者の資格。

 そしてバドが持つ六つ目。

 これさえ揃えば、恐らくリンクキューブは起動するのだろう。

 そうすれば、ジューマンたちは帰れるようになる。

 

 だがそうする気はない、と。

 バドは一切躊躇なくそう言い切る。

 

「何で……!」

 

「決まっている。あんな世界との繋がりなど、無い方がいいからだ」

 

 大和の言葉を遮って、バドは怒りさえ滲ませながらそう断言した。

 その態度に呆気にとられながら、彼の背後でラリーが浮かべる神妙な顔が目に入る。

 ラリーが肯定も否定もしないという事実に、更に混乱する。

 

「それは一体、どういう……!」

 

 詰め寄ろうとする大和を視線で制し。

 浮き上がった怒りの感情を押し殺すように、彼は一つ息を吐く。

 そうしてから、彼は続きを語り出した。

 

「……リンクキューブは、この世界とジューランドを相互に繋ぐもの。

 ジューマンがこちらに来るならば当然、同じように人間がジューランドに行くこともある」

 

 それはそうだろう、と。

 大和もまた、ジューランドに行った際に仲間と出会ったのだ。

 バドが子供の頃の大和に与えた王者の資格をリンクキューブに嵌めた結果。

 

「リンクキューブの存在も、ジューランドの存在も。

 こちらの世界では大っぴらには知られていない。

 ならば必然、ジューランドに来るような人間は偶然迷い込んだ遭難者でしかない。

 ……お前がそうだったようにな。

 お前の場合、俺が王者の資格を渡していなければ起こらなかったことではあるが」

 

 バドは手にした王者の資格―――

 大和が王者の資格をリンクキューブに戻した後、改めて奪った最後の一つ。

 それを懐に収めながら、言葉を続けた。

 

「ではその遭難者は今までどうなったと思う?」

 

「どうなった、って……」

 

 彼と出会ったジューマン―――セラ、レオ、タスク、アム。

 全員が人間のことなどよく知らなかった。

 存在は知っていても、会ったことなどなかった。

 ジューランドの歴史に詳しいタスクだって、人間がジューランドに迷い込んだ事例なんて知らなかった。

 

 バドが王者の資格を盗んで十年程度。

 この十年人間とジューマンの行き来がないのは当然だ。

 けれどそれ以前の記録も―――

 

「ジューランドの存在を隠すために、全て処刑された」

 

 淡々と、バドはその事実を口にした。

 ジューランドの存在、ジューマンの存在。

 それを隠すために、口封じに処分されるのだと。

 

「え……?」

 

「お前たちが大王者の資格を得る戦いを、俺も見ていた。

 その時に初代大王ケタスが語っていたこともな。

 大王にとって地球は故郷で、人間は同胞と呼べるものだったかもしれない。

 だが今のジューランドは、この世界を外敵としか見ていない。

 そんな世界との繋がり、どうして残す必要がある」

 

 淡々と語っていた彼の言葉に険が混じる。

 

「それぞれの世界で互いに勝手に暮らせばいい。

 少なくとも互いに排斥しあうよりは、ずっと健全だ」

 

「でもレオやセラ、アムにタスク! ラリーさんや、ペルルくん!

 今のジューランドにだって、人間と分かり合える人が……!

 分かり合いたい、って言ってくれる人がいます!」

 

 地球とジューランド。

 もしかしたら、今まではそこに諍いがあったのかもしれない。

 けど変われる。もっと正しい形で、繋がり直せる。

 

 ジューマンが人間を怖がるのは仕方ない。

 人間がジューマンを怖がるのだって仕方ない。

 けど、人間とジューマンは対話できるのだ。

 今から変わることだって、不可能ではないはずだ。

 

 少なくとも、人間とジューマンが仲間になれると……

 一つの群れを作れると、風切大和は知っている。

 

「そうでない者もいる。

 そして少なくとも、ジューランドで権力を持っているのはそういう者たちだ」

 

「だからってそんな風に諦めるなんて……!」

 

「―――いちど敵として見定めた相手を。繋がることを拒否した相手を。

 お前はわざわざ、今更だが受け入れてみよう、などと思えるのか?」

 

 問いかけてくるバドの言葉。

 すぐに叫び返そうとして、大和が口が動きを止めた。

 バドの姿越しに向こうに見える、母の墓。

 

 ―――言えない。

 受け入れられる、なんて。

 受け入れられないから、ずっと大和は逃げ回っているのだから。

 

 歯を食い縛り、俯く大和。

 それを見たバドが一瞬だけ目を細めて。

 そのまま目を瞑り、再び歩き出した。

 

「デスガリアンたちとの戦いが終わった後……

 最後にもう一度だけ、リンクキューブを起動する。

 こちらにいるジューマンは、その時にジューランドに帰れるようにしよう。

 その後、王者の資格を破壊して、二つの世界の繋がりは完全に断ち切る」

 

 大和とすれ違い、彼がジューマンの姿に変わる。

 赤い翼を大きく広げ、飛び立つバド。

 

 強く拳を握り締める大和の肩に、大きな手が置かれた。

 

「気負いすぎるな、大和。これほどの規模の話だ……

 誰もが納得する答えなんかないんだ。だから……」

 

 慰めの言葉に、大和の顔が歪む。

 そうかもしれない。確かにそうなのだろう。

 けど、納得できないのはそこじゃない。

 

 ―――自分だ。

 バドの意見に大丈夫だ、と食って掛かれなかった自分。

 それがどうしようもなく許せなかった。

 

 

 

 

『準備の方、万全に整いました』

 

 アデルの目の前。

 通信先でそう言って頭を下げるイゴール。

 

 デミアの普及はなされた。

 これもデスガリアンたちのおかげだろう

 あれらが暴れてくれていたおかげで眼魔からは目線が逸れた。

 そしてその被害のおかげで、デミア普及の大義名分が得られた。

 

「……アルゴスは消え、天空寺タケルも消え、デミアの準備は整った」

 

 で、あれば。

 後はデミアのサーバーを起動するだけ。

 そうすることで、この世界は眼魔のように完璧なものになる。

 

 祈りの間に設置した玉座。

 そこに腰掛けたアデルが、頭上を見上げた。

 

『天空寺タケルの消滅は不確定事項、警戒を解くべきではありません』

 

 ―――ガンマイザーが囀る。

 ほぼ半数にまで削られた、七枚のプレート。

 それらは眼魂島の消滅を理解してからも、ずっとこの様子だ。

 

 眼魂島には偵察用の眼魂を幾つか潜り込ませ、ある程度の情報は得ている。

 アルゴスに勘付かれないように隠密に、だ。

 故に近づきすぎることはできず、全ての情報を得られたわけではない。

 

 だがそれでも。

 アルゴスが失敗したこと。天空寺タケルが消滅したこと。

 それらの情報は得られている。

 

 天空寺タケルは確かに一度、完全に消滅させたと思ったところから復活した。

 だがそのようなこと、二度も三度も起きるはずもない。

 そうでなくとも、現時点では復活が確認されていない以上、考慮に値しない。

 デミアプロジェクトが完遂すれば、個人の強さなど何の関係もないのだから。

 

 あの戦いで一番痛いのは、英雄の眼魂が消滅したらしいことだ。

 グレートアイへの接続方をまた別に考えなくてはならない。

 

『ですがアデル様……天空寺タケルは消滅しましたが、同時に……』

 

「―――スペクターか。

 奴が天空寺タケルと同等の力を得たのは間違いない。

 少なくとも、あのダントンを葬り去る程度の力を」

 

 つまりはガンマイザーを打倒し得る力。

 不死身のガンマイザーを破壊できるかどうかはまだ分からない。

 だが、破壊できると想定して動くべきだろう。

 

「……だが、邪魔させない方法は簡単だ。

 次にデスガリアンが暴れたタイミングで、デミアプロジェクトを最終段階へ移行。

 イゴール、いつでも起動できるようにしておけ」

 

『はっ! このイゴールにお任せあれ!』

 

 派手に暴れて目を引いてくれていたデスガリアン。

 それこそが、眼魔の作戦がいとも簡単に準備を終えられた理由だ。

 ならば今回もせいぜい利用させてもらうだけだ。

 

 通信が切れて、静寂が戻ってくる。

 その場にガンマイザーを浮かべながら、一人で佇むアデル。

 目を瞑り、玉座に体を預け。

 眠るようにしていた彼が、微かに首を傾けて瞼を開いた。

 

 彼の視線の先にいたのは、姉。

 アリアの姿だった。

 

「……アデル。あなたはこれ以上、何をしようと言うのですか。

 ―――彷徨っていたアルゴスも眠りについた。

 兄上と同じ間違いを、あなたもまた犯すつもりですか?」

 

「兄上と同じ間違い? ―――いいえ、そのようなことは。

 ですがアルゴスの最期の姿は、失敗談として真摯に受け止めていますよ」

 

「アデル……!」

 

 思わず一歩踏み出した彼女の前に、プレートが一枚。

 降りてきたガンマイザーは魔人に変形することこそない。

 が、それがどうにかできるものではないと、アリアも知っていた。

 

 アデルが玉座から立ち上がる。

 

「そう怒らないで頂きたい、姉上。兄上の最期は、確かに私に響きました。

 ―――父上は、死なない人間を目指した。兄上は、人間を人間ではない死のないモノに変えることを。そして、どちらも失敗した。その経験は得難いものです。きちんと役立てましょう」

 

「……何をするつもりです」

 

「デミアによって、世界を変える。いや―――私が世界になる」

 

 ―――デミアプロジェクト。

 それを実行するのはイゴールが目を付けた、地球における眼魔の前線基地。

 巨大IT企業、ディープコネクト社。

 

 電子コンタクトレンズ「DEMIA」。

 ディープコネクトが、災害に際して円滑な情報共有をするために提案した次世代ネットワーク機器。コンタクトレンズとして装着するだけで、その人間は巨大ネットワークと接続し、常に最新の情報に接続していられる。

 

 デスガリアンのおかげで、これは人道支援を名目に既に世界中にバラ撒けた。

 宇宙からの侵略者だ。

 いつどこを襲ってくるかも分からない、という事が世界規模で展開する理由になった。 全人類とは言えまい。が、人類の多くにこれは既に普及している。

 

「世界になる……? 一体何を……」

 

「人の生き方なり、有り様を変えよう、などという考えが間違いだったのです。

 父上のやり方であれ、兄上のやり方であれ」

 

 アデルが腕を掲げれば、全てのプレートが降りてくる。

 プレートは全て姿を変え、アデルと同じ顔を浮かべた。

 

「もっと根本的な部分から正さねば、完璧なものにはなり得ない。

 あの二人はその命をもって、我らにそう示してくださったのですよ」

 

「アデル……!」

 

「個々の命に目を向けるのはもう止めましょう、時間の無駄だ。

 真に完璧なる指導者となるならば、人が生きる世界を管理する命の一つではいけなかったのです。世界そのものとなり、全てを自身の一部として制御しなければならなかった」

 

 ガンマイザーを従えて、アデルはそう断言する。

 彼の前に立つアリアがきつく眉を吊り上げた。

 

「……神にでもなると、そういうのですか」

 

「神? いいえ、神では―――グレートアイでは足りない。

 人も、神も、あらゆるものを内包した世界そのものとして、神も含めて遍く全てを管理する。そこにあるものは、私の意思だけでいい」

 

 グレートアイに縋り続けたこの世界の今がこれだ。

 ならばもう、グレートアイなど戴いてはいられない。

 そんなものより正しく、力のある指導者が必要なのだ。

 

「……それで、この世界の何が救われるのです。

 父上が愛した民に、何が与えられるのです」

 

「なぜ救いを与える必要がある? 私が世界と化した暁には、全ての民は私の一部となる。私の一部として永遠に生き続ければいいだけだ。

 もちろん、私は全ての民を導くとも。この世界の指導者として、誰一人見捨てず生かし続けてみせるとも」

 

 民とは指導者の一部のことになるのだ。

 民の事は全て守るとも。何せ、自分の一部だ。

 見捨てるなどという選択が起きるはずもない。

 

「―――それを父上が望むとでも!?」

 

「父上は私の望みなど叶えなかった!!」

 

 激昂したアデルの意思に呼応し、ガンマイザーが怪人態に変貌する。

 その力の奔流に気圧されて、アリアがふらりと揺れた。

 蹈鞴を踏む彼女に対し、アデルは眼光鋭く睨みを効かせる。

 

「せめて母上のために祈ってほしいという願いがそれほど難しいものか!? あの男は眼魔の民のために祈るばかりで、己の妻の安息のためには祈らなかった!!」

 

 爆発するようなアデルの叫び。

 それに対して、アリアが悲痛な表情を浮かべて視線を逸らす。

 

 ―――それは少なくとも、アデルが得た少年期の真実だ。

 事実など、父アドニスの心中の真実など関係ない。

 

「あの男が母上に何をした! 愛する民のためなどとほざき、母上などより他の連中のことを優先した! 挙げ句、母上の命日に祈ることさえしなかった!! そうだ、指導者には情など要らぬと私は奴から学んだのだ! だというのに指導者であった奴は情でアランを見逃した! ならばなぜ母上のために泣かなかったのだあの男は!!」

 

「アデル……」

 

「だからこそ、私の選ぶ道はもはや一つしかない! 私の運営に心など要らぬ! 私の管理する民にも心など要らぬ! 完璧なる指導者と、それに従う存在! 世界にはそれだけあればいいのだ!

 ガンマイザー! 今度こそ失敗は許さぬ、最後の準備を開始しろ!!」

 

 アデルの指示に応じ、ガンマイザーが動きだす。

 プレートに還った彼らがアデルの周囲を取り囲み、その体に入り込んでいく。

 体を形成する本体である眼魂が過負荷に軋む。

 

 デミアプロジェクト。

 人間の意識を繋げる“DEMIA”を利用した、アデルとイゴールの計画。

 その意識を繋ぐためのサーバーに、アデルは己自身を選んだ。

 全ての人間の意識が集う、魂の居場所に。

 

 アデルの眼魂が過負荷に砕け散る。

 瞬間、彼の意識は眠りの間に安置された肉体へと還っていく。

 ―――融合したガンマイザーたちとともに。

 

 祈りの間から消えた弟。

 一人になったアリアが、きつく唇を噛み締めた。

 

「……分かっているのですか、アデル。

 その指導者という立場への執着も、何もかも……あなたが不要と断じた心を、父上に向けているからなのですよ……!」

 

 

 

 

 ―――隕石。

 

 その周辺にいた全ての人間は、空を見上げてそれを認識した。

 実際のところ、それは破壊されたサジタリアークの末路だ。

 星一つ撃ち抜く巨大な弓矢は、秘めた威力を発揮することなく砕けていく。

 

 太陽の熱に包まれ爆散するその中で、多少残っていたデスガリアンもまた滅び去る。

 地獄の業火の中にいて耐えられたのは、熱源であるギンガを除けばただ二人。

 

 サジタリアークが完全に機能を停止するまでは無敵に等しいジニス。

 そして多少燃えようが爆発しようが即再生して気にも留めないアザルド。

 

 地球に墜ちていく要塞の中でギンガとアザルドがぶつかり合う。

 そうして地表が見えてきた頃、ギンガは外へと飛び出した。

 

「逃がすかよ!」

 

 即断して追うアザルド。

 既に原型を留めていないサジタリアークの壁をぶち抜き、彼もまた地上へと飛び出していく。

 

 残されるのは、ジニスただ一人。

 彼は自身の力で守っているアイテムを二つ、つまらなそうに見つめた。

 

 ジニスの居城は既に終わっていた。

 いや、まだ限界直前だが稼働はしている。だからこそ、ジニスは無敵を保っているのだ。

 だが既に結末は決定していた。これからもう二度と、サジタリアークが動くことはないだろう。

 長年連れ添った船の末期に何の興味もなさそうに、彼は呟いた。

 

「やれやれ、これではサジタリアークが先に終わってしまいそうだ。

 早くして欲しいものだが……」

 

 まあ、こんな船はどうでもいい。

 やっと手に入れた最高の玩具がこの手の中にあるのだから。

 

 彼は少し気分を昂揚さえさせながら、小さく笑う。

 そうして機嫌よく、この日限りの付き合いになるだろう玉座にいつも通り背中を預けた。

 

 

 

 

 サジタリアークから脱したギンガが、地上へと舞い降りる。

 重力制御か、危うげなく着地してみせる紫紺の体。

 その彼が地に足を下ろすと同時、自身が降ってきた空を見上げた。

 

「オラァッ!」

 

 大剣、アザルドナッターが唸る。

 剣を振り上げながら墜落してきた怪人が、自身の着地など知ったことかと攻撃に全霊をかけた。

 対するギンガは腕を突き出し、ピュアパワーを生成。

 衝突―――まで至らず、大剣の軌道が逸らされる。

 

 直撃の軌道をずらされ、そのまま地面に着弾したアザルド。

 彼がボディを一部崩壊させ、しかし即再生を開始しながら鼻を鳴らした。

 

「鬱陶しい野郎だ!」

 

 崩れ落ちた青いキューブを貼り付けながら、剣を握り直す。

 そんな彼の頭上で、サジタリアークが一際強く火を噴いた。

 

 減速することさえなく、地面に突き刺さる天弓の城。

 爆発が連続し、幾度も炎の柱が立ち上る。

 

 その拠点の末路を見届けて、アザルドが首を捻った。

 

「あーあー……ま、オーナーなら多分問題ねえだろ。

 んなことよりテメェだぜ!」

 

 さっさとサジタリアークから目を外し、ギンガに向き直る。

 対する宇宙からの使者はゆるりと両腕を回し、その掌にパワーを集中させ始めた。

 収束させた虹色の光を纏わせて、ギンガは両腕を前に突き出す。

 

「滅びよ」

 

「テメェがな!」

 

 放たれる光線。

 それを迎え撃つアザルドの振るう剣撃。

 

 ―――衝突。

 迎撃したアザルドを中心に拡がっていく破壊の渦。

 呑み込まれながらも当然のように再生し、耐えきるアザルド。

 彼は何の痛痒も感じてないとでも言うかの如く、欠ける体を笑い飛ばす。

 

「ハハハ! こんな調子でこの不死身のアザルド様を滅ぼせるのか?」

 

「―――――」

 

 アザルドにとっては、今までの一切が痛打になっていないと。

 それを改めて認識したギンガが、僅かに頭を揺らす。

 直後、彼が掌を覆わせていたピュアエナジーが増大した。

 

 紫電を放ち、膨れ上がるエネルギー球。

 彼は純粋な力の塊を手に構えてその足を動かし―――

 

「―――アザルド!」

 

 外野からの声に動きを止めた。

 

 アザルドとギンガが共に顔を動かし、声の出先を追う。

 そこにいたのは駆け抜けこの場に辿り着いた者。

 獅子の鬣の如き髪を揺らす、レオの姿であった。

 

 彼に遅れて、セラ、タスク、アム、操と。

 ジュウオウジャーたちがその場に現れる。

 

「ジュウオウジャーどもか。

 今いいとこなんだよ、後で相手してやるからすっこんでな」

 

「何がいいところよ! あんたたちの宇宙船も墜ちた。つまりここであんたを倒せばデスガリアンも終わりよ!」

 

 セラが叫び、王者の資格を取り出した。

 続いて皆も同じように構え、操もジュウオウザライトを構える。

 

「ま、確かに後は俺とオーナーを倒せばお前らの勝ちだろうな。

 ……そういやクバルとナリアの奴はどこ行きやがったんだ?」

 

 アザルドとジニスを倒せるくらいならば、クバルとナリアに負けることはない。

 だからこそ、自身ともう一人を倒せば勝ちだと断定する。

 

 そうしながら彼はアザルドナッターを肩に乗せ、大地に激突して爆発炎上する母船を見た。

 あの騒ぎで玉座の間に姿を見せなかったということは、サジタリアークにはいなかったのだろう。

 

「しかしまあ、オーナーに勝てると思ってんのか? どうだよ、ザワールド」

 

 ジュウオウザライトを回し、底部を叩き。

 覚醒の予兆を見せながら、操はおかしげに問いかけてきた怪人を睨み返す。

 

「勝つ―――! 勝ってみせる! この星を守るために!!」

 

「そうかい、まあそれ以前に俺にだってテメェらじゃ勝てやしねえがな!!」

 

 振るわれる大剣。その切っ先から迸る衝撃が威力を伴い大地を砕く。

 地面を割りながら迫ってくる破壊の斬撃。

 目前まで押し寄せた攻撃を前に、五人の戦士は地球の力を解放した。

 

「本能覚醒!!」

 

〈アーァアァアーッ!!〉

 

 瀑布と共に荒海の王者が。

 砂塵を打ち破りサバンナの王者が。

 鬱蒼たる木々の中より森林の王者が。

 身を切る様な風が吹く雪原の王者が。

 堂々と、この星をその掌中に覆う世界の王者が。

 

 五人の戦士が同時に姿を変え、寄せ来る斬撃を斬り捨てる。

 弾け飛んだ破壊力が四散して爆発し、周囲を吹き飛ばす。

 その爆炎を背にして、彼らは咆哮した。

 

「この星を、舐めるなよ!!」

 

 

 




 
後はアデルとガンマイザーとギンガとアザルドとクバルとナリアとジニスを倒せば終わりだな!
 
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