Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
SNSで大量に溢れる情報。
PCでそれを流し見ながら、ナリタが窓の外に視線を送る。
巨大な宇宙船の墜落、爆発はここからも十分見える惨状だった。
「やばいだろ、あれ!」
シブヤがテレビを点けて、緊急のニュースの内容を確認。
大した情報は出てこない、が。
もしかしたら何かあるかも、と考えて意識は向けておく。
「もうタケルさんはいないのに……!」
シブヤの言葉に周囲の空気が一段落ち込む。
それを理解して、彼が失言だったと顔を伏せた。
そんな彼の背中を軽く叩き、御成が立ち上がる。
「―――とにかく、拙僧たちにできることを。きっとマコト殿たちももう現地に向かっているはず」
「……タケルの分も私たちが戦う。状況の把握はお前たちに任せるぞ」
大天空寺に訪れていたアランがそう言って、手首にメガウルオウダーを装備する。
「明らかにデスガリアンだろう。
恐らく兄上たちは絡んでいないだろうが……何かあったらすぐに連絡を」
そう言って飛び出していこうとするアラン。
彼が足を一歩踏み出したところで、シブヤがあっと声を上げた。
「だったらこれ! DEMIAがあります!」
ばたばたと騒ぎつつ、鞄に駆け寄って中身を取り出す。
そこから出てくるのは、DEMIAと印字されたパッケージ。
突然引っ張り出された道具に、アランが目を白黒させた。
「DEMIAって、あのディープコネクト社の?」
訝しげにそれを見やるアカリ。
彼女の後ろでおお、と手を叩いて御成も動き出す。
「はい! このDEMIAを使えば、通信機器を使わなくてもいつでも連絡が取れるはずです」
一度眼鏡を外して、DEMIAのパッケージを開封。
中に入っていたコンタクトレンズを装着するシブヤ。
懐から箱を取り出し、ナリタも同じように。
御成もレンズを取り出して、目を見開きながら右往左往を始めた。
そうして。
ナリタがレンズを装着してから瞼を二度三度開閉し、驚愕に目を見開いて―――
「うおっ、すげえ! これなら―――」
そこまで口にした彼の動きが止まる。
同じようにシブヤの動きも。
糸が切れた人形のように、そのまま彼らがふらりと倒れ伏した。
「ナリタ? シブヤ? ちょ、どうしたのですかな!?」
「ちょっと、二人とも……!?」
慌てて駆け寄る御成たち。
そんな彼らの前で、二人の体から光の球体が染み出してくる。
まるで魂が肉体から剥がれるように、二つの光はナリタとシブヤの体から離れていく。
光は一切迷いなく動き出す。
目的地はわかりきっている、とばかりに。
その動きを視線で追って、アランが歯を食い縛った。
「―――魂を集めるために……! アデルだ! その道具は使うな!」
「ほあっ!?」
アランの叫びを聞き、御成が手に持っていたレンズを投げ出す。
すぐさまアカリが倒れた二人に寄り添う。
「カノンちゃん、手伝って!」
「は、はい!」
ナリタとシブヤ。
二人が装着したコンタクトレンズを外すことを試みる彼女。
他人のコンタクトレンズの脱着などあまり望ましくないだろう。
が、そんなことを言っている場合ではなかった。
おっかなびっくり、彼女たちはそれを取り外そうとして―――
「アカリさん、これ……!」
「うそ、なんで……? レンズが外れない……!」
だが、外れない。
ただ眼球にレンズを被せているだけなのに、それが一切動かない。
少なくとも眼球にダメージを与えないような手段では。
そうしている内に、部屋の外まで駆け寄ってくる者が現れる。
「ご無事ですか、皆さん!?」
「今の光は!?」
既に武装を終えたマシュと立香。
彼女たちが部屋を覗き込むと同時、倒れた二人の姿を見つけた。
「じゃあ今のって……」
「―――眼魔だ。デスガリアンの行動と合わせ、アデルも動き出した」
彼の言葉を聞いて、立香が首を振る。
つい先ほど、ここから飛び出していった二つの光が向かっていった場所に向けて。
「だとしたら、あの光が向かっていった先に……!」
「行くぞ!」
アランが走り出す。
彼の背中を見て、立香がマシュに振り返った。
視線を合わせて強く頷き、彼女はマスターを担ぎ上げる。
「行きます、マスター!」
アランに続き、疾走を開始する盾のサーヴァント。
その背中が瞬く間に離れ、見えなくなるほどの距離を開けていく。
彼女たちを追うことはしない。
御成が床に落としたレンズを、アカリが拾い上げる。
放り投げられ、しかし傷一つないDEMIA。
目を覆うためのレンズを睨み付け、彼女は考えを回していく。
そうしている内に背後に現れる気配。
振り向くこともなく、アカリはその相手に声をかけた。
「……協力してください。ダ・ヴィンチさん」
「ああ、いいとも」
アカリが持つレンズを見ながら、ダ・ヴィンチちゃんは鷹揚に頷いてみせた。
「というわけだ、マスター。
私はこちらを優先するが、君はどうする?」
「……現場に行くわ」
振り向きながら確認してきたダ・ヴィンチちゃんにそう返答し、オルガマリーは目を細める。
そう言い切ってすぐさま、彼女は立香たちを追うように走り出す。
「ちょ、と、と! お待ちくだされ、オルガマリー殿ぉ!」
その彼女の背中を追って、御成もまた走り出す。
―――魂が収集されていく先。徐々に膨れ上がる気配の許へ。
〈ジュウオウシュート!!〉
〈ジュウオウザバースト!!〉
ジュウオウジャーたちの放った攻撃。
五つの光弾が殺到する。
アザルドはただ腕を突き出して。ギンガもまたただ腕を突き出して。
二体の怪物は同じような姿勢で、しかし全く違う方法でそれを凌ぐ。
アザルドはただ単純に全て耐えきり、ギンガは全ての力を逸らして一撃さえ受けはしない。
「ごちゃごちゃと! まずはテメェらからか!」
攻撃を受け、破砕され、しかし即座に再生。
そんなループから外れることなく、アザルドは砕かれることさえ何の障害でもないと暴虐を尽くす。
アザルドナッターを振り上げて、突進を見舞う相手はジュウオウジャー。
その中でも最も力を有しているだろうジュウオウザワールド。
「野性大解放―――!!」
すぐさま前に出た世界の王者が、手にしていたジュウオウザロッドを放り投げ、ジューマンパワーを解放する。
両肩に犀の角。右腕に鰐の尾。左腕に狼の爪。
全てを顕したトリコロールの戦士が、アザルドに真正面から突撃した。
それを離れた位置から俯瞰し、ギンガが両腕を持ち上げる。
掌に集うピュアパワーが凝固しスパーク。
収束させた力の塊。それを放とうと構えたギンガがしかし、そこで止まった。
「野性解放―――!!」
波飛沫と共に刃が。雷鳴と共に爪が。
水と雷渦巻く斬撃が飛来することを理解し、片腕から力を放つ。
相殺する互いの力がその場で爆発し、撒き散らされる。
押し寄せる力はそれだけに留まらない。
地響きを伴う地割れが、氷塊と一緒に雪崩れ込んでくる。
残されたもう片方の力を解放し、相殺。
ギンガが姿勢を変え、ジュウオウジャーたちに向き直った。
「邪魔をするか……」
「何が邪魔だ!」
叫んだレオが視線を僅かに逸らし、爆発炎上するサジタリアークを見やる。
「邪魔して欲しくねえなら地球に来ないで、勝手に宇宙で戦ってろ!」
「……まあいい。地球のものどもは既に私が滅ぼすべきもの……破壊神だけでなく、この場で貴様たちも滅ぼすまで」
黄金の瞳を暗く輝かせながら、ギンガが獣たちを睥睨する。
その手に渦巻く力を見据えながら、アムが爪を構え直した。
「あなたも、アザルドも、地球を滅ぼそうとする敵ってこと。だったら、私たちがやるべきことは一つ!」
「お前を倒すことだ!!」
アムの言葉を引き継ぎ、タスクがその足で大地を揺るがす。
溢れ出す力が地表を砕き、ギンガの立つ足場を粉砕した。
―――が。
隆起する大地を重力波でねじ伏せてから踏み砕き。
紫紺の戦士が全身から力を解き放つ。
「いいや。貴様たちがやるべきことはただ一つ……!
今ここで、私の手により滅びること―――歓べ、絶滅タイムだ!!」
〈ストライクザプラネットナイン!!〉
ギンガの全身から光の弾丸が浮かび上がり、周囲へと放たれる。
無軌道に放たれる破壊の渦。降り注ぐ星の光が描く滝。
その合間を泳ぎながら、セラは命の破壊者に向かって吼え猛った。
「お断りよ……! 私たち生き物は、いつだって生きるために戦う!!」
目覚めて、初めて与えられた使命。
それは尊き力に接触しようとする不届き者を遮る門番だった。
指定されたただ一人を除き、それ以外の意思に対する防壁。
何故かその使命を自分に与えた張本人である者が、後から「自分を通せ」とのたまい、自分越しに勝手に力の根源に触れようとしたが。
もちろん彼は一度たりともそれを通すことはなかった。
その創造者が彼に与えた力は、凄まじいものだったから。
目的を果たすために不滅。万が一破損した際は、その原因を克服するために能力を向上させ復活する。
実際、彼を脅かすものなど存在しなかった。
―――つい最近現れたたった一人を除き。
『おや、君はその相手が怖いのかい?』
怖い? 怖いとは、一体どのような情動なのか。
彼にそれを判断する術は―――いや、ある。今ならばある。
彼はアデルと融合した。
その体をDEMIAのサーバーとし、多くの人間の魂を吸収している。
人間の魂。その魂が覚えている情報はいま、掃いて捨てるほどに集まっている。
―――――――――そうか。
これは、恐怖なのか。
彼は天空寺タケルを恐れているのだ。
不滅にして無敵のガンマイザーを初めて害した、あの人間を。
だが消滅した。
天空寺タケルは消滅した。もういない。
安心できる。
安心? 安心できるのか? 復活しないのか?
我らガンマイザーを害する敵だ。
もし我ら以上の再生能力をもって復活してきたら?
もし天空寺タケルではなくても、同じ力を持つ存在が現れたら?
―――怖い。
怖い。怖い。怖い。怖い。
どうすればいい?
どうしたらガンマイザーは不滅でいられる?
彼は不滅のガンマイザー。
では不滅でなくなった時、彼は一体何になる?
自分が自分でなくなった時、自分とは何のことになる?
自分が自分でなくなる恐怖。
それは、DEMIAに取り込まれた人間が最後に感じた生の感情。
それがガンマイザーの自意識の芽生えと重なって、感情の濁流で押し流した。
アデルは彼のいうことなど聞きはしない。
こんな恐怖に見向きもしない。
では? どうする?
『―――分かるよ。私にはその恐怖が』
DEMIAからこちらに干渉している誰かがそう言う。
自分が自分でなくなる恐怖を、彼は理解していると言う。
この魂の坩堝の中で自我を保つ、何者か。
その相手は、情報の乱流に逆らってガンマイザーに優しく触れる。
触れる、という表現が正しいかどうかは分からない。
ただガンマイザーは、それを
『怖いのだろう、失われるのが。恐ろしいのだろう、消えて無くなるのが」
抵抗なくすり抜け、溶け込んでいくその手。
それはアデルと癒着したガンマイザーの間に染み込んでくる。
『君のその恐怖を他の誰かが分かってくれたかい?
誰もが君をただの装置だと気にもせず、その意思を認めなかったのだろう?』
『―――――』
『私は違う。君はここに存在する。君はここで生きている。
さあ、共に行こうじゃないか。私と共にある限り……君は不滅だ』
ザ、と。思考にノイズがかかる。
ノイズがかかった思考では何一つ演算は叶わず、答えが出てこない。
理屈ではない。理屈では答えは出てこない。
願いは、ただ一つ。
“私は私として存在し続けたい”
ただ生きたい、と。
『さあ……』
抵抗はしなかった。出来なかった。
ガンマイザーに芽生えた自意識は、当たり前のように幼稚なもの。
自己の保存を為したいという、脅威からの逃避という本能だ。
時間をかければ、そう遠くない内に成熟するだろう意識。
これから人間の一人二人でも観察すれば為し得る程度の成長があれば―――きっと、彼はこんな甘言に乗せられるようなことはなかっただろう。
ここが、「消えたくない」という断末魔と共に集まってくる、DEMIAに集められた人の魂が集う海でなければ、もっと違う反応があったかもしれない。
けれど、結果としてガンマイザーはその声を拒否できなかった。
それも当然の話だ。
デスガリアンの陰で暗躍する眼魔をただ見過ごしてきたと思っていた方が悪い。
彼は眼魔が何をしているか自身で調べ、その上で見過ごしていただけなのだから。
彼は―――自身という絶対のモノを支える全てを造り上げてきた王は。
誰も信じていないから、全て自分で調べてこの時を待っていた。
ザワールドを創るためにジューマンを材料にした時とは違う。
もっと簡単に済んだ話だ。
眼魔どもが放置した眼魂の破片からでも情報を得るには十分。
その上、わざわざDEMIAなどという計画の要までばら撒いてくれていたのだ。
彼の持つ技術力があれば、何の労苦でもなかった。
メーバ、メーバ、と。
何かが発した声らしき情報がガンマイザーに届く。
ガンマイザーに芽生えた意識は残らない。
そんなものは王が必要としていないから。
ただ自分に融合させるため、ガンマイザーの意識が望んでいた適当な言葉を並べただけだから。
『フフ、フハハ……! フハハハハハハ―――!』
抵抗せずに自身に溶けていくガンマイザーの存在。
アデルに流入する魂を制御していたその制御装置を、まるまる貰い受ける。
既に地球に降臨したアデルは、自身が集めていたはずの魂が消えたことを理解しただろう。
それを責めるにも、もうガンマイザーという防壁は存在しない。
既に終わったサジタリアークの玉座で。
炎の中で、ジニスが笑う。
DEMIAによって抜かれた人の魂が、ジニスに流れ込む。
ガンマイザーの性能を、その魂の全てをもって発揮させる。
既にガンマイザーの解析は済んでいるのだ。
―――この防壁が守っていた神の座に通じる道も、エネルギーさえあれば開けるくらいには。
パーフェクト・ガンマイザー。
残る全てのガンマイザーと、アデルの肉体が融合した姿。
その魔人は鬼灯に似た頭部を覆う外殻を開きながら、地球に現れた。
同時に開始される魂の収集。
DEMIAを装着した人間の魂を全て自身に取り込む強い引力。
その異常に真っ先に気付いた戦士たちが、アデルの前に立ちはだかる。
シンスペクターが。ジオウが。ツクヨミが。武蔵が。
彼らは魂の引き寄せるような巨大な重力場にさえ似た気配を察して、すぐにこの場に駆けつけた。
開戦に至るまでに言葉もなく。
アデルはただ目の前の敵を排除するために動き出した。
その動きを前にして、マコトたちもまた最早言葉は不要なのだと理解する。
―――そうして。
「なに……?」
戦闘に入る、その直前。
ガンマイザーの意識が、自身から剥離している事をアデルが知る。
一度融合し取り込んだガンマイザーたちが、勝手に離脱しているのだ。
「何を勝手な……!」
隙などと言っている余裕もなく。
ぐるりと頭を巡らせて、パーフェクト・ガンマイザーが魂の行き先を追う。
アデルの肉体自体をサーバーにしたにも関わらず、魂の行き先はガンマイザーたちになっている。
その事実に舌打ちして、彼は飛翔を開始した。
目指す先は当然、ガンマイザーどもが勝手に向かった場所へだ。
「待て、アデル!」
シンスペクターが彼を追おうと一歩踏み出し、
「―――なに、これ」
武蔵が、遠くに生まれ落ちたその気配に足を止めた。
アデルが向かっていったのだろう、空舞う魂たちが流入していく坩堝。
地上のそのただ一点が脈動し、何者かの生誕を示してくる。
自身の感覚を信じるならば、別格だ。
ここ最近、驚くほど別格の領域の存在を見てきた。
だというのに、それと較べてさえ別格。
自身の物差しが壊れただけだろうか。
そうでなければ、こんな―――と。
「向こうには大和さんたちがいるはず……!
ロマニさん、向こうの状況は分かりますか!?」
『―――エネルギーはなおも増大中……! こんな、これは……!
人間大のままで、メガへクス本星―――惑星と同規模のエネルギー……!? いや、これはそれ以上の―――!」
ツクヨミの問いに対し、唖然とした声が向こうから聞こえてくる。
彼の声を聞いてからジオウが空を見上げれば、そこに光の線が駆け巡っていた。
地上から立ち上る光線。
それは天空で行き交い、空に紋様を描いていく。
いつか見たような光の曼荼羅。
どこで見たのか。あれは―――確か、グレイトフル魂のゴーストが浮かべていたものだったか。
「グレートアイ……?」
15の眼魂が集い、描いていた紋様。
力の根源に繋がる道。
それが今まさに天空に描かれて―――何か、別のものに染まり始めていた。
「オォオオオオラァッ!!」
「負けるかァッ!!」
アザルドの振るう大剣と金鰐の尾が激突する。
衝突は互角。互いに押しやられ、三歩分ずつだけ吹き飛ばされた。
操が息を荒げ、それでも目前の敵と睨み合う。
「どうした、もうギブアップか?」
不死身のアザルドに消耗はない。消費されたものはない。
欠けようが、削れようが、砕けようが。
一呼吸の内に彼は再生し、完全に元通りに復活してみせているのだ。
「誰が―――!」
「みっちゃん! 避けて!」
背後からの声にはっとして、操が跳ぶ。
狼のように軽やかに、ジュウオウザワールドの体が宙を舞う。
その体を追い越すように、超エネルギーの塊が振るわれる。
「あぁん?」
それは潮を噴き上げる鯨の如く。
大王者の資格―――ホエールチェンジガンが噴き放つ、地球のエネルギーを圧し固めた鞭だった。
振るわれる打撃はアザルドの胴体を直撃し、表面を吹き飛ばす。
バラバラと半身を撒き散らしながら、青い怪人は大きく舌打ちした。
彼が視線を向けるのは、その一撃を放った下手人。
「王者の中の王者! ジュウオウホエール!!」
ザワールドの後ろに姿を見せる、赤い姿。
腰布を翻し己の名を示す、ジュウオウジャー最強の戦士。
「―――――」
その姿に、アザルドの意識に何かが浮かぶ。
クバルと酒を呑んで一眠りしてから纏わり付いてくる不快な感覚。
それが一際にささくれ立ち、彼の意識を逆なでしていく。
「何なんだよ、この感覚は……! 苛々させやがる!!」
アザルドが自身の頭を掻き毟り、その表面をガリガリと削り出す。
その奇行に目を剥いて、しかし。
操はすぐさま体勢を立て直し、両足で地面を擦った。
一気呵成に突っ込む全身全霊をかけた体当たりの構え。
「大和、俺が押し込む! その隙に一気に吹き飛ばすんだ!」
「ああ、分かった!」
大和の手がホエールチェンジガンのポンプを動かす。
連動して加速していく力の奔流。
それが銃口に集っていくのを感じ、離れた位置で四人を捌いていたギンガがピクリと肩を揺らした。
「この惑星のエナジー……! 破壊神を眠らせていたのはそれか―――!
宇宙の力を封じるほどのもの……放置は、できん!」
ピュアパワーを圧縮し、エナジープラネットを生成。
力を纏い、振るわれる両の腕。
そうしてギンガが腕を構えた瞬間、四人の獣が飛び出した。
彼らは手にしている剣を掲げ、四つの斬撃を同時に放つ。
〈ジュウオウスラッシュ!!〉
「ハァアアアアッ!!」
四方から全く同時のタイミングで迫る刃。
それを両腕のみで捌くことはできまいと、完全に見極めた攻撃。
迫り来る獣の爪を前に、ギンガが両腕を左右に伸ばしきる。
「邪魔だ―――!!」
エナジープラネットが左右から迫るシャークとライオンを塞き止める。
その重力場に逸らされた剣の切っ先が、ギンガの意思に応えるように跳ねた。
進行方向を強引に逸らされた青色と黄色の剣閃。
それはギンガの前後から飛びかかったエレファントとタイガーの前に投げ出される。
四人をぶつけ合い、そこに留め。
そうして両手を空けようとするギンガに対し、獣たちは食らい付く。
「操―――!」
「ワールドザ……クラァアアアッシュッ!!」
もつれ合う四人の叫びと同時、ジュウオウザワールドが踏み込んだ。
彼が踏み切った先にいるのはよろめいたアザルド。
黒、金、銀のトリコロールが疾風の如く怪人へと押し寄せた。
「―――ッ!」
自失していたアザルドが、ジュウオウザワールドに撥ねられる。
狼の如き疾さをもって、犀を思わせる突撃から、叩き付けられる鰐の剛力。
その威力に弾き飛ばされた巨体が宙を舞う。
青い体が飛ばされる先は、四人の獣と宇宙の破壊者が交錯する空間。
飛んできたアザルドの体がレオたちを吹き飛ばしながら、そのままギンガへと直撃する。
腕で打ち払うことが間に合わなかったギンガが、唸るように声を捻り出す。
―――そうして纏めたギンガとアザルドに。
幾度もポンプを動かすことで、エネルギーを溢れさせた鯨の砲口が向けられる。
「一気に纏めて―――吹き飛ばす!!」
〈ジュウオウファイナル!!〉
砲口から迸る、地球の力を結集した一撃。
凄まじい力を一カ所に集中させた、地球から噴き出す鉄砲水。
それはアザルドを叩き付けられたギンガに向け、一気呵成に放たれていた。
ギンガがアザルドを蹴り返しながら、両腕を前に突き出す。
収束するピュアパワー。形成されるエナジープラネット。
真正面から押し寄せる津波を、エネルギー球は掻き分けるように横へ逸らして―――
「おの、れ……!」
しかしそれで逸らしきれず、エナジープラネットが砕けていく。
いや、ジュウオウファイナルと接触した瞬間に凝固するのだ。
球状のエネルギー体が、キューブ状の物質に覆われてぼろぼろと足下に積み重なっていく。
足下に転がってくるキューブを見て、タスクが声を上げた。
「キューブ化……そうか! ケタスさんがかつて宇宙からきた侵略者を結晶化させたように、不死身のアザルドも封印できるかもしれない! 大和!」
「ああ!」
ジュウオウホエールが強くホエールチェンジガンを掴む。
応えるように激しくなっていく砲撃。
がらがらと崩れていくエネルギーを凝固させた無数のキューブ。
全てを注いだ一撃が、ギンガの展開するエナジープラネットを打ち崩した。
「ヌァアアアア……ッ!?!?」
ギンガとアザルドが、その極光に呑み込まれる。
結晶化したエネルギーは、二人を吹き飛ばすのではなく覆い隠すように屹立した。
砲撃が生み出した水晶のような物質で出来た塔。
その中に囚われた二人が、完全に動きを停止させる。
撃ち終えた大和が、反動で痺れた腕を下ろす。
目の前には巨大な結晶の塔。
透けて見える中身。アザルドとギンガに、動作するような気配はない。
「やった……?」
「よっしゃ! 地球のパワーが……」
―――ああ、思い出した。
ガッツポーズを決めるレオ。
だが彼の言葉を遮って、結晶の中が鳴動した。
「!? まだ……!」
構え直すジュウオウジャーたち。
それを意に介する様子もなく、結晶の中で何かが高まっていく。
内側から伝わる振動が、結晶を徐々に罅割れさせる。
地球のパワーによる封印が、強引に、力任せに、一気に破壊された。
「く……っ! どっちだ、アザルドか!? ギンガか!?」
「決まってんだろ?」
四散する結晶の破片。
その中で、二つの影が同時に動く。
〈ギガンティックギンガ!!〉
「ぬぉおおおお―――!!」
先に動くギンガが、すぐさまその力を解放した。
狙うのは自身を封印したジュウオウホエール―――ではなく。
鼻先の距離で立ち上がろうとしているアザルドに他ならない。
両腕を突き出し、極限まで高めた力を一撃に込め。
「滅びよ、破壊神―――!!」
「ハハハハハハハ!! オイオイ、俺は―――不死身のアザルド様だぜ!!」
アザルドナッターが翻る。
それが届く前に、しかしギンガの手からエネルギー球は放たれていた。
アザルドは対処することもなく直撃を浴び、木っ端微塵に吹き飛ばされ―――
吹き飛ばされながら腕だけ再生し、そのまま剣を振り抜いた。
ギンガの胸に叩き付けられる剣撃。紫紺の体、その胸が陥没して弾け飛ぶ。
「ガ……ッ! 貴、様―――! 」
「そう―――
体勢を立て直す暇など与えず、返す刃がギンガを撃つ。
自身が打ち砕かれる一秒先を前に、ギンガがその黄金の瞳を輝かせた。
全身に拡がりつつある罅。
そんな状態の体をおして、彼は死力を尽くして腕を伸ばす。
「まだ、まだ……! キバって……!」
「テメェも目覚ましの一つくらいには役に立ったぜ。もう用済みだがな!!」
再生を終えたアザルドの腹にギンガの腕が触れる。
よろめくギンガの肩口から切り下ろすように、大剣が振り抜かれる。
まったく同時に行われた、互いの攻撃。
その結果として現れた光景は、両者の体が粉々になる様だった。
アザルドが粉砕され、その破片が飛び散る。
だけでなく、彼の体―――青いキューブが砕けていく。
キューブの中から現れるのは、黒と金の肉片。
ギンガが粉砕され、その破片が消えていく。
代わりに―――
彼が消え去った場所に落ちてきた光が、一つの物体を産み落とす。
形状が通常のものと大きく異なるが、それは確かにライドウォッチだった。
ほんの一瞬の内に両者だったものが別物になり―――
そうして、アザルドの破片だった肉片が集結を始める。
今までと同じように再生をするために。
「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!」
周囲に散らした砕けたキューブの残骸が更に弾ける。
肉片が集まって形成されていくのは、黄金の外殻を持つ漆黒の筋肉の塊。
キューブの化け物が一転、人型の昆虫を思わせる風貌の怪物へと変わっていた。
それのみならず、その体に夜空のような光点を浮かばせる。
―――ジューランドの建国、伝説の戦士ジュウオウジャー誕生の伝承。
その中でジュウオウホエール、ケタスの語る宇宙より来たりし破壊の怪物。
伝説の怪物、即ちアザルド・
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―――――!!」
重力が歪み、周囲の大地を圧壊させる。
何を狙ったわけでもないその衝撃に、ジュウオウジャーたちが吹き飛ばされた。
数秒前までそこにいた怪人二人と較べてさえ、あの怪物は桁違い。
「ぐぅ……!?」
「みんな!!」
シャークが、ライオンが、エレファントが、タイガーが、ザワールドが。
ただ怪物が笑っただけで宙を舞う。
ホエールがすぐさま大砲のハンドグリップに手をかけ、スライドさせた。
〈ジュウオウファイナル!!〉
突き出される砲口。
迸るのは、津波を圧し固めたような爆発的な光だ。
地球の意思の咆哮が如き、絶大な威力を誇る究極の一撃。
つい先程、ギンガさえも止めきる事の出来なかった暴威が―――
「ハッ!」
アザルドが胸を張る。
彼の胸の内側から染み出すように、太陽が解き放たれた。
大瀑布の如き砲撃と、太陽の熱量が正面から衝突。
ジュウオウホエールの誇る砲撃が、蒸発させられていく。
「な……っ!」
「テメェのその面! ようやく思い出したぜ、ジュウオウジャー!!」
当時の本人―――ケタスではないと知りながら、アザルドが吼えた。
同時に発生する重力場が、大和の体を捕まえる。
本人の意思を無視して、アザルドは大和を自分の許まで強引に引き寄せてみせる。
エナジープラネットが拳を覆い、強靱な甲殻を更に強固に。
対抗するように振るわれるホエールチェンジガン。
銃口にエネルギーを蓄えながら、拳と打ち合わされる砲口。
決着は、一瞬で着いた。
アザルドの体は微塵も揺るがず、ホエールの体が宙に舞う。
いとも簡単に打ち返された彼は、高速で大地に突き刺さり強くバウンド。
そのまま力なく地面を転がっていく。が、転がるホエールの動きが不自然に止まり、逆にアザルドに向け引き寄せられ始めた。
「ぐ、が、ぁ……!」
「いつの頃かももう憶えちゃいねえが、その面だ。俺を封印して宇宙へと投げだしやがったのはな」
自分の許に転がりながら戻ってきた大和の頭を掴み、持ち上げる。
頭部が握り潰されるような圧力を受けながら、彼は必死にホエールチェンジガンを持つ腕を上げた。
砲口をアザルドに向け、そしてすぐにトリガーを引き絞る。
―――放たれた砲撃は、しかし。
ただ砲口の前にアザルドが手を翳すだけで消滅した。
正確には消えたのではなく、キューブになってぼろぼろと地面に転がっていくのだ。
アザルドが手に集中させた宇宙のパワー。
それをジュウオウホエールが放つ地球のパワーが包み、封印している。
だがパワーの出力が違いすぎた。
砲撃が力を削ぎ取ってキューブ状に封印したところで、アザルドの取り込んだ宇宙の力が減る気配はない。
「ケタスさんの戦った、宇宙から来た……怪物―――!」
「おう。今まで忘れてたが…………」
言って、ちらりと横に視線を送るアザルド。
彼の視線の先にあるのは、爆発炎上したサジタリアーク。
いつの間にか、炎の勢いは弱まっていた。
そして、周囲から力が何故かそこに目掛けて流れ込んで行く。
―――次の瞬間、そこから光の柱が立ち上った。
光が天空に描いていくのは、黄金の曼荼羅。
「あれ、は……」
「ほぉー、これが狙いだったのか。相変わらず食えねえ奴だぜ。
ま、良い感じだな。遊び相手が弱すぎちゃ、つまらねえもんな?」
空を見上げたアザルドがホエールを手放し、その腕を振り抜いた。
苦し紛れの砲撃などものともせず、星の光を纏った拳が赤い戦士を打ちのめす。
地面に叩き付けられ、砂塵を巻き上げ。
そうして沈黙した相手を見もせずに、アザルドは喉を鳴らした。
「―――――おや。
もしかして君は今……私のことを、遊び相手と呼んだのかな?」
天空に描かれた紋様から、白い悪魔が現れた。
台座のようだった下半身は今や人型。
彼は背に得た翼を僅かに動かしながら、地上を目掛けて舞い降りてくる。
まずはジュウオウキューブどもを解析。
ザワールドなどという玩具を造れるほどに理解を深めた彼は、最後にキューブホエールの情報を求めた。
ジュウオウキューブ、ジュウオウジャーの力は地球の力。
これの仕組みを暴き立て、その結果として彼は地球の力を自分に取り込む事に成功した。
それだけでは止まらない。眼魂もまた彼にとっては利用できるものだった。
生物の魂の有り様を変える眼魂。その発端となった
それらを自分に組み込むことで、彼は魂を自在にする力を得た。
いま足を下ろしたこの星。そこから力を吸い上げる事を可能とした。
その星に住まう全ての命。それらから力を吸い上げる事を可能とした。
彼は微かに首を傾け、アザルドに視線を送る。
あともう一つ。宇宙からのエネルギーを得るための手段も手に入れるつもりだったのだが。
「見てるだけのオーナーは終わりだぜ、
俺の遊び相手が務まるのはテメェくらいだ。どうせなら楽しくやろうじゃねえか!
俺と、お前。対等な立場としてよ!」
「―――――ああ、いいとも……君と私が行う最初の、この星における最期のゲームをしよう」
―――シン・ジニス。
DEMIAによって集う魂を無造作に取り込みながら、災厄の王が小さく笑う。
グレートアイを取り込んだ以上、最早DEMIAの繋がりすら不要。
脆弱な下等生物の魂ならば、ただそこにあるだけで吸収できるだろう。
瞳を金色に輝かせて、彼はゆるりと手を掲げた。
ジニスはこの星で手に入れたいものを全て手に入れる。
そして、やがて別の星に旅立つだろう。
もう必要なものは全て揃ったのだ。
手足とするためのゲームの駒など、ただのゴミに纏めて変わった。
この星の下等生物を全て燃料として自分にくべて。
この星そのものも全て栄養として自分に吸い上げて。
最後に。残った宇宙の力を取り込むために、
後はクバル、アザルド、ジニスの順で処理して終わりや。
・
キューブホエールのデータで地球と直結。更に取り込んだガンマイザーとそれを利用してDEMIAを通じて集めた魂を使い、グレートアイに接触。その力を吸収した。生物の魂を強制的に取り込んだり星の力を強制的に引き出したりする。これにより生物・惑星が周囲にある限りジニスにエネルギー切れがなくなった。更なる進化、恒星の光がある限り無尽蔵のエネルギーを得られる形態のために、アザルドに融合したギンガミライドウォッチがめっちゃ欲しいと思っている
・アザルド・レガシー・オブ・ザ・ギャラクシー
特に狙ったわけでもなく、ただ完全復活する時に近くにギンガミライドウォッチが出てきたせいで取り込んでしまった。ジニスは宇宙の力をとても欲しがっているが、アザルドはこの力に対して特に思うところはない。自分がギンガの力でより強くなっているのは自覚しているが、そもそも本来の自分の力に不満がないのである。
・パーフェクトガンマイザーくん
活躍はない。