Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
「なーなー、これどうするんだよ?」
「最早、我らに出来ることなどない。全ては神のみぞ知ること……」
達観したような、そんな目で戦場を眺める眼魂仙人。
彼からの返答に対して、ユルセンは呆れるように小さく体を揺すった。
「神のみぞ知る、ねぇ……
そうやってなーんでも神様頼りした結果が今の眼魔なんじゃないのかよ」
「…………」
神―――グレートアイに匹敵する力を得たゴースト。
そして神の力と、星の力を取り込んだジニス。
二つの超常の力は空中でぶつかり合い、力の波動を撒き散らしている。
「結局お前は龍のことだって信じ切れなかった。タケルのことだって。
おれさまは……直接見たこともないグレートアイなんかよりも。
あいつが何とかしてくれるって、信じたっていいと思うけどな」
そんなことを言うだけ言って。
ユルセンはふわりと、風に流され飛行し始めた。
遠ざかっていくその小さな体を見つめて、仙人は微かに目を細める。
激しくなる戦闘の余波。
衝撃波が大地を抉る様を見据えながら、彼がぽつりと呟いた。
「―――龍、アドニス、ダントン……かつての友たちよ。
お前たちが全てを託した息子たちならば、わしも信じることが……」
彼はそこで言葉を止め、首をゆっくりと横に振る。
そうして口を閉じ、無言のままに戦場を再び俯瞰し始めた。
彼が見つめる戦場。
そこでは地球を守るため、更なる戦士が乱入し始めたところであった。
「オォオオオオオ―――ッ!!」
咆哮と共に飛翔するムゲン魂。
彼の手の中には二刀の剣、ガンガンセイバーとサングラスラッシャー。
それを見て、ジニスはゆるりと両腕を軽く振り上げた。
銀色の腕が変形し、肘から先が刃として再形成される。
互いが両腕に備えた刃をぶつけあう。
交錯する四つの刃が拮抗し―――
数秒保たず、ゴーストの手にした剣が揃って斬り捨てられた。
「―――っ!」
「フ―――」
嘲るように嗤い、ジニスが両腕の刃を切り返す。
すぐさま残骸となった剣の柄を放り棄て、ゴーストが両腕を交差させた。
守りに入ったムゲン魂に刃が叩き付けられる。
滝のように火花を噴き散らしながら、その体が弾き飛ばされた。
吹き飛ぶゴーストを追うために体を傾けるジニス。
彼はそのまま加速しようとし、しかしすぐに動きを止める。
「……まだ生きていたか」
背後から襲い来る光弾。
振り向きざまにそれらを全て切り捨てて、ジニスはその攻撃を放った者たちを見据えた。
満身創痍ながら銃口を掲げ、立ちはだかる六人。
ジュウオウジャーたちを視界に納め、不機嫌そうに彼は鼻を鳴らす。
「ジニス……!」
「テメェをぶっ倒す前に死ぬわけねえだろ!」
レオの咆哮に応じることもなく、ジニスが翼を輝かせた。
黄金の光と共に放たれるのは無数の刃。
それが雨のようにジュウオウジャーたちの頭上から降り注ぐ。
すぐに武装を近接形態に変形させる彼ら。
その腕が振るう剣とロッドが、光の雨を凌がんとする。
「なら試してあげよう。本当に私を倒すまで死なないのかどうかを、ね」
光の雨が加速する。一秒置いて更に加速する。もう一秒置けば、更に。
雨などという密度に留まらず、全てを押し流す津波が如く。
言葉を返す余裕もなく、ひたすらに耐え忍ぶことを強要されるジュウオウジャー。
〈友情ダイカイガン! バースト! オメガドライブ!!〉
そんな中でジニスが、いっさい気を留めていなかった相手の乱入に見舞われる。
黄金に燃えあがり、全霊を懸けた一撃。
飛び上がって放ったネクロムの蹴撃が、ジニスの顔面へと叩き付けられた。
「……こっちもか」
後頭部に全力で一撃を叩き付けられ、しかしそれでも微動だにしない。
首を揺らすことさえせず、ジニスが溜め息混じりに呟いた。
「ダ・ヴィンチ!」
アランの呼びかけに続けてやってくる光。
それは言うまでもなくダ・ヴィンチちゃんの放った星光の魔力弾であり。
それらは全て、ジニスの背中に直撃を繰り返していた。
それでも傷一つ負うことなく。体を揺らすことすらなく。
ジニスはただ呆れるように、翼からの砲撃を止めた。
砲撃を止めると同時に両腕の肘から先を、刃から元の腕へと変貌させる。
直後、その腕が振り向きざまに自身に触れているネクロムの足を捕まえた。
「ッ……!」
「所詮は下等生物。どれだけ足掻こうが―――」
ネクロムの足をそのまま握り砕こうとする銀色の腕。
だがそこに力が入る前に、ジニスの手首こそを別の腕が掴まえていた。
虹色の光を纏うその腕が手首を締め付け、無理矢理にでも引き剥がそうとする。
「命に、下等も上等もない……! お前は自分が見下される事を怖がって、自分の方から他の命を見下そうとしてるだけだ―――!!」
「私が?」
ジニスの腕に更なる力が込められ、ムゲン魂の腕を振り払う。
その状態からお互いが拳をぶつけ合い、双方共に弾けるように飛び退いた。
ついでのように翼から撃ち放つ光弾の雨。
守りに徹してそれを凌ぐも、ゴーストは退いた場所から更に押し込まれる。
「フ、フフ、ハハハ……フフ、面白いことを言うものだ。
これほどの力を持つ私を誰が見下せる? いったい誰に、今の私を見下す資格があるというのだい? 私という、この宇宙でも最も美しく、気高く、優れた生命体を」
「―――最初から誰にも、必死に生きる命を見下す資格なんてない。
どんなに小さな命にも笑われる理由なんてない。
小さな命を踏み躙って、それを当たり前みたいに笑ってるのは、お前だろ!!」
叫び、タケルがゴーストドライバーのトリガーを引いた。
纏う虹色の光が渦巻き、彼の右足一点に収束していく。
〈チョーダイカイガン!! ムゲン!! ゴッドオメガドライブ!!!〉
光の翼を変形させ、背負った光で∞の字を描く。
進む方向を切り返すゴーストの体。
大地を砕く踏み切りでもって、吹き飛ばされてきた以上の速度で舞う。
ジニスが咄嗟に両腕を胸の前で交差させて身を守る。
光の雨をぶち抜いて、一直線に叩き付けられるゴーストの一撃。
激突した瞬間に弾ける光。
視界を埋め尽くすほどの白い光の中で、ジニスは失笑した。
「弱い生物が踏み躙られるのは当たり前だろう? それが受け入れられないというのなら、来世は強い生物に生まれつくことでも祈るのだね。今から死ぬ君たちも、せいぜい祈るといい」
「お生憎様……! 私たちは祈る前に、いっぱいやらなきゃいけないことがあるの! 今を精一杯生きるために戦ってるうちは、来世のことなんか考えてる暇なんかないんだから!」
アムが叫ぶ。
そんな彼女に続くようにジュウオウジャーたちが牙を剥いた。
「本能覚醒!!」
「野性解放!!」
「野性大解放!!」
イーグルが自身の顎に手をかけ、仮面を跳ね上げた。
ゴリラのジューマンパワーを漲らせ、大きく膨れ上がる上半身。
シャークが、ライオンが、エレファントが、タイガーが。
それぞれの力を象徴する部位を体に現出させる。
ザワールドが犀、鰐、狼と。
一つの体に宿した三つの力は同時に、一気に身に纏う。
「オォオオオオ―――ッ!!」
燃え上がるパワーを腕に宿し、拳を突き出し解き放つゴリラ。
炎の拳撃を押し出す水流、稲妻、地震、吹雪。
更にその後ろから叩き込まれる振り抜かれる鰐の尾と狼の爪。
全てが交わり一つになって、ジニスに向かって放たれた。
「…………」
混じり合い、殺到する衝撃波。
ゴーストを塞き止めながら、ちらりと。
ジニスがその攻撃へと視線を送り、僅かに舌を打つ。
そんな風に彼が意識を外した一瞬に、ムゲン魂が更に力を込めてみせた。
蹴撃を受け止めている腕に、ほんの僅かながら亀裂が入る。
「ジニス様!!」
―――その瞬間、ゴーストを横合いから銃弾が襲った。
直撃して破裂音を轟かせ、無数の弾丸が弾け飛ぶ。
「っ!?」
直撃なれども大きなダメージなどなく。
しかしその小さな衝撃に、ほんの僅かに揺れるムゲン魂の体。
全ての力を足に込めたが故に、小さな攻撃でさえ小さく怯み―――
そうなったが故に、ジニスはそのタイミングで腕を振り抜いた。
逸らされ、受け流されるゴーストの一撃。
「ぐぁ……ッ!?」
受け流しつつ腕を振るって放つ衝撃。
その閃光がムゲン魂の背中へ叩き込まれ、白銀の体を打ち据える。
留まることなどできず、吹き飛ばされていくゴースト。
ついでのように掻き消されるジュウオウジャーの一斉攻撃。
攻撃を消すだけに留まらず、衝撃の残滓が彼らに向かって炸裂した。
爆発の余波だけで六人の戦士が宙に舞う。
限界を迎えたように、彼らの変身が解けて生身で地面に転がった。
「あ、ぐ……!」
そうして無防備で、無力な人間たちを見下しながら―――
僅かに割れた腕の破片をこぼしつつ、ジニスは先の声の主に対し顔を向けた。
「くっ……! ナリア!」
倒れ伏し、しかし必死に体を起こそうとしながら、セラが声を上げる。
歩み寄ってくるのは緑の怪人。
彼女こそジニス、アザルドを除きデスガリアンに残された最後の一人。
ナリアに他ならなかった。
彼女は両手に武装・ヌンチャクラッシャーを引っ提げて。
ジュウオウジャーに目を向けることなく、ジニスに歩み寄り跪く。
「……申し訳ありませんでした、ジニス様。
クバルにいいようにされ、ジニス様を危険な目に……!
この失態は、ジュウオウジャーどもを葬ることで!」
すぐさま立ち上がり、武装を構えるナリア。
彼女に背を向けられながら、ジニスはおかしそうに小さく笑った。
「……フフ、どうやら心配を懸けてしまったようだね。
けれどもう構わないよ」
「そういうわけにはまいりません!
あのような下等生物ども、ジニス様の手を煩わせずとも私が―――ッ!?」
ナリアの声が跳ねる。
声だけではなく、その体が痙攣するかのように大きく。
驚いたように彼女は武器を取り落とし―――
自分の胸に手を伸ばして、そこから突き出た刃に体を震わせた。
その刃が、その腕が、ジニスのものだと理解して。
しかし何故そうなったのか理解できず、彼女は必死に頭だけで振り返る。
「ジ、ジニス、様……? 何故―――?」
何のこともないように、ジニスは腕を剣に変え。
そうしてナリアの胸をその刃で貫いていた。
凶行に対して動揺するナリアを見ながら、しかしジニスは笑うばかりで。
「決まっているだろう、ナリア。今までは必要だから君を使ってきたけれどね。
君ごときが私を心配するなんて、酷い侮辱だと思わないのかい?
下等生物に命の危険を説かれる怒りを我慢する必要がなくなった。それだけのことだよ」
「わ、わた、しは―――!」
彼女の返答など待つこともなく。
呆れるようにそう語り、ジニスは無造作に突き刺した腕を引き抜く。
緑色の血のような液体を撒き散らしながら、力なく崩れ落ちるナリア。
大地に伏した彼女の体を邪魔そうに蹴り飛ばし、面倒そうな溜め息を一つ。
「やれやれ、本当に不愉快だよ。
ナリアもアザルドも、なぜ私と同じ場所に立てるなどと思い上がるのか……
命乞いが心地よかった分、クバルの方がよほど好ましい」
ジニスの罅割れた腕と、顔。
それらの場所が震えて一時的に解れ、再構成されていく。
そうしてから興味なさげにジュウオウジャーを一瞥し―――
そんなタイミングで相手を見た大和が、目を見開く。
「……俺たちにとっちゃ、ナリアの奴だって許せねえ敵だ。
あいつがどんな風に死んだって同情なんかしねえ。
けどなあ―――テメェへの怒りはより深まったぜ、ジニス!!」
ギリギリと拳が軋むほどに握り締め、レオが身を起こす。
「お前たちは僕たちにとっては許せない敵だ……!
けど、お前たちは仲間だったんじゃないのか―――!」
「この私を、群れなければ何もできない下等生物と同列に語らないで欲しいな。
私にとって他の生物は全て、私という唯一優れた輝かしい生命に群がる、薄汚い蛆虫のようなものだよ。もちろん、ナリアも含めてね」
タスクからの詰問を笑って流し、ジニスが修復の終わった腕を軽く動かす。
「ふざけないで……!
どんな形であれ、ナリアはあなたのために行動していたのに―――!」
アムが拳で地面を殴り、そのまま一気に体を起こす。
地に這い、土に塗れながらも向けられる眼光。
それに対して鼻を鳴らすだけで、彼は醒めた視線を返す。
「君たちのように潰しても潰しても死なずにもがく虫けらを見るのは愉しいが……流石に飽きてきた。そろそろ終わらせようか」
「終わるわけないでしょ……!
あんたをぶっ倒すまでは、私たちは何度だって立ち上がってやる!」
震えながらも立ち上がろうと力を尽くすセラ。
ジニスはそうして必死に足掻く連中を見回し―――
大和を見据え、その視線を固定した。
「どうしたんだい、ジュウオウイーグル。何か私に―――」
「……本当は自分こそがちっぽけな命だと思ってて、そんな自分が大嫌いで……! 自分より大きく生まれついたものを全て憎んで、気にくわないものは壊さなきゃ気が済まない……! 寄り添ってくれる人すら憎んで! 見下して! そんなお前に、俺たちは負けられない!!」
大和の眼が、鷲のジューマンパワーを宿した瞳が輝く。
バドから譲り受けた超視力が、先程一瞬だけ解れたジニスの体を見た。
そうして、事実を確かにその眼で見抜いたのだ。
彼の体を形成しているのが、いつか見たナリアが従えていた単細胞生物。
―――メーバである、と。
大和から叩き付けられる言葉で、見られたと理解したのだろう。
ジニスが顔を掌で覆い、苛立ちと共に言葉を吐く。
「―――貴様たちはどいつもこいつも……! 私に抵抗すら出来ぬ脆弱な下等生物でありながら、よくも私を卑小で薄汚い下等生物扱いして蔑んでくれる……!!」
「ジニス……! お前を蔑んでるのはお前自身だ―――!!」
操の言葉に対し、ジニスの黄金の瞳が彼を睨み付ける。
それだけで巻き起こる力の奔流。
恐怖心を掻き立てるその眼光を真っ向から睨み返し、操が言葉を続ける。
「今のお前を見て……何でお前が俺に目をつけたか分かった……!
弱くて、卑しくて、自分が大嫌いな人間だった俺と、お前がそっくりだからだ!」
「ザワールドォ……ッ!!」
操がジニスに向けた一言。ただそれだけで、憎悪が溢れる。
空間が軋むほどの殺意のプレッシャー。
それに晒されながら、操が歯を食い縛り吼え立てた。
「違う!! 今の俺はみんなの仲間で、ジュウオウザワールド―――門藤操!
お前の知ってる俺と今の俺は、レベルが違うんだよォッ!!」
「―――――!」
もはや言葉を返さず、ジニスがその腕を振り上げる。
変身していても致命傷に至るだろう攻撃。
それを生身で受ければ、死骸さえも残るまい。
そうして振り抜かれるジニスの腕。
―――それを、虹色の光と共にジニスの目前に出現したゴーストが受け止めた。
突き出された拳を掌で受け止め押し止める。
衝撃で炸裂する光を浴びながら、ジニスが怒りに震える声を吐き出した。
「私はジニス―――! この世界で唯一にして、最も貴き命!!
貴様らのような虫ケラに計り知れる存在ではないのだ―――!!」
「他の命を、この世界に生きるみんなの魂を!
計り知ろうともせずに見下すお前に、俺たちは負けない―――!!」
「負けないィ……?」
片腕を掴まれたまま、ジニスが更に腕を振り上げる。
叩き付けられる拳を同じように掌で受け止め、押し止めるゴースト。
両腕で組み合い、押し合いの姿勢にもつれ込む両者。
拮抗したまま数秒、しかしすぐにゴーストの方が押し込まれ始めた。
「ッ―――!」
「貴様が私と同じように下等生物の魂を集めて対抗しようとしたところで、私にはこの星から流れ込むパワーもあるのだよ!
調子に乗ったところで、所詮は下等生物……私が手中に収めたこの星を、舐めるなよ!!」
ジニスの意思に呼応し、大地から噴き出すエネルギー。
それらが全て、彼の白銀の体に取り込まれていく。
その圧倒的な力の奔流には、ムゲン魂が宿した力を振り絞ってもなお届かない。
徐々に押し込まれるゴースト。
そんな彼の背後で、大和が拳を握り締める。
「この星を舐めてるのは、お前だ……!
地球は、お前なんかが好きにできるものじゃないんだ―――!!」
「貴様たちの持つキューブの力を解析し、既にこの星の力のメカニズムは完全に解明した。この星など、ただのエネルギーだよ!
そしてそれを自由にできるのは、より優れた知能を持つ生命だ―――私というね!!」
胸から黄金の光を放出し、更に力を高めるジニス。
押し止めようとするゴーストの全身が軋む。
悲鳴を上げるように火花を噴き出すムゲン魂の装甲。
その背中を見ながら叫ぶ大和。
「この星は、多くの命が群れをなして生きるみんなの縄張りだ!
地球の命でもあるその力は、地球の上で共に生きる全ての命に与えられるものだ!
他の命を認めず、見下して、踏み躙るお前が……!
好き勝手にしていいものなんかじゃない!!」
「現実を見たまえよ!
貴様の言う地球の命とやらも、全ては私に使われるために存在するのだ!!」
より強く。力を引き出し、全身に漲らせる。
そうしたジニスの攻勢を前に、ゴーストが押し込まれ―――
途中で、止まった。
「なに……?」
競り合いが拮抗する。
それでもなお、ジニスの方が優勢である力比べ。
だが確かに、ゴーストがその場で踏み止まり始めた。
ゴーストが更なる力を得たわけではない。
ただ単に、ジニスの力が減じただけだ。
その事実に、眼光を強く怒りで染めるジニス。
彼の視線がゴースト越しに、大和たちに対して向けられる。
地球から噴き出す力。この星の命のエナジー。
今まで全てがジニスに流れ込んでいたはずの力の奔流。
それがジニスの意思を無視して流れを変え、この地上で噴き上がり始めたのだ。
視界の中で瞬く黄金の光こそは、先程までジニスの体内で荒ぶっていた力そのもの。
ただのエネルギーでしかないはずの光。
それは自由意思を持っているかのように、ジニスではないものに力を与えていく。
光に巻かれながら王者の資格を構える大和。
彼が鷲の如く鋭い眼光でもって、ジニスを睨み据えた。
―――頭を巡らせ、地上に溢れるその光を見渡しながら。
些か以上に感心したように、アザルドが肩を竦めてみせた。
「こいつは中々のもんだ。一回は俺を封印しただけのことはあるな?」
そう言いながら、彼はマシュたちの方へと視線を戻し―――それと同時に。
周囲の瓦礫を吹き飛ばし、砂塵を舞わせ、戦士たちが立ち上がった。
ダメージを負った重さを感じさせる足取りながら、集う者たち。
それを邪魔する様子を見せることなく、アザルドは彼らに向き直る。
「生憎だが、今回は封印で済ませてやる気はねえ。テメェはここでぶっ潰す」
「はは! この力を使ってか? 残念だが……これっぽっちの力じゃまるで足りねえな」
ゴーカイレッドによるサーベルを突き付けながらの宣言。
彼の物言いに対してアザルドはおかしそうに笑い、軽く体を揺らした。
それに伴い、大地を唸らせながら重力波が撒き散らされる。
周囲に溢れる地球のパワーを吹き飛ばし、アザルドが大きく笑う。
「確かにこの力はかつて俺を封印した。だがそりゃかつての俺だ。
ついさっきまでの俺ならまた封印できたかもしれねえが……
今の俺が相手じゃ、まったく脅威になりゃしねえ」
拳で自分の胸を何度か叩き、また笑う。
「だが期待してるんだぜ?
テメェらが俺を、ちったぁ愉しませてくれるのをよ!」
言ってゆっくりと戦闘態勢へと入り始めるアザルド。
全く脅威でない、というのは何の強がりでもないのだろう。
せめて少しでも戦いを愉しめるように、と。
下等生物が手を尽くして掛かってくるのを待っているのだ。
その様子を見てサーベルを下ろすレッド。
彼が視線だけをジオウに向け、問いかけてくる。
「おい、ジオウ。お前に一つ、訊きたいことがある」
「なに?」
「この星は、ここで命を懸けて守る価値があるか?」
ジョーが、ルカが、ハカセが、アイムが。
彼に続く四人が一度マーベラスを見てから、ジオウに視線を向ける。
問われたソウゴは大して気負うでもなく、すんなりと言い返す。
「あんたたちにとってのこの星の価値は、あんたたちが自分で決める事じゃない?」
「―――そうか。だったら俺たちも35番目のスーパー戦隊……
海賊戦隊ゴーカイジャーとして、今からこの星を守るために戦ってやろうじゃねえか!!」
ソウゴに言葉を返されたマーベラスが軽く鼻を鳴らし、小さく笑う。
続くように残る四人が同時に肩を竦める中で、シルバーが一人首を傾げた。
「今までだってそういうつもりだったんじゃないですか?」
「ま、今まではあくまで宇宙のはみ出し者連中にこっちから因縁付けに来た!
って感じだったし?」
「地球を守るのは、ジュウオウジャーさんたちにお任せしていたつもりでしたから」
剣の背を肩に載せ、笑い飛ばすルカ。
それに同意して銃を構え直すアイム。
「守る価値があるかどうか、お宝の価値は自分で決めないとね。海賊なんだから」
「とっくの昔にこの星には守る価値を見出してたんだ。今更だな」
ハカセが楽しそうに。ジョーが呆れたように。
そんなことを言いながら、改めてアザルドに対して向き直る。
「ハッ! 守るだけの力がありゃ、なお良かったんだがな?」
たとえどれだけ覚悟を決めようが、決定的なまでの差がある。
それこそが純然たる事実の壁。
アザルドにとっては全てが悪足掻きに過ぎない。
だからこそ。もう少しお前たちが強ければもっと愉しかったのに、と。
彼は少しだけ物足りなさそうに、拗ねるような言葉を吐き―――
「ま、ジニスを相手にする前座程度にゃ愉しませてくれよ」
力を練り上げ、生成するのは星の光が瞬く暗黒。
凝縮した宇宙の力を胸に抱えるアザルドが、宇宙海賊を嘲笑う。
それを気にも留めず一歩踏み出す戦士たち。
彼らの背中を見て、ソウゴもまた小さく笑い―――
地球のパワーに反応し、熱を帯びた腕を正面に強く伸ばした。
「―――どうだろ? 俺は、これならいけると思うけど!」
地球のパワーが掌の中で膨れ上がる実感。
その感覚を得たソウゴが、一気にそれを掴み取った。
握り締めた手の中にある感触は、触れ慣れたものに違いなく。
―――新たなライドウォッチを手に、ソウゴは腕を振り抜いた。
叩き付けるように、ディケイドウォッチに装填されるライドウォッチ。
ディケイドウォッチと新たなウォッチ。
二つのウォッチが解き放たれる力によって輝いた。
〈ファイナルフォームタイム! ライドウォッチ!〉
その瞬間、地球から噴き出すエネルギーが固まり始めた。
数は六つ。場所は歩み始めたゴーカイジャーたちの前。
彼らは己らの前に出現した力の塊を前に、咄嗟にその足を止める。
「これは……」
ゴーカイジャーたちの前で晴れていく光。
光が解けていく場所に残されるのは、六色の戦士を象った鍵。
それを見たゴーカイシルバーが声を張り上げた。
「これ……レンジャーキーですか!?
おおおお、俺が知らないスーパー戦隊のレンジャーキー!!」
目の前の金色のキーを掴み、上から下からそれを見回す鎧。
彼に続きイエローが黒いキーを手にして、ぷらぷらと振り回す。
「鎧が知らないなら、他の誰も知らないレンジャーキーってわけね」
「鎧が知らないんだったらそうなんだろうねえ」
緑のキーを取るグリーン。
続けて青いキーをブルーが。桃色のキーをピンクが。
手にしたレンジャーキーを見ている彼らに、ジオウが並ぶ。
「あんたたちが、地球を守る価値があるって考えたみたいに―――
地球も、あんたたちに力を貸す価値がある、って考えてくれたんじゃない?」
ジオウから向けられたそんな言葉。
それを聞きながら、赤いキーをレッドが掴み取る。
そうして横目にジオウを睨み―――軽く鼻を鳴らしてみせた。
「ふん……だったら存分に使わせてもらうとするか。
こっからは―――ド派手に行くぜ!!」
モバイレーツを取り出しながらの船長の号令。
それに従い四人が同じくモバイレーツ、シルバーがゴーカイセルラーを取り出す。
レンジャーキーに秘められし力。
彼らが鍵を開け、その力の扉を解放すると同時。
ディケイドウォッチに装填されたウォッチもまた再び輝いた。
「ゴーカイチェンジ!」
〈リュウ! SO! COOL!〉
〈リュウソウジャー!!〉
進撃の覇者たる赤き騎士竜の力を纏い、ゴーカイレッドが姿を変える。
竜の頭蓋を思わせるマスクの、片刃の直剣を手にした勇猛なる赤い騎士。
続くゴーカイブルーが纏うのは、頭部から剣を生やす紺碧の騎士竜。
レッドと同じ直剣を引っ提げる、叡智を宿した青い騎士。
ゴーカイピンクが得るのは、鉄槌の一撃を誇る薄紅の騎士竜の力。
同じく直剣、リュウソウケンを手にするのは剛剣を振るう桃色の騎士。
残光のみを残して目にも留まらぬ速度で駆け巡る深緑の騎士竜。
その力を得たゴーカイグリーンが疾風の如き騎士へと変わり。
泰然自若たる
堂々たる騎士の威風を示すのはゴーカイイエロー。
金色に変わるゴーカイシルバー。その力の根源は、荒海を征く黄金の牙。
海に棲まう騎士竜の力を宿した銃を手に、栄光へと突き進む騎士。
「正義に仕える気高き魂!」
姿を変えた六人が、それぞれの武器を合わせる。
宣言するのはこの星を守る騎士としての誓い。
五つの刃と一つの銃口。それらが突き合わされ、微かに鳴らされる鋼の音。
それに続くのは、彼らがとった姿に与えられた戦士の名前。
「騎士竜戦隊! リュウソウジャー!!」
力の放つ竜の咆哮を背に、姿を変えたゴーカイジャー。
―――騎士竜戦隊リュウソウジャーが、アザルドの前に立ちはだかる。
「ハッ……ちっとばかし姿を変えた程度で何が出来るか―――
見せてもらおうじゃねえか!!」
盛大に打ち合わされるアザルドの拳。
それに伴い解放される重力波。迫り来る超重力のプレッシャー。
迫りくる壁のような力の波動を前にして、リュウソウレッドが刃を翻した。
「はん、望むところだ―――俺たちのスーパー戦隊道、見せてやる!!」
「まずはわたしが前に出ます!」
そう叫び、前に出ようとするマシュ。
それでも宝具でなければ防げなかろう圧倒的なパワーの前に、彼女は足を踏み出した。
が、その前に二人の戦士が彼女の位置から更に前に出る。
「えっ―――?」
「ここは私たちにお任せください」
「本当にお前が必要な状況まで少し休んでるんだな」
アイムとジョー。
二人が前に出ながら、手にしたリュウソウケンの柄に手をかける。
竜の頭部を模したその部分には取っ手があり、そこを押すと竜の口が開く。
彼らが手の中で弾くのは、それこそレンジャーキーにも似た小さな戦士の像。
武器を手にした竜装騎士の魂たるそれ―――
リュウソウルを、二人は揃って竜の口に差し込んだ。
「カタソウル!」
「ムキムキソウル!」
〈カタソウル!〉〈ムキムキソウル!〉
リュウソウケンの咆哮に続け、二人はリュウソウケンの口を即座に二回開閉。
まるで口に入れたリュウソウルを喰らわせるように、まだ続けて大口を四度開け閉めする。
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈かたそう!〉〈むきむきそう!〉
リュウソウルから解き放たれるのは、二人の右腕を鎧う追加装甲。
カタソウリュウ、ムキムキソウリュウのソウルの具現。
そうなった瞬間、リュウソウピンクが一気に右腕を振り上げた。
赤茶けた鎧を身に纏い、自身の体よりも遥かに太くなった筋肉の塊のような腕。
「たぁ―――っ!」
ピンクはそれを地面へと叩き付け、地面を容易に割り砕く。
巻き上げられた大量の岩塊が、アザルドの放つ重力波へと殴り飛ばされる。
それらを粉砕しながら迫りくる力の前に、リュウソウブルーが立つ。
水色の鎧を纏った右腕に構えた剣で、僅かばかり軽減された力の奔流の前に。
―――直撃した瞬間、ブルーの体が大きく吹き飛ばされる。
しかしそれで倒れることなく、彼は地面に剣を突き立て減速してみせていた。
真正面から耐え切った相手に対し、アザルドが感心したように息を吐く。
「ほぉ、こりゃあ……もしかしたら愉しめるかもしれねえなあ!」
「あんたを愉しませる気なんてさらさら無いのよ! ノビソウル!」
「ハヤソウル!」
反撃を加えるため、続く二人。
彼女たちも同じようにリュウソウケンの竜の口の中に、リュウソウルを装填した。
〈ノビソウル!〉〈ハヤソウル!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈のびそう!〉〈はやそう!〉
黄色の鎧を右肩に纏い、リュウソウグリーンが疾駆する。
わざわざ目で追うこともせず待ち受けるアザルド。
疾風の速さで振るわれる斬撃が彼を襲い―――
続けて、ミントグリーンの鎧を装備したリュウソウブラックが剣を振るう。
そうして振るわれる剣の刀身が大きくうねり伸長した。
ワイヤーを振り回すように、彼女はその剣を自在に操ってみせる。
高速の剣と鞭の如く撓る剣。
その二刀が繰り出す剣撃は絶えずアザルドに浴びせられる。
全身から火花を噴き出し、なされるがままに不動。
何ら痛痒のない様子で攻撃を受け続けるアザルド。
「―――結局こんなもんか」
破壊神が一言、そう呟く。
そうして彼は軽く片腕を持ち上げて、一度小さく指を動かした。
ぐりん、と。振るわれていた伸びたリュウソウケンの切っ先が向きを変える。
「っ、この……!」
「う、わっ!?」
同時にリュウソウグリーンが足を止める。
アザルドの周囲で重力が増大、彼の足が持ち上がらなくなったのだ。
動くにしろ、速力を保ったままとはいかない。
そんな彼に対して、アザルドの重力が強引に動かすリュウソウケンの刃が向けられる。
「メラメラソウル!」
〈メラメラソウル!〉
〈強! リュウ! ソウ! そう! この感じ!〉
〈メラメラ!〉
リュウソウレッドが大地を踏み切った。
空へと跳ねながら彼がリュウソウケンに装填するのは、橙色のリュウソウル。
竜の口を開閉すれば、彼は紅蓮の業火と共に右肩のみならず胸を完全に鎧で包む。
上空からアザルドの頭上を取り、その超重力の空間に入り込む。
彼の体が空中でその重力に捕まり、地面に向けて加速した。
それを利用してアザルドの頭上目掛け高速で落下するレッド。
炎上する剣がアザルドの脳天に叩き付けられた。
その衝撃で誘導が逸れ、向けられた剣の切っ先がグリーンを掠めるに留まる。
舌打ちしつつ、すぐさま剣を引き戻すブラック。
グリーンとブラックを逃がしたことに、アザルドが小さく鼻を鳴らす。
だがそれ以上に大した反応を見せることなく、次の標的を目掛けて動き出す。
相手は当然のように、アザルドに剣を叩きつけたレッド。
刃はアザルドに傷一つつけることなく、あっさりと弾き返されていた。
そうして弾かれたレッドに対し、アザルドは手を向ける。
発生する重力波から逃れる術もなく、その威力にレッドが膝を落とす。
「ビリビリソウル!」
〈ザパーン!〉
リュウソウルを扱うための銃、モサチェンジャー。
それを手にしたリュウソウゴールドが、黄色いリュウソウルを装填した。
反応してトリガーガードが海竜の背ビレのように持ち上がる。
続けて銃身を掴みスライド。ポンプアクションさせ、力を解き放つ。
〈めっさ! ノッサ! モッサ! ヨッシャ! この感じ!〉
〈強竜装!〉
レッドに続き、胸と両肩を覆う黄金の鎧を身に纏うゴールド。
彼はモサチェンジャーの銃口から怒涛の雷撃を撃ち放った。
駆け巡る稲妻に全身を飲み込まれ、しかし破壊神は無傷。
そんな相手に対し、再びブルーが動いた。
「ヒエヒエソウル!」
〈ヒエヒエソウル!〉
〈強! リュウ! ソウ! そう! この感じ!〉
〈ヒエヒエ!〉
先程まで以上の力を解放するリュウソウケン。
解き放たれるのは絶対零度の翼を持つ騎士竜の力。
右肩のみならず胸を覆う煌めく蒼い鎧。
翼の如きマントを靡かせて、ブルーは冷気を乗せた刃を振り抜いた。
大地を奔る絶対零度の凍気。
それが向けられたアザルドだけでなく、周囲も稲妻も諸共に凍てつかせていく。
が、自身を覆う氷を易々と粉砕し、瞬く間に復帰するアザルド。
「もう少し頑張れよ、つまんねえからな!」
言って、拳を握りしめる。それだけで発生する重力波。
それが周囲の氷山を押し潰し、あっさりと壊滅させた。
氷片が撒き散らされ、雹のように降り注ぐ。
―――どれだけ攻撃を重ねても傷一つ受けない。
挙句に触れることさえなく、全てを蹂躙する。
そんな破壊神の暴威を前に、転がったレッドが手にした剣を握りしめた。
剣を振るった時に確かに手応えはあったのだ、と。
「―――ルカ! ハカセ! アイム!
叫びながら新たなリュウソウルを取り出すマーベラス。
彼が手にしたものを見て一瞬、三人が停止する。
が、すぐさま三人共に再びリュウソウルを手にしていた。
「ミガケソウル!」
「マワリソウル!」
「マブシソウル!」
〈ミガケソウル!〉〈マワリソウル!〉〈マブシソウル!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈みがけそう!〉〈まわりそう!〉〈まぶしそう!〉
グリーンが、ブラックが、ピンクが。
新たなリュウソウルを使い、その力を発揮する。
グリーンが剣を振るえば、周囲を舞う氷片が鏡のように磨かれる。
ブラックが剣を振るえば、鏡のように磨かれた氷片がアザルドを中心に回転を始める。
ピンクが剣を振るえば、その刀身が発光した。
磨き抜かれた鏡の欠片。それを渦巻かせる竜巻。
そしてその中に叩き込まれる光源。
無数の氷片が光を乱反射させ、周辺一帯を白い光で埋め尽くした。
視界を塗り潰されたアザルドがその状況に肩を竦める。
「こんなもんで時間稼ぎか? 意味ねえよ!」
瞬間、アザルドを中心として膨れ上がるエネルギー。
彼を中心に全てを吹き飛ばす重力波。
一切の加減なく、周辺一帯を相手諸共更地にせんと解放する力。
氷など言うまでもなく、光さえも歪めて消し飛ばす超重力。
絶対的な力を前に、いとも簡単に張られた光のカーテンは千切れ飛び―――
「そうか? だったら試してやるよ! ギャクソウル!」
〈ギャクソウル!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈ぎゃくそう!〉
視界が晴れた瞬間に、リュウソウレッドがその剣を振り抜いた。
一瞬の停止を経て、彼が放った力が作用する。
「―――――なに?」
アザルドが放った、彼を中心に全周囲に広がっていく重力波。
それが全く逆方向への作用を始めた。
即ち、
自身が全力で放った圧力に、中心にいるアザルドの体が軋みを上げた。
だがそれも一瞬だ。
アザルドがその圧力に耐えきれるかどうか以前の問題。
純粋にエネルギーの総量の桁が違う。
ギャクソウルのエネルギーで彼の力を反転させるなど、一瞬だけ出来れば上等と言える。
だからそのまま相手を押し潰すことなど出来ず―――
だからこそ。
「―――俺の生き様、見せてやる!!」
シンスペクターがその全身の装甲に罅が入った状態でなお。
瓦礫を跳ね飛ばし立ち上がり、その手に剣を取り上げていた。
彼が手にするのはディープスラッシャー。
そこに装填されているのは、スペクター眼魂及びディープスペクター眼魂。
更に彼はドライバーのトリガーを引き、シンスペクターの全てを解き放つ。
〈メガハゲシー! メガハゲシー! キョクゲンダイカイガン!!〉
〈シンダイカイガン!! シンスペクター!!〉
七つの翼を羽ばたかせ、蒼く煌めく肢体が舞う。
突き出されるディープスラッシャーが深淵の炎に燃える。
その切っ先に全てを懸けて、彼の体がアザルドの重力効果範囲に飛び込んだ。
「オォオオオオオオ―――――ッ!!」
〈ギガオメガギリ!!〉
〈デッドリーオメガドライブ!!!〉
加速、などと言える影響ではない。
尋常ならざる引力が、シンスペクターの体をアザルドに向け吸い寄せる。
煌めく装甲を圧壊させられながらも、しかし。
シンスペクターは踏み込んだ瞬間に、アザルドへと正面から着弾していた。
「――――ハ!」
ディープスラッシャーの切っ先が、遂にアザルドの体表を食い破る。
腹部に深々と、その刀身が半ばまで埋め込まれる。
そこを中心に僅かながら広がっていく罅割れ。
それを認識したアザルドが、やっと本当に愉しそうに笑った。
異常なまでの速度で激突した反動で、シンスペクターもまたダメージを受ける。
どちらが攻撃をしたのか分からないほど、全身の装甲が割れていく。
それでもマコトがスラッシャーを強く握り、更に押し込もうとして―――
「そうこなくっちゃなあ!!」
アザルドの拳が振り下ろされる。
それに対応できる体力が残っているはずもなく、スペクターが殴り飛ばされた。
彼が掴んでいた剣が半ばから折れ、刀身半分だけがアザルドの体内に残る。
「マコト!!」
「奴が一発ぶち込んだ! 内部からぶっ壊してやれ!!」
「はい! ドッシンソウル!」
〈ドッシンソウル!〉
〈強! リュウ! ソウ! そう! この感じ!〉
〈ドッシン!〉
レッドの声に応え、すぐさまピンクが前に出る。
纏うは抹茶色の鎧。
両腕を無双の鉄拳で包み込み、彼女は一足飛びにアザルドへ距離を詰めにかかった。
そんなピンクに対し視線を向け、アザルドは重力波を叩きつける。
そのプレッシャーの前に立ちはだかるのはジオウ。
彼が再び手にしたヘイセイバーを翻し、そのスロットにウィザードウォッチを装填した。
続けてセレクターを回し、この場に則した能力を選び取る。
〈フィニッシュタイム! ヘイ! ゴースト!〉
〈ウィザード! ゴースト! スクランブルタイムブレーク!!〉
前方に描かれる黄色い魔法陣。
それと同時に、ヘイセイバーの刀身からニュートンの力が放たれる。
都市一つを宙に浮かせるほどの斥力が、魔力の生む重力と共に。
全力でアザルドからの攻撃への壁となり、そして一撃で砕かれた。
それでも何とか、ただの一撃と相殺してみせる。
「ぐ……っ!」
「ハハハハ! そら、もう一発―――!」
体勢を崩したジオウ。彼を盾に前に突き進むリュウソウピンク。
それらを纏めて薙ぎ払うように、腕を振り上げるアザルド。
そうして二人を吹き飛ばす筈の攻撃が放たれる、前に。
〈モサブレイカー!〉
「ファイナルサンダーショットォッ!!」
注意を向けていなかったリュウソウゴールドの放った雷の弾丸。
それがアザルドの胴体へと直撃する。
ディープスラッシャーが開けた穴から染み込むように、体の内側から雷撃が爆発した。
多少罅割れていた体表が、バチバチと音を立てて弾ける。
それでも欠けるほどのダメージさえなく、アザルドは愉しげに笑い通す。
「たぁああ――――っ!!」
稲妻に侵され刹那止まったアザルド。
その胴体、ディープスラッシャーの残骸が残る腹。
そこを目掛けて、ピンクが両腕の鉄拳を全力で殴り抜いた。
一撃に留まらず二度、三度、十、二十と。
圧倒的速度で繰り出される、衝撃を浸透させ内部破壊を導く拳。
三十を数えるほどに直撃を見舞って。
それでようやく僅かな罅を大きくするだけのダメージを与え―――
「足りねえなあ! こんな程度じゃこのアザルド様を倒すには―――まるで足りねえ!!」
一撃。
殴り返される拳がピンクと打ち合い、当然のように彼女の方が吹き飛ばされる。
そうした破壊神は自身の両の拳を全力で打ち合わせた。
そこに生まれる超重力のエネルギー球。
今まで見せてきた圧倒的な力とさえ比較にならない、ブラックホール染みた重力の渦。
生成するや否や、彼はすぐさまそれを殴り抜く。
撃ち出される、全てを呑み込み圧壊させる破壊の権化たる重力の渦。
「――――マシュ、お願いっ……!」
「了、解っ……! “
マスターの声を受け、その場に躍り出る少女。
彼女の構えた盾を中心に、白亜の城塞が顕現する。
星を呑み込む暴威の前に、星に根付く命を守る盾が立ちはだかる。
盾で受け、それが巻き起こす破壊を塞き止めて。
落ちそうな膝を必死で持ち上げて、マシュは盾を全身で支え切ってみせる。
「ハハハハハハハハハ!! 守ってばっかで俺が倒せんのか?
大口叩いた分、もっと気張って刃向かってこいよ!!」
言いながら、アザルドが再び両拳を叩き付けあった。
そうして生成される、今マシュが必死に防いでいる一撃と同等の追撃。
アザルドは当然、それを撃ち出すために腕を振り上げる。
「く、ぁ……!」
盾を必死で支えながら、マシュが歯を食い縛る。
一撃を相手にやっとなのに、そんな追撃があれば保つ筈がない。
そしてそれどころの話でもない。
このまま放っておけば、アザルドはこの規模の攻撃を止め処なく行い続けるだろう。
彼女が倒れれば、数分と保たず地球ごと滅び去りそうな威力のこの攻撃を。
「―――所長、さっきのは……!」
ではどこかに起死回生の一手はないのかと。
振り返った立香の前で、肩を震わせたオルガマリーが視線を彷徨わせる。
問われたところで答えなどない。
彼女ではメカニズムを明かせないだろう地球のパワーというものを味方につけてなお。
アザルドとは、これだけの差があるのだ。
「っ、無理よ……!」
あの星辰の操作がもう一度叶ったところで、焼石に水だろう。
相手は星の光さえ呑み込む重力の渦が如き破壊神。
「それこそ、前の特異点で見た解放された星の聖剣くらいの威力がなければあんなの……!」
「―――――」
ヘイセイバーを杖代わりにし、立ち上がっていたジオウ。
彼がオルガマリーの放った一言を聞いて、ハッとした様子で顔を上げた。
ソウゴは咄嗟に自身のドライバーに手を添える。
オルガマリーの言葉を聞いて、最後のピースが嵌った気がしたのだ。
ここには今まさに溢れ出す地球のパワーがある。
更にその星が生んだ、星を守るための騎士たちの力がある。
そして。
いま目の前では、星の聖剣と共にあった円卓が展開されている。
それは星の聖剣を携えし王の城。白亜の城塞、キャメロット。
即ち王とは―――選定の剣を引き抜きし、騎士の王。
「だったら……これが!!」
〈ライドウォッチ! ファイナルアタックタイムブレーク!!〉
ジオウの指が、ディケイドウォッチを発動する。
それによって更に解放されるリュウソウジャーウォッチの力。
限度を超えたエネルギーの奔流の末、リュウソウジャーウォッチが砕け散る。
だがそれと代わるように、強大な光がその場に発生した。
その光に向け、周囲に漂っていた地球のパワーが集い始める。
「っ、これは……!?」
マシュが手にしていた盾が帯びた熱に気づき、目を見開いた。
鼓動するように、騎士王の円卓が力を発する。
地球により生まれし星の守護者。
岩から聖剣を引き抜きし騎士王の円卓。
それらが、地球のパワーを使いこの場に一振りの剣を再現する。
崩れ割れた地面からせり上がってくる岩。
そこに突き刺さった、一振りの聖剣。
その剣が現れた瞬間、ソウゴはマーベラスに声を飛ばす。
「ゴーカイレッド!!」
「―――はっ、面白れぇ。借り受けるぜ、リュウソウジャーの大いなる力!!」
即座に地面を蹴り、その岩に向けて跳ぶマーベラス。
リュウソウレッドが岩に突き刺さった剣―――
リュウソウケンに似た、しかしより荘厳なる剣を、その手で掴み取った。
引き抜くために全力を掛けながら、彼は封印の聖剣たるその銘を呼ぶ。
「ソウルを解き放て! リュウソウカリバー!!」
力が溢れる。
それこそ、地球の守護者たるリュウソウジャーの力。
その力を極限まで高める聖剣が、リュウソウレッドの手に渡る。
同時に彼は黄金の鎧と紫紺のマントを纏い、代わりにリュウソウケンを地面に突き刺した。
「ぶち込むぞ、ジオウ!!」
「ああ、これなら―――いける気がする!!」
聖剣を引き抜きしノブレスリュウソウレッド。
そしてライドヘイセイバーを構えたディケイドアーマー。
両者がリュウソウルとライドウォッチ。
手にした力の源を、それぞれの武器へと装填した。
「コスモソウル!!」
〈無限の宇宙! コスモラプター!〉
〈フィニッシュタイム! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘヘヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘイ! セイ! ヘヘヘイ! セイ!〉
二刀が膨大な力を纏い、振り被られる。
直後、アザルドが二発目の重力の渦を全力で撃ち出した。
マーベラスとソウゴが一瞬視線を交わし、両者ともに全力で踏み込み―――
その剣を、全身全霊で振り抜いた。
「アルティメット―――! ディーノスラッシュ!!」
〈アルティメットディーノスラッシュ!!〉
「ハァアアアア――――ッ!!」
〈ディ・ディ・ディ・ディケイド!〉
〈平成ライダーズ! アルティメットタイムブレーク!!〉
―――僅か、マーベラスが先んじる斬撃。
少しでもずれた攻撃は同時にアザルドの攻撃に対抗することはなく―――
だからこそ、アルティメットディーノスラッシュこそが真っ先に重力の渦に飛び込んだ。
放たれた一撃こそは、無限の宇宙の力を宿した騎士竜のもの。
安らぎの閃光たる輝きと深淵なる暗闇を併せ持つ宇宙。
その力を取り込み自身の力を増す騎士竜、コスモラプター。
そんな力を、聖剣によって最大限高めて放ったからこそ―――
白銀と紫紺の騎士竜の顎が、アザルドの放つ宇宙の力を喰い破った。
のみならず、喰らったアザルドの力を己に取り込み、更に強大に膨れ上がる。
盾が受け止めていた一撃が喰い破られて消失し、マシュが膝を落とした。
その間にも、宇宙の牙はアザルドに向かって突き進む。
続けて殺到する、放たれていた二撃目。
正面衝突してなおその一撃をも喰い破り、喰らった力を取り込んで―――
限界までエネルギーを増大した極大の竜が、咆哮と共に喰らい付く。
宇宙の力を取り込んで、より強大になった竜。
迫りくるその一撃に喉を鳴らし、アザルドが喜色も露わに拳を握る。
自身の握力で拳を壊すのではないか、というほどに拳を強く握り締め。
彼は全力をもって己の腕を振り抜いた。
激突し合い、そこで弾ける逃げ場のない反動。
余波の衝撃で地面を捲り上がらせ、微塵に粉砕しながら力が強引に発散される。
そうしたその場で撒き散らされる力さえも、宇宙の使者たる騎士竜は取り込んだ。
この一撃に全てを賭して、限界を超えたエネルギーの吸入に光と闇の竜が膨張していく。
―――それでもなお、そこで遂に進撃が止まった。
「やればできるじゃねえか! そうだ! これだ!!」
竜の顎がアザルドの拳に喰らい付く。
だが噛み砕くこと叶わず、押し止められ―――
それどころか、押し返され始めた。
「どう足掻いたところで俺を倒せもしねえ雑魚を潰して回るより!
俺を倒せる可能性があるような連中との戦いの方が、よっぽど愉しめる!!」
「生憎だが、こっちはテメェを愉しませるためにやってるんじゃねえんだ!
これ以上付き合ってやるつもりはねえんだよ―――ッ!!」
喜悦に塗れたアザルドの叫びを切り捨て。
リュウソウレッドが一際強く、聖剣の柄を握り直した。
同じくジオウがヘイセイバーを握り締める。
それと同時。
二十の光を束ねた極光が、光と闇の竜の後ろから激突した。
その威力でもって、竜の爆進に最後の一押しを加えるための一撃。
それに後押しされた竜がまたも限界を超え、力を増す。
叩き付けられた腕を噛み砕けぬままに、強引なまでに突き進む竜。
その全てを懸けた進撃をもって、アザルドの体に牙を届けてみせた。
代わりに呑み込んだ拳に喉を貫かれ、崩壊しながらも。
しかし確かに白銀と紫紺の竜が、黒金の破壊神に牙を突き立てた。
牙が突き立てられるのは、ディープスラッシャーが抉った腹の穴。
更に砕けるほどではないまでも、そこを中心に無数に拡がった亀裂部分。
埋め込まれた折れた刀身を蒸発させながら、光と闇の牙がそこに叩き込まれる。
半分以上消し飛ばされながらも、しかし竜の顎は確かに敵を噛み砕くために閉じられた。
突き立った無数の牙により、亀裂は一気にアザルドの全身にまで拡がっていく。
そんな自身の状態を見下ろしながら、彼は軽く笑い飛ばした。
「はっ、いいじゃねえか。次もその調子で頼むぜ?」
―――そう言い残し。
宇宙の破壊神、不死身のアザルドの全身が砕け散る。
そして砕け散った無数の破片が、その場で回転し始めた。
目にも止まらぬ速さの回転。
その影響で発生する、アザルドの破片が孕んだ竜巻のような暴風。
それが再生の前兆であることには疑いがなく―――
「チッ……! どうやってトドメを刺す!?」
崩れ落ちていくリュウソウカリバーと貴き黄金の鎧。
放つことができたのは、ただの一撃。
全てをそこに注がなければ、一度さえもアザルドを砕けなかっただろう。
地面に突き刺していたリュウソウケンを引き抜き、マーベラスが声を荒げる。
ここでそのまま再生されたら、倒すどころか二度と砕くことすら叶うまい。
思考している時間の猶予すらなく。
戦場を見ていた立香が、すぐにその声を張り上げた。
「仮面ライダーの力……仮面ライダーギンガの!
あいつの中に、ギンガのウォッチがあるんじゃないの!?
それを取れれば、アザルドがあの力を使えなくなって、ソウゴが使えるかも……!」
「―――ミエソウル!」
〈ミエソウル!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈みえそう!〉
彼女の声を聞き届け、即座にジョーが視覚を鋭くするための力を得る。
視線を向けるのは当然、暴風と化したアザルドの破片たち。
無数の破片と荒れ狂う風のカーテン。
その嵐の中を覗き込み、彼はすぐさま声を上げた。
「中心にある! 明らかな異物と融合した、一際でかい奴の破片!
―――それだけじゃない。あれは明らかに他の破片とは違う……!
恐らくあれが、再生のための核だ!!」
「踏み込むぞ! ジオウ!!」
「ああ、ここで決める―――!!」
既に力を使い果たしたディケイドアーマーも消失した。
ジオウはその手にジカンギレードを引っ提げ―――
ドライバーに装填されていた自身のウォッチを、ギレードへとセットした。
〈フィニッシュタイム!〉
〈レッド! それ! それ! それ!〉
同じように、赤きリュウソウルをリュウソウケンに喰らわせるレッド。
リュウソウケンの竜の口を繰り返し動かし、力を解放させる。
二人が手にした剣が光を帯び、残された全ての力がその刃に注がれた。
だがそれでも。
これから踏み込む場所は、地獄の中だ。
真っ当な手段では傷一つ与えられない硬度を持つアザルドの破片。
それが尋常ならざる速度で回転を続ける竜巻。
荒れ狂うのは純粋な速さが原因ではなく、超重力が渦巻いているからでもある。
そのまま踏み込めば、攻撃だろうが何だろうが容易に磨り潰されることは間違いない。
だからこそ。
「プクプクソウル!」
「ヤワラカソウル!」
〈プクプクソウル!〉〈ヤワラカソウル!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈ぷくぷくそう!〉〈やわらかそう!〉
グリーンとブラックがリュウソウルに秘めた力をその剣に発露させる。
竜巻の中で巡るアザルドの破片。
その一部が空気の満ちた風船のように膨れ上がる。
大量の破片が行き交う嵐の中で回転している小さな欠片たち。
それらが巨大に膨れたものに衝突し、弾け合う。
アザルドの破片同士で激突し、無数の破片が竜巻の外まで弾き飛ばされていく。
飛来する追い出されてきた破片を躱しながら、二人が嵐の中へと踏み込む。
処理し切れていない破片はまだ残っている。
踏み込んだ瞬間にレッドとジオウに破片は矢となり襲いかかり―――
しかし彼らの体に当たった途端、軟らかに歪んでそのまま滑っていく。
渦巻く竜巻を突き破り、そのまま二人は重力の結界に侵入し。
「オモソウル!」
「カルソウル!」
〈オモソウル!〉〈ザパーン!〉
〈リュウ! ソウ! そう! そう! この感じ!〉
〈めっさ! ノッサ! モッサ! ヨッシャ! この感じ!〉
〈おもそう!〉〈強竜装!〉
竜装直後、ピンクが右腕から下げた鉄球を地面に叩きつける。
発生する重力波が空を走り、二人の進撃を阻む壁にぶち当たった。
続けて、ゴールドが二つの重力が交わる空間へと銃を向け光線を撃ち放つ。
光が駆け抜けた空間の重さが一時的に取り払われる。
一秒後に再び張り巡らされるだろう超重力の空間の中。
二人の戦士が。リュウソウレッドと仮面ライダージオウが。
ギンガのウォッチと癒着した、大きな破片を見つけ出す。
振り被った剣の切っ先が向かう先は、そこ以外にありえない。
〈それ! その調子! 剣ボーン!!〉
〈ジオウ! ギリギリスラッシュ!!〉
「ディーノスラッシュ――――ッ!!」
「ハァアアアアアアア――――ッ!!」
左右から挟み込むように振るわれる剣閃。
それは過たず最も大きなアザルドの破片に叩き付けられた。
剣に乗せた全ての力が炸裂し、それを砕かんと暴れ回る。
この一撃を見舞うため、全てを使い尽くした。
もはや次はない。その気迫も共に剣に注ぎ力を籠め―――
―――それでも。
「ッ……!」
「チィ……ッ!」
周囲に吹き飛ばされていたアザルドの破片。
それらが全てリュウソウルの影響を振り切り、いま剣を叩きつけている破片を中心に集まってくる。瞬く間に再形成されていく宇宙の破壊神。
アザルドの中心であろうそれは、剣など物ともせずに他の破片と繋がっていく。
刃を叩きつけていた剣が、融合していく破片たちに呑み込まれる。
そのまま一秒かからずに人型を取り戻し、力を漲らせてみせるアザルド。
「ハ――――!」
再誕したアザルドが微かに腕を揺らす。
ただそれだけで、先程までと何も変わらぬ重力波が周囲に放たれる。
レッドとジオウがそれにより大砲で射出でもされるかのように吹き飛ばされた。
地面に激突し、転がり、遂には変身さえも解除される。
「マーベラス!?」
「ソウゴ!?」
胸から二本の剣の柄を生やしながら、アザルドが笑う。
彼の視線が向かう先は、いま地面に転がった二人。
相手を睨み返しながら、マーベラスが歯を食い縛りつつ悪態を吐く。
「はっ、とんでもねえ化け物だぜ……!」
マーベラスの言葉を受け、鼻を鳴らし。
そのままアザルドはゆっくりと一歩を踏み出して。
踏み出した彼の足が地を踏みしめる前に、ソウゴが呟いた。
「けど……ここで終わりだ」
アザルドが踏み出した足が地を踏んで。
その瞬間、彼の胸が引き裂かれた。
バキバキと盛大に音を立てて、突き刺さったままの剣を中心に拡がっていく亀裂。
自身の受けたその傷を見下ろして、アザルドは愉しそうに声を震わせる。
「ク、ククク……ッ! ハハハハハハ! ハハハハハハハハハ――――ッ!!
見込み以上だったぜ、下等生物ども! テメェらとの戦いは、最高だった!!
さあ、後は――――」
ガガン、と。両の拳を叩き付け合い、力を解放する。
その反動で亀裂が更に大きくなり、全身が崩れ始めた。
しかしそんなことを気にもせず、アザルドは力を放出し続ける。
「俺が木端微塵に砕け散るまでの間、愉しませてもらおうじゃねえか!!」
展開される重力波。
遠慮呵責なく、死に際と認識してなお破壊神が力を振り絞る。
自分の力で自分が押し潰されそうになりながら、それを気にすることもなく。
周囲一帯を圧壊させる規模のものを、この期に及んで当然のように発揮して。
―――最期に、金属が盛大に打ち鳴らされる音を聞く。
一気に内側から崩壊するアザルド。
彼が視線を巡らせれば、そこにいたのは盾を持った少女。
攻め手としては一切考慮していなかった相手。
彼女は盾を振り抜いた姿勢で動きを止め、アザルドを必死に睨んでいた。
身を貫くのは自分の体が砕けようとも、大切なものを守ろうとする意志。
それに一切理解を示すことなく―――
しかし、砕けようが死に果てようが自分のやりたいことをやる。
その意志に対しては一定の共感を示し、破壊神はまだ笑う。
マシュの盾が振るわれ、殴りつけたのはアザルド自身でなく。
アザルドに深々と刺さった状態で固定されていた二本の剣。
彼女は盾で思い切り剣の柄を殴りつけ、刀身を伝わせて衝撃を内部に見舞った。
その結果こそが、力を解き放つ前に崩れるアザルドだ。
頭部だけで地面に転がり落ち、しかし彼は意識のある限り笑い続ける。
壊すだけではつまらない。
壊すか壊されるかだから面白い。
ここで自分は壊されたが、愉しかったからそれでいい。
ただそれだけで彼は喜悦に狂い―――
「―――ハハハハハ!!
この俺が全力でやって、最後まで一匹も殺せなかったってわけか!!
最期の最後まで愉しませてくれたぜ! やっぱり戦いはこうでなくちゃなあ!!
お前らは俺より強い下等生物だったってわけだ!!
愉しかったぜ! ハハハ! ハハハハハ! ハハハハハハハ――――ッ!!」
がらがらと崩れ落ちていく破片の中心。
その中に秘められた、一際大きな塊。
そこに集約されていたエネルギーが暴れ、その場で大爆発を起こし―――
直後に異常な重力がその場を覆い、周囲を呑み込んだ。
満足を得たアザルドはそれに呑まれ、完全に消失した。
マシュは何とかバックステップでその範囲から離れる。
が、踏み止まり切れずに背中から転げ―――
そんな彼女を、マスターがぎりぎり受け止めてみせた。
そうして掛け替えのない人に支えられながら。
マシュは暗黒に呑まれた怪物がいた場所を見る。
破壊だけを為し、その中でひたすら満足感だけを求めていた怪物。
他者を破壊することを肯定し、自分が破壊されることさえ肯定する。
掛け値なしに異常なクリーチャーにして、善悪を超越した純粋な破壊神。
当然正義などではなく。
しかし他のデスガリアンのように他者を害することに悦楽を見出す悪辣ですらなく。
主義主張など交わす余地のない、一個で方向性が完結・完成した存在。
「―――――」
その破壊神の最期に、マシュは小さく目を細めた。
リュウソウカリバー。
安心せえ、リュウソウジャーの大いなる力はマックスリュウソウチェンジャーが継いだる。
それに仮面ライダーやスーパー戦隊の皆も安心せえ、全てのライダーと戦隊は俺が継いだる。
そしてコウ。安心せえ、リュウソウレッドは俺が……誰やお前!?