Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
ダブルアーマーが軋みを上げる。
女神との鍔迫り合い。
その中でジオウは即座にアーマーを幻想と鋼に染め上げた。
マカナによる連撃を、正面からジカンギレードで何とか受け続ける。
その激突の中に、白の花嫁が踏み込んだ。
振るわれる隕鉄の剣。
それをバックラーの方で受け止め、逸らし。
瞬間、轟音とともに砲撃が放たれた。
「―――確かにそれは私にだって通用するでしょうけど」
剣でジオウを。盾でネロを。
余裕をもって制しながら、彼女は困ったように微笑んだ。
そのまま、思い切り振り上げられる足。
それがドレイクの砲撃を、盛大に蹴り飛ばした。
花火のように打ち上げられ、空中で爆発する砲弾。
爆炎の明かりが煌々と地上を照らす。
降り注ぐ光と炎の中で、舌打ち混じりにドレイクが叫ぶ。
「ハッ、やるじゃないか!」
「お褒めに預かり光栄デース!」
合間に刺し込まれる、アタランテの射撃。
翼竜を撃墜しながらも、彼女は確かに攻撃を挟み込んでくる。
それに加えて黒い短剣もまた女神に迫る。
短剣の主はハサン。
彼は乗り捨てられたライドストライカーを足場に、危うげなく投擲を果たす。
女神がそれを一瞥し、強く跳ねた。
ジオウとネロを取り残し、彼女は大きく舞い上がる。
そうして射撃投擲を躱して、空を蹴り付け加速しながらの落下。
振り下ろされる翡翠剣による一撃を奔らせた。
「ネロ!」
「うむ!」
熱き記憶をその身に宿し、右半身のアーマーを赤く染め。
燃え上がるジカンギレードを手に、ジオウが踏み込む。
ネロもまた、白炎を立ち昇らせる隕鉄の剣でそれに続く。
空から降り注ぐ翡翠剣の一撃。
その刃に合わせられる、地上から迎え撃つ二振りの炎の剣。
刃が重なり、顕わになる歴然たる力の差。
激突した瞬間に押し込まれるのは、ジオウとネロの二人の側。
だがそこに放たれる、彼らへの援護砲撃。
地上で受け止めている二人より、女神は上に位置している。
照準は確かに、彼女を捉えた。
女神に直撃させたら、二人が衝撃でぶっ飛ばされる事になるのは我慢して貰う。
「頭を庇いな! 悪いけど、纏めてぶっ飛ばすからね―――!」
「ええい、仕方ない! お手柔らかに頼むぞ!」
ドレイクの背後に展開した砲口が火を噴いた。
即応し、自分から弾かれることで彼女は距離を離してみせる。
離れた双方の間に飛んでいく砲弾。
それを見送ってから女神は虚空を滑り、ゆるりと着地した。
ギレードを構え直しながら、ジオウが左側のアーマーを黒く染める。
「……訊きたいのだけれど!」
「ん? ハーイ、なんでショウ?」
くるくると手の中で剣を回し、肩に乗せて。
女神は、声の主であるオルガマリーへと視線を向けた。
少なくとも、着ぐるみの方よりは会話が出来るらしい。
「あなたは、なにを目的として三女神同盟に所属しているの?
戦いたいだけ? そのように聞こえた、けれど」
「いいえ?
肩に乗せていた剣の切っ先を地面に突き立てて。
女神は嬉しそうに、陽気に微笑んだ。
「アナタは私が三女神同盟に所属している、なんて言うけれど。
実際のところ、アレは仲間としての同盟なんかじゃないわ。
誰がこの世界を、この世界に住む人間を支配するか。
それを決めるため、競うために設けられた女神協定ですネー」
「女神は、やはり味方同士なわけじゃない……?」
「ハーイ、その通り。むしろ対戦相手なの!
女神の一人は憎しみを以て、人間世界を滅ぼす。
女神の一人は苦しみの中で、人間世界を永眠させる。
そして私は、楽しみながら、人間世界を試し続ける。
女神同士は争ってはならない。ルールはそれだけの早い者勝ち。
それが私たち、三女神同盟デース!」
そう言って、微笑む女神。
盾を構えていたマシュが、その貌からいつかに感じた気配を察する。
死ぬときにまでただ愉しみだけを考えていた、戦闘狂。
破壊と殺戮の申し子たる、“外”より降り注いだ破壊神。
最初から思考の基盤が違う、真正のインベーダー。
それとよく似た気配だと理解し、彼女は顔を強張らせた。
「ただ、愉しみのため、だけに……?」
「ええ、そう。だって、アナタたちだって楽しい戦いは好きでショウ?
憎悪の女神が与えるのは殺戮。アナタたちの何もかもを奪い、踏み躙る。
苦痛の女神が与えるのは安眠。命の代わりに安寧、安心、安全を約束する。
その点、私が与えるのは自由! 自由な闘争デース!」
「自由……?」
「そう! 命を奪う他の女神と違い、私だけがアナタたちを生存させる。
今この世界で人間が生きるのが許されるのは、私の領域しかありまセーン!
だから、ね?」
マシュが盾を握り直す。
朗らかに笑う女神であっても、その実態は戦の神だ。
破壊神とさえ紙一重の差しかない、人外の怪物だ。
だからこそ、彼女たちは退けない。
「私は愉しいから戦う、アナタたちも愉しいから戦う。
私はアナタたちを試し続け、アナタたちは私に挑み続ける。
その機構の継続こそが、私の生き甲斐。
私は、私のためにも。
他の女神も正面から捻じ伏せて、アナタたちの命を勝ち取るの」
ジオウが剣を握り直す。
魔獣の女神は、憎悪だけで人間を殺し尽くすもの。
そして、この女神は悦楽だけで人間を飼い殺すもの。
人間にとっての脅威である事には変わらない。
彼女は人間を弄ぶ怪物であることに違いはない。
それでも、何か。
彼女には何か、人間への強い感情が確かにある。
だから、紙一重。紙一重、紙一重だけ破壊神とは確かに違っている。
「だったら……!」
「んー?」
「私たちがあなたから、自分たちの命を勝ち取ればいい!」
きょとん、と。
女神が、立香の言葉を聞いて、一瞬だけ呆ける。
そしてその一秒後、女神がより嬉しそうに笑みを浮かべた。
「ンー! えへへ、いいですよー! 嬉しい、初めてデース!
ここに来て、ちゃんと相手から勝負を持ちかけてくれるの!」
「いいんだ……!」
勝負を投げかけた立香の方こそ呆ける。
軽く身を捩り、嬉しそうに頬を朱に染める女神。
「はい、もちろん。けど―――
勝負を持ちかけられたからには、一切手加減はしませんけどネ?」
彼女は地面に突き立てていた刃を引き抜き、振り上げて。
嬉しそうな顔のまま、空気を太陽の熱で炙りだした。
「おお、これは……!」
その激突を見て、着ぐるみが目を見開いた。
足を止めた彼女を前にして、カルデア側のサーヴァントたちも止まる。
彼らは驚愕に目を見開いている彼女を訝しみ―――
「あ、降参しまーす。ニャンニャン、私悪いジャガーじゃナイアルヨ。
野性のジャガーマンが仲間にしてほしそうに、澄み渡るつぶらな瞳であなたたちを見ている。
仲間にしますか? →はい Yes」
「ああ?」
眉を顰めたガウェインがツクヨミにレイラインを通じ、思念を飛ばす。
それに気づいた彼女が、女神との戦場からこちらに意識を向けた。
「会話もせず襲い掛かってきたくせに……! いまさら女神を裏切るっていうの!?」
「いや、あーたたち。ここは私の縄張りぞ? 私のシマぞ?
許可なく勝手に人の家に土足で踏み込んでいいと思ってる?
かーっ! このゲーム脳め!
他人の家に勝手に踏み込んじゃダメ! タンスを荒らすのもダメ!
他所のお宅に邪魔する時は、ちゃんとノックをするように! おねーさんと約束ね!」
「は?」
「―――アナタのシマでもありまセーン!」
大地が震える。
ジオウとネロの前衛を縫い、放たれたドレイクの砲撃。
それを女神がマカナで打ち返し、着ぐるみに向けて吹き飛ばした。
「ひぇっ」
肉球棍棒で何とか受け止めて。
しかし止めきれず、着ぐるみが爆炎に呑み込まれる。
ところどころ焦げた着ぐるみが投げ出され、ごろごろと地面に転がった。
「エ、エンディングナンバー01……
ククルんの家で不法滞在により怒りを買う……親しき仲にも礼儀あり……
次は、好感度を上下させる選択肢には気を付けよう……
好感度管理が大事なのは、神様も女の子も、一緒だ、ぜ……っ!」
「ゲーム脳……?」
じゅーじゅーと音を立て、黒煙を上らせる着ぐるみの末路。
彼女の遺言か何かのような言葉を聞き、立香が呟く。
礼装の魔力は使い切り、充填を待たねばスキルは使用不能。
反動を受けた彼女の体力も、それなりに消費している。
そんな彼女の前に立ちながら、ファイズフォンXを構えていたツクヨミ。
彼女は倒れた着ぐるみの様子を見てから、改めて女神に視線を送る。
「仲間じゃ、ない……?」
「ええ、もちろん。そいつは私の領域に勝手に住んでいる不法滞在者デース!」
翼竜を撃ち落とす合間にも、彼女に差し向けられる矢と苦無。
それらは全てバックラーで対応しつつ、女神は一際表情を怒らせた。
「はぐれサーヴァントなのは分かっていたけれど……
手を組んでいたわけじゃなかった……?」
「だぁってぇ、こう、環境的に? 神話体系的に?
私に一番マッチする場所だからっていうかぁ。ジャガーは森に生きるものっていうかぁ。
変にククルんにすり寄ったら殺されそうだし、勝手に住んでました!」
てへっ、と。
可愛らしく舌を出し、おちゃらける着ぐるみ。
「そんなわけで。ヘイ、少年少女! 麗しきジャガーを雇ってみる気はない?
密林の化身にして、大いなる戦士たちの具現!
サーヴァント・ジャガーマンとは私のことSA!」
そう言ってところどころ焦げていた着ぐるみが立ち上がる。
意外と無事だった彼女はそのまま胸を張ってみせた。
「ククルんを割とどうにかできそうだから、私の手のひらぐるんぐるんよ?
ワタシ、ジャガーマン、トモダチ。
あ、前金としてククルんの情報を売るわね? 持つべきものは生贄に出来る友。
その子、ケツァル・コアトルっていうのよ」
『ケツァル・コアトル、って。マヤの征服王、トルテカの太陽神!?
それって文明の主神クラスじゃないか!
太陽神として姿を見せた時点で、そうなるのが必然かもしれないけれど!』
口笛交じりに女神の真名を暴露するジャガーマン。
彼女が漏らした真名に対し、ロマニが悲鳴染みた声を上げる。
そんなプライバシーの侵害に対して、女神が微笑む。
ガリガリガリガリと。
全力を注いだ翡翠剣の一閃が、周囲一帯の木々を削り落とす。
空を支配する女神の権能。
発生した竜巻が数え切れない大木を取り込み、一本残らず射出。
木々は太陽の熱で炎上し、しかし燃え尽きず、巨大な炎の槍と化す。
狙いはもちろん、ジャガーマンを名乗った着ぐるみに他ならない。
「……っ、ガウェイン!」
「―――承知しました!」
にゃー、と声を上げるジャガーマンの前に、ガウェインが立つ。
ジャガーマンを信用できるか否かで語るのはあまりにもバカバカしい気がする。
が、戦力が一つでも多くなるのはカルデアにとって歓迎だ。
その上、南米の女神についての情報がついてくるという。
だとすれば、むざむざ見過ごすことはできない。
太陽の神だったものを前にして、太陽の現身が解放する。
その刃の輝きを見てケツァル・コアトルが僅かばかり目を眇めた。
俊足のアタランテが即座に切り返し、ネロとドレイクを拾いに行く。
小太郎が足を向ける先は、天候に干渉していた二世。
ケツァルコアトルスの発揮する能力ならともかく。
女神ケツァル・コアトルが行う行為にまでは、干渉ができない。
あまりに力の規模が違いすぎて、彼の魔術では瑕疵すら与えられない。
「チィ……!」
「下がります!」
味方を抱えて彼らが目指すのは、盾を構えたマシュの背後。
彼女の意志の昂りに応じ、白亜の盾が鳴動する。
クー・フーリンにぶん投げられたジャガーマンも、そちらに転がり込んでくる。
地面を滑るそんな着ぐるみが、ふいに呟いた。
「そうそう。あの子、善性の頂点に立つ神性だから善性の存在じゃ傷を負わせられないのよ。
だからあの聖剣じゃ直撃したって無傷よ?」
「はあ!? 何それ、先に―――!」
「宝具、展開します―――! “
ガウェインの放つ熱波が臨界する瞬間。
マシュが盾を全力で握り締め、城塞を顕現させた。
ギリギリで滑り込んできたライドストライカーを抱えたハサン。
彼が一際大きく、息を吐く。
「この剣は太陽の写し身、日輪の灼熱の顕現!
故に地上に降り立ちし太陽の女神が相手とはいえ―――その輝きを支える我が両の腕が折れぬ限り、我が剣が負ける道理無し! “
彼女の権能に推されて迫るプロミネンス。
その暴威に対し、太陽の聖剣が真っ向から立ち向かう。
激突して発散する熱量だけで、翼竜たちが蒸発する。
森が灼け落ちていく中、マシュの構えた盾の内側だけが無事で済む。
太陽同士の激突。
その光景を間近に眺めつつ、ジャガーマンがぼやいた。
「それって神としての権能なわけよ。女神ケツァル・コアトルとしての。
本体としてそれが発揮されてたら、本気でどうしようもないもの。
ただし。サーヴァントとして、ならば。
それは、あくまで霊基が耐え得る範囲での
あの子は女神だけれど、今はサーヴァントなわけ。
だから、どうしたって限界はある」
「―――それは、とんでもない威力の一撃なら破れるっていう……?」
「いーえ、必要なのは威力じゃないわ。
あの子という神が降りている神の器。
サーヴァント霊基、ライダー、ケツァル・コアトル。
その器をどれだけ不調に追い込めるか、ってことね。
あれが神の力を再現するに不足した器に成り下がれば―――
女神ケツァル・コアトルは、器で権能を御しきれない」
そこまで語り、ジャガーマンは寝そべったままジオウを見る。
ふと立香の脳裏に過るのは、砕け散ったジャンヌの旗。
主の御業を再現するために彼女が揮う、白い旗。
神の威光の再現は、限度を越えれば器を壊す。
女神ケツァル・コアトルを倒すには、それしかないとジャガーマンは語る。
彼女がこちらについたのも、ジオウにその手段を見たからなのだろう。
「……ジャガーマンはなんで、こっちに?」
「んー? えー、サーヴァントとして召喚されたなら“はぐれ”より“マスター持ち”でいたいじゃない? 流行には乗り遅れたくないし。『問おう、貴様が私のマスターか!』的なムーブメント、どうせならしたいじゃない? っていうか」
「そんなどうでもいい理由……!?」
「どうでもよくねーし! めっちゃ重要だし!
まあ私はそれとして、ククルんの方は女神として降りてきてしまった以上、必死に人間を自分なりの方法で守護していますけど。ま、ありがた迷惑っぽい感じもありますが」
騎士の咆哮。
大地を灼き払う剣閃が、太陽神の炎を押し返した。
そのまま突き抜けた聖剣の輝きが、確かにケツァル・コアトルに直撃する。
女神を呑み込み立ち昇る極光、炎の柱が周辺一帯を溶解させ―――
「―――いい加減にしなさい。アナタ、本気で殺すわよ?」
ガラティーンが地上に顕現させた熱の海の中、火傷の一つもなく。
地獄の様相と化した溶けた地面を悠然と歩き。
女神ケツァル・コアトルが、当然のように無傷で帰還する。
一切加減のない殺意が、ジャガーマンだけに向けられる。
殺意が太陽の熱を帯び、空気を焦がす。
焼け落ちた密林の一角が、ガラティーンの残り火と合わせて再び炎上した。
「……んー、まあでも、マスターが欲しいってのは本当だし。
そのためにあなたの情報が役立ちそうなら全部渡すのは当然でしょ。
別に味方同士だったわけでもないし」
「ま、そうですネー。正直、私の情報自体はどうでもいいのデース。
それくらいリングコールだと思って好きなだけ公開してあげマース。
―――ただアナタ、余計な事まで吹き込む気満々に見えるもの」
「そりゃまあ、掬える足が無防備に出ているんだもの。
掬って転ばせてエサにするのが野性ってもんでしょうに。
女神様だってのに無駄にこだわって頑張って、そういうの結構どうかと思うわけ。
いや、あんたは紛れもない女神の一柱。
だから、人間にとってあんたは何をしようがただの脅威でしかないんだけれど」
立ち上がり、ぱたぱたと着ぐるみを叩いて泥を落とし。
棍棒を持ち上げて、彼女は虎のフードを被り直す。
「今は女神の三つ巴、余計なことに構ってたら体系ごとまるっと滅びるわけよ。
そんな現状を見るに見かねたこのジャガーマン。
――――なんてーか。特に理由はないのだけれど。
人のため人のためって、そればっかりで損してばっかのお馬鹿な子がいるっていう事。
何だかんだで、私はほっとけないのでした」
太陽が炸裂する。
周囲に熱波を放ちつつ、ケツァル・コアトルが加速した。
白銀の刃を翻し、その突撃にガウェインが応じる。
彼女はその前進を称えるように微笑んで―――
しかし、刃を向けることすらなく、突撃を続行した。
叩きつけられる聖剣は、女神の肌に徹らない。
「くッ……!?」
「残念、あなたの善なる剣は通りまセーン!
これからも善く戦い、善く競い、善く生きるように!」
ただの突撃でガウェインを吹き飛ばし、進軍を続行。
「
「女神の権能、ルールに守られた防御……! しかし、余の刃なら徹ると言ったな!」
水流の槍が奔り、しかし瞬時に蒸発。
女神の纏う熱量が、迫る悉くを焼失させていく。
太陽の熱が、彼女が通った大地を溶解させる。
今更自分の熱に気付いたように、女神が小さく苦笑した。
女神の前に立ちはだかり、剣を振り上げる花嫁。
彼女の姿を見て、女神が火力を一気に下げる。
「ハーイ! 善でもなく、悪でもなく、中庸でもなく。
花嫁だなんて属性、初めて見ました! えー、それって属性?
おねーさん、ちょっとだけ憧れマース!」
翡翠剣と隕鉄の剣がぶつかり合い、鍔迫り合う。
わざわざ火力を下げた女神に、ネロが眉を大きく吊り上げた。
「手加減のつもりか……!」
「ええ、もちろん。人類を相手にあそこまでやるなんて大人げないですからネー。
さっきまでの熱は、あのジャガーを狩るためにちょっと出してしまっただけデース!
私がアナタたちに使う権能は、善神としてのこの肉体だけと断言しまショウ!
このくらいは試練という事で。突破してくれるのを期待していマース!」
「……そういうことか!
つまり、余が自分を花嫁と確信しているが故に刃が徹る。
いい感じの思い込みによって霊基がそうなるのであれば―――
余の空間であれば、好き放題やれるという事……!」
ネロ・クラウディウスの支配する空間。
彼女を象徴する建築、ドムス・アウレアの中であれば。
女神ケツァル・コアトルに徹る刃を、強引に他の者たちにも与えられる。
善でも悪でも中庸でもなく。
例えば強引に水着に着替えさせ、属性は夏だと思い込めば成立する―――
それを理解した瞬間、ネロの体が宙に舞う。
「ぬっ、ぐぁ……!」
「残念。アナタが展開しようとしてる、アナタの空間は許しまセーン。
私、私の領域に侵食してくる別の空間って―――
だぁーいッ嫌い! なのデース!!」
吹き飛ばされたネロに向け、アタランテが跳ぶ。
それが届く前に追撃を仕掛けようと女神が体を揺すり。
その瞬間、彼女の喉元に朱色の閃光が迸る。
即座に踏み込みを止め、体を逸らし、その槍をマカナで殴りつけて弾く。
「いい踏み込みですね。アナタも愉しい戦い、好きでショウ?」
「まあ、そうだな。だが生憎だ。
テメェと違って、意外と
クー・フーリンが笑う。
彼が切り返した槍の穂先と翡翠剣が激突し、槍兵が大きく弾かれる。
それでも飄々とした笑みを崩さない彼の言葉に、彼女は小さく首を傾げた。
「あの子は戦闘モンスター。何であれ、戦いを愉しむものなのよ。
っていうか、何であれ愉しむ戦いにしてしまうものなのよ。事情なんて気に掛けず、戦いというものを皆に愉しませようとする戦の神。それが今の女神、ケツァル・コアトル。
器にする分身が違えばまた違う顔も見せるでしょうけど、そこはそれ」
腕を組みながら、ジャガーマンがそう述べる。
ケツァル・コアトルはサーヴァントとして、どころか神としても上位の存在。
そんなものを真正面から、何の策もなしには崩せない。
だからこそ、彼女たちは真っ先にその正体を知るジャガーマンに教えを乞う。
どのような能力か。どのような神性か。どのような神格か。
「闘って分かり合うなんて素晴らしい! ってね。
あらゆる戦いを少年漫画っぽい顛末にしなきゃ気が済まない、“河原で殴り合ったライバル同士がいい感じのクロスカウンターが決まって、お互いぶっ倒れた状態で夕日を見上げながら理解を深め、笑い合う”場面が大好きな、そのシチュエーションを彩るための、後方沈んでいく夕日面した太陽神。それこそが女神ケツァル・コアトルってスンポーよ」
―――説明に入るよく分からないワードは無視しつつ。
どういう能力かを知り。どういう神性かを聞き。
そして、どのような神格であるか、ジャガーマンから確かに語られる。
「戦いを愉しめば。憎しみをもって戦わなければ。
みんなより強く分かり合えてハッピーでしょう、なんて。
本気で思い込んでいるのが、ククルんこと女神ケツァル・コアトルの神格なわけ。
でもそういうの、人間は受け入れられないでしょ?
だって。生きるために仕方なく、とか。そういうわけでもないけどなんとなく、とか。
そんな理由で戦って、勢いで相手を殺せるのが人間なんだから」
あっけらかんとそう言い放ち、ジャガーマンは周囲を見渡す。
彼女の視界に入るのは、この地に踏み込んできた人間たち。
「やる気がなければ害されない、なんて都合のいい事はない。
カタギの皆さんには手は出さねえぜ、とか何とか言って退いてくれる敵ばっかじゃない。
人間の戦いなんて、戦争から居酒屋での口論まで幅広いもんだもの。
トラとネコが出会ってしまったら、そりゃーやりあうしかないってもんよ」
シュッシュ、と。着ぐるみに包まれた拳でのシャドーボクシング。
言葉通りにネコのような仮想敵とやりあっているのだろうか。
その拳は鋭く、疾い。
「楽しくなんかなくてもやる時はやる。
憎しみなんかなくたって、行くとこまで行くことだってある。
人間の戦いなんてそうしなきゃいけないもんだけど、まあほら、あれね。
あの子はそうじゃない闘いに出会ってしまって、気に入ってしまって。
押し付けてでも通したいのね、ルチャリブレを」
拳を振り抜く事を止め、彼女はそう言って笑い飛ばした。
「……ジャガーマンは何でそれを私たちに?」
「んー、そうね。まあこれでもククルんの事も心配してるのよ。
人間と女神の価値観が合わないなんて当たり前のことはいいとしてさ、自分でも言ってたけど、実は女神同盟の中でもあの子は一人だけ外れてるわけ。方針がね。
女神同盟の中で、人間を殺すのは大前提。その中で、あの子は飼い殺しって方針を選んだわけだけど。ま、それが許されるかどうか、って言ったらかなり怪しいわけよ」
「……許す? 女神同士は元から不可侵なだけで、争う相手なのでしょう?
だとすると、一体誰から……」
疑念の声を上げるオルガマリー。
訝しげな視線を向けられて、ジャガーはすかした口笛を吹き始める。
「ニャーニャニャー、ミャミャミャミャミャン。ニャンダホー。
ちょっと人間語はジャガーには難しいニャー」
「は?」
一切の議論の余地なく、誤魔化しのための言葉。
それ以上の追求はノーセンキュー、と。
ジャガーマンは肉球棍棒でバッティングの練習を開始する。
「そう。ほら、だからね、まあどうせならちゃんとやらせてやろうって話よ。
女神ケツァル・コアトルは自由な闘争を愛する女神。
この世界が、そして今のあの子が、許している自由は真っ当なものじゃない」
ぶおん、と音を立てて振り抜かれるジャガーバット。
彼女は何を打ったわけでもないのに空を見上げ、着ぐるみのフードを被り直す。
「つまりは、教えてあげるのよ。女教師として。美人女教師として。
自由な闘争がお題目のくせに、あんたの作ったリングには
その狭いリングの中で。限定された闘争の中で。
―――もし、人間があの子にその魂の強さを示せたならば。
女神ケツァル・コアトルは、きっと正しく、負けを認めざるを得ないでしょう?」
ジャガーマンの視線が立香を見る。
真っ先に啖呵を切った、一人の少女を。
彼女はそれを受け止めて、周囲の仲間を見回した。
「――――正面から、行こう!」
小さく溜め息ひとつ。
ジオウがその手にディケイドウォッチを取り出し、状態を確かめる。
先にクリーンヒットを貰い、撃墜されたばかり。
やれて一撃、が限度だろう。
その上、手が足りないのは間違いない。
話を聞いていたツクヨミが、ファイズフォンXを片手に眉根を寄せた。
「ルチャリブレ……プロレス、で倒すってこと?
でも、あんな相手にプロレスを成立させられる人なんて……」
はっきり言って、今までの戦いであの神性の格は思い知った。
正面から撃破、というのはほぼ不可能だ。
ある程度揺さぶれはしたが、そこでおしまい。
相手はこちらを殺さない程度に手加減し続けながら、それでも圧倒してくる。
権能は用いない、と言っても素のパワーの時点で隔絶しているのだ。
そうなれば、もはや何らかのルールで勝敗を決定するしかない。
ジャガーマンが上げたルチャリブレ、即ちプロレス。
それにしたって、まともに力勝負が叶うのなんて精々ガウェインくらい。
もちろん、勝負になるというだけで勝てるわけではない。
勝つ方法を探るために知恵を振り絞らんと、ツクヨミが僅かに俯いて。
「それだけじゃ足りない。
立ちはだかる神様としても。プロレスラーとしても。
全部纏めて抜き去って―――
私たちが歩くのに……神様に道を整えてもらう必要はないって証明する」
そう言って、表情を硬くする立香。
彼女はその顔で強くツクヨミを見据えてみせて。
その意味に気付いて、ツクヨミが小さく頬を引き攣らせた。
「あなた、まさか……」
「うん。
―――だからソウゴ。お願い、
女神としても、ルチャドーラとしても。
両方諸共に凌駕し、勝利して。
初めて証明できるのだ。
人間は、彼女が考えているよりずっと、前に進める生き物なのだと。
手にしたディケイドウォッチをしまい。
ダブルウォッチを撫でながら、ジオウがジカンギレードを握り直す。
「―――うん、勝つよ。マシュにも手伝ってもらうけど」
「……はい、大丈夫です!」
盾を強く握り締め、頷くマシュ。
その後に、立香とジオウが揃って保護者に向き直る。
「だから所長には、あいつに全力を出させて欲しいんだけど」
二人の軽い声かけに対して、オルガマリーが眉間を強く押さえた。
ジャガーマンから既に女神ケツァル・コアトルの能力は聞き及んでいる。
後はその全てを、正面からぶち抜くだけ。
道を逸れる気など微塵もない二人の目に、彼女は大きく溜息ひとつ。
「……はぁ。ジャガーマン、でいいのよね」
「うむ」
鷹揚に頷くジャガーマン。
完璧に勝つには、彼女の協力は必要不可欠。
失敗すれば真っ先に消し飛ぶ事になる位置取りになるが―――
「あなたはわたしと契約してもらうわ。
完ッ、全無欠に……女神の
自分で振った以上はやり遂げてもらう。
引き攣った表情でそう告げるオルガマリーに、ジャガーマンは獰猛な笑みを浮かべた。
翼竜の大半は焼け落ち、余すことなく全て撃墜された。
ジャガーマンも完全にカルデア側についた。
その結果、全ての戦力がケツァル・コアトル一人に差し向けられた。
その上で、彼女は無傷。
圧倒的な余裕の中で、全ての敵を危うげなく捌き切る。
「どう、愉しいでしょう?
命は奪いません。だってそんなことしたら、不純な感情が混じるもの。
憎しみはなく、ただ愉しい! 私はこの空気が大好きデース!
叩き付けられる剣。
槍で何とかそれを受け流しながら、フィンが美貌を歪める。
数度と打ち合えば心底から理解できることだ。
真っ当にやりあえば、一分も向かい合えば全身が砕け散るだろう圧倒的なプレッシャー。
女神の攻勢は留まることを知らず、ただただ加速していく。
だがそれでも、一線だけは越えない。
彼女には一切殺意がない。
憎しみに塗れた殺し合いを、彼女は求めていないから。
「だったら、どうするというのだ――――!」
矢が、短剣が、苦無が、彼女を目掛けて無数に飛来する。
それらを潜り抜け、盾で打ち落とし、翡翠剣で斬り払い。
叫んだアタランテへ向け、女神は微笑んだ。
「他の、ウルやエリドゥの民と代わりまセーン。
アナタたちの事も捕まえて、ちゃーんとお世話してあげる!
最後の決戦に向けて、私が全身全霊で育ててあげマース!」
「余計なお世話さ!」
足を止めた彼女に対する、落日の砲撃。
それを正面からマカナで粉砕し、女神は喜々とした笑みを浮かべる。
「それは我慢してくだサーイ!
だって、私はこうすることでアナタたちを愛する女神なのデスから!
アナタたちに余計なお世話をすることが、私の生き甲斐なのデス!
それでも、絶対他の女神よりマシでショウ?
私は戦う事を強要しマス。でもそれは、愉しむためデース。
何も憎まず、何も傷つけず、ただ戦いという行為に喜びだけを見出して、一緒に楽しもう。
私はそう言っているだけ。
だって、憎しみで相手を殺す戦いなんて、辛いだけでしょう?
アナタたちだってそんなこと、したくはないでしょう?」
言い返そうと、ドレイクが銃を構え直す。
だが直後、彼女の横を走り抜けていく影に、その動きを止めた。
一直線にケツァル・コアトルを目掛けて走るのは、盾のサーヴァント。
マシュが、走りながら女神を睨むように見上げた。
「違います……!」
マカナが振るわれる。
それをラウンドシールドで受け止め、マシュがそこで踏み止まる。
「ん?」
「わたしは、戦いは好きじゃなくて、愉しいなんて、思った事なくて。
いつも、恐いと思いながら、この盾で、体を支えていて―――!
それでも、知っていることがあります……!」
直上から太陽の騎士が落下してくる。
彼の刃は防ぐまでもない、と。
それを理解しながらも、当然彼女は対応した。
激突する翡翠剣と聖剣。
解放されたマシュが後ろに滑りながら、声を張る。
「憎しみで、相手を傷付けるために、殺すために戦うこと……!
それはもちろん間違っていて、止められるべき事だけれど……!
それでも―――憎しみで戦うことを選んだ人間にだって、理由がある!
誰にとっても辛くて、苦しくて、逃げ出したいほどに恐いことだけれど……!
ただ不純な感情と言って切り捨てていいものじゃ、きっとありません!」
〈アーマータイム! ドライブ!〉
マシュを背後から抜き去って、激走する赤い車体。
ドライブアーマーが、ガウェインと鍔迫り合うケツァル・コアトルの背後を取る。
彼の両腕から発射される、シフトスピードスピード。
ガウェインと片手で斬り合いながら、女神の腰が捻られる。
蹴り飛ばされ、阻まれる攻撃。
その勢いで彼女はガウェインを押し切り、追撃に迫るジオウを翡翠剣の一閃で弾き返す。
火花を噴き上げ、転倒するジオウ。
いい加減灼熱に溶けた地面。
そこに突き立つ翡翠の刃が噛んだ木剣。
その柄尻を押さえながら、女神がゆるりと首を傾げた。
「んー。憎悪による鏖殺を肯定する、のかしら?」
「―――いいえ。でも、きっと。
神様に、
女神が跳ねる。
翡翠の輝きが神速で迫り、しかしマシュの前で止まった。
ネロの剣とクー・フーリンの槍、それが交差し翡翠剣の進撃を阻んでいる。
そのまま力押しに両者を打ち破ろうとして、
「小太郎! 撹乱お願い!」
「っ? ―――いえ、承知!」
相手が聞いていると分かっていて、撹乱の宣言。
一瞬戸惑った小太郎は、しかしすぐに印を結んでみせた。
「―――風魔忍群、出陣。“
忍者集団、風魔一党が頭領。
五代目、風魔小太郎。
彼が起動するは彼自身の宝具にして、同時に風魔一党の宝具。
頭領の影から染み出すように現れる、影、影、影。
風魔の頭領が従えたものどもが、霊体のままにこの世へと現れる。
その数は二百を数え、全てが女神へと雪崩れ込んだ。
「我ら忍びは暗闇に乗じる影の者。
故に我らの進軍は、暗黒引き連れし闇の舞――――!」
風魔忍群の進撃。
それに見舞われた相手は、周囲を闇に鎖される。
忍者は闇に潜む者。故に忍者がいる場所こそが闇の中。
二百の影が押し寄せた瞬間、ケツァル・コアトルの周囲に闇の帳が降り―――
「ですが残念。私こそが太陽である以上、私の許で闇は晴れるが定めデース!」
忍びが闇に駆けるもの、というならば。
彼女は闇を晴らす太陽そのものだ。
殺到する風魔の集団が与える筈の影響は、彼女にまでは届かない。
剣士と槍兵を纏めて吹き飛ばし。
続けて寄せ来る二百の忍群は、まともに対応する必要すらない。
宝具で呼びつけたものとはいえ、あくまで通常の霊体。
忍群として闇を引き連れている事を無視できるならば、一体一体は大した事がない。
何をしたところで、ケツァル・コアトルまで届かない。
―――だから。
そうして殺到した者たちは、一斉に炸裂した。
弾けると同時に噴き上がる白煙。空まで覆うほどに膨張する煙。
次に繋ぐために行われる、全力の目晦まし。
「―――二重に残念。私は太陽だけでなく、風と雨の神!
どれだけ煙で覆ったところで、吹き荒れる嵐で引き裂くだけ!」
「しかーし! 権能ナシで起こせる嵐程度じゃ私は止められない、ゼ!」
いらっ、と。女神が眉を吊り上げて、背後からの声に反応する。
それは紛れもなくジャガーマンの声。
彼女は速攻、その全速力でもって、煙を引き裂きながらケツァル・コアトルの前に現れた。
振り上げられる肉球棍棒。
野性の発露、
棍棒の先端である肉球が、爪を剥いて巨大化する。
「そのタマ殺ったァッ! “
「……何か勘違いしているのかもしれませんが。
私が権能を使わないのは、私に勝負を挑んでくれた挑戦者たちにだけ。
そこに擦り寄っていったジャガーに関しては別問題デース」
溜息交じりに、女神が目前まで迫った野性の爪を一瞥する。
―――神格の解放。
ケツァル・コアトルが炎の翼を広げる。
ただそれだけで、ジャガーマンが押し返された。
「ぐえー!?」
背中から地面に落ち、すぐさまごろりと転がって、足を地に下ろし。
即座に体勢を立て直し、疾走体勢。
そのまま駆けようとした彼女が、しかし走ることができず動きを止めた。
「“
「あう、神性全開……やべっ、死んだ」
ジャガーマンの周囲に炎が奔る。
炎の先走りを確かめ、ジャガーの周囲に他の誰もいないことを確認。
そのまま、女神は己が宝具の火力を全開にした。
屹立するのは炎の宮殿。
その中に囚われたジャガーマンの宝具たる爪があっさりと灼け落ちる。
「ごめんなサーイ? 邪魔なのを処分するので、本気を出すから。
いまの私に、近付かないでね?」
抵抗を許さず。逃走を許さず。
ケツァル・コアトルが、その神格を余すことなく解放した。
一瞬のうちに雷雲に呑み込まれる天空。
その雲を引き裂いて、巨大な竜が顔を見せた。
「――――“
竜の咆哮に合わせ、雷鳴が轟く。
その竜に与えられたのは、彼女の真名たる“ケツァル・コアトル”の名。
そして天空の支配という権能。
空の支配を託された、女神の騎竜が雷雲の中から現れる。
咆哮と共に羽ばたき。
その羽ばたきが竜巻と落雷を呼び起こす。
ただの自然現象を超越した、神の権能による破壊。
それが全てジャガーマンを隔離した炎の宮殿に差し向けられて―――
「OH……ククルん、本気で私を殺す気ジャン?」
「当たり前でしょう? アナタに関して、敵対を許すほど―――」
「あ、そういう細かい話はいいわ。言質取ったわよ?
神格を全開にしている女神に、ジャガーマンが苦笑する。
その態度に困惑するケツァル・コアトル。
瞬間、地上で太陽が輝いた。
小太郎が撒き散らした目晦ましが、太陽の熱で焼き払われていく。
そうして晴れた光景の中で、女神が視線を動かす。
「……さっきの聖剣? それに意味なんて―――」
視線を巡らせ、見つけ出すのは聖剣を構えたガウェイン。
その背後に構え、槍を回し、その穂先を奔らせていたクー・フーリン。
彼が自身が発生させたものを抑え付けながら、苦渋に顔を歪めた。
「―――悪いが、ランサーじゃここまでだ。全開にゃ程遠い。
だがまあ、天候の神である
後は、テメェの剣で知らしめな――――!!]
クー・フーリンがソウゴから受け取った令呪の魔力。
全てを注いだ結果として宙に描かれた、十を越える原初のルーン。
それらが全て、ガラティーンに溶け込んでいく。
それと、ツクヨミの令呪から受けた魔力。
全てを懸け、ガウェインが一歩を踏み込んだ。
聖剣を支える腕が、破裂しそうなほどに軋みを上げる。
「我こそは太陽の騎士、ガウェイン!
この一撃を―――我が腕が揮う聖剣の輝きを!
主たる者たちが進む先を照らす、太陽と為さんとする騎士なり!!」
刀身が爆発するような。
そんな幻視をしながらも、太陽の騎士は全力で剣を振り抜く。
解放すれば周囲一帯に焼き払う太陽の聖剣。
そのエネルギーが、今回ばかりはルーンの導きにより結集されていく。
狙いは、たった一点。
「“
伸びる剣閃。収束した一条の陽光。
それは一切の熱量を周囲へ発散させることもなく、ただ一点。
女神が展開した、炎の宮殿を目掛けて迸った。
ジャガーマンが即座に身を投げ出し、地面に転がる。
激突する太陽の刃と炎の宮殿。
太陽神としての権能を発揮した、ケツァル・コアトルの宮殿。
それは真っ当な宝具で干渉などできるはずがないもの。
「オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――ッ!!!」
それでも、なお。
白銀の騎士が、握り締めた刃と共に大きく踏み込んだ。
踏み砕いた地面を蒸発させながら、彼が前へと突き進む。
剣に内蔵された太陽と原初のルーンが反応し、聖剣が暴れ狂う。
それを力任せに、強引に、抑え込みながら、彼は吼えた。
――――その果てに。
炎の宮殿の壁が突き崩される。
バリバリと、炎が虚空から剥がれ落ちていく。
「―――“
唖然とする女神の前で、ジャガーが跳ねる。
対象としていた彼女が脱出した炎の宮殿が、陽炎のように失せていく。
一瞬の自失からすぐに立ち直り、彼女はジャガーを追おうとして。
そこに滑り込んできた、赤い車体に目を止める。
その肩に手をかけ、一緒に現れた盾のサーヴァントにも。
「ちょ、そこは……!」
既に同じように権能を尽くした竜巻と雷光を降らせる位置。
“
それを理解してそこに現れた二人が、武器を構える。
即ち、ディケイドウォッチと―――
「……大丈夫?」
「―――はい。そのために、ここに来たのですから」
マシュが盾を地面に突き刺して、代わりにジカンギレードを受け取る。
彼女と背中を合わせながら、ジオウが装備を変更した。
〈アーマータイム! ディケイド!〉
〈ファイナルフォームタイム! ダ・ダ・ダ・ダブル!〉
頭上からあらゆるものを粉砕する神威が降り注ぐ中。
ジオウの姿が、黒と白の狂獣へと変わっていく。
彼と背を合わせたマシュが、アクセルウォッチを装填したジカンギレードを振り被る。
「辛いし。苦しいし。恨みを抱くことも、憎しみを抱くこともある。
確かにそんな戦いは、誰だってしたくないはずです。
せめて楽しくあるなら、もしかしたら救いになるのかもしれない。
でも、それでも。そんな戦いだって、意味がある。意味があることにしていける!
わたしたちは! 憎しみから目を背けるのではなく、憎しみの先に進んでいける!
そう信じてるから、あなたの停滞は受け入れられません!!」
「――――――」
―――天空から神の暴威が地上に届く。
その瞬間にジオウが跳び、脚部に展開した刃を振り抜いた。
同時に。マシュが全力で、フルスロットルで、赤熱する剣を振り抜いた。
〈ダ・ダ・ダ・ダブル! ファイナルアタックタイムブレーク!!〉
〈ギリギリスラッシュ!!〉
牙と切り札の記憶が咆哮する。
加速の記憶が唸りを上げる。
天を裂き、地上に降り注ぐ神威の嵐。
その破壊の渦に対して二つの斬撃が突き立てられた。
拮抗は、一瞬。
どれだけ用意を整えようと、彼らの攻撃は神威には届かない。
だから、順当にいけば当然のように打ち砕かれるだけで終わるはずで。
―――それでも。
「俺たちのゴールは、あんたが敷いたリングの中にはない。
ずっと、もっと先にあるものだから―――
俺たちはあんたを振り切ってでも、そこに向かって突き進むだけだ!」
権能が返る。
風と雨を制する神が降ろした嵐が、威力をそのままに跳ね返る。
いや、そのままではない。
ケツァル・コアトル自身の神威に加え、ジオウたちが乗せた全ての力がそこにある。
「―――“
自分に向かって突き進んでくる破壊の竜巻。
それを前にしながらも、彼女が見ているのは返した二人の姿。
竜が降らせる脅威は、未だに続いている。
一度返したところで、あの二人の許にはまた嵐が降り注ぐ。
そうなれば二人揃って砕け散るだろうことは、想像に難くない。
―――だからこそ。
彼女が備えていたのだとも。
曇天が引き裂かれる。
雷雲を突き破り、空から炎が降り注ぐ。
その事実に、空を制する竜がうろたえるように首を動かす。
そうしているうちに、雲を突き破ってきた隕石が竜に直撃する。
奇声を上げ、ゆらめく翼竜。
「外から……私の支配する空の、更に上から。呼び込んだのね、星を」
ケツァル・コアトルの視線が、空を仰ぐオルガマリーへ向けられる。
隕石は次々と雲を引き裂きながら殺到する。
地上に降り注ぐ流星群。
それを導いたオルガマリーが膝を落とし、息を切らし。
しかし、己のサーヴァントに向けて、叫んだ。
「アーチャー!!」
「ああ!」
天穹の弓が引き絞られ、空へと向けられる。
天空を支配する女神が、その支配権を託した翼竜。
それがいま、更に上からの強襲に対し、大きくよろめいている。
嵐を孕む暗雲は降り注ぐ星に引き裂かれ、雲間から蒼穹を覗かせる。
マスターが切り拓いたその一点を確かに目掛けて。
彼女は、番えた二矢を解き放つ。
「――――“
彼女が信仰する太陽と月の女神に向け、放たれる矢。
天へと翔け上がり、消失する矢。
それはつまり、彼女の宝具が発動が叶ったという事であり。
次の瞬間、無数の矢が翼竜の頭上すぐから降り注いだ。
嵐の効果範囲外、雲の更なる上から降り注ぐ矢の弾幕。
翼の翼膜を撃ち抜かれながら、竜が悲鳴を上げるように咆哮した。
そんなしもべの状態を見ながら、女神が武装を投げ捨てる。
地面を転がっていく翡翠剣とバックラー。
向かってくるのは彼女自身が発した全力の神威。
彼女自身であっても、全力でなければ止められない力の嵐。
「―――アナタたちには権能は使わない、と言いました。
ですが、それは取り下げマース。
言ったからには、このまま使わず負けるのが道理と言えば道理なのでしょうけど」
ケツァル・コアトルが対面にいる二人を睨む。
マシュが即座に剣を投げ捨て、盾を握る。
アーマーが限界を迎え通常形態に戻ったジオウが、放り投げられた剣を掴む。
二人の直上には、既に放たれていた追撃の嵐が迫っている。
その嵐を、津波が阻む。
水の氾濫を放つのは、戦神ヌアザの力を顕す槍。
それほどの一撃が、神の嵐を一瞬だけ阻む。
だが一瞬だけだ。すぐに津波は嵐に呑まれ――――
そこに、白亜の城塞が顕現する。
何もかもが磨り潰される嵐の中で、それでも、と。
人の心の強さを証明する盾が、確かに。
屹然と、その場に立ち上がる。
「ええ、でも―――私が手を抜いたせいで、アナタたちから“全力の私に勝つ機会”を取り上げるわけにはいかないもの!!」
ケツァル・コアトルが火力を増す。
女神が、自身の権能たる嵐に身一つで立ち向かう。
炎の翼と嵐が激突する。
拮抗、ではなく。
小さくとも確かに、ジオウたちの力はそこに上乗せされていて。
ケツァル・コアトルこそが、その激突に押し込まれた。
天空で騎竜が雄叫びを上げる。
主人の危機に際して、彼はそれを跳ね除けるために動く。
隕石と矢を無数に受けながら、しかし竜は体勢を立て直す。
「悪いねえ! そんだけ高度を落としてりゃ、アタシの射程内さァ――――ッ!!」
嵐を掻き分け進む船の長が、そう言って笑う。
展開したカルバリン砲、四門。
降り注ぐ隕石に、矢に、撃たれて徐々に高度を下げていた竜は、既に射程内。
ここからまた空に逃がす、などという間抜けをやってる暇はない。
夥しい魔力が、砲口で激しく明滅した。
「
地上から嵐の空へ向け、放たれる砲撃四つ。
荒ぶる気流を切り裂いて、その砲弾が竜の許へと確かに届く。
着弾し、爆裂し、竜の肢体が砕け散る。
自身のしもべの末期を見届けながら、女神が力を更に籠める。
嵐が止まる。破壊の渦の進撃が止まる。
確かにこれは、彼女の全力をも超える嵐であることに違いない。
だがそれでも、目の前でこれだけ全力の彼女を超えるために力を尽くされたのだ。
全霊を懸けて超え返してやらねば、女神が廃るというものだろうに。
「ハァアアアアアアアアア―――――ッ!!」
〈アーマータイム! ウィザード!〉
「オォオオオオオオオオオ―――――ッ!!」
換装しながら、ジオウが嵐を追撃する。
彼が引き起こすのは雷を内包する緑の竜巻。
既に膨れ上がった嵐の規模からすれば、ほんの小さい力。
それでも進み続けるジオウに、ケツァル・コアトルが頬を緩ませた。
「とても素晴らしい、力でした! ですが、私を倒すには及ばない――――!」
高まり続けた力が炸裂した。
嵐と女神。二つの力が一気に暴発し、周囲に発散されていく。
そこに巻き込まれ、吹き飛ばされる直前。
ジオウが、青い魔法陣を展開して投げ飛ばす。
そして、彼女は押し返された。
間違いなく、彼女は押し返すことはできなかった。
やらなかった、ではない。紛れもなく、できなかったのだ。
人間が力を尽くして彼女の権能を反撃に用いた攻撃。
それに対して、確かにケツァル・コアトルは後れを取った。
その点について、彼女は敗北したと言ってもいい。
だがそれだけだ。
女神に対して一発だけ、してやったりと言えるだけの有効打を決めた。
ただ、それだけだ。
「素晴らしかった、と称えまショウ! ですが、これでは
そう言って、女神が吹き飛ばされていた自分の体を押し留める。
地面を削りながらのブレーキ。
そうして確かに踏み止まった彼女の前で、黒衣が翻った。
「風除け……!?」
「当然の話だ、勝利を得るのは今からなのでな」
嵐の中、暴風を加護にて躱し。
ハサンが、ケツァル・コアトルの直近まで迫っていた。
そうして彼は黒衣を跳ね上げて、
そこから、二人の人間が飛び出した。
「!? ちょ、待ちなサーイ!?」
目の前に現れるのは、立香とツクヨミ。
彼女たちが脇目も振らず、ケツァル・コアトルに向け走り出した。
その事実に、女神が焦るように声を荒げた。
普通ならばこんなことで焦るような必要はない。
だが、いま。
ケツァル・コアトルは、必要に駆られて神性を全開にしている。
だって、彼女という生命と人間という生命ではあまりにサイズが違う。
いや、サイズ以上にそもそものスケールが違う。
サーヴァントならいい。ジオウみたいな特殊なタイプもいい。
少しくらい叩いても、吹き飛ばすだけで済むから。
だが人間はそうじゃない。
今の彼女はひ弱な人間くらい、触るだけで溶かしてしまう怪物なのだから。
「小太郎殿!」
「ッ、何と言う無茶……ですが。いえ、信じます!」
ハサンの肩に手をかけていた忍びが顔を出す。
そのまま彼が煙玉を投げつけて、周囲を煙に包み込んだ。
視界を遮られた女神が唇を噛み締めた。
「っ、可愛らしい無茶を!」
ケツァル・コアトルが小さく跳ぶ。
距離を開けるための一足飛び。
全開にしている神格を収納し、サーヴァントレベルに戻すまでの時間があればいい。
だからこそ彼女は距離を離すという選択をして。
ぽん、と。何かにぶつかった感触を得た。
仰天しながら振り返った彼女の視線の先。
女神に激突されて吹き飛ばされ、地面に突き刺さって黒煙を上げるものが一つ。
「なに……!?」
軽くぶつかっただけで壊れたタカウォッチロイド。
それを見て、やはりぶつかれないと体を固くするケツァル・コアトル。
そんな彼女の前に、タカウォッチに乗ってきた白い獣が現れる。
「フォー! フォフォーウ!」
空中を舞う白い獣が、突然強く発光した。
ただの光程度で晦まされるはずのない太陽神の視界。
だが、その光は確かに彼女の視界を奪い去った。
「く……!」
完全に視界を奪われる。その結果、どう動いていいかを見失う。
そうして彼女は慌てながら足を下ろし、つるりと地面で足を滑らせた。
「な、嘘……!?」
足を下ろしたのはただの地面のはずで。
それが滑ることなんてないはずで。
足を置いた時の感覚は、まるで氷上で滑ったようであって。
―――最後の瞬間、青い魔法陣を投げていたジオウの姿を思い出す。
「くっ……ですが、転びなんて……ぇっ!?」
〈スイカアームズ! コダマ!〉
転ぶのを防ぐため、踏み止まろうとした足。
それが踏み締めたのが、またも地面ではなかった。
その接触だけで壊れたコダマが、割れながら投げだされる。
代わりに。
よく転がる球体を踏み、大きくぐらつき、彼女の体がついに宙に浮いた。
「こ、こだぁ――――っ!!」
「―――――!?」
ふらついたケツァル・コアトルに立香が抱き着く。
カルデアの礼装がなければ、それだけで逆に即死。
そう言っても過言ではないだろう、スケールの違う相手への突貫。
無理矢理振り解く、という選択肢は女神にはない。
組み合った二人が揃って地面に倒れていく。
「―――握った……! ネロ帝!!」
「任せよ、いざ開け“
太陽神として見せた宮殿を打ち崩し。
天候の支配する竜を撃墜し。
真正面から神をぶっ飛ばし。
確かに、彼らはこの地を領域とする女神に、打ち克ってきた。
その事実をもって、諸葛孔明が空間の支配権を奪い取る。
せいぜい数秒のことだ。
ほんの僅かな時間だけの空間の不法占拠。
だがそれで十分。
二世が切り取った支配を利用して、ネロが宝具を展開できればそれでいい。
だん、と。
立香とケツァル・コアトルが、地面ではないどこかに倒れる。
その場所を見て、女神は瞠目した。
「リング、って」
彼女たちが倒れたのは、黄金に彩られた四角いリング。
四方に立つコーナーポスト、そこに張られたロープ。
紛れもない、リングだ。
次の瞬間、リングを叩く音が彼女の耳に届く。
「1!」
「―――フォール……!」
リングを叩くのはジャガーマン。
このままカウントが進めば、確かに掴まれ押し倒されている彼女の負けだ。
曖昧な勝敗の条件などでは誤魔化せない、紛れもない敗北だ。
それを覆すには、彼女は立香を押し退ける必要がある。
だが、この状況では霊基を抑えるより先にカウントが終わる。
無理矢理に解けば、恐らく立香が八つ裂きになるだろう。
それでは意味がない。殺しては、意味がない。
生きるために戦うものを、殺しては意味がないのだ。
だって、それでは楽しくない。嬉しくない。愉しんで終われない。
殺さずにフォールで自分を制そうとしている相手を殺して勝つ?
ありえないにもほどがある。
そんな事をするくらいならば、真体ごと爆発して死んだほうがマシだ。
「デ、ス、ガ……まだ! 私は伝説級のルチャドーラ!
こんな、私が動けないこと前提のユルユルのフォール……!
2カウントもあれば、丁寧に、優しく、危なげなく、外してみせ……!」
剣山のように無数に突き立つ針の全てに、一本の糸を通すような精緻な真似だ。
力の掛け具合一つがずれるだけで、相手を殺す。
それでも、その超常的なアクションを、自分ならば成し遂げられる、と。
ケツァル・コアトルがその体を動かそうとして―――
〈エクシードチャージ!〉
赤い光の弾丸が、彼女の腕で弾けた。
腕を取り巻く赤い光に、女神が唖然として口を開けた。
腕が動かない。いや、動かそうと思えば動かせる。
少し力を入れるだけで、そんな光の拘束は簡単に千切れるだろう。
もちろん、彼女を捕まえている立香ごと。
在り得ないくらいに精密な動作を要求される中で、そんな手枷をつけられては。
「2!!」
ジャガーマンがリングを叩く。
―――方針を、変える。
無理に解くのは、どう足掻いても無理になった。
だったらもう、神格を収める以外に他にない。
そうして、その選択を取った以上。
「3!!!」
一際強く、ジャガーマンの掌がリングを叩いた。
そのままジャガーがバンバンとリングの連続で殴打する
一切釈明の余地なく、完全に勝敗は決した。
緊張で強張っていた女神を抑え付ける体から、ゆっくりと力が抜けていく。
権能を引き出され。
それを正面から凌駕され。
その上でリング上で3カウント取られた。
ちょっとびっくりするくらい、完全な敗北だ。
その事実を受け止めて、自身の霊基が落ち着いたのを確認し。
彼女は弛緩した状態の立香を持ち上げながら立ち上がった。
「―――このリングには、試合終了のゴングが足りまセーン!」
「む? うむ」
言われたネロが、空間内にゴングを作り出す。
次に視線を向けられたジャガーマンが、それを高らかに打ち鳴らした。
その音色に合わせケツァル・コアトルは立香の腕を取り、
「……うーん、アナタたちの名前、聞いてまセンでした」
「……えっと、私たち? だったらここでは、カルデア……大使館、かな?」
「なるほど―――勝者! カルデア大使館デース!!」
そう言いながら、彼女は周囲を見渡しつつ立香に腕を掲げさせた。
からからと愉しそうに笑う、女神ケツァル・コアトル。
それを見ながら、カルデア大使館は疲労感に深く息をついた。
ゴルゴーンも出てないのに何かケツァル・コアトル戦が終わった。