Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

223 / 245
Zi-O!新生命体来襲-2655

 

 

 

 流れた矢が魔獣に中り―――その体を半壊させる。

 半身を吹き飛ばされたそれが転がり、そのまま雷光に消し飛ばされた。

 

「―――――!」

 

 数十秒前までは、そんな過程を経るまでもなく。

 イシュタルからの流れ弾を食らえば、四肢散開していた化け物どもが。

 一撃だけなら命を繋ぎ止めるように変わっていた。

 

「進化……! 以上に、母さんが生産体制を改めてる……!

 アイツら、このままじゃその内……!」

 

 歯を食い縛る彼女に向かって、鎖が伸びた。

 即座に体を逸らし、しかしマアンナを掠めていく一撃。

 それに大きく揺らされながら、彼女は即座に反撃を行う。

 

 迫りくる光の矢。

 奔る閃光を無造作に薙ぎ払い、そして笑うキングゥ。

 

「―――半日、も必要なさそうだね。

 あれらがマルドゥークの斧を確保できるものに進化するまで」

 

 新人類はいまなお組み替えられ、最適化が進められている。

 その速度たるや、もはや旧人類に対応し切れるはずがないものだ。

 今こそここで停滞しているが、一度浸食が開始さればそこで終わり。

 瞬く間にウルクまであっさりと呑み込むことだろう。

 

「斧の確保まで余裕を見て半日。

 そこから先の侵攻も……今の彼女なら、ウルクに届くまで半日必要ないだろう。

 予期せぬ内に、今日がキミたち旧態の生命の命日になったわけだ。

 運が良ければ明日まで保つかな?」

 

「ハ、うちのグガランナを舐めるんじゃないわよ!

 いくら母さんが相手とはいえ、私が命じれば十年は無補給で戦えるってーの!」

 

 悲鳴のような雷鳴が轟く。

 天の牡牛は、全霊を以て浸食海洋たるティアマトを押し留める。

 寄せ来る母なる黒い海。それを、天候の暴威によって押し返す。

 それでも、塞き止めるだけが精いっぱい。

 

「お前はともかくグガランナを舐めはしないさ。

 けど、もう終わりは見えている。そら、やっぱり半日どころじゃなかった」

 

 キングゥの言葉の直後。

 

 ―――混沌の泥が大きくざわめく。

 今まで泡が湧くように溢れ出していた泥人形たち。

 それらを一線を画す、巨大な異形が形成された。

 

 口だけの顔は変わらず。

 鉤爪の四肢を持つ、翼を生やした怪物。

 明らかに有する力の違うそれらの個体が、数にして11。

 

「―――11の子になぞらえて、特別製を11匹、ってわけ……!」

 

 ゆっくり、泥の中で顔を上げたその内の一匹。

 それがイシュタルとキングゥへと目を付けて―――奔った。

 

 金星の女神が指を向ける。

 その動作だけで数十の光の矢が放たれる。

 

 怪物はそれを迎撃はしない。

 運動性だけでもって、泥人形はその全ての光を回避しきった。

 そんな事実に対し、イシュタルが表情を歪める。

 

「速い……!」

 

 距離を詰め切られる。

 即座にマアンナへと手をかけ、それを鈍器のように振り抜く。

 打ち合う鉤爪と、黄金の舟。

 

 競り合いに負けて撃ち落とされるのは、イシュタルの方であった。

 

「……っ!?」

 

「さあ、串刺しさ!」

 

 追撃をかけるキングゥ。

 落下状態の彼女に向け、無数の鎖が撃ち込まれる。

 それを体捌きだけでギリギリ躱しながら、女神は地上へと落ちていく。

 

 そんな姿を、見送りながら。

 

「hdx@d? hdx@d? ……0t.sm! キ、ヒヒ!」

 

 再び、翼持つ怪物が加速した。

 

 キングゥの鎖に翻弄されるイシュタル。

 彼女に他の攻撃に対応する余裕などあるはずない。

 そんな女神に向かって、地上で戦闘していたジャガーマンが跳ぶ。

 しかし当然、援護など今更間に合うはずもない。

 

 ―――そうして、ザクリと。

 

 キングゥの胸を食い破り、怪物の腕が突き出した。

 

 真っ当な生物ならば致命傷でも、キングゥという機体ならば損傷の一言で済む。

 すぐに自分を貫く腕を掴み、彼は兄弟機に向かって振り向いた。

 

「ぐ、なッ……! オ、マエ……、なにを――――!?」

 

「キングゥ、イラナイ。ハハ、オマエ、ヒツヨウ、チガウ。モウ、イラナイ。

 キングゥ、ハハ、ツクッタ、チガウ。キングゥ、ハハ、コドモ、チガウ。

 キングゥ、イラナイ! キングゥ、モウ、イラナイ!」

 

 唖然と、理解できる言葉を口にした怪物を目の当たりにしている内に。

 ―――鉤爪が、彼の体内から、聖杯を掴み取った。

 

「っ、しま……!?」

 

 怪物が、そのまま腕を引き抜く。

 そこに引っかけられた水晶体。聖杯が、そのまま怪物に取り込まれた。

 その瞬間、キングゥの全身から力が抜け落ちて。

 

 同時に。

 がくりと、怪物も同じように糸が切れた人形のように力を抜いた。

 

 空から、二体纏まって地面に落ちていく泥人形。

 

 空中でジャガーマンに掴まれ、なんとか着地したイシュタル。

 彼女はすぐさまそちらへ視線を向けた。

 

「っ、……棄てられたわね、キングゥ……

 そりゃそうでしょうよ、アンタの躯体はこの世界で造られたものだもの。

 今の母さんの視界に、入るわけないのよ。

 せめてこうなる前に、粉々にぶっ壊してやりたかったけど……!」

 

「それはともかく、イシュタルさん? あれちょっとヤバくなーい?

 お姉ちゃんのジャガースキンが総毛立っちゃう」

 

 残りの十体が動き出す。

 まったく同型の一体がいま見せた動きで、性能を理解するには十分。

 一瞬の交錯であったが、イシュタルでさえも容易ではない相手。

 

 そんな化け物どもは、グガランナの嵐を物ともせず。

 ゆるりと、緩慢な動作で身を起こし。

 

 ―――そうして。

 揃って不思議そうに、キングゥともう一体が落下した場所に顔を向けた。

 

 

 

 

 全感覚がアラートを鳴らす。

 心臓代わりの聖杯を奪われたことで、彼の機能が急速に低下していく。

 こうなってはもう、最低限の生命維持しか叶わない。

 戦闘などもっての他。ギリギリ体を動かすのがせいぜいだ。

 

 そんな状態で彼は這いずって。

 近くの木に縋り、何とか必死に体を起こして。

 口から出るのは、諦念交じりの困惑の言葉。

 

「ぐ、ボクは……! なぜ、こんな……!」

 

 ティアマト神と直接繋がった、新人類。

 彼の弟たちとも言える泥人形が、彼から聖杯を奪った。

 もう要らない、と。そう口にして。

 それが、母の意志だとばかりに。

 

 分かっている。あれらは母の意志に逆らわない。

 だから、そうなったということは、そういうことなのだ。

 

 弱々しい力で握った拳で、寄り掛かった木の幹を殴る。

 

「なんで……! 母さんは……!」

 

「おにいちゃん、かわいそう」

 

 キングゥが、血を吐くように絞り出す声で哭く。

 

 そうして、そこで化け物の声を聞いた。

 先程までの奴と同じ声。

 しかし致命的なまでに今までからずれた、怪物の声色。

 

 あまりに悪寒に咄嗟に振り返る。

 目に映るのは、まるで姿を変えてしまった、新たなる化け物。

 

 ―――怪物の姿は変生していた。

 

 鈍く輝く、磨き上げられた泥の光沢。

 口だけの顔を持つ怪物から離れ、より人間に近い体躯になっている。

 頭部から生える触覚はまるで昆虫を模しているかのよう。

 

 ゆらり、と。

 彼は長い尾を揺らしながら、ゆっくりとキングゥへと歩み寄ってくる。

 

「オ、マエ……!」

 

「ごめんね、おにいちゃん。

 でも、ママがそうしないといけないっていったんだ。

 ぼくもおにいちゃんみたいに、ママのためになることをしてあげるんだ」

 

 五指を動かし、体の調子を確かめるように。

 それは肉体を駆動させながら、徐々に距離を詰めてくる。

 キングゥに対する害意など感じない。

 それどころか、この怪物は彼に対して共感すら覚えている。

 

「でも……おかしいな、ママのこえがきこえなくなっちゃった」

 

 キングゥの心臓、聖杯。

 その腕で彼の胸を突き破り、聖杯を手にした時。

 怪物はその在り方を変えてしまった。

 

「おにいちゃんもそうだったんだよね?

 ママのこえがきこえないからくるしかったんだよね?」

 

 感情を超越し、左右されず、あらゆる物事を合理的に処理する生物。

 冷徹なる処理能力を有するそれこそが、完全なる生命であると。

 そういった思想の元、かつて生み出され、葬られ、そして甦らされた存在。

 

 ―――ネオ生命体、と。

 そう呼ばれた怪物の似姿が、手を上げて自身の頭部を掴んだ。

 

「おにいちゃんもママに愛してほしいんだよね?

 おにいちゃんは、ぼくとおんなじなんだよね?」

 

 ―――感情を超越などしていない。

 できていない。できるはずもない

 彼はただ、自身を生み出した者への愛情に飢えている。

 

「オマエ、は……!」

 

 問いかけられている。

 何とも繋がっていない、ひとりぼっちの兵器が。

 生み出したものからすら救われない、ひとりぼっちの兵器に。

 

 彼の心臓であった聖杯を、取り込んでしまったから。

 アナザーディケイドに繋がっていたラフムの中で、目覚めてしまった。

 (ゴルゴーン)に抱いた想いを認めることなく。

 (ティアマト)の目的のために兵器として尽くそうとした泥人形。

 

 いや、それしかなかったのだ。

 彼には、彼らには。

 そうやって造られた。そのためだけに造られた。

 他には何もない。いや、最初から何一つありはしなかった。

 だから、それだけはある筈だと信じるしかなかった。

 縋るしかなかった。

 

 創造主の愛をせめて得るためには、もう自分の製造目的に縋るしかなかったのだ。

 

 ネオ生命体が歩き出す。そこには、共感がある。

 彼はキングゥを、この世界にある唯一の同族として認識した。

 優しく、先程彼の胸を突き破ったものとは思えぬような所作で。

 彼はゆっくりと手を伸ばし、キングゥへと触れる。

 

「いっしょにいこう、おにいちゃん。ママのところに」

 

 母なる海から現れた新たなる命。

 生命のプールから這い出してきた、新種の生命。

 キングゥの中にあった聖杯を取り込み、完成された異形。

 完全なる、新次元の生命体。

 

 それこそがラフム、と呼ばれる存在の中でも、更なる怪物。

 彼こそ新人類種、ネオ生命体。

 その腕が優しく、キングゥの体を抱きとめた。

 

 

 

 

 僅かに逡巡する様子を見せていた、十体の怪物。

 それがしかし、飛び立った。

 イシュタルたちよりも、キングゥたちの方へと注視するような様子のまま。

 彼らはふと思い立ったように、身を寄せ合う。

 

 十の怪物が、一ヵ所に集中。

 そうして、当然のように。

 彼らは体を一つに纏め上げて、新たなる存在へと変貌した。

 

 まるで、先程までの状態では戦力が足りぬと言わんばかりに。

 

 11の子供のうち、一つが完全に離脱した。

 彼らという集団の中から、何故か唐突に消え去った。

 その事実こそが、彼らに単体という形態を放棄させたのだ。

 

 人型の上半身を一つだけ確保して、残りは押し固めて球体に。

 一つの体に十の顔を持つ異形、十面を持つ悪鬼。

 そうなった彼らは動き始め――――

 

「“山脈震撼す明星の薪(アンガルタ・キガルシュ)”―――――!!」

 

 金星概念を掌中に収め、圧縮し、弾丸となし。

 女神がそれを、天舟弓マアンナの弾倉へと叩き込む。

 溢れる神威を一点集中。

 一条の矢と変えて、イシュタルが射出した。

 

 放ったと同時に着弾する金星の矢。

 エビフ山を崩落させるほどの彼女の権能が確かに直撃し―――

 

 しかし。

 十面鬼がその口の三つを使い、当然のようにそれを喰い破った。

 

「―――なんて、デタラメ……!」

 

「キ、シ、シシシ――――!」

 

 ぐるりぐるりと口が巡る。

 口だけしかない十の顔が、体中を駆け巡る。

 やがてそれらは全てがイシュタルたちの方を向き、嗤った。

 

「シャ! シャハハ、シャハハハハハハハハハ―――――!!」

 

「ちぃ、来るわよ……ジャガむ、ジャガー!」

 

「はいはい! っても、あれ相手じゃ一分保たせる自信ないわ! 正直!」

 

 苦笑交じりの弱音を吐きつつ、しかしジャガーが神威を放つ。

 直後に加速した十面鬼。

 それは瞬時に彼女たちまでの距離を詰め切って―――

 

 その目の前に、銀色の幕が流れていく。

 

〈タイムマジーン!〉

 

 唸る鉄拳。

 深淵の炎を纏った鋼の拳打が、十面鬼の一番上の顔面を打ち据えた。

 意表を衝かれてか、その巨体が素直に殴り飛ばされ地面を転がっていく。

 オーロラのカーテンを突き抜け、着地するタイムマジーン。

 

 その後に続けて、他のメンバーたちも駆け込んでくる。

 

「ジャガー! 生きてるわね!?」

 

「当たり前じゃない。私が死亡フラグを立てたくらいで死ぬと思った?」

 

「それはそれでどうなのよ」

 

 ジャガーによるケツァル・コアトルへの返答に、眉を吊り上げるイシュタル。

 

 彼女たちの前で、マジーンが背部に飛行ユニットを出現させた。

 そこから伸びるのは四条の鎖。

 一気に放たれたそれは嵐の中の、マルドゥークの斧を目掛けて飛んでいく。

 

「―――グガランナ! 足元注意!

 こっちを巻き込まないように、その化け物どもは全部巻き込みなさい!」

 

 牡牛の雄叫び。そんな無茶な、などという悲鳴などではけしてない。

 飼い主の激励に奮起した神獣が、嵐の加減を支配する。

 マルドゥークの斧の柄に、確かに絡みつくフーディーニの鎖。

 そこに全力で力を掛け、マジーンは後退を開始した。

 引きずられていく巨大な斧。

 

「状況は!? こっからどうするつもり!?」

 

「撤退戦です! このまま、マルドゥークの斧をウルクまで牽引!

 我らは新しい魔獣、ラフムどもを制しながら、それを防衛!

 ―――“炎門の守護者(テルモピュライ・エノモタイア)”ァッ!!」

 

 即座に宝具を展開し、タイムマジーンを囲む守護者たち。

 斧を巡る均衡が崩れた、と理解して。

 全てのラフムたちが、タイムマジーンを優先すべき敵として認識する。

 

「はあ!? なんで!? そんなことしたら、ウルクが母さんに呑まれるわ!

 あの金ピカなに考えてんのよ!?」

 

「ティアマト神を倒せる、唯一の可能性に懸けました!

 ですので……死に物狂いで、成し遂げます!」

 

 マシュがそう言葉にしながら、マジーンの護衛に回る。

 この場で斧を振り上げる必要がない以上、船も翼竜も飛ばさない。

 ならば彼女の盾が守るべきは、マスターたちが乗ったタイムマジーンだ。

 

 それを聞いたウルクの都市神が、一度髪を掻き乱し。

 しかしすぐに取り直し、舟に乗った。

 

「そこまで言うなら手伝ってやろうじゃない!

 あの馬鹿ギルガメッシュ……! 私のウルクが沈んだら許さないから!

 グガランナ! 下の牽引に合わせて少しずつ戦線を下げなさい!

 母さんの海を回り込ませる事だけは絶対に防ぐこと!」

 

 神獣が滾る。簡単に言わないでくれ、なんて弱音などではけしてない。

 タイムマジーンの後退速度はそれなりだ。

 かなりの勢いで戦線を下げていく必要があるだろう。

 侵食海洋を押し留めながら、ティアマト神の注意を引き続ける。

 こんな偉業、神獣グガランナ以外の何者にできるというのか。

 

「嵐を避けて降らせる必要あり、か……!

 “訴状の矢文(ポイポス・カタストロフェ)”!! 空から撃つぞ、女神イシュタル!」

 

「ったく、グガランナァッ!」

 

 天の牡牛が高らかに咆哮する。勘弁してくれ、という泣き言などではけしてない。

 暴風が駆け巡り、雷鳴が轟く空。

 そこに二矢を束ねた矢が放たれて―――やがて、神が射る矢の雨が降り注ぐ。

 稲光と共に降り注ぐ矢の雨が、数えきれないラフムを迎撃する。

 

 ―――その雨を物ともせず。

 十面鬼が立ち上がり、その口から哄笑を振り撒いた。

 

『――――! な、新種、進化種!? もうか!?

 っ、魔力反応、が……! その一体だけで、魔神柱数十体分以上!?

 計測不能! 完全に別格だ!』

 

『便宜上それを別物、ラフムの発展種「ベル・ラフム」と呼称!

 絶対にタイムマジーンに近づけちゃ駄目だよ!

 っと、それだけじゃない! その場に聖杯の反応もある!

 当然だろうけど、キングゥもいるってことだ! 気を付けて!』

 

 ロマニの様子に黙っていられず、と。

 ダ・ヴィンチちゃんの声が、通信先から響いてくる。

 その声に彼らは周囲を探るために神経を尖らせて―――

 

 直後。

 新たなる怪物が、薙ぎ倒された大木を吹き飛ばしながら、この場に降り立った。

 

 ―――泥で構成された体は、鮮やかな緑に。

 まるでキングゥの髪のような色をした、飛蝗を思わせる異形。

 それが、明らかな敵意と殺意を抱きながら、現れたのだ。

 

『聖杯の反応、直近!』

 

 その報告に対し、ジオウが強く拳を握った。

 

「―――キングゥ……!」

 

 そのダ・ヴィンチちゃんの声が正しいならば。

 あれはキングゥ。キングゥだったもの。

 あるいは、キングゥは既にあれの中に取り込まれた、ということだ。

 

 ベル・ラフムが嗤いを引っ込めて、窺うようにそちらを見る。

 だがキングゥだったものはそちらを見もしない。

 首を傾げて、しかし優先すべき目標ではないと割り切ったか。

 二体の怪物が、それぞれ人間たちに目を向けた。

 

『聖杯込みとはいえ、そんな馬鹿な……! 反応がベル・ラフムより更に大きい……!

 そいつらを制しながら、ウルクまで……!?』

 

「やるしかないんだ、ここまで来たら覚悟を決めな――――!!」

 

 展開するカルバリン砲、四門。

 吐き出される火力が、ベル・ラフムへと直撃した。

 そんなものを気にした様子もなく、飛翔を開始する十面鬼。

 彼が目指すのは、マジーンと斧を結ぶ四本の鎖。

 

 即座に反応して、そこに向かってサーヴァントが駆ける。

 フィンが、ガウェインが、弁慶が、ケツァル・コアトルが。

 しかしそこにベル・ラフムに追い付けるものはなく―――

 

「遮那王流離譚、一景――――自在天眼・六韜看破!!」

 

 自軍を運ぶ、天狗の奥義開帳。

 地を縮め、ベル・ラフムと鎖の間にサーヴァントたちが跳躍した。

 そうして、四人全員で纏めてその怪物の突撃を受け止める。

 激突の衝撃で、揃って彼らが苦渋を顔に浮かべた。

 

 その瞬間、イシュタルが、巴御前が、ドレイクが。

 一斉に放つ射撃が泥の体に叩きつけられる。

 

 防がれた、という事実に。

 僅かに押し返されたベル・ラフムが、上半身を大きく揺らしながら愉しそうに嗤う。

 

「タノシイ! タノシイ! 愉シイ、愉シイ! 弱イ生キ物ヲ甚振ルノハ、愉シイ!

 殺スノガ愉シイ! 壊スノガ愉シイ! 侵スノガ愉シイ!

 コレガ、ヒト! コレガ、母ガ創リダス、世界ノ新シイ命!」

 

 そこで急に様子を一変させて。

 まるで肩を落とすように、ベル・ラフムは消沈する。

 

「悲シイ、悲シイ。全部殺シテシマッタラ、モウ遊ベナイ。

 イツデモ遊ベルヨウニ、飼ッテアゲレバイイノニ。

 ―――セメテ、最期マデ、愉シマナイト」

 

 ギチギチと、十面鬼が体を自分から軋ませる。

 嗤い声のようなその音を響かせながら、彼はゆっくりと体を沈ませた。

 

「こんなものを創って……母さん、アナタは本当にそれで満足なの?」

 

 僅かに目を細めてそう呟き、ケツァル・コアトルがマカナを強く握る。

 彼女はオルガマリーと契約し、その令呪で魔力を補充済み。

 最低限戦えるだけの魔力は得ていた。

 それでも、相手をし切れないのが目前で嗤う怪物。

 

 だからと言って譲る気は一切ない、と。

 善神ケツァル・コアトルが、大地を踏み砕いて加速した。

 

 

 

 

 緑の怪物の右肩に眼が開く。

 血色に光る、一筋の眼光。

 それは物理的な威力をもって、戦場を一閃した。

 

〈フィニッシュタイム! ジオウ!〉

〈ギリギリスラッシュ!〉

 

 タイムマジーンに届かぬように、と。

 ジオウが己のウォッチを使い、ジカンギレードの刃を励起する。

 真っ先に立ちはだかった彼の構えた刀身に、光線が直撃。

 

「ぐ、う、ぉおおお……ッ!」

 

 刀身を滑り、閃光が逸らされる。

 弾かれた光が飛散して、周囲のラフムを蒸発させていく。

 が、それと引き換えに。

 ジカンギレードの刀身が、丸々と溶け落ちた。

 

 柄だけになった剣からウォッチを外し、放り捨て。

 息を荒げながら、ソウゴがキングゥだったものへと向き直る。

 

「どうする、マスター! 余の劇場で隔離するか!?」

 

「やめとけ、あんな攻撃ぽんぽん撃たれりゃすぐに吹っ飛ばされる!

 どうにかしてまず聖杯を引き剥がさなきゃ、どうにもならねえ!」

 

 そしてマジーンを守るためには、範囲攻撃をさせるなどもってのほか。

 であるならば、距離を詰めて戦い続けるしかない。

 もちろん、撤退戦である以上、それに加えて徐々に戦場を後退させていく必要もある。

 

 ―――それは、それで置いておいて。

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

 ジオウが、ベルトに戻したウォッチを即座に起動する。

 キングゥだったものを見据え。

 彼は、仮面の下で歯を食い縛って、堪え切れずに強く叫んだ。

 

「本当に、あんたは!

 ゴルゴーンが静かに眠ってる世界まで纏めて滅ぼしてでも、新しい世界が欲しいのかよ!

 ――――そうじゃないから!

 あの時、アナにもゴルゴーンにも手を出そうとしなかったんだろ!?」

 

 ―――ネオ生命体が、僅かに首を揺らす。

 

 だってあのタイミングなら、キングゥの力があればアナの邪魔だってできたはずだ。

 だが彼は何もしなかった。

 ゴルゴーンの哀しみも、それを受け入れたアナも、全て黙祷して見送ったはずなのだ。

 気紛れなはずがない。憐れみのはずもない。

 彼は正しく、彼女を悼んだはずだ。眠りにつく彼女を、正しく見送ったはずだ。

 

 ジオウが大地を蹴る。

 跳び上がり、ネオ生命体の周囲に展開される12の“キック”の文字。

 それがカウントダウンのように消えていき、最後。

 最後の“キック”がネオ生命体の背中を殴打しつつ、ジオウに向かっていく。

 

〈タイムブレーク!〉

 

「オォオオオオオ―――――ッ!!」

 

 よろめいた相手に、ジオウの蹴撃が直撃する。

 緑の怪人はそれに対応することもできない。

 ジオウの一撃はその威力を余すことなく発揮して、怪人の胴体を貫通し―――

 

 その瞬間、怪人の尾がジオウへと巻き付いて動きを力尽くで静止させた。

 

「……っ!?」

 

 胴体に大穴を開けられて、しかし何の痛痒もないと。

 怪人の腕が伸ばされて、ジオウの顔面を掴み取った。

 ソウゴの全身を走り抜ける、未知の感覚。

 

 直後、ジオウの体が光に包まれる。

 

「っ、坊主!!」

 

 引きずり出そう、と動くサーヴァントの動きは間に合わない。

 瞬く間に、ジオウの姿は光と消える。

 代わりに起きる現象は、怪人の大穴の開いた胴体の完全復元。

 

 そうして。

 まるで吸収されたように、ジオウはあっさりと消滅した。

 

 

 




 
・新人類種ネオ生命体(ラフム・ドラス)
 キングゥから聖杯を奪ったベル・ラフムが変化した新人類。
 キングゥの精神とアナザーディケイドに挟まれた結果、彼自身が完全に変質した。
 ラフムの性質から乖離してしまった異形。
 ティアマトの一部にして群体であるラフムから離れ、別の命として別れたもの。
 ティアマトの事を“ママ”、キングゥの事を“おにいちゃん”と呼ぶ。
 彼の行動目的はただ一つ。創造主の愛、家族を得ること。

 ―――だが、愛してくれ、という彼の叫びは母には届かない。
 彼女から離れた時点で、ティアマトにとっては既に排除すべきものなのだから。
 だから、彼は旧人類を殺し尽くす。それしか母に愛を求める方法を知らないのだ。
 怒りに曇った母の瞳。
 復讐を果たしてそれが晴れたとき、愛すべき息子として自分を見てくれると信じて。
 子に棄てられた母に捨てられた子、キングゥ。
 彼だけが今の彼にとって唯一、同族と言えるものである。

・十面鬼ベル・ラフム
 11の子になぞらえしビーストⅡのしもべ、ベル・ラフム。
 その内の10体が融合し、発生したベル・ラフムの合体形態。
 ベル・ラフムが一体早々に切り離され離脱したため、警戒のために構築された。
 十の顔をそのまま残した状態で活動する怪物。
 手から出す波動で人間をラフム化する能力を持っている(FZi-Oでは使用されない)。


キングダーク的な奴!(大ショッカー)
十面鬼的な奴!(TVシリーズ)
ネオ生命体的な奴!(MOVIE大戦)

ディケイドのボスキャラっぽい奴三連星!
ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!
「最終確認点呼!」
「だいたいあってる!」
「だいたいいいです」
「だいたいいけるぜ!」
「だいたいバッチリ!」
「だいたいわかった」
「ノーコメントでーす」

だいたいヨシ!
アポロガイスト?
だいぶ時空が歪み始めているようだ…
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。