Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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その生誕は一体“だれ”への復讐なのか1431

 

 

 

「やっと着いた……」

 

ガリア遠征軍前線基地。

その目前まで辿り着いた立香が、疲労を吐き出すようにそう呟いた。

そのまま基地に入ろうとする彼女らの前に、ローマ兵士たちが立ちはだかる。

 

「待て! 貴様たちは何者……!」

 

当たり前のように中に入ろうとする彼女たちを、これまた当然の如く止めようとする。

武器を構えた兵士たちの前から、立香を引っ張り戻したオルガマリーが前に出ようと―――

 

「うむ! よくぞ遠路はるばる来てくれた! 歓迎しようとも!」

 

したところ。兵士の後ろから皇帝陛下が直々に出迎えてくれた。

飛び上がって平伏する見張りの兵士。

 

「こ、皇帝陛下……! この者たちは……!?」

 

「警護の任、ご苦労。その者たちは間違いなく、余の迎えた客将たちである。

 通達が遅れてすまなかったな、通してやってくれ」

 

「は、はっ―――!」

 

すぐさま手にした槍を引き、体を退かす兵士。

オルガマリーは皇帝に向けて、頭を下げた。ついでに立香の頭を押さえつけて下げさせた。

それに続くように、マシュとジャンヌもまた頭を下げる。

清姫はじっとネロを見つめるだけで、ランサーは肩を竦めるだけだった。

 

「では、ソウゴたちの元へ案内しよう。余に続くがよい」

 

踵を返して陣の中に入っていくネロ。

彼女たちもそれに続き、陣の中へと踏み込んでいくのだった。

 

彼女たちが踏み入った前線基地は、戦時中を思わせるような暗さは感じなかった。

それどころか、兵士たちには高揚感すら見て取れる。

マシュがその様子に、小さく呟くような声を出す。

 

「………兵士の方々は、このような状況でも元気なのですね」

 

「うん? 無論、ここに余があるからである――――

 と、言いたいがな。現時点での戦況が大きかろう。ソウゴの助力あってこそだ」

 

「ソウゴさんの助力、ですか」

 

「うむ。敵軍は余の正統ローマより寝返った、連合ローマの兵。

 ソウゴは彼らの多くを傷付けずに捕獲、こちらに引き渡してくれている。

 小規模な戦闘ならば、一人で全員を捕獲するほどの一方的な戦闘は――――

 ()()()()()()()()()()()()()()、という証明としてすら機能する、ということだ。

 頼り切りの余の情けなさは際立つがな」

 

最後に自嘲を混ぜながらも、しかし彼女は素直にソウゴを称賛する。

 

それを見ていた清姫が小さく目を伏せた。

彼女が先日見た皇帝は、カリギュラと会敵する前の状態。

あの時から更に、彼女の精神状態は悪化している。

 

「あら、着いたのね」

 

「あ、オルタ」

 

その場にやってくる、ジャンヌ・オルタの姿。

彼女はそのままマスターであるオルガマリーの方へ向かおうとして―――

しかし、白いのがにこにこしているのを見て足を止めた。

 

「お疲れ様です、オルタ。ソウゴくんと協力して兵たちを捕えている、と聞きました。

 少し心配していましたが、どうやらまったくの杞憂だったようですね」

 

「………はあ? 協力? 私は雑魚の兵士で遊んでただけですけど?

 あんな不燃ごみを燃やそうとする魔力がもったいない、くらいの感情よ。

 馬鹿も休み休み言いなさい。っていうか、暇潰しみたいなもんでしょあんなの」

 

即座にそう吐き捨てて、顔を背けるオルタ。

顔を背けた先――――

 

そこに色の消えた瞳で、彼女を見上げる清姫の姿があった。

 

「嘘」

 

「ちょ……!」

 

口の端から炎を漏らす清姫。

それを前にして、オルタが一歩退いた。そのまま反転して逃げ出すオルタ。

獲物を追うように、清姫は彼女への追跡を開始した。

 

それと同時に、立香たちの元へ別のサーヴァントが訪れる。

そうして彼女は目論見通り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ、君たちがソウゴとオルタの仲間? 遠路はるばるこんにちわ。

 あたしはブーディカ。ここの軍の将軍、ってことになってる」

 

「む? なぜ知っているのだ、ブーディカ」

 

「ソウゴからもオルタからも聞いてるよ。

 そろそろ来るだろうって聞いてたから、こうやって来てみたんだよ」

 

むう、と拗ねるように頬を膨らませる皇帝。

彼女は突然に今着いたと聞かされたから、急いで見張りの兵士に声をかけにきたというのに。

ブーディカは前もって聞いていたのか、と。

 

「――――オルタはどうしたの、あれ? 一緒に走り込みするくらいの友達?」

 

どこかへ走り去っていく二人を見つめ、ブーディカが立香に問い掛ける。

 

「うーん、そんな感じです」

 

「そうだったでしょうか……」

 

割りと投げやりに同意した立香。

それに対して、若干顔を引き攣らせたマシュが首を傾げる。

一瞬だけ目を伏せたジャンヌが、次の瞬間には笑って立香に同意した。

 

「オルタにお友達が増えたことは喜ばしいです。

 彼女にとって姉同前の身として、オルタの口が悪いところには思うところもありましたので」

 

「姉? ……二人ともジャンヌ・ダルク、なんだよね?」

 

首を傾げるブーディカ。

サーヴァントというものには、別側面の召喚もあるという風に理解している。

彼女もその類なのだと思っていたが……姉?

 

なぜかジャンヌは自信満々にその問い掛けに肯いた。

 

「ええ。説明するとややこしくなるのですが……はい、姉妹だと思って頂ければ」

 

「へぇ……うん。じゃあそうしようかな?」

 

よく分からないが、そういうことならそれでいいや。

そんな感じでブーディカは苦笑した。

 

その後ろからずしりずしりと、大地を踏みしめる巨漢がやってくる。

鋼のような筋肉の塊。半裸の体を拘束具で包んだ、灰色の巨体。

 

「戦場に招かれし闘士たちよ。

 喜ぶがいい、此処は無数の圧制者たちが闊歩するこの世の地獄である。

 その圧制に叛逆せよ。この世界に叛逆せよ。

 あまねく圧制者が集いし強大なる悪逆の国が迫ってくるぞ。

 叛逆の時は来た、今こそ立ち上がる時だ。共に戦い、共に抗う時だ。

 さあ、圧制者を討ち果たそうではないか」

 

視線は立香に向いているが、果たしてその言葉は立香に向いているのか。

突然現れた巨体は、その肉体に似合わぬ優しげにすら見える微笑みを浮かべていた。

ブーディカが、それを見て少し驚いた。

 

「あ。珍しいね、スパルタクスが喜んでるのに暴れないなんて。

 ソウゴの時も喜んで襲い掛かっちゃったのに」

 

「襲い掛かるんだ……」

 

立香が戸惑うようにその巨体を見上げた。

顔だけ……いや、表情だけ見れば紳士的ですらあるのだが。

 

「うん。未だ圧制者ならざる圧制者よーってね。

 まあ彼は時々ネロや私にも襲い掛かってくるから、それが普通なのかなって思ってたけど」

 

『よくそんなサーヴァントを戦力として扱っているね……』

 

虚空からの声。それに少しだけ驚いて、周囲を見回すブーディカ。

 

「この声は何かの魔術かな?」

 

『ええ。その通りです、女王ブーディカ』

 

「元、女王だよ。―――この時代だと、あたしはもう女王じゃなくなったからね」

 

自嘲するような表情でそういうブーディカ。

―――女王ブーディカ。ブリタニアの女王。

今この時代こそが正に、彼女が自国を蹂躙したローマに叛逆し、死亡した当時だ。

言葉に詰まったロマニ。

 

その会話を聞いていたネロ・クラウディウスもまた目を逸らす。

苦笑しながら、ブーディカは続けた。

 

「とにかく、長い道中お疲れ様。今日はゆっくりと休むといいよ」

 

そう言って彼女は離れていく。

スパルタクス、と呼ばれた筋肉の塊もまた、この基地の中でうろつき始めた。

 

「………女王、いえブーディカさんはネロ皇帝と……」

 

ニコニコしながら周囲を歩き回っているスパルタクスに若干目を奪われる。

不思議とあの筋肉の塊に悪い思い出がある気がする。

頭を振ってそれから視線を切り、ネロへと顔を向けるジャンヌ。

 

「……うむ。余とローマへの感情は消えぬ、だが民を守るためならばと余の客将となった。

 あの戦いの中で、ブーディカも思う所があったのだろう。

 拾った命は、ただ民のために使いたいと言っていた」

 

ジャンヌからの問い掛けに答えるネロの言葉。

彼女が語るブーディカの物言いに、マシュが目を丸くした。

 

「拾った命、ですか?」

 

「うむ。それがどうかしたか、マシュ?

 それとも余とブーディカ、ローマとブリタニアの戦いも知らなかったか?」

 

「い、いえ。それはもちろん。そういう戦いがあったことは」

 

「そうか?」

 

ブーディカはサーヴァントであった。それは間違いない。

だというのに、ネロには生前の人間のように振る舞っているのだろうか。

……だとしたら、もしかしたらジャンヌ・オルタはそれを知っていて?

話を面倒にする清姫をこの場から引き離してくれたのだろうか。

 

「では、ソウゴのところに案内しよう。すぐ近くにそなたたちの休める場所も用意してある。

 今晩は存分に休むがよい」

 

「ありがとうございます、皇帝陛下」

 

オルタと清姫が消えていった方向をちらりと見ながら、オルガマリーは頭を垂れた。

 

 

 

 

前線基地から脱した丘の上。

その場で、オルタと清姫の鬼ごっこは継続していた。

 

「ありえないわ、こいつ……!

 ちょっと嘘ついただけでどんだけ追ってくんのよ……!」

 

「ちょっと? ええ、ええ、そういう勘違いから悲しみが広がってしまうのです。

 嘘にちょっとも何もありません。嘘は嘘、罪は罪、罰は罰。

 きっちりと反省のために焼き印を入れるところから始めましょう」

 

きしゃー、と口から炎を吐き散らす清姫。

それを旗を振って散らし、そのまま彼女の足を打ち払う。

勢い余ってびたーん、と倒れて転がる清姫の姿。

 

「あうっ!」

 

「仮にそうだったとしてアンタに罰を下される理由はないっての……!」

 

何とか清姫をその状態で封じ込める。

地面に転がした清姫の背中に座り込むオルタ。

盛大に息を吐き落とし、そのまま体重をかけ続ける。

 

「重いのですけど?」

 

「鎧を着てるからかしらね?」

 

嫌味に嘲笑を返す。

そもそもそういうステータスの部分は白い方基準。

彼女に対しては、そこまでダメージはないのだ。

 

「………それで、どういうつもりなのですか?

 マスターを裏切るつもりがある、という判断をしていいのですか?」

 

「別に。そもそもどうあれ、あそこでアンタに暴れられるわけにはいかないのよ」

 

眉を顰める清姫。彼女がどういう心情でそう判断したのかが分からない。

彼女は明らかに、ブーディカから清姫を遠ざけた。

皇帝ネロとローマに憎しみを抱く彼女の発言から、嘘を暴かれることを嫌った。

 

「――――それは、ブーディカさんがアナザードライブだと判断している。

 そういうことでしょうか」

 

かけられる声。その自分と同じ声色に、顔を顰めるオルタ。

視線を向ければそちらにジャンヌが訪れていた。

 

「彼女の発言から嘘を暴き、それが正答であり彼女が正体を現した場合。

 ソウゴくんがドライブの力を得ていない今、彼女を止める方法はない。

 まして、ここはローマ軍の前線基地。

 下手をすれば、それが原因でネロ帝が命を落とすことになってしまう」

 

「―――別に! 私はただ、知りたいだけよ」

 

声高にジャンヌの言葉を否定して、彼女は立ち上がる。

椅子にされていた清姫も立ち上がり、ぱたぱたと着物の汚れを払う。

 

「知りたい?」

 

「……偽りの感情から生まれたわけじゃない。

 真実の憎しみで動く、サーヴァント・アヴェンジャーをよ」

 

そう言ってジャンヌ・オルタは、ジャンヌ・ダルクを見据えた。

清姫の表情を見れば―――いや、そんなことをせずともわかる。

彼女のその言葉は本物だ。

 

裏切りそのもの、といえる発言だろう。清姫の表情から色が落ちていく。

だがジャンヌは小さく微笑み、彼女に声をかけた。

 

「………一言足りないのでは?」

 

「はぁ?」

 

「ソウゴくんと話し、ブーディカさんと話し―――見えたのでしょう?

 アヴェンジャーという属性がどこに辿り着くものなのか」

 

自分のベースとなった、聖女の言葉

ジャンヌ・オルタの表情が険しくなっていく。

その鋭く尖りきった目を一度瞑り、再び開いてジャンヌを見つめる。

 

「……そうね。復讐の権化は勝とうが負けようが最後には消えるもの。

 その感情を向ける先が消えた後は、憎しみの炎は自分を燃やし尽くす。

 私の場合は順序が逆。

 勝っても負けても吹かれて崩れる、ジルの憎悪の炎から生まれた灰で出来た人形」

 

そこまで言い切ったオルタは、ジャンヌから視線を外した。

 

「ただ、そんな理屈はどうだっていいのよ。

 理屈で縛れる感情なら、最初から聖杯はアヴェンジャーなんて称号は与えない。

 その上で理解したのよ。ブーディカはアヴェンジャーに相応しいサーヴァントだと。

 彼女には愛するものがある。見たことはない未来、けれど在ると知っている未来。

 聖杯に与えられた知識の上では存在すると知っている。正しい歴史なら継続するはずの世界で生きる子供さえ、彼女はこの上なく愛している。

 けれど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 復讐を果たせば、いつかの未来に生きる愛する子供たちを踏み躙ると知っていながら、それでも復讐という炎に焼かれることを選んでしまう」

 

「それは……」

 

「哀しいこと、とアンタは言うんでしょうね」

 

ジャンヌから逸らしていた目を、正面から突き合せる。

 

「だから私は嗤うわ、アヴェンジャーのサーヴァントとして。

 この世界に翻弄される彼女のことも。

 だって私の場合、前提が違うもの。私を生み出したのジル・ド・レェだけれども。

 そもそもの話、私が生み出されたのは人理焼却という現象ありきじゃない」

 

「そうですね。人理を焼く、世界を滅ぼす―――フランスを滅ぼす。

 貴女というアヴェンジャーは、滅亡の使徒としての生誕だった」

 

「そう。そうなのよ。

 世界を焼き捨てる現象の中で、世界の滅亡を望む偽物のアヴェンジャーとして生み出された。

 じゃあ、私が真っ先に復讐しなきゃいけないのはなに?

 ジャンヌ・ダルク? フランス? ジル・ド・レェ? いえ、いいえ。

 違うでしょう? ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ。そんなもの、決まってる。

 私という存在の復讐を、勝手に計画の一部として織り込んでくれた、人理焼却とかいう恥知らずの所業に決まってるでしょうに」

 

そこまで言い切ったジャンヌ・オルタは、踵を返し前線基地の方へ戻っていく。

 

「マスターとソウゴくんはいいですけど、自分のマスターには貴女の知る情報を渡しなさい。

 私より優れたサーヴァントになりたいのなら、そこはきっちりこなしておくべきですよ」

 

一瞬だけ止まったオルタが、そのまま霊体化して消えていく。

小さく溜息を吐いたジャンヌが、清姫に歩み寄った。

 

「すみません。もう一人の別な私が……

 なんか、まったく素直に行動に移せないタイプの困った子で……

 多分ブーディカさんが苦しむようなやり方をしてる犯人に、怒ってるだけだと思うんですけど」

 

「見ればわかります。ただ、あの方が今並べてた理屈。

 本人は満足してたみたいですけど……

 ブーディカを利用している犯人と、聖杯を時代に投じた犯人は別でしょうに」

 

恐らくオルタが怒り心頭なのは、ブーディカを利用してると思われるスウォルツサイドだ。

そして、今の彼女の理屈で燃やしてやると覚悟を決めたのは人理焼却犯。

レフ・ライノールの勢力に対してだ。

 

「まあ、本人が満足してる答えなようですし……いいのではないでしょうか。

 指摘してしまったら、拗ねてしまいそうですから」

 

「いちいち怒るのは、彼女自身のトラウマもあるんじゃないでしょうか。

 彼女、心を折られてアナザーウィザードというのにされてたでしょう」

 

彼女はスウォルツと直接向かい合っている。

すぐにアナザーウィザードに変えられてしまったが。

その時の心情的に、よりブーディカへと感情移入しているのか。

 

「む。その発想はありませんでした。清姫さんに先を越されてしまいました。

 お姉ちゃん、ショックです」

 

「多分、それを貴女から彼女に言及したら余計に嫌われるのでは?」

 

「………清姫さんは何でそれが分かるのにマスターに対してああなのでしょうね」

 

「? 何か言いましたか?」

 

ヒロイン特有の難聴力を発揮し、綺麗に微笑む清姫。

それを前にジャンヌは、何でもありません、と諦めた。

もしもの時は殴って止めればいいだけ、という合理的な判断からの説得放棄だった。

 

 

 

 

「―――――」

 

皇帝より与えられた休憩所。

そこで、オルガマリーは精神の一時解体を実施していた。

食事。睡眠。今の彼女は、多くの人間的生理現象を無視できる。

事実この特異点にレイシフトしてから、彼女は一度も睡眠も食事もとっていない。

だが、人間を外れた行動を取りすぎていれば、やがて精神は崩れ落ちる。

 

それを回避するため、睡眠に似た精神の改修作業を実施しているのだ。

この特異点にきてからの影響全てを整理するのに、ほんの三時間かそこらだろうか。

作業を終えた彼女が目を覚ますと、傍には自身のサーヴァントが座っていた。

 

「……アヴェンジャー?」

 

「……やっとお目覚め?

 せっかく報告にきてるっていうのに茶も出さないマスターをもって悲しいわ」

 

そういう彼女の目の前には、カルデアからの供給物資である飲料水があった。

……別にこの国の水を飲料水に適した状態にする程度なら、魔術でどうにでもなるからいいが。

飲まなくてもいいのに飲む必要があるのか。

 

「別にそんなものはないけど。

 目の前で資源が無駄に浪費されてると知ったマスターの顔が見たかっただけだし」

 

何も言っていないのにそう言って水を飲み干すオルタ。

空になった容器をオルガマリーに押し付けて、彼女は立ち上がった。

 

「じゃあ報告。アナザードライブ、あれ多分ブーディカね。

 信じるかどうかは貴女に任せるわ。この情報をどう使うかもね」

 

「……ちょっと待ちなさい。その情報はいいとして、根拠や状況証拠は……」

 

「―――アヴェンジャーとしての勘よ。証拠も特にないわ。

 間違ってそうなら信じなくていいんじゃない?」

 

彼女はそれだけ言って、すぐに霊体化して出ていってしまった。

今精神解体を終えたばかりなのに、また重たくなった気がする頭を抱えて溜息一つ。

 

『ふふふ、割と良い仲築けてるんじゃないかい? オルガマリー』

 

「それは喧嘩を売っているの? ダ・ヴィンチ」

 

『まさか』

 

外を見れば月が高い。まだまだ夜は長そうだ。

 

『正統ローマと連合ローマ、両方に敵対する存在として女王ブーディカは真っ先に思い当たる。

 アナザードライブの契約者としての可能性は、君も私もロマニさえもが考えただろう。

 だが、この地で彼女はむしろネロ帝を慮っている様子さえ見せている。

 それに――君たちがアナザードライブに襲撃されたタイミングで、彼女は前線を離れていない』

 

彼女はローマの客将。まして、このガリア攻略軍の司令官の位置にいる。

時速560キロの移動手段で足を確保できていても、兵士にいないことがバレないのは難しい。

 

「……そうね。物理的に、距離的に襲撃が不可能」

 

収集した情報は、ブーディカの犯行は不可能だと断定している。

だが、それを知りながらオルタはあの言葉を告げに来た。

 

オルガマリー・アニムスフィアの判断能力は、サーヴァントの言葉を求めない。

いつか彼女はそう言った。

オルガマリーの思考は、ブーディカではないと判断するだろう。

だが彼女のサーヴァントは、ブーディカだと判断した。

 

「っ………!」

 

『まあ、情報が足りないのは確かだ。今すぐに判断を下す必要はないさ。

 ――――さて。たまには普通に睡眠したらどうだい?

 どうせこの時間にやることもないだろう。

 君はもう少し、自分だって人間だと思いなおしておくべきだよ。

 私はそのために君にその体を作ったんだから』

 

ダ・ヴィンチちゃんの酷く優し気な声。

そんな必要はない、と言い返そうとして―――

しかし小さく、そうね、と返す。

 

やがて彼女の体は、壁に寄りかかって寝息を立て始めた。

 

『………やれやれ、面倒な性格のくせにどこか素直なのは主従揃ってだね』

 

そう言ってダ・ヴィンチちゃんは通信を切り、観測のみに切り替えた。

 

 

 




 
アナザードライブの正体や何やらは推理するための情報出してないんで分からないでしょう。
Q:フリーズの能力が効かないのは何故? A:特異体質
くらい推理は難しいと思います。ただトリックが分かるとドライブの継承方法も分かるかも。
モチーフにしたものは明白なので。
 
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