Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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二話同時投稿
 


スパルタの勇者は“どうすれば”止まるのか0060

 

 

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

火が上がり、落石が襲い、突風が吹く。

しかしその中には、ジオウを止めるに足るものは存在しない。

宝具をよそに展開してしまっている孔明では、彼を止める手段は存在しなかった。

 

足止めに終始したところで、しかし結局こうして追い詰められる。

孔明の周囲には“キック”の文字が12個。

取り囲むように配置されて、カウントダウンを刻むように一つずつ消えていく。

 

「ちっ、ここまでか……まったく、ライダーの奴め……!」

 

本来ならばもう少し耐えて、ネロとブーディカを接触させたいところだったが。

しかしこうなってはどうしようもない。

というか、アレキサンダーがネロとの戦いを長引かせたからだ。

目的を果たして皇帝を確認できたから、征服したくなった、などと。

なじるように鼻を鳴らしながら、小さく笑う。

 

それはさておき。

完全に詰んだ状況に、彼はネロを見て向こうの状況を確認する。

既に彼の主であるアレキサンダーは、その体を消失させ始めていた。

最期に大きく溜め息を吐いて、甘んじてその攻撃に身を任せる。

 

〈タイムブレーク!〉

 

ジオウの“ライダーキック”が孔明に炸裂する。

胴を打ち据える衝撃で砕け散る霊核。

衝撃で吹き飛ばされて、幾つか陣の天幕を巻き込み壊してから止まる体。

そもそも戦うものではなく、そういった攻撃になれていない孔明がガクガクと震えた。

 

「ッァ、神経を誤魔化していても衝撃だけでこれか……!

 まったく、どいつもこいつもよくやるよ……!」

 

咳き込みながら、あっさりと消失を開始する孔明。

彼の消失と同時に孔明の宝具。“石兵八陣(かえらずのじん)”もまた、その効果を消失する。

 

「向こうは!?」

 

孔明の消失を見届けたジオウが後ろを振り返り、そちらの状況を確認する。

彼の目には、地上に突き立った石柱が消え失せていく光景が映っていた。

 

 

 

 

最後の令呪は使い切った。

それでも、ジャンヌの宝具はあと十数秒が精々だ。

未だに二百を優に超える兵士たちがこの戦場には居る。

 

「まずい、まずい、まずい……!」

 

必死の形相で魔力を絞り出すジャンヌ。

令呪のみならず、カルデアの礼装の力で生命力を魔力に変え、振り絞る立香。

その後ろで、オルガマリーが頭を抱える。

 

「このままじゃ……! っ……!!」

 

「ちょ、所長……! 何を……!」

 

せめて、と。彼女は蹲る立香を引いて自分の背に庇う。

自分の体などはダ・ヴィンチの人形だ。いくら壊されたってどうにでもなる。

どうにもならない場合なんて考えたって仕方ない。

どれだけ盾になれるか、なんて分からないが無いよりは多分マシだ。

 

「うるさいっ……! 貴女は私の指示に従ってればいいのよ……!」

 

立香が自分を後ろに押しやる所長を見上げ―――

その瞬間、状況の変化を感じ取った。

 

「柱が崩れ始めた……!」

 

「え?」

 

立香の言葉を受けて、ジャンヌが咄嗟に周囲を見回す。

彼女の言う通りに、あの軍師が張った結界の起点。

石の柱の崩壊が発生していた。

それはつまり、あの逃亡や宝具を封じていた結界の消失を示すということ―――

 

「オルタッ―――――!!」

 

ジャンヌの叫びがオルタに届く。

ジャンヌの結界の外に、無事な身のサーヴァントなど一人もいない。

満身創痍ながらしかし旗と剣を振るうオルタが、彼女の声に気づき―――

驚いたように周囲を素早く見回した。

 

直後。彼女もまた、一人のサーヴァントの名を叫ぶ。

 

「清姫ェッ―――――!!」

 

かはっ、と火の粉の混じる咳を漏らしながら、彼女もまた気づく。

今ならば、()()()()()()()()

二人は即座に視線を合わせて、残された魔力を限界まで絞り出す。

 

「“吼え立てよ、我が憤怒(ラ・グロンドメント・デュ・ヘイン)”ッ……!!!」

 

「“転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)”っ……!!!」

 

二人がその大火の宝具を向ける相手は同じ場所。

()()()()()()()()()()()()

 

彼女の結界に取り付いたスパルタ兵さえ焼き払えれば、マスターたちの退路が出来る。

竜と化した清姫の息吹と、漆黒の炎がジャンヌ達ごとスパルタ兵を呑み込んだ。

例え燃やしても、息がある限りスパルタ兵は止まらない。

中途半端な攻撃に意味はない。

彼女たちの全ての魔力を懸けて、その宝具は執行された。

 

「はあぁあああああああッ―――――!!!」

 

黒と青の炎が津波のように押し寄せて、スパルタ兵たちが流されていく。

だがその攻撃は長くは保たない。

清姫の体が元の少女のものに戻り、地面に転がる。

オルタもまた膝を落とし、既に立つだけの力もない。

 

そうなれば、彼女たちにスパルタ兵たちに対抗する方法はない。

 

「アヴェンジャーッ!!」

 

「ッ――――今のうちに、退きます!」

 

炎が止まった瞬間、ジャンヌは宝具を解除した。

そのまま撤退させるべき立香とオルガマリーを引っ掴み、後ろに下がろうとする。

スパルタ兵はまだ二百近くいる。

例え、清姫とオルタの危機であっても、彼女たちを前に置いておくわけにはいかないのだ。

 

ギリ、とオルガマリーが歯を食い縛る。

彼女にマスター適正があれば。

システム・フェイトから令呪サポートが受けられるだけの能力がありさえすれば。

偽臣の書なんて、制限を増やすだけの中継器を使わなきゃマスターになれない無能でなければ。

こんな皆が魔力と生命力を振り絞る戦場で、自分だけ見ているだけなんて。

そんな光景を見ずに……

 

盛大な破砕音に、はっとしてオルガマリーは前を見る。

そこでは、清姫に迫るスパルタ兵をマシュが。

オルタに迫るスパルタ兵を荊軻が押し留めていた。

 

「清姫さん、すみません! 荊軻さん! お願いします!!」

 

一人を殴り飛ばしたマシュが、清姫を拾いつつ荊軻の方へと投げつけた。

空を舞う和装の少女。それをキャッチした荊軻が、オルタも拾って後ろに下がる。

 

「マシュ、いいぞ!」

 

「はい! “疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)”ッ――――!!」

 

下がった荊軻を見届けると同時、彼女は宝具を解放する。

立香の魔力はほぼジャンヌに回していた。

マシュの限界だって遠くはない。

それでも彼女の盾は、守護の意志を極限まで引き上げて光の盾を形成する。

 

その盾を全力で横薙ぎにスイング。

立ち並ぶスパルタ兵たちを、死力をもって薙ぎ払って吹き飛ばす―――!

 

弾き飛ばされるスパルタ兵たち。

即座に復帰してくると言っても、それでも何とか彼我に距離を作り出した。

 

「あっ、はっ……! ま、だまだ……!!」

 

宝具の光が消え失せる。彼女ももう限界。

だが限界であってもやらねばならない――――守るために。

 

「いや、嬢ちゃん。よくやった」

 

その彼女の目の前に、最前線でスパルタ王レオニダスを押し留めていたランサーが戻る。

同時に、彼の前に呂布の巨体が落ちてきた。

彼が手にしているのは、“軍神五兵(ゴッドフォース)”の射撃の型。大弓だ。

巨大な矢を番えながら地面に落ちてきた彼は、その矢先を正面のスパルタ兵たちに向けている。

 

「お前たちは全員下がれ、全力でな―――」

 

ランサーの言葉は有無を言わさぬ。

下がらなければ死ぬ、と言われているに等しい迫力でもって告げられる。

 

「は、はい……」

 

既に誰もが戦闘不能なのは事実。

呂布とランサーに着いていけるか、という思いもある。

マシュもまた、戦闘不能な二人を抱えていった荊軻を追った。

 

呂布の矢に魔力が充填されていく。

軍神五兵の砲形態は対城宝具。この戦場さえも一変させる、一騎当千の無双武具。

だがその兵器を前に、レオニダスの姿が真っ先に突っ込んでくる。

 

「例え宝具の一撃であろうともぉおッ!!

 誰かが防ぎ、誰かがその敵を打ち破ればよしッ!!」

 

盾を掲げ、呂布の前に躍り出るレオニダス。

その言葉に疑いなし。スパルタも、クー・フーリンも、呂布さえも。

あの炎門の守護者の盾は、対城宝具の一撃さえ防ぐと知っている。

光芒と化し放たれる呂布の一矢でさえ、彼は必ず防いで見せる。

呂布が一騎当千の矛ならば、敵のレオニダスもまた一騎当千の盾。

 

レオニダスの突撃に他のスパルタが全員続く。

雄々しき叫びが轟いて、人の波が瞬く間に迫ってくる。

 

()()()、呂布の選択は一つ。

彼は、その矢をレオニダスではなく下に向けた。

 

「なにィ……!?」

 

自分の足元に莫大な魔力砲を向けた呂布に、レオニダスも困惑する。

だが彼はそんな困惑知ったことかと、宝具の魔力を全て解放した。

 

瞬間、呂布を爆心地として巻き起こる甚大な爆発。

その爆風が彼を中心に圧倒的な爆風を巻き起こし、スパルタ兵の足を止めさせた。

確かにこの突風が、一瞬だけはスパルタ兵全ての足を止めた。

だがそれだけのために自爆したのか、と。

 

しかしレオニダスの目が、その爆炎の中から上空に飛び出した青い影を見て得心する。

爆風を利用して、助走無しの通常を超えた跳躍。

スパルタ全てを視界に捉えられる高度まで即座に舞い上がるクー・フーリン。

 

「総員、構えェエッ―――――!!!」

 

レオニダスの指示により、盾を持つ全てのスパルタが盾を構える。

だが、しかし。彼の槍は必中の魔槍。

放てば必ず敵を穿つ、絶対不可避の一撃――――!

 

「“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”ッ―――――!!!」

 

真紅の魔槍が解き放たれる。

クー・フーリンの全身全霊、全ての魔力を注ぎ込まれた槍が迸る。

限界まで反り、撓る全身から投げ放たれる一撃。

それが彼の手を離れた瞬間、敵スパルタ兵と同数まで瞬時に分裂した。

 

回避などという思考は最初からスパルタは持たない。

絶対中るというのなら、彼らはそれを耐え切り逆襲するだけだ―――!

 

赤い流星群が地上の兵士たちを蹂躙する。

この一撃は彼が編み出した妙技、“刺し穿つ死棘の槍”とは違う。

絶対必中の魔槍であっても、確実に心臓を貫けるわけではない。

一対一ならばそれでも心臓を穿ってみせるが、この軍団相手では全ての心臓は狙えない。

 

頭か。胴か。腕か足か。

全てのスパルタはどこかしらを槍に貫かれる。

それでも止まらない。絶命に至らない限り、スパルタは止まらない。

 

「スパルタはぁあああああッ!! 止まらないぃいいいいいッ!!!」

 

槍を防ごうとした盾は欠けている。しかし防げたわけではない。

ただ、腹を抉られたにも関わらず、レオニダスは怒号じみた咆哮を轟かせる。

同意の声が兵士たちから上がる。

 

クー・フーリンは全魔力を注いだ槍を放ち、そして空中だ。

そのまま落下するだけ。ならば、スパルタの進軍で押しつぶせる。

腕を失った兵士、足を失い這いながら続く兵士。

誰もが血を止め処なく流しながら、しかし止まらない。

 

だから。

クー・フーリンは、空中で笑った。

 

「だろうよ」

 

「―――――ぬっ!?」

 

彼が誰より高く跳んだのは、槍を投げるためだけではない。

そこならば、()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

―――ランサー! 宝具をもう一度!

 

令呪が下る。限界まで酷使した体に、魔力が強引なまでに充填される。

彼が投げ放っていた槍が、一つに融合して再び彼の手に戻ってくる。

空中で受け取った赤き槍をまた、全身全霊の力で引き絞る―――

 

「この一撃……!」

 

兵士はある程度減らした。もう百五十かそこらだろう。

その上、レオニダスすら例外なくどこかしらに槍を受け、動きも鈍らせた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()―――!

 

「手向けと受け取れェッ―――――!!

 ―――――――“突き穿つ死翔の槍(ゲイ・ボルク)”ゥッ!!!」

 

再び、空から赤い流星群が空を翔けた。

槍を打ち合わせんと兵が槍を振るう。その槍を打ち砕き、心臓を穿たれた。

盾で逸らさんと兵が盾を掲げる。その盾を打ち砕き、心臓を穿たれた。

全てのスパルタに対し、絶死の一撃。

 

それは、レオニダス相手にさえ例外ではない。

彼もまた盾を構え、その一撃を受け止める。

全てを打ち砕く槍の一撃は、レオニダス王の盾さえも粉砕し、彼の心臓を貫いた。

 

血流が噴き出し、それが魔力となって散る。

兵士たちは心臓を失い、体を保てなくなり還っていく。

その中で、彼は―――

 

「まぁだまだぁあああああああッ――――!!!」

 

心臓を奪われてなお気炎を上げ、一人でもなお進撃を開始した。

クー・フーリンの着地が隙なのは変わっていない。

軍で進撃出来なくなったところで、彼が槍でやることは何一つ変わらない。

 

クー・フーリンは二度、全身全霊を懸けねば放てぬ宝具を連続で放った。

もう魔力体力以前に、霊基が限界まで軋んでいるはずだ。

少なくとも、もう休息もなしに宝具は使えない。

いや、それどころか限界の体では、着地の動作すら覚束ないほどだろう。

 

目の前でクー・フーリンが地面に降りる。

そのまま彼は、苦渋の顔で膝を落とした。

彼はこれ以上は立つ事さえ難しい。だが、スパルタはまだ進める―――!

 

「ぬぉおおおおおおおッ―――――!!!」

 

クー・フーリンに届く。彼の目前まで迫り、槍を放つ。

それは――――

 

「通、さないッ――――!」

 

割り込むように現れた少女の構える、巨大な盾に防がれた。

盾越しに見える少女の貌。いっぱいの恐怖と、少しの勇気。

そんな、確かな強さが見える少女の盾が、彼を阻んでいた。

 

「良き、盾……! だがぁッ!!

 盾だけでスパルタを止められると思っているのならばぁッ……!」

 

半分以上割れた自分の盾で、彼女の盾を克ち上げる。

そのまま少女を吹き飛ばそうとして―――

 

「思ってないから私がここにいるわけだ」

 

克ち上げた盾の後ろ、身を潜めるようにそこに刃を構える荊軻の姿があった。

槍も盾も振りぬいているレオニダスが息を呑む。

 

「ヌゥッ……!?」

 

「“不還匕首(ただ、あやめるのみ)”」

 

その懐に飛び込み、彼女の匕首が彼の首をなぞった。

深々と斬り込んだ傷口、そこから溢れる血液が彼の体を赤く染める。

 

それを受けながらもなお、レオニダスは荊軻を盾で殴り飛ばしてみせた。

驚愕した表情で地面を転がる荊軻。

 

「……っ、毒も塗ってあるんだけど、物ともしなすぎでしょ」

 

呆れも混ぜながらそう言う荊軻。

それに対し、レオニダスは血塗れの胸を張って堂々と叫んでみせた。

 

「この身は見ての通り既に心臓も穿たれたぁッ!

 つまり毒を受けようと、それが全身に回る道理なしッ!!

 今の私はぁああああ!! 毒程度では止まらなぁああいッ!!!」

 

そう叫びを挙げながら、槍を振るう。

マシュにはもはや踏ん張る力もないか、その一撃で後ろに弾き飛ばされた。

 

「っぁ……!」

 

「なら、力尽くで止めるしかねぇわけだ!」

 

弾かれたマシュの後ろから、朱槍が奔る。

それを半分しか残っていない盾で受け止めながら、レオニダスがそちらを向く。

 

「クー・フーリン……まだ、動けますかァッ……!」

 

「ったりめーだ。俺もテメェらも年期が違うだろうが……なぁッ!!」

 

「■■■■■■―――――ッ!!!」

 

クー・フーリンの呼びかけに応える、爆炎の中に沈んでいたもの。

灼熱を纏いながら、飛将軍が再び起き上がっていた。

その手には方天画戟となった“軍神五兵”。

 

彼の姿が大地を踏み砕きながら、レオニダスに向かってくる。

盾で受け止めていたクー・フーリンの槍を、自身の槍で弾き飛ばす。

同時に、方天画戟を盾で迎え撃った。

衝突の瞬間、衝撃に大きく仰け反るレオニダス。

 

「ぬ、うぅうう……!」

 

流した血液も魔力も、既に限界は超えている。

限界を超える事など日常茶飯事故に無視していても、それでもいずれ限界はやってくる。

攻撃を受け止めても、その場に踏み止まることもできない。

腕の動きも緩慢だ。クー・フーリンと呂布、どちらもなどとても捌けない。

 

「だが私は、スパルタだぁああああああッ!!!」

 

槍が奔る。

同時にクー・フーリンの魔槍と、呂布の方天画戟が奔っていた。

 

――――打ち合う武具。

その結果は、レオニダスの槍の破壊。

止まらぬ二人の英傑の宝具が、レオニダスの胴を薙ぎ払っていた。

致命傷を受けるのは何度目か。受けても動き続けた意識で考える。

ただ一つ分かるのは、今回は耐え切れなかったということだ。

 

幾ら動かそうとしてももう動かない四肢の感覚。

兜の下で彼が、血溜まりを口から溢れさせる。

 

「ぬ、ぐ、うぅ……! 私の負け、のよう、ですな……!

 申し訳ない、軍師殿。せっかく力を借りながら、少し……稼ぐ時間が足りなかった」

 

レオニダス王が、そう言って本陣の方を見る。

まだ、ブーディカとネロの邂逅は終わっていないだろう。

本来ならばそれくらいの時間は稼ぐつもりだったのだが。

 

「ブーディカ殿にもこれでは申し訳ない……

 だがしかし、いや、清々しい敗戦でした……」

 

そう言って、レオニダス王の姿はあっさりと消えていった。

限界の限界まで耐えた結果、本当にギリギリまで耐えていたのだろう。

 

マシュがそれを見て腰を落とす。

後ろを振り返れば、立香もジャンヌも清姫もオルタも全てを絞りつくしていた。

彼女たちを必死に世話するオルガマリーの姿が、全員が限界なのだとよく知らしめている。

 

ランサーさえも腰を落とし、呂布は全身から煙を噴き出している。

荊軻は比較的無事に見えるが、それは純粋に宝具の性質上の問題だろう。

暗殺宝具ゆえに、ただ消費が少なかった程度の話だ。

魔力の使用は最小限だったが、マスター近くの防衛線で一番飛び回ったのは彼女なのだから。

 

マシュももう、宝具どころか盾を振るうことさえ覚束ない。

―――でも、彼女は行かなきゃ。

レオニダス王が言っていた通りなら、ここでブーディカとの決着が着くのだから。

 

 

 




 
レオニダス好き!!(挨拶)
 

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