Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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1-3 風雲チェイテ城1604

 

 

 

「では、行きます―――!」

 

最早問答は無用とばかりに、沖田は疾走を開始した。

縮地の歩法でもって一気に信長へと接近する。

 

そんな彼女の前に、ジオウの姿が割り込んだ。

咄嗟に奔らせる白銀の刃。

それをジカンギレードが受け止めて、盛大に火花を散らした。

 

〈仮面ライダー! ジオウ!〉

〈アーマータイム! ドライブ! ドライブ!〉

 

真紅の装甲を鎧に纏う、ジオウドライブアーマー。

それが神速を誇る彼女の前に、立ちはだかっていた。

 

彼女と至近距離で顔を突き合わせながら、ジオウは言い放つ。

 

「―――とりあえず、一緒にひとっ走りしたら止まってもらうよ」

 

「貴方が私についてこれれば、考えましょう」

 

互いに一度引いた剣閃を、再度衝突させて火花を散らす。

その瞬間には沖田の姿が目にも映らぬ速さで加速している。

対してジオウはエンジン音を唸らせて、その足に地上を走行する加速力を生み出した。

 

そんなことになっている沖田を眺め、信長は近くに積まれたカボチャの菓子を摘まみだす。

それを見ていたネロも、一緒にそれを食べ始める。

彼女の視線はこの街の広場で歌でも歌えないかと品定めでもしているようだった。

 

「なんじゃ、よく分からんことになってきたの」

 

「うむ、結局のところこれはどういう催しなのだ? 楽し気なのは分かるが」

 

「ハロウィンとかいう祭りらしいの。

 ほれ、そこの小さいの。茶でも淹れてこい」

 

「ノッブ!」

 

信長がチビノブを一匹指差して、ぱたぱたと手を振る。

勢いよく返事を決めたチビノブが茶のために走っていった。

 

そんな珍生物が走っていくのを見届けたアレキサンダーが、信長に問いかける。

 

「それで、君は戦わないのかい? 僕が相手をしようと思っているんだけど。

 ああ、君だけ真名が割れているのは不公平かな?

 僕の呼び名は色々あるけれど……アレキサンダー、と呼んでくれればいいよ」

 

少年王を前に信長は不敵に笑う。

 

「アレキサンダーのう。中々のビッグネームじゃが……

 神性を継ぐ子であり、挙句に馬を駆るライダークラスときた。

 神仏一切灰燼と帰す魔王たるこのわしに、貴様如きが勝てると思うてか――――!」

 

宙を舞う火縄銃が一斉にアレキサンダーを向く。

しかしその状況にありながら、アレキサンダーは表情一つ変えなかった。

 

「どうだろうね、それはやってみなくちゃ分からない。

 ただ君、そこかしこにいる小さい君をバラまいたからかな?

 今の君の霊基は、サーヴァントどころかそこらの幽霊と大差ないだろう?」

 

「あ、バレとる? 別にわしがバラまいたわけじゃないけども……

 うむ。わしは今レベル1的な感じじゃし、なんか火縄銃からはコルク栓が飛ぶし。

 そのくらいありえると自分を騙していたが、冷静に考えておかしいじゃろ。射的か。

 まあ……ここは大人しく、降参しとこうか。捕虜としていい感じに扱うがいい。

 三食昼寝付き―――あ、料理はカボチャ以外がええのう」

 

「それはやってみなくちゃ分からない、と言っただろう?」

 

既に降参して火縄銃を投げ捨てた信長に、アレキサンダーが雷鳴を巻き起こす。

えー、と嫌そうな顔をする信長。

 

「かーっ! 世に名高き征服王が降伏した奴を弱いものいじめとは、かーっ!」

 

「最終的に面倒ごとを起こしそうな奴に首輪をつけておくだけさ。

 大人の僕なら面白そう、と見逃していたかもね」

 

「それな! わかるわー、これ絶対わしが問題を大きくするやつ。

 そもそもこのチビどもなんなんじゃ」

 

ゼウスの雷光を帯びたアレキサンダーが、信長の蹂躙を開始する。

落雷がそのまま地上を暴れるように、黒い軍服は雷鳴の中に呑み込まれた。

 

「ぬわーーっっ!!」

 

信長の断末魔がハロウィンの夜空に響く頃。

 

ジオウと沖田が距離を取り、決着をつけようとしていた。

腕のホルダーからジオウがビーストウォッチを取り上げた。

そのままジカンギレードに装填する。

 

〈フィニッシュタイム!〉

 

必殺の気配を感じたか、沖田が僅かに目を細める。

 

「これで、どうだ――――!」

 

〈ギリギリスラッシュ!!〉

 

ビーストウォッチとドライブアーマーのパワーが解放される。

剣を振るうと同時に、三つの金色のタイヤが射出された。

 

それが空中で合体して、回転するタイヤが三つ横に連結した状態になる。

まるでスロットマシンのように回るそれが、一つずつ止まっていく。

 

〈ファルコ!〉〈カメレオ!〉〈バッファ!〉

 

停止したタイヤには何か絵が描かれていた。

ビーストキマイラを構成する獣の絵。

それが、絵が一切一致しないバラけた状態で停止していた。

 

タイヤが消えて、コインをそれぞれ一枚落としていく。

地面に落ちたコインは、小動物のようなサイズの隼とカメレオンとバッファローになる。

魔力で構成された純粋なエネルギーの動物たち。

それがぱたぱたぴょこぴょこ、地面の近くをはね回った。

 

思わずジカンギレードを見るソウゴ。

 

「必殺技にハズレってあるんだ……」

 

そんな彼の隙を見たか、沖田は相手との距離を三歩で詰め切る速度に乗る。

大地を弾き加速し、放つは沖田総司の誇る絶技。

 

「笑止―――必殺の奥義に外れ無し。殺し合いなら相手に二度見せる事も無し。

 確実に命を絶つ究極の一さえあれば、余計なものなど必要無し―――!」

 

彼女がそこにいると視認は適わず、また知ったところで対応を不可能とする速度。

それこそが沖田総司の秘剣、三段突きの前兆。

 

「一歩音越え―――」

 

一歩目、彼女が加速を開始する。

 

「二歩無間――――!」

 

二歩目、彼女がその加速のままジオウまでの距離を零にする。

 

「三歩絶刀―――――!!」

 

そして、三歩目。

その踏切とともに繰り出す()()()()()()()()()

あらゆるものを置き去りにして、その刃がジオウの喉へ―――

 

「コフッ!?」

 

届くことはなく、彼女はその勢いのまま転倒して転がっていった。

転がっていく彼女はどうやら、吐血しているようだった。

 

黒焦げになった信長が寝転がりながら呆れたように口を開く。

 

「必殺にハズレ無し?

 必殺技どころか動き全てにハズレくじがついとる奴がなーに言っとるんじゃ」

 

「うう……まさかサーヴァントになってまで病に悩まされるとは……がくっ」

 

倒れ伏す沖田。

それを見たチビノブたちが、担架をもってやってくる。

ノッブノッブ、と声を上げながら病人を担架に乗せていくチビノブたち。

 

「わしも怪我人なんじゃが? わしの担架は?」

 

「手加減はしただろう? それにしてもこの小さい君は、ここの体制側らしいね」

 

信長本人は反体制側として適当にやっているというのに。

治安維持組織、と言っていいのかどうか。

そんな存在である沖田に対しては、治療をする気があるようだ。

 

「うむ……チビの奴ら、戦闘が始まったと見るや他の住民たちはすぐに家の中に誘導していた。

 おかげで余が皆に歌を聞かせようと準備している間に、人っ子一人いなくなってしまった」

 

しゅん、と残念そうに俯くネロ。

広場の中央には彼女お手製のライブステージがいつの間にかできていた。

 

「つまり、織田信長……さんの力を、チビノブ? さんにして、バラまいているのは……

 エリザベートさんと言うことに、なるのでしょうか?」

 

自分で自分が何を言っているのか、という疑念に苛まれるマシュ。

それを聞いていた清姫が、首を横に振る。

 

「だとしたら、エリザベートは何かがおかしくなっているのでしょう。

 いえ、元から頭がおかしい娘ではありましたが」

 

流石にあんたに言われるほどじゃないわよ、多分、もしかしたら……

と、強気で睨んだもののどんどん自信が薄くなり、途中で目を逸らしてしまうカーミラ。

 

「と言うと……」

 

「なぜ、あの子はこの場にいないと思いますか?

 あの子は全力でハロウィンを楽しむつもり。というのであれば、彼女はここで住人に自分の歌を聞かせているでしょう」

 

「そっか。この世界、別にエリザベートには楽しくない?」

 

「お城の料理は凄い美味しいし、楽しかったですよ?」

 

「そのまま死んどれ、モヤシ侍」

 

担架の上で口を挟んでくる沖田と、それに罵詈雑言を浴びせる信長。

それに、そうじゃないと首を横に振ってカーミラを見る清姫。

彼女は嫌そうに、確かにそうねと呟いた。

 

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 それが彼女が望むように、誰かを楽しませるためのものであっても。

 民を城に入れる、あるいは自分が民の元へ出向く。

 そのためのルールがこの世界に用意されていないのは、おかしい」

 

「………だというのに、城下街の様子は平和そのものだった。

 つまり政務は滞りなく行われている。

 ハロウィンチェイテなどと方向性は狂っているが、運営自体はきっちりしているというわけだ。

 ――――さて、何故か?」

 

エルメロイ二世の視線が立香に向けられる。

向けられた立香は、自然と周囲を見回す。

そこかしこにいるチビノブ軍団。このチビたちは、明らかに体制側……

 

「チビノブがエリザベートの代わりに外での仕事をしているから。

 あれ、でもカーミラにも……」

 

反体制側であるカーミラに付き従うチビノブもいるはず。

そう考えていると、アレキサンダーが口を開いた。

彼の視線は立香ではなく、信長の方を向いている。

 

「二種類いるんだろうね、チビノブにも」

 

「なんか黒幕は二つに別れたうち、悪の心を持ったわしみたいな流れになってきたのう……

 まあこれだけ小さいのバラまいてたら悪のわしくらいいても驚かんが」

 

話の流れを聞いていると、エリザベートの後ろに信長(悪)がいる感じだ。

否定してやりたいが、正直なところ信長自身もそれあるわー、と感じていた。

そういうことができる状況になったら、多分やる。

 

「悪の心が分離したらノッブは消滅するでしょ。善の心なんてないですし」

 

ぷーくすくす、と笑いを漏らす沖田。

担架の周りでチビノブたちも笑い出した。

 

「わし(善)に比べてチビノブどもが畜生すぎない?」

 

「沖田さんの取り巻きのチビノブさんはチビノブ(悪)さんなのでは?」

 

カーミラの周囲にいるチビノブ、そして街の中にいる沖田の周りのチビノブ。

両方を確認してマシュはそう言った。

 

「なるほど、沖田(悪)というわけか。所詮新選組なぞ時代の敗北者じゃな」

 

「幕府が負けただけで私負けてないですし、正直どうでもいいです。

 むしろ幕府の敗北ってノッブの敗北なんじゃないですか?」

 

「なんで時の徳川はよりにもよってこんな奴らを飼ってたんじゃ……」

 

小さく息を吐いた清姫が、信長を見ながら言った。

 

「つまりこの特異点の中心は、恐らく聖杯の欠片を取り込んだエリザベート。

 それを裏で唆している、闇だか悪だかの織田信長がいる、と」

 

「しかし分からんな。その悪信長とやらは何がしたいのだ?

 少なくともここを見た限り、暗君や暴君のそれとも思えぬ差配。

 正直、エリザベート本人より真っ当に治められているのではないか?」

 

ネロがカーミラを振り返り、彼女に問う。

一瞬だけむ、と表情を引き攣らせた彼女はしかし、溜め息とともに同意を返す。

 

「……まあ、そうね。私やあいつは貴族であって、為政者ではないもの。

 言ってしまえば、私にとっての領内の管理は牧場の管理と変わりない。

 本職の為政者に比較されて、まともな采配が揮えるはずもない」

 

「信長本人である君は何か思いつかないのかい?」

 

アレキサンダーの問い。

ふーむ、と顎に手を当てて悩む信長。

彼女はちらりとカーミラを見て、再び大きく首を傾げた。

 

―――しょーじき、大体分かった気はするのう。でもなー、ここで全部わし(善)がバラしたらわし(悪)が犯行を告白するタイミングで、全員に冷めた態度で聴かれるのか……うーむ。

 

「いや! さっぱりじゃな!」

 

「うそですね?」

 

その瞬間、信長の前にはぎょろりと目を蛇のものに変えた、清姫の姿があった。

口からは青い炎が蛇の舌のようにチロチロと蠢いている。

彼女は今日も嘘発見器として高い精度を誇っていた。

 

「ぬわーーっっ!!」

 

再びチェイテの空に断末魔が響き渡った。

 

どうどう、と立香に窘められながら、ドライブアーマーに抑え込まれた清姫が引き離される。

さっきは電気でこんどは炎。二重で黒焦げにされた信長が、地面に倒れ伏す。

あーあ、と言った感じでその有様を見るジオウ。

 

「まあ、とりあえずチェイテ城に行って悪の信長を倒せばいいのかな?」

 

ドライバーを外し、変身を解除したソウゴが問う。

焼死体と化していた信長が半死半生になり起き上がり、うむうむと首を縦に振って同意した。

理由が実際のところどうであれ、どちらにせよ現場に行かねばならないことには変わりない。

彼らは、とりあえずチェイテを目指すことにした。

 

 

 

 

食堂で皿を洗ったりしているブーディカを見ながら、オルタはぼうっと座っていた。

その様子を見たブーディカが、一度皿洗いの手を止めて彼女に声をかける。

 

「どうしたんだい、何か悩み事?」

 

「別に、そういうわけじゃないけど。

 皇帝様の記憶の件、なーんか腑に落ちないのよね……

 私にもあんたにも化け物にされた記憶がある。ソウゴたちに化け物を倒した記憶もある。

 あいつにとっては生前の話だったから、と言われればその通りなんだけど……」

 

それは確かにね、とブーディカも同意して首を傾げる。

そんな二人がいる食堂の自動扉が開いた。

二人がそちらに視線を送ると、そこには頭を抑えたオルガマリーの姿があった。

 

「どうしたのよ、マスター。

 レイシフトの状況見てるんじゃなかったの?」

 

「見てたら余りにも馬鹿らしい状況に頭が痛くなったのよ。

 アヴェンジャー、暇ならドリンクを管制室の全員分持って行ってあげて。

 私はダ・ヴィンチの工房に行くから」

 

彼女は途轍もなくでかい溜め息を吐き落とし、そのまま食堂を出ていった。

 

珍しい。普段なら管制室で飲み物を飲むなんて言語道断、と言うだろうに。

首を傾げながら、しかしそんな心境の変化はどうでもいいのでオルタは考えるのを止めた。

 

「……別にいいけど。ブーディカ、準備して」

 

「はいはい」

 

すぐさま準備してくれるブーディカ。

ボトルに入った飲み物を、さっさと大量にケースに詰め込んでいく。

 

それが終わると、彼女はそれを片手で持ち上げ管制室を目指した。

もはやカルデアのマップは完全に頭に入っている。

二度と迷うようなことはないだろう。

 

足早にルートを辿り、管制室まで一直線。

辿り着くと、その場は何とも言えない空気に包まれていた。

 

「……ちょっと、マスターに言われて飲み物持ってきたけど?」

 

「―――ああ、ジャンヌ・オルタか。そうか、あの所長がそこまで……

 ありがとう、そこに置いといてくれ。そうすれば皆、勝手に取るよ」

 

微妙に引き攣った顔のロマニが、そう言ってテーブルの端を差す。

はいはい、と返事をしてそれを適当に言われた場所に置く。

そこでふと、ロマニが彼女に声をかけてきた。

 

「ところで君は、体調に変化はないかい?」

 

「はい? 何もしてないのにサーヴァントの体調が変化するわけないでしょ」

 

「そうか、ならいいんだ。なるほど、流石はレオナルド……ってことなのかな」

 

いきなり声をかけておいて、勝手に自分だけ納得しているロマニ。

顔に苛立ちを出し、今度はこちらから聞き直す。

 

「なによ」

 

「ああ、いや。実はマリーのことで……」

 

 

 

 

ダ・ヴィンチちゃんの工房。

ランサーの霊基修復の手段を確立すべく、作業をしているダ・ヴィンチちゃん。

その部屋の椅子の一つに、何故かウォズが腰かけていた。

彼は作業の手を止めないダ・ヴィンチちゃんに、問いかける。

 

「それで、何が訊きたいんだい?」

 

「んー。割と自分で答えが出ているからね、殆ど確認になってしまうんだけど」

 

そこまで言って、手を止めてウォズに振り返るダ・ヴィンチちゃん。

 

「第二特異点攻略後、つまりドライブの力をソウゴくんが手に入れてからだね。

 その頃から、私の霊基に対して何かが干渉してくる感覚を覚え始めた」

 

「その正体が知りたい?」

 

いやいや、と彼女は首を横に振る。

 

「それは分かっている。2068年、オーマジオウは言った。

 レオナルド・ダ・ヴィンチはドライブとゴーストを繋ぐものである、と。

 そしてドライブはウォッチにしたら、2014の数字が入っていた。

 よくよくアナザードライブの姿を確認すれば、そのボディにも2014の数字がね。

 更に2015年はゴーストの時代だそうだから……

 おっと、そうじゃなかったね。私に干渉してくる存在、それは私だ」

 

「君が君自身に?」

 

分かっているだろうに、彼は驚くような態度をしてみせた。

嘘発見器として清姫でも同席させたいが、だからといってカルデア内にバラまける情報でもない。

困りものである。

 

「レオナルド・ダ・ヴィンチさ。万能の天才が、常に私に問いかけてくる。

 何故これだけの未知を前に、何も動かない。

 これらの存在を自身の知識に吸収し、至高の世界を創作してこその万能の天才だろう、とね。

 この世界とは、人類最高の万能の天才たる私の実験場である―――とか。

 まあ、私も芸術家系の英霊に漏れずろくでなしだから、この思考は間違いなく自分のものであるという感覚はあるんだよ。

 実行するかしないかはさておき、自分でも()()()()()()()()()()と思う」

 

「なるほど。君とは別の、しかし間違いなく君である存在からの干渉だ、と。

 だが……」

 

「天空寺タケル」

 

ピクリ、と僅かにウォズが肩を揺らして静止した。

彼女の中に浮かんだ、重要な人物だろう名前。

どうやら今の反応を見る限り―――恐らく、彼が仮面ライダーゴースト。

 

「その名前が私の中にも浮かぶんだが、知っているかい?」

 

「……もちろん。彼こそ仮面ライダーゴースト。

 2015年の仮面ライダーだ」

 

隠す気があったのかなかったのか。

しかし、今更隠しても無駄と観念したか、彼は大人しく白状する。

 

「君はドライブの力をソウゴくんに手に入れさせる際、恐らくドライブの歴史上にあるなんらかの要素をマシュになぞらせて、時代のサルベージを行った。

 ならば、ゴーストは私を使うのかい? 恐らく、私ではない私はゴーストとドライブに大きな関係を持っている。だからドライブの回収で私に影響が出て、ゴーストとの連絡が発生しかけてる。

 ソウゴくんがレイシフト中の今、オルガマリーの眼魂が停止しないのも、ゴーストウォッチに近づいてる私がいるからだろう?

 まあ、別にこちらの戦力が増える分には、やってくれて構わないけどね」

 

「そこまで分かってたのなら仕方ない。正直に言おうじゃないか」

 

どの口が、と言い返したくなるような言葉。

こっちが清姫もいる前で色々説明する際、どれだけ注意を払わされてると思ってる。

 

「―――違うとも。君がゴーストウォッチに近づいてるのは事実。

 眼魂が停止しなくなったのも、君の存在があるからだ。

 君は彼らに、自分が作ったオルガマリー・アニムスフィアのボディに搭載した、ライドウォッチから解析した技術による防護だと伝えたようだけどね。

 だが、君からゴーストの力の回収などはしないし、出来ないよ」

 

「………なんだって?」

 

ダ・ヴィンチちゃんが困惑の声を上げる。

ウォズは椅子から立ち上がり、手にした本を開いた。

そこに目を通し、彼は小さく笑う。

 

ここは彼女の工房の中、開いた本を目を使わずに覗くことなど簡単だが―――

その本は、白紙にしか見えなかった。

 

「………」

 

「ゴーストは2015年から、2016年を駆け抜けたライダー。

 2015年はゴーストの時代だが、同時にゴーストの歴史が完結していない時代。

 つまり今はまだ、その時空はやってきていない。終わっていないんだ。

 ゴーストがいた時代であり、そしてゴーストが終わった時代である2016年。

 人理焼却により2017年がやってこない以上、2016年こそが唯一の回収タイミング。

 だから、君を通じて作るんだ。2()0()1()6()()()()()()()()()()()()をね。

 そうすればゴーストのウォッチは他でもない、天空寺タケルから継承できるのだから」

 

「ダ・ヴィンチ、入るわよ」

 

部屋の外から声がして、扉が開く。

オルガマリーが入室した時には、そこにはダ・ヴィンチちゃんしかいなかった。

難しい顔をして悩んでいるダ・ヴィンチちゃんに、オルガマリーは怪訝な顔をする。

 

「……オルガマリー、今日って2015年の何日くらいだっけ?」

 

「はぁ? ―――正確なのはすぐには分からないけど、人理焼却から経った日数からしたら9月の半ばから末くらいでしょう? ………少なくともハロウィンではないわよ」

 

ダ・ヴィンチちゃんが椅子に腰かけ、きいと椅子の背もたれを鳴らせた。

 

「2016年、か………」

 

難しい顔をして黙り込む彼女を前に、オルガマリーは首を傾げる。

軽く目を伏せた彼女が、小さく呟いた。

 

「本当にそれは、ただそれだけで済むのかい……?」

 

 

 




 
特異点G:生命破却侵略(インベーダー・オブ・デストラクション)2016
グレート・■■■・■■■■・■■・■■■
六章と七章の間に入れるので遥か未来です。
 
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