Fate/GRAND Zi-Order   作:アナザーコゴエンベエ

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怪・盗・乱・麻2009

 

 

 

「ところでさー」

 

見渡す限りの水平線、その彼方を目指して進む船。

その船上でドレイクが声を上げていた。

立香とマシュは水平線をぽけーっと眺めていた視線を外し、彼女を見る。

 

「この海にさ、何かお宝ってあるのかね?」

 

「お宝? 金銀財宝、みたいな?」

 

「そうそう」

 

何かないと燃えないもんさ、と言い切るドレイク。

そんな彼女の様子に、マシュは首を横に倒した。

 

「その、ドレイク船長はこの特異点を創った犯人に怒って、出航したのでは?」

 

「それはそれ、これはこれ。どうせならお宝もあった方が据わりがよくなるじゃないか。

 敵を倒して、財宝も手に入れて、万々歳で勝った方がいいだろう?」

 

「敵を倒して得られる財宝、というならそれこそ聖杯がありますが……」

 

マシュの言葉に、ドレイクは大仰に呆れた風な溜め息を漏らす。

 

「そりゃアンタらが欲しいものなんだろ? じゃあアタシたちには関係ないじゃないか。

 それに一個ありゃ酒が幾らでも出るなら二個目なんていらないね」

 

ドレイクが語る聖杯の価値に、困ったような表情を浮かべるマシュ。

 

「聖杯は酒樽ではないのですが……」

 

「アタシらにとっちゃただの便利な酒樽だよ」

 

「お酒はともかく、料理が出てくるのは便利でいいよね」

 

立香の言葉に、料理よか酒の方が重要さ、と返すドレイク。

そうしてからからと笑ってみせる彼女に、マシュは苦笑いを返すしかなかった。

 

 

 

 

「そういえばアレだ。アレはどうするのだ、オルガマリーよ?」

 

「は? アレ?」

 

唐突に自身に声をかけてくるネロに、オルガマリーが困惑する。

アレ、などと突然言われても分かるはずがない。

戸惑っている彼女に対して、甲板をふらふらしていたソウゴの声が届く。

 

「タイムマジーンじゃない?」

 

「ああ……まずは霊脈に召喚サークルを設置しなければ無理よ。

 問題はそもそも陸地が少ないせいで、確保できる霊脈があるかどうかも分からないことね」

 

「むぅ、まだ我慢せねばならぬのか」

 

自分が乗り回す前提で話しているネロに僅かに眉を引き攣らせる。

まあ、海上が活動の舞台になっている現状。

頑張れば移動拠点にも一応は使えそうなマジーンは、是非呼びたいという事に違いはないが。

 

『通常の地理通りなら、霊脈の探査も可能なハズなんだけどね……

 そこはもはや世界を寸断して海ばかりを繋いだ異世界染みてて、広範囲のサーチは難しい。

 ある程度接近しないと、霊脈の探知は無理そうだよ』

 

「その割には随分通信の調子もいいわね」

 

ぼう、っと海を眺めているオルタが口を挟んでくる。

そんな彼女の隣で一緒に海を眺めているジャンヌが、彼女を窘めた。

 

「いい事じゃないですか……あっ、イルカ! イルカですよ、オルタ!

 見ましたか! イルカが泳いでます! 跳ねた!」

 

「そーね、一緒に泳いでくれば?」

 

騒ぎ立てる白い方を鬱陶しそうに見る黒い方。

そんな彼女たちに、通信先のロマニから苦笑混じりの声が届いた。

 

『恐らくキャプテン・ドレイクの聖杯のおかげだろうね。

 彼女の近くにいる限り、通信が不調になることもなさそうだよ。

 まあ、その代わりと言ってはなんだが、さっき言った通りに広範囲の探知は―――』

 

「―――――!」

 

イルカにはしゃいでいたジャンヌが、突然振り返る。

そこにいた全員が訝しむように彼女を見やり、彼女自身もまた困惑するように目を細めた。

 

「……どうかしたのかしら、ジャンヌ?」

 

「―――サーヴァントの気配、でしょうか。だいぶ遠いと思いますけど」

 

『えっ……と。こちらでは観測できてはいない、ね』

 

すぐさま計測機器を確認するカルデア側。

だが、そのような事実はそちらでは観測されていなかった。

 

「………ああ、アンタそういやルーラーだったっけ」

 

忘れてたわ、などと嘯くオルタ。

それに素直に返答したジャンヌが、今の状態から察知できる事を語り出す。

 

「生憎ですが、ルーラーとしての能力は完全に発揮されているわけではありません。

 このサーヴァント感知能力も、他のサーヴァントよりは範囲が広い、程度です」

 

「感知も中途半端。しかも真名もろくに視えない。それホントにルーラー?」

 

クスクスと笑ってみせるオルタ。

むむむ、と口元を吊り上げたジャンヌが、彼女を小さく睨んでみせた。

 

「うるさいですよ、オルタ」

 

「さっきまでアンタはイルカイルカうるさかったわよ」

 

「むぅ」

 

仲良く睨み合う二人に小さく溜め息を一つ。

オルガマリーは、ジャンヌがサーヴァントを感知した方向を見る。

水中に住んでいる、などというレアケースが無い限りはそっちに地上があるはずだ。

 

「………とにかく、サーヴァントのいる方向に進むようドレイクに話してみましょう」

 

「うむ! そちらに行けば霊脈があるやもしれぬしな!」

 

喧嘩している二人はその場に放置する。

そしてオルガマリーは船長の元へと向かうのであった。

 

 

 

 

「んで? アンタならどんなお宝がいいのさ」

 

「えー?」

 

船上をふらふらしていたソウゴをとっ捕まえたドレイク。

彼女がにんまりと笑いながら、彼の望むものを聞き出そうとする。

 

「別に欲しいものも特にないしなー。お宝って言われても」

 

「はーっ! なんだいなんだい、揃いも揃って夢の無い連中だね!」

 

同じように絡まれ、特にないと答えていた立香とマシュが苦笑する。

だがそう言われてはソウゴだって黙ってられぬ。

いいや、と首を横に振ってドレイクに対して言い返してみせた。

 

「欲しいものは別にないけど、夢ならあるよ?」

 

「へぇ、なんだい?」

 

「俺の夢はねぇ、王様になること!」

 

ふふん、と胸を張って言い放つソウゴ。

一瞬だけ呆けたドレイクが、一気に笑い出して彼の肩をばんばん叩く。

結構な怪力に叩かれて、ソウゴが横に大きく揺れる。

 

「あっはっはっはっは! なんだ、随分でかい夢持ってるじゃないか!

 ここででっかいお宝見つけりゃ、どっかで王様になれるかもしれないよ?」

 

「そういうんじゃなくてさ、凄いお宝があるなら欲しい人が手に入れればいいよ。

 俺がなりたいのは、お宝が欲しい人も欲しくない人も幸せになれる世界の王様だから」

 

「へぇ……」

 

僅かに目を細めたドレイクが、くつくつと笑いながら彼を見る。

海賊として、商人として、見定めるような視線を浴びながらもソウゴの態度は変わらない。

 

「あ、ドレイクも俺の国で船長する?」

 

「はは! お生憎様、アタシはイングランドの人間さ!

 けど商人としてアンタの国と取引する分には、ちょっとは安くしとくよ」

 

「そっか」

 

大して残念でもなさそうに、ソウゴはドレイクの勧誘を止めた。

そんな彼に、ドレイクは先程までとは違う静かな声でその名を告げる。

 

「―――ソウゴ」

 

「なに?」

 

彼女は彼を自分のもとまで引き寄せて、囁くように語りかけ始める。

 

「アタシは国だの世界だの、そういう話は知ったこっちゃないんだけどね。

 ただ海に船で出る事についてはそれなりに知ってるつもりでね。

 このだだっ広い海の上で仲間と繋がってない奴は、ちょいと船から手を放せば海の藻屑さ。

 海賊なんて悪党どもの集まりだがね、そういうところだけは弁えてる。

 ……悪党だから、自分が背負ってる荷物なんて命に比べりゃとすぐに捨てる。

 一緒にいる他の奴らが拾ってくれてりゃ儲けもんだ、なんつってね。

 アンタは自分の背負ってるもん。捨てる気も、他の誰かに拾わせる気もないんだろ?」

 

「うーん、駄目かな?」

 

珍しく、少しだけ困ったように彼は問う。

そんな疑問を小さく笑い飛ばし、ドレイクは否定した。

 

「駄目なわけないじゃないか、んなもん本人の勝手さね。

 ただ、そういうやり方もあるもんだって知っといた方が何かと便利だろ?

 他の誰にだって言えることさ。好きに生きればいいんだよ、人間なんてね。

 まあ、勝手に生きた人間は最後にそれを清算するハメになるだろうけどそこはそれ。

 そんなもんは、自業自得っていうやつだろうさ」

 

ほんの僅かに浮かべた笑みをまた消して、ドレイクがソウゴに言う。

 

「―――ただ強いて言うなら、そんな大荷物なんて一人で持つもんじゃないよ。

 そりゃ船員の運命は船長の責任でもあるさ。国民の運命の責任は国王のものでもあるんだろう。

 だからこそ、最初っから一人で受け持つものとして出来てないのさ。

 アンタがその荷を捨てる気がないのは分かる。けどね、一緒にそれを持たせる仲間や舎弟……

 王なら臣下かなんかくらいは、作ってやってもいいんじゃないかいって事だ」

 

そう言った彼女が、ソウゴの背中をバン、と大きく叩いた。

蹈鞴を踏んでつんのめるソウゴ。

 

「ま、最後は結局アンタ本人が選ぶことさ!

 好きに選んで、好きに生きて、そんで好きに死ねりゃあ大団円ってもんさ!

 アタシらみたいな海賊は、やりたい放題したあとは、みじめに死ぬことになるだろうからね!」

 

彼が痛い、という苦情を上げようと振り返った先では、彼女はまた酒を呷りだしていた。

手元に聖杯があるせいで、いつでもどこでも酒が飲めてしまうのだ。

 

「仲間、かぁ……」

 

別にカルデアのメンバーを仲間と思ってないわけではない。

ただ、彼の中で世界を救う旅路と王になる道が別なだけだ。

世界を救うための仲間は、王になるための仲間じゃない。

 

―――軽んじているわけではなく、区別がついてしまっているだけだ。

 

ドレイクの言う荷物とは、ソウゴ個人で背負ったもの。

この戦いとは僅かたりとも関係ない。

仮にウォズやスウォルツが関与させようとしても、ソウゴ当人の覚悟は別のことだ。

 

「俺は世界を救って―――最高の王様にならなきゃいけないもんね」

 

「ソウゴ?」

 

立香が立ち尽くしているソウゴに寄ってくる。

何でもない、と誤魔化すように笑うソウゴ。

その姿を、何とも言えない表情で立香は見ていた。

 

そんな彼らを横目に、ドレイクの方へと近づいていくオルガマリー。

進む方針となりえるサーヴァントの反応が感知されたという事実。

それをもって“黄金の鹿号(ゴールデン・ハインド)”は舵を切り、その反応の許へと向かいだすのであった。

 

 

 

 

「……姐御! 島です! 島が見えます! 東北東方向です!」

 

マストを上がっていた船員から、その声が届く。

他の船員たちがその島に向かうため、一斉に動き出した。

 

「ドクター、ジャンヌさんの感知通り島がありました」

 

『うん。ここまでくれば、こちらでもサーヴァント反応を感知できている。

 間違いない、その島にはサーヴァントがいるようだ』

 

それを聞いたオルガマリーが、ドレイクに声をかけた。

 

「キャプテン・ドレイク。あの島にはサーヴァント、彼のような超人がいます」

 

そう言いながら彼女が示すのは、クー・フーリン。

一番分かり易い超人だったからだろう。

戦闘は海賊たちと遊ぶ程度のものしか見せていないが、それでも分かることはある。

ドレイク自身も、流石に彼に勝てるとは思っていないだろう。

 

ちらりとランサーの事を見たドレイクが、大きく肩を竦める。

そうして、船を忙しなく動き回っている船員たちに指示を飛ばした。

 

「そりゃ難儀だねぇ。……アンタたちは船で待ってな!

 上陸するのはアタシとこのカルデアの連中だけさ!」

 

すぐさまへい! と帰ってくる返事。

ぎょっとしたオルガマリーが、ドレイクの顔をまじまじと見つめる。

 

「いえ、貴女も……」

 

「馬鹿言ってんじゃないよ。アタシが残っちまってどうするのさ。

 それに、アンタたちは相手の聖杯とやらを狙ってるんだろう?

 だったら、それを持ってる相手だってアタシの聖杯を狙ってるんだろうさ。

 どっちにしたって、どこにいたって、大して変わりゃしないよ」

 

一理ある、と。オルガマリーが黙り込む。

彼女がエルメロイ二世と視線を合わせると、処置なしと首を横に振った。

誰かに言われて止まるようなタイプの人間なら、最初から世界一周などしない。

 

「分かりました。では、我々で島に上陸しましょう」

 

接岸するために島に近づいていく船の上で、オルガマリーは小さな溜め息を落とした。

 

 

 

 

浜に降り立ち、すぐ側まで広がる森の中を見る。

 

『向こうに動きはないね。こちらに気付いていないのかな?』

 

「うーむ。余でも何かいそうな気配は分かる、くらいの距離なのだがな?」

 

ロマニの言葉に首を傾げるネロ。

クラス特性、魔術の素養、サーヴァントとしてのスキル等々―――

サーヴァントを感知する能力を持たない彼女ですら、何かがいることは分かる。

つまり、相手も何かが近づいていると分かっているはずだ。

 

「こちらはサーヴァント複数。

 正体不明のそんな集団、警戒して然るべきのはずだがな」

 

そうとなれば、むしろ怪しさの方が勝る。

逃げるなり、隠れるなり、顔を出すなり、一切の行動を起こさないのは不自然だ。

こちらから接触すべく、歩きながら森の中に踏み込んでいく集団。

とりあえずこれで相手の対応を見るべき―――

 

「おい」

 

と、ランサーの声が全員の足を止めた。

振り向いた先で彼は、木陰に設置された石版を眺めている。

それを見たオルガマリーが顔を顰め、石版を睨んだ。

 

「ルーン文字……?」

 

こんな場所に存在する、人為的なもの。

これを設置した犯人がいるとするならば、この島にいるサーヴァントか。

 

「なんて書いてあるの?」

 

「“一度は眠りし血斧王、再びここに甦る”だとよ」

 

「ホラーみたいな言い回しだね」

 

立香が感心するかのようにその石版を見ると、ランサーはそれを鼻で笑った。

 

「ここにいる連中もだいたい一度眠って甦った奴だがな。

 亡霊が亡霊に脅しをかけても、何にもならねぇって話だ」

 

『血斧王……九世紀のノルウェーを支配したヴァイキングの王だね。

 状況から見て、恐らくこの島にある反応のサーヴァントがその血斧王で……』

 

「――――! 動き出しました!」

 

ロマニの声を遮り、ジャンヌが叫ぶ。

彼女の視線を追って総員がそちらへと向き直り、戦闘態勢に入る。

 

更にエルメロイ二世が、その場から一歩前に出た。

突き出された掌が操る魔力の流れ。それが周囲を彼の結界へと変えていく。

 

「こちらの陣へと踏み込むのだ。せいぜい覚悟はしてもらおう」

 

木々を薙ぎ倒しながら、巨大な斧を手にした半裸の巨漢が現れる。

その血走った目からは理性の色など感じ取れない。

乱雑に振り回す両刃の斧で樹木を吹き飛ばしながら、彼はこちらに走り込んできた。

 

「ガガガガガガ! ギギギギ――――ギギィイイ――――!!」

 

「――――“石兵八陣(かえらずのじん)”」

 

宝具の銘を告げるとともに、彼の周囲には石柱が降り注いで囲いこむ。

瞬間、その石柱の内側が隔離された異界と化した。

 

言葉と思えぬ絶叫を上げながら走っていたサーヴァントが停止する。

諸葛孔明の構成する脱出不能の結界。

それに囚われた以上、内側から力任せに抜け出すようなことはまずできない。

 

「血斧王エイリーク、か。バーサーカーでは尋問もしようがあるまい。

 多勢に無勢で吶喊した末路だ、早々に退場――――」

 

そこまで口にしたエルメロイ二世が、襟首を掴まれ後ろに投げ捨てられる。

驚愕に見開かれた彼の目は、それを成したのはランサーというのを見て取った。

 

が、それに文句を言っている暇などどこにもない。

直前まで彼が立っていた場所に、どこからともなく銃弾が連続で炸裂していたのだ。

 

なに、と声を漏らす暇もなく銃撃は連続する。

青い光を曳きながら殺到する無数の銃弾は、孔明が地面に立てた石柱を粉砕。

エイリークを縛りつけていた結界を、外側から破壊していた。

 

解き放たれたエイリークが、大きく体を揺らしながら息と言葉を吐き出す。

 

「ワガッ! ワガナッ! エイリーク! イダイナル、エイリーク!

 ガ、ゴッ! コロス! ジャマヲスルナラ! ブチ、コロス! ギギギィ―――!」

 

再始動したバーサーカーが、獲物を探して歩みを再開する。

その狂戦士さえも凌駕するような凄絶な笑みを浮かべ、槍騎士はその手に槍を現出させた。

エイリークの眼光がランサーを捉え、即座に獲物と判別。

彼をまず最初に葬りにかかる―――

 

「ハッ、やれるもんならやってみな―――!」

 

エイリークの手の中、赤黒く脈動する斧。

宝具たる生きた戦斧を大きく振り上げ、狙うは目の前に立ちはだかる青い男。

 

生きた魔獣をそのまま斧にした“血啜の獣斧(ハーフデッド・ブラッドアクス)”。

紅海の海獣、クリードの骨を素材とした“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”。

二つの血色の武具が打ち合って、盛大に火花を散らした。

 

後ろに放られたエルメロイ二世が、銃撃の出処に視線を送る。

 

「サーヴァントか……!?」

 

エイリークと戦うランサー以外が全てそちらに視線を向けた。

そんな中、木陰から一人の男が何の気無しといった風に歩み出てきた。

 

手にしているのは青い銃身。

トリガーにかけた指を支点に、彼はその銃をくるくると器用に回してみせる。

こちらに攻撃を仕掛けたことなど気にしていないと言うような、悠然とした微笑み。

 

「残念だが違うよ。僕はサーヴァントとかいう奴じゃない」

 

「じゃあ誰……?」

 

立香の問い。

彼はそれに微笑むばかりで、答えを返すつもりはなさそうだ。

マシュとジャンヌがマスターたちを守るように、その身を前に出す。

 

ネロとオルタはランサーとエイリークの戦いを窺いつつ、しかし意識はこちらにある。

オルガマリーがオルタに対して視線を向けた。

面倒そうに小さく肯くオルタ。彼女が、ランサーの援護へと向かう。

 

「別に僕が君たちに自己紹介する必要はないと思うけどね」

 

回していた銃を掴み、彼はソウゴへと目をやる。

ソウゴからはまるで知らない人間なのに、彼はまるで知人を見るような目だ。

 

「やあ、魔王。僕が知る君より随分幼いね?」

 

「あんた……俺を知ってるの? ウォズの仲間? それともスウォルツの…」

 

彼の腕が素早く動き、銃声が轟いた。

ソウゴの足元の地面を穿ち土を巻き上げる銃弾。

足元を過ぎていった銃撃に、ソウゴは僅かに目を細めた。

 

「生憎だけど、僕に仲間はいない。君と一緒さ、オーマジオウ」

 

「オーマジオウ……あんたもその名前で呼ぶんだ。

 まあいいや。それは好きにすればいいけど……あんたは一体なんなの?」

 

問われた彼が銃を持たない方の手に、いつの間にか一枚のカードを手にしていた。

それを見せつけるよう構えながら、彼が口にした言葉は―――

 

青い銃身に、彼がそのカードを滑り込ませる。

流れるように銃身の下にあるハンドグリップをスライド。

クレストが銃身の横に浮かび上がり、変身待機状態へと移行する。

 

伸びた銃身を頭上に向け、ソウゴと目を合わせながら彼は宣言した。

 

「通りすがりの仮面ライダーさ、覚えておきたまえ――――変身!」

 

〈カメンライド! ディエンド!〉

 

トリガーを弾くと同時―――

装填されたライダーカードから、エネルギーが三次元空間に解放された。

銃口から射出される、複数の板状の物質。ライドプレート。

 

彼の全身が、ディバインオレと呼ばれる特殊鉱石で精製されたスーツに包まれる。

先に射出されたライドプレートが、彼の頭部に刺さるよう融合していく。

シアンとブラック、ゴールド。

そんな鎧で全身を覆った彼は、再びくるりと銃を回して小さく笑った。

 

「仮面、ライダー……!」

 

「さて。じゃあ僕は僕の目的を果たそうかな?」

 

目と思しき部分の見えない頭部が、ドレイクに向く。

何が目的かは知らないが、あの男はドレイクに用事があるらしい。

 

ソウゴがドライバーを取り出すと同時、そこにジオウウォッチをセットする。

 

「立香たちはドレイクを。あいつは俺が―――!」

 

「わ、分かった、けど……!」

 

ドライバーを腰に当てると、ベルトが腰に固定される。

即座にジクウドライバーを回転させ、彼はディエンドに向け走り出した。

 

「変身!」

 

〈仮面ライダー! ジオウ!〉

 

彼の背後に浮かんだ“ライダー”の文字と時計。

それがソウゴの姿を覆い、仮面ライダージオウへと変貌させていく。

その顔に、飛来したライダーの文字を納めたジオウが、ディエンドに飛び掛かった。

 

「やれやれ、無駄なことはやめたまえ。今の君じゃ僕には勝てないよ」

 

ジオウを前に、ディエンドが軽くステップを踏む―――次の瞬間。

彼の姿が圧倒的な超スピードで、ジオウの背後に回り込んでいた。

 

「ッ、はや……!?」

 

背中に突き付けた銃口が光を放つ。

ジオウの背中から盛大に火花が噴き出し、彼の体は宙を舞った。

地面に落ちて、転がりながら減速するジオウ。

彼は呻きながらも顔を上げようとし―――

 

既に彼に追いつき、こちらに銃口を突き付けているディエンドの姿を見た。

 

「ッ……!」

 

奔る閃光。ジオウの全身を銃弾が直撃する。

銃弾に削られるジオウのボディが撒く火花が、まるで火柱の如く噴き上がった。

 

白煙を立ち昇らせながら、再び倒れ伏すジオウ。

ディエンドはさっさとそれから視線を外し、ドレイクの方へと向き直る。

 

「さて、と―――」

 

「………速い相手ならッ……!」

 

〈ドライブ!〉

 

そんな彼の足元で、ジオウが一つのライドウォッチを起動していた。

その音声に咄嗟に振り返ったディエンドに、撃ち出された炎のタイヤが直撃する。

顔面に当っていったタイヤの攻撃に、蹈鞴を踏むディエンド。

 

〈アーマータイム! ドライブ! ドライブ!〉

 

彼の目の前には、ドライブのアーマーを纏ったジオウの姿が誕生していた。

 

「へぇ、ドライブの力。なるほどね……ッ!」

 

タイヤを受けた頭部を軽くさすった直後、銃口が火を噴いた。

無数の弾丸の殺到を、新たに射出したタイヤで迎撃する。

手裏剣型のタイヤは射出されたと同時、分身して銃弾を全て斬り払う。

 

銃弾を無効化するや否や、その手裏剣はディエンドに向かって飛来する。

彼は再び軽く足踏みすると、超スピードを発揮してそれを回避し―――

 

それにぴたりと着いてくる、ドライブアーマーの追撃に見舞われた。

構えた銃を殴り払い、ディエンドの胴体に放たれるジオウの拳撃。

拳が胴体に叩き込まれると同時に、ジオウの腕からはシフトカー型兵装。

シフトスピードスピードが射出されていた。

 

ディエンドが拳と射出されたシフトスピードスピードに押されて吹き飛ばされる。

大きく飛ばされ、地面に転がるディエンドの体。

彼は少し怠そうに体を起こしながら、射出した武装を回収するジオウを見る。

 

「……なるほどね。流石はオーマジオウ、ってことかな?

 若い頃だからって甘く見ない方がいいみたいだ」

 

「若い頃……?」

 

立ち上がったディエンドは、再びいつの間にかその手にカードを持っていた。

そのカードを一枚銃口の横から差し込み、銃身をスライド。

伸ばした銃身を戻し、またもう一枚差し込みまたスライド。

 

二つのライダークレストを浮かべた銃を構え、彼は仮面の下で笑う。

 

「僕が知ってる君は君じゃない。ただの50年後の君ってことさ。

 おっと。今の君から考えると、50年よりはもう少し先のことになるかな?」

 

〈カメンライド! ビースト! マッハ!〉

 

トリガーを弾くと同時に、ライダーカードから展開されるエネルギー。

それが仮面ライダーの姿を現出させていく。

幾つかのヴィジョンが投影され、それが一つに合体することで三次元化される。

 

ジオウの目前に現れるのは、二人の仮面ライダーであった。

 

獅子のような黄金の頭をしたライダー。

そして、ヘルメットのような頭部の白いライダー。

ソウゴが金色の方のライダーを見て、小さく首を傾げる。

 

「あれ、どっかで……」

 

彼が首を傾げているうちに、金色のライダーが拳を打ち合わせ―――

 

「さあ! ランチ……!」

 

「追跡!」

 

隣にいる白い方のライダーの声に、止まった。

白い方は大仰な身振り手振りで決めポーズを作っている。

 

「撲滅! いずれもぉ~マッハァ! 仮面ライダァー………!」

 

そのまま腕をぐるぐる大きく回し始める。

大きな溜めが設けられているらしい、その名乗り上げ。

とりあえずジオウも見守ることにした。

 

「マッハァ―――!!」

 

最後の決めポーズと共に名乗った彼が、きっちり決めた。

拍手とかした方がいいかな、と思ってるうちに、隣の金色のライダーも動く。

 

「昼メシ! 晩メシ! いずれもごっつぁん! 仮面ライダービースト!」

 

今さっき見た決めポーズをそのまま真似したみたいなポーズで。

しかしそこにライオンっぽいオリジナリティのあるポーズも混ぜつつ。

 

それを見ていたマッハが動く。

ビーストの肩を掴んで、そのポーズを無理矢理止めさせた。

 

「いや、それ俺の決め台詞だからね。なんでパクってんのよ」

 

「え? いや、あんたがやってたから俺も見習ってやった方がいいのかと思ってな」

 

「いやいやいやいや! 何でそうなるのよ、これ俺の! マッハのだから!

 っていうか微妙にポーズも違うし! いいか、もう一回やるぞ!?

 追っ跡! 撲っ滅! い~ず~れ~も~……!」

 

突っかかってくるマッハがもう一度決めポーズを始めた。

視界の端のその光景を気にせず、ビーストは指にビーストリングを装着する。

それをビーストドライバーにセットする事で、ビーストはアンダーワールドに飼うファントム。

ビーストキマイラの力の一端を解放することができるのだ。

 

〈バッファ! ババババッファ!!〉

 

「バッファ―――! 仮面ライダー……バッ……って違う! マッハ! 仮面ライダーマッハ!

 っていうかあんた、俺の話聞いてんのか!?」

 

「あーあー、分かってる! みなまで言うな! 次は俺の決め台詞が見たいんだな?」

 

「言ってないし!」

 

ビーストの右肩にはバッファローの頭部を模した肩アーマーが出現していた。

そこから赤い闘牛士の如きマントを靡かせて、ビーストは腕を組む。

 

「あーっ!!」

 

口論を始めた二人のライダーを遮る、ジオウの声。

二人揃って声をあげたジオウを見る。

彼は自身のウォッチホルダーにある、ビーストウォッチとビーストを見比べていた。

 

「ビースト! あれビーストだ!」

 

「お? おう! 何か知らんが俺が仮面ライダービーストだ!」

 

そんな様子を後ろから見ていたディエンドが、やれやれと溜め息を吐く。

 

「そろそろ行ってくれないかい? 後がつかえているんでね」

 

後ろからの声にこちらこそやれやれだ、と肩を竦めるビーストとマッハ。

状況もよく分かっていないが、しかし彼らは戦うために召喚されたエネルギー体だ。

考えるのは後回しにして、とりあえず戦うのが彼らの存在意義。

 

「仕方ねえ。んじゃまあ―――さあ、ランチタイムだ!!」

 

そんな状況にあって、あるいは()()()()()のポジティブささえもあいまってか。

ビーストはいつも通りに戦闘開始を宣言した。

 

 

 




 
あホ

海賊(戦隊)と一緒に行動してフォーゼ(も乗ってるロボ)に蹴られたライダー。

どんな時でも平常運転。この世界のお宝は僕がもらう。
世界が滅びる? なら世界の終わりまで一緒にいようじゃないか。ねえ、士?
やめてくれないか、僕に仲間なんてものは必要ない。
スーパー戦隊とライダーの頂点に立つ王に、僕はなる!
 
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