Fate/GRAND Zi-Order 作:アナザーコゴエンベエ
霧の中から現れる二色の怪物。
その存在は、明らかに彼らと敵対している相手と同一のものだった。
「アナザーライダー!?」
その姿を見て全員が身構える。
当然、サーヴァントたちの手の中に展開される武装。
戦闘態勢に入った大量のサーヴァントを見て、怪物は驚いたように一歩下がった。
「え、あ、いやこの姿は……」
どうしたものかと困惑しているアナザーライダー。
あたふたと慌てている怪人のそんな姿に対し、呆れるような様子を見せる騎士。
「そんな姿じゃそうなるに決まってるだろうが、このモヤシ。
オレだって初めて見た時は、何処のピクト人が歩いてるのかと思ったぜ。
さっさとそれを脱いだらどうだ?」
彼女はそのアナザーライダーの契約者を知っている様子。
しかも怪物化していても普通に会話が出来ると見える。
「これを消して生身になったら僕は霧に耐えられないんだけど……
そしてきみの場合、驚く前に斬りかかってきたと記憶しているよ」
「ごちゃごちゃうるせぇ」
彼の弁明に対して機嫌を悪くしたのだろうか。
げし、と。躊躇なくアナザーライダーを蹴りつける騎士。
効いているのかいないのか。怪物はそれを困った様子で受けていた。
彼女たちの漫才を見ていたカルデアの面々は顔を見合わせる。
明らかに戦闘の意志は感じない。
「どうやら、彼はアナザーライダー化の影響をさほど受けていないようだ」
そんな中、ジオウの背後にウォズが現れた。
まるで当然のように出現する彼に、ソウゴも当然とばかりに対応する。
「ウォズはここ大丈夫なの?」
つい先ほどソウゴは大気の魔力で体調を崩したばかりだ。
生身のように見えるウォズは大丈夫なのだろうか、と。
向けられた一応の心配の言葉に、彼は微笑んで返す。
「問題ないよ、我が魔王。
ウィザードウォッチやビーストウォッチを持つ君も、慣れれば普通に活動できるだろう」
そういう彼は、実際に体調を崩しているようには見えない。
今更驚く必要もないくらいにいつも通りの様子だ。
「……慣れるもんなんだ」
周囲の深い霧を見渡して、小さく呟くソウゴ。
さっき感じた呼吸のたびに何かが腹の底に沈殿していく感覚。
あんなものに慣れたくはないな、と思いつつ。
「ああそうだ、ホルダーにはビーストウォッチをつけて表に出しておくといい。
それは周囲の魔力を食べる性質も持っているからね。
君の周囲程度ならば、変身していなくても大丈夫なほどに霧を薄めてくれるだろう。
ビーストウォッチには解毒能力もあることだし、君にとってはこの程度澄み切った大気と何ら変わりないもの、と言えるだろう」
「うーん。だからってここで深呼吸とかはしたくないなー」
ウォズの言葉にげっそりとしながら返すソウゴ。
効く効かないの問題ではなく、そんな霧の中で呼吸はしたくない。
だが一応、ウォズに言われた通り腕のウォッチホルダーにビーストウォッチをはめておく。
「―――それで、影響を受けていないというのは?」
アレキサンダーからの問いかけ。それは当然、ウォズに向けられたものだ。
ここまで何度かアナザーライダーと戦ってきたカルデア。
だが、そもそも敵に対する知識はないのと変わりない。
一応どういう存在か、それだけは把握している。
仮面ライダーと呼ばれる存在の歴史。それを利用した怪人。
だが本当にそれだけだ。
詳細と言えるだけの情報はまるで持っていない。
対峙した時は、ソウゴの感覚頼りで対応するしかないのか現状だった。
問われたウォズは顎に軽く手を当てながら天を仰ぐ。
「―――アナザーライダーの種類に依るが、基本的にその契約者は破壊衝動が増すのさ。
君が知る者の中では、ブーディカはいい例と言えるだろう。
まあ、ドライブの歴史を引きだす存在としては悪くない」
「イアソンは壊したい、という衝動ではなさそうだったけれど?」
ダビデの知るアナザーライダーという存在は彼だけだ。
彼は破壊衝動……というには、いささか方向性が違ったように思う。
最終的にはそこに辿り着いたのかもしれないが、行動の方針は極めて英雄的だったはずだ。
ウォズがまあそうだね、と首を縦に振る。
「アナザーフォーゼの衝動は、英雄願望……
というより
フォーゼの歴史と相性の良い願望だ」
フォーゼの歴史、などと言われてもそれを明確に知っているのはウォズだけ。
ソウゴさえも含めて、他のメンバーは首を傾げるしかない。
「相性の良し悪しがあり、大きな衝動に突き動かされる……
ということは、彼はあの力と相性が悪いということなのかな?」
言いながら目の前のアナザーライダーを見るダビデ。
外見的にはだいぶアレだが、こちらを襲ってくるような様子はない。
むしろ隣のサーヴァントに襲われている。
「さて、アナザーダブルは見ての通り二人で一人の存在だ。
彼には何かそう言った秘密があるのかもしれないね」
見ての通り二人で一人、と言われても。
見て感じる事が緑の怪物と黒の怪物がまるで縫い合わされたかのような外見、というだけだ。
立香が唸りながら、ウォズの言うところによるとアナザーダブル……
よく見ればあの怪物の太腿に『DOUBLE』、そして『2009』という文字が刻まれている。
そんな相手を見ながら、声をかけてみた。
「貴方はどうやってその怪物に変えられたの?」
声をかけられたアナザーダブルが騎士から目を離し、立香に振り返る。
「ああ、うん。そうだね、そこをきっちり話すべきか……」
「んなもん後にしろ。ほらモヤシ、さっさと行くぞ」
アナザーライダーは困った様子でこちらを見ている。
が、騎士の少女の方はこちらを気にする気もないようだ。
僅かに苛立っている様子を見せながら、アナザーダブルを急かしている。
板挟みになっているアナザーダブルを見兼ねて、アタランテが口を開いた。
「……少し待て、セイバー。こちらにも事情がある。
その怪物が何なのか、汝は把握しているのか?」
「あん? ……ああ。そういうテメェはあれか、赤のアーチャーか」
アタランテのことを見てから数秒、思い出すための仕草を見せた彼女。
その甲斐あってか、セイバーはアタランテの顔をなんとなく思い出した。
相手がアサシンだったりすればすぐに思い出して殴りかかりでもしただろうが―――
さほど濃い印象もない相手だ。
「知り合いかい、セイバー?」
アナザーダブルに問いかけられたセイバーは肩を竦める。
別にそういうわけじゃない、と。
「知り合いってほどじゃない。大した関係もない。で、何だって?
このモヤシがなってる怪物の話か? どうでもいいだろ、そんなこと」
「へぇ、隣にそんなの置いてどうでもいいたぁ剛毅なこったねえ」
自身が怪物を連れ歩いていることを何とも思っていない様子を見せるセイバー。
そんな彼女に対してドレイクが楽しげな笑みを浮かべた。
片目を瞑って、そんな彼女を見据えたセイバーが舌打ち一つ。
「別にそういう話じゃねぇよ。
これは見てくれは悪いが、今の状況に関係してねぇから関わるだけ無駄だって話だ」
「――――今の状況、とは。このロンドンを覆う霧の事でいいのかい?」
アレキサンダーからの問いに、面倒臭いという態度を隠す気も見せずセイバーは頷いた。
そのまま説明をしようと口を開き……しかし。
「おう。どういうわけか知らねぇが……おいほらモヤシ。
こういう話はお前がするもんだろ」
途中で面倒になったか、彼女がバシンとアナザーダブルの背中を叩き前に出させた。
そんな風に扱われても問題ない頑丈さを喜べばいいのか、悲しめばいいのか。
複雑な感情を溜め息と一緒に吐き捨てて、彼は牙の揃った怪物の口を動かした。
「やれやれ……そう何度も叩かないでほしいな……
―――すまない。今はこんな姿をしているが、僕の名前はヘンリー・ジキル。
もともと怪物というわけではないんだ」
「―――ヘンリー・ジキルさん、ですか。
それはもしや、あの1886年に出版された『ジキル博士とハイド氏』の……?」
マシュが口にしたのは怪奇小説『ジキル博士とハイド氏』
この時代が1888年だと言うのなら、既に出版されている小説の筈だ。
ヘンリー・ジキルという誰もが善良だと感じる紳士。
だが彼自身は知っていた、自身の中で抑圧されている邪悪な心を。
その邪悪を晴らすために薬で肉体を変化させ、善良なヘンリー・ジキルではないもう一人の自分。
悪辣なるエドワード・ハイドを作り上げて悪行を尽くし―――
やがて彼は取り返しがつかない結果に至り、自死を選んだ。
そんな小説作品の名の主人公を告げた彼に、マシュは問いかける。
「………いや、すまない。僕はそう言った題名の小説は知らない。
小説は読む方なのだけれど―――けどそうか、ジキルとハイド……そう言った小説が……?」
それを聞いた彼が、怪物に似合わない知的な所作で悩み込む。
答えを返されたマシュが、不思議そうに首を傾げた。
「知らない、のですか?」
「……ジキルとハイドのモデルとなった人物。
にしては1888年に存在していたら、矛盾が生じるでしょうね。
つまり彼は過去に生き、ジキルとハイドとして英霊になった―――」
サーヴァントだ、と続けようとしたオルガマリー。
そんな彼女の言葉をロマニの声が遮った。
『いや、待ってくれ。その周辺の魔力濃度が落ちてきた。
多分、ソウゴくんの持ってるビーストのウォッチの力かな。
ある程度だけど観測精度が確保できたから言わせてもらうけれど―――彼は人間だ』
今までカルデアが観測してきたのはアナザーライダーと化したサーヴァントだけだ。
人間がアナザーライダーとなった場合の反応は分からない。
だが、アナザーダブルから観測される反応。
それが明らかに、今までのアナザーライダーのものとは違う。
サーヴァントとは思えない軽微な魔力反応。人と変わらない生体反応。
アナザーライダーという外殻に包まれているが、これは人のものだとしか思えない。
ロマニの言葉に、ジキルは首を縦に振った。
「うん、僕はこのロンドンに生きる人間だ。
サーヴァント……セイバーのような、英雄の降霊なんていうこととはまるで関わりがない」
「え?」
だとしたらおかしい。
ヘンリー・ジキルが架空の、ただの小説の登場人物でなかったのはいい。
その小説がフィクションでなくどこかの誰かを書いたものだった、というだけだ。
だが彼をモデルにした小説は既に出版されている。彼の死までを書いた小説が。
なら彼が今という時代に存命しているのは、おかしい。
「特異点化の影響……? このロンドンは、一体なにが特異点となって……」
頬に手を当てて悩みだすオルガマリー。
彼女を見たアナザーダブルが、立香に対して視線を向け直した。
「特異点……か。すまないが、こちらにもそちらが知っていることを教えてもらえるだろうか。
僕はいま、きみたちが何に対して困惑しているかも分からないんだ」
「うん。私たちがこの時代に来たのは、人理焼却っていうものを防ぐためで―――」
そうして、彼に対して現状を語る立香。
聞いていたアナザーダブルは、指を眉間に……
というより、眼鏡のブリッジを押し上げるような動作を見せた。
しかし眼鏡など顔にない、と後から気付いて困ったような所作を取る。
そんな彼が何となく気持ち悪い、という理由でセイバーの追撃が入る。
怪物の脛を蹴りつける銀色のグリーブ。
結構な勢いで叩き付けられた蹴りが、盛大な衝突音を立てた。
「……僕はこの変貌によって霧よりきみから守られているのかもね、セイバー」
「うるせえ、頑丈で殴りやすいから力が入るんだよ。
お前がモヤシのままだったら手加減するくらいの分別はある」
それ分別って言うのかい、という問いかけは彼女には届かない。
「とにかく、このロンドンを覆う霧は人理焼却という大事の中の小事。
そういう事なんだね。話の規模が大きすぎてちょっと理解が追いつかないけど……
いや、とにかくこちらも現状を話そう」
頭の中で情報を整理するように、黙り込むジキル。
数秒後、彼は再び口を開いた。
「……とりあえずセイバーが言う通り、この都市の現状から語ろうか。
―――三日前、突然ロンドンを深い霧が包んだ。それは多量の魔力を含んだ濃霧。
普通の人間が外に出れば、一時間と保たず死に至るほどに。
場所によって濃度の違いはあって、薄い場所はある程度どうにかなるけれど……
三日経た今になっては、もう霧が薄い場所なんて残っていないだろうね」
「三日前……」
恐らくその三日前までは、この通りにも人が行き交っていたのだろう。
それがほんの僅かな時間で、これほど虚ろな都市に変わるとは。
マシュの呟きに頷いたアナザーダブルが、言葉を続ける。
「魔術師なら手段を講じればある程度活動できるだろうが……
それでもこの霧となると長時間の活動は命取りになる。そういう規模の話だ。
原因も何も分からないが、それでもこの都市は全ての住民に避難を呼びかけたよ。
一応は魔術師の総本山、時計塔のお膝元だからね。
魔術的な災害と判断された以上、当然のように都市丸ごとが警戒態勢に入る」
「それで住民たちは全て民家に籠っている、ということね。
……けど時計塔が都市を守るために動いていた、というのにどう反応したらいいのか」
オルガマリーが軽口のようにそんな言葉を口にする。
アナザーダブルにしても、そう言いたくなるのは分かるのか。
彼は怪物の顔のまま苦笑してみせた。
「実際、時計塔が初動を起こす前の時点。
たった一日で犠牲者は数千人以上、把握が出来ていないだけで万に届いてるかもしれない。
このまま放置すれば、ロンドンという都市は壊滅する。
そう判断したら時計塔だって動かざるを得ない。
死都に構えた魔術師の巣窟、なんてまるで笑い話にもならない事態だろう?
ここに居を構えているのがアトラス院や
「もっとも、動いたところでどうにもならなかったのだろう?」
実際問題、霧はまだこうして出続けているわけだ。
周囲を見渡しながらエルメロイ二世は鼻を鳴らした。
少なくとも、都市を守ろうと動くような魔術師には何も出来なかったわけだ。
恐らく相手は英霊だろうから、当然の結果なのだろうが。
「そうだね。僕含めてこの都市の魔術師はまだ活動しているが……
原因も解決法もまるで掴めていないのが現状だ」
「―――それで汝……円卓の騎士モードレッドがその危機に動いている。
というのはどういうわけだ? 正直、そう言った気性とは思っていなかったが」
とりあえずの現状を聞いたアタランテが、セイバーを見る。
彼女からの言葉に眉を上げるセイバー。
円卓の騎士モードレッド。
円卓の騎士、の称号が示す通りにアーサー王伝説に語られる存在。
彼の騎士王の息子であり、やがては王に謀叛を起こし国を滅ぼした叛逆の騎士。
その名を聞いたマシュが驚き、声を上げた。
「円卓の騎士モードレッド……!
そう言われれば確かに冬木で敵対したアーサー王の面影があるような……!」
彼女の言葉に肩を揺らしたモードレッドがマシュを睨む。
突然睨まれて萎縮する彼女を上から下まで睨み付けて―――
そうして、心底呆れたような声が彼女の口から飛び出した。
「………なんだ、お前。まさかお前が父上―――
アーサー王に剣、じゃねえか。アーサー王にその盾を向けたのか?
うん? アーサー王がその盾に剣を向けたのか、か?
正気かよ……いや、アーサー王の方が正気じゃなかったのか?」
ぶつぶつと呟き出すモードレッド。
その間ずっと睨まれているマシュがどうしたものか、と居心地が悪そうに体を竦める。
「は、はい。その……この人理焼却が実行され、わたしたちが最初に訪れた特異点で。
アーサー王との戦闘を行い、我々はその……」
「……………まあ、お前が相手ならそうなるのかもな。
なんでアーサー王がその盾に剣を向けたかは知らねえけど」
そう言って顔を背けて地面を強く蹴るモードレッド。
明らかに機嫌が急降下した、と誰にでも分かる状態だ。
そんな状態を見るのはアナザーダブルも初めてなのか、小さく一歩下がる。
彼女の様子を見たエルメロイ二世がマシュの盾へと視線を送った。
叛逆の騎士さえもがこれほどに語る、聖杯を運ぶための盾を持つ英雄。
―――だが仮に正解だったとして、自分が口にする事ではないと目を伏せる。
立香はとりあえず彼女から視線を外し、アナザーダブルへ問いかけた。
「それで、ジキルのその姿はどうしてそんなことに?」
「あ、ああ。うん、そっちの話をしちゃおうか。
ロンドンに霧がかかった次の日、調査をしようと外に出た僕に……
紫色の変わった服を着た男が話かけてきたんだ」
「スウォルツだね」
そこまで聞いたウォズが肩を竦めてそう言う。
アナザーライダーが出た以上、彼の関与に疑いはなかった。
名前を挙げたウォズをちらりと見たジキルは、しかしそのまま言葉を続ける。
「僕には名前までは分からない。
が、突然現れた彼に警戒した僕は体の動きをどうやってか封じられて―――
懐中時計、のようなものを押しつけられた。これはその結果だ。
彼は確か……『お前に新しい体験をしてもらう。意見は求めん』と言っていたかな」
それを大したことではなさそうに語るジキル。
完全な異形に変貌しているというのに、彼の精神は明らかに人のまま。
だと言うなら、もしかしたらこれは……
「もっとも現状のところ本当にそれだけだ。自分の意思で元に戻ることもできる。
そして使えば肉体が強靭なものに変質し、霧の中を当然のように活動可能。
だから調査のためにこうして利用させてもらっているというわけさ。
よく分からないままに使う力、というのはあまりよろしくないけれどね」
「うーん……」
彼の告白を聞いたジオウが首を傾げる。
スウォルツの目的。彼も恐らくオーマジオウに関連する目的を持っているはず。
ソウゴをオーマジオウにしたいのかどうか、それは確信が持てないが。
「……恐らく、アナザーダブルウォッチは未完成なのさ。
ウォズはジオウに対してそう声をかけた。
彼の言葉を横から聞いていたダビデが、アナザーダブルの姿を眇める。
「なるほど? 今の話を聞く限りだと……
ジキル博士に足りていないのはハイド氏ということになるのかな?」
と言っても。重要なのは二つの心というわけではなさそうだ。
少なくとも―――ウォズが先に語ったドライブとフォーゼのアナザー。
その契約者として選ばれた存在の要素を考えるに……
僕の知識では答えを持ちようがないね、と首を微かに横に振る。
恐らく必要なのはソウゴが継承するだろう仮面ライダー
もしかしたら『ジキル博士とハイド氏』を読めば答えが見えるかもしれないが……
ちら、とアレキサンダーへと視線を送る。
彼は小さく肩を竦めると、首を横に動かした。読んではいない、と。
ではエルメロイ二世辺りに頼るしかないだろう。
「おい、もういいだろ。さっさと先に行くぞモヤシ。
そんな化け物の皮のことなんざ、後から気にすりゃいいんだよ」
「ちょっと待ちなよ。
後はアタランテが訊いた、アンタが戦う理由を聞いてないだろう?」
いい加減に痺れを切らしたか、霧の奥へ歩き出そうとするモードレッド。
そんな彼女の背中にかけられるドレイクの声。
首だけで振り返った彼女はギロリと睨みを利かせるが、ドレイクには堪える様子もない。
「………チッ、別に大した理由なんかないさ。ただ土地柄の問題だ。
ロンディニウムが侵略を受けてるって話なら、円卓として見過ごせる話じゃない。
たとえそこが、オレたちの知る時代じゃないにしろな」
そう吐き捨てると、彼女はさっさと歩き出してしまった。
しょうがなしにその後に続くジキル。
皆が霧の奥に消えて行こうとする二人の姿を目で追う。
そしてオルガマリーに向けられる視線。
彼女は小さく溜め息を吐いてから、全員を見渡してから一度頷く。
「彼女たちを追いましょう。
どちらにせよ、私たちだって調査をしなくてはいけないしね」
全員で頷きあい、彼女たちの歩みに着いていくカルデアの面々。
そんな中で、ウォズはアナザーダブルの背中を静かに見つめていた。
ピクト人アナザーライダー説