統帥絹代さん   作:B・R

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遅れました。後、考え過ぎて逆に変になるってこのことですね。取り敢えず、完結まで走り抜けることにします。


中上・テ勝ニ洗大デ力全

「隊列での踏破⋯⋯福田、良い考えだ」

『恐縮であります! 知波単学園戦車道科だからこそ出来たやり方であります!』

 

 

我々の誇れる点である練度の高さと結束力を活かした最良の方法だ。一輌を失いはしたが、ポルシェティーガーの履帯を破壊出来たのは大きい。もしもポルシェティーガーが履帯修復を出来たとしても、戦線に復帰するまでとなると相当の時間を要するだろう。ポルシェティーガーが戦場までその鈍い足でやってきたところで、勝敗は決している可能性だってある。

 

 

「呵呵! 我々も急ぐぞ、戦車前し―――」

 

 

指示を飛ばそうとしたその時である。

唐突に爆音が響き、護衛に付いていた一輌のチハから白旗があがった。

 

 

「⋯⋯! そう来たか。全車、全周警戒! 見つけ次第、戦闘開始!」

 

 

視界には戦車の姿はない。あるのは、森と丘陵地のみ。視界外からチハを撃破出来るとなると、現状フリーであろう大洗車輌では、ヘッツァーか旗車のIV号戦車辺り。なるほど、やはり森での戦闘は囮であったか。

大胆な戦い方、これが新西住流⋯⋯いや、これこそが西住みほと大洗の戦車道、ということだな。

 

 

「打てば響くような一心同体の戦い方。我々とて、負けているつもりはない。名倉、西原、任せるぞ。お前達が我々の目となる」

「「了解!」」

 

 

名倉の新チハと西原の旧チハが隊列を離れ、それぞれが両側の遠方を並走する形となる。

市街地に着くまでしばらくの間は平地だ。見晴らしが良いという利点はあるが、その右側は森、左側は丘に囲まれている。大洗の伏兵はそれらを使って私達を奇襲している。

 

考えを張り巡らせ、向こうの策を潰さんと手を打った。

だが、それは無駄になってしまったらしい。

 

 

「⋯⋯そうか。私との一騎打ちが望みのようだな、西住みほ!!」

 

 

私達三輌の前に立ち塞がった八九式中戦車と旗の付いたIV号戦車。その砲口は静かにかつ獰猛にこちらを狙っている。

キューポラから顔を出す少女、西住みほと目が合うが、それも束の間、私達は互いを打ち倒さんと駆け出していた。

軍刀を抜き放ち、横薙ぎに振るい、前方を指し示す。

狙うは大将。あれを討てば、我々の勝ちだ。機会を逃してやれる程、謙虚であるつもりはなし!

 

 

「愚策もいいところだな! 私は、私達は強いぞ、軍神!」

「⋯⋯私達だって⋯⋯!!」

 

 

声が聞こえる程に近い距離。

四式中戦車とIV号戦車の75mm砲が火を噴く。こちらは装甲を掠り、あちらはシュルツェンを一枚削られた。強いが、我々と比べれば砲手はまだ荒削りの域を出ない!我々の練度は黒森峰すら凌駕する!

反転し、再度砲撃。今度はどちらも当たらず、地面を抉るだけに留まった。

それにしても、あちらの操縦手は天才的だな。そして、装填手も。撤回しよう、砲撃手の成長速度もなかなかのものだ。操縦手の不意の回避に対応し始めている。タイミングによっては、先の一撃は履帯に直撃していたかもしれない。

 

 

「操縦手、次の一撃は致命になりかねないものに昇華しているだろう。回避に専念しろ。多少、大回りになったとしても砲手を、同胞の腕を信じるんだ。良いな?」

「はい、西隊長!」

 

 

天井知らずで底知れず。ああ、良い相手だ。

だが、我々だって成長を止めたわけではない。戦いの中で、人間は進化する。

闘争が、人々の歩みの証。穏やかなる停滞に未来は、無い!

 

 

「来るぞ⋯⋯!」

 

 

再度の履帯を削るような大回りの急速旋回。身体を揺さぶられながら、IV号戦車の横に躍り出る。外套がはためく。

 

 

「砲撃!」

 

 

爆音。そして、金属音と車体が傾く揺れ。履帯をやられたらしい。それに対して、こっちは装甲板を一枚剥がしただけか。

動かんな。履帯修復をするとなると、市街地

 

 

「西隊長! 敵フラッグ車、また来ます!」

「狼狽えるな。我々には、同胞がいる」

 

 

そちらが一騎打ちがお望みであっても、そちらが如何に伏兵によって同胞を足止めしようとも、そちらがどれだけ本気であっても。

私には、同胞がいる。この戦いに全力を尽くす同胞が、いる。

IV号戦車の砲口がこちらへ向く。この距離であれば、どこを撃たれても致命傷になり得るだろう。しかし、危機だとは思わぬ。

 

 

 

「西隊長、助太刀致します!」

「久保田、感謝する!」

 

 

IV号戦車の砲塔が、横合いからの衝撃によって明後日の方を向く。

久保田の旧チハがIV号戦車の側面へと突撃したのだ。そのまま久保田が戦闘を開始したのを後目に、戦況を確認する。

 

 

『こちら、玉田。III号突撃砲、M3リーと交戦継続中! こちらの損害軽微。あちらの損害は不明です』

「こちら、西。そのまま戦闘を継続せよ」

 

 

六対二ともなれば、多勢に無勢であろう。しかし、あちらの戦力はこちらのチハを凌駕する。

しかし、我々はいつだって苦境で戦ってきた。勝ってきた。今更この程度の戦力差はどうということは無い。

 

 

『こちら福田、依然戦闘継続中でありますが、三式中戦車を撃破したのであります!』

「そうか、良くやった。B1bisは倒さなくても構わん。こちらと合流しろ」

『了解であります!』

 

 

戦いはまだまだこれからだ。

撤退していくIV号戦車を見つめながら、履帯修復を指示。隊列へと戻ってきた名倉、西原、久保田に労いの言葉をかける。

そうして、私は次の動きを考え始めた。

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯これほどとはな」

「はい。隊長の西さんや福田さんたち小隊長格の車輌であればともかく、部隊の一輌一輌がこれほどの練度を保持しているとは⋯⋯誤算でしたね」

 

 

まさか、いち取り巻きだと思っていた旧チハにここまで妨害を受けるとは思わなかった。バタバタとしているところに奇襲をしかけ、電撃的にフラッグ車を討つという一つ目の決戦は失敗に終わった。

アリクイさんチームが撃破されてしまったこともあり、現状は不利と言って良いだろう。

 

 

「とはいえ、まだ終わったわけではありません。決戦はあと二回あります」

「そうですよね、まだ負けたわけではありませんよね」

「西住殿の言う通り、あと二回我々にとって勝利を狙える機会があります。それも失敗に終わってしまっては、後は根性論になりますけど⋯⋯」

「みぽりんについて行くって決めたんだもん! 私達、どこまでだってやれるよ!」

 

 

次に狙うのは橋。

カバさんチーム、ウサギさんチーム、レオポンさんチーム、カモさんチームには合流に向けて移動を開始するように指示してある。先にある川付近で落ち合えるだろう。

しばらく平地を走行していると、カメさんチームから無線が入った。

 

 

『西住ちゃん、こっち、さっきので履帯にガタが来てたみたい。取り敢えず、なんとか修理してみるから、先に行っててよ』

「分かりました。待ちます」

『⋯⋯へ? いやいやいや、だって小山も川嶋も直し方わかんないんだよ? 絶対に時間かかるって』

 

 

困惑した様子ではあるが、そんなことを気にしている暇はない。時間が無いのだ。知波単学園の強みは何も練度だけじゃない。機動力においても、こちらを上回る。モタモタしていてはすぐに追いつかれてしまう。

でも、ここでカメさんチームを置いて行ってしまったら、私は必ず後悔する。後悔だけはしたくない。

だから待つ。

 

 

「私の戦車道は、皆で戦う戦車道です。誰一人だって見捨てちゃいけないんです」

「それでこそ、西住殿です!」

「うんうん! やっぱり、みぽりんはそうじゃなきゃね! みぽりんだからこそ、私達をここまで引っ張ってこれたんだよ!」

『⋯⋯そっか。西住ちゃん、ありがと。おーい、かーしま! さっさと履帯修理するぞー! てことでさ、頑張ってみるから少し待っててね』

「はい」

 

 

そうだ。勝つことだけが戦車道の大切じゃない。私は、私の道を貫く。私の戦車道を往く。

 

次に目指すのは橋だ。橋で決着を付けられなくても、出来る限りの戦力を倒す。そうしないと市街地に入った時、私達は圧倒的に不利になる。

 

油断は出来ない戦いだけど、負けられない想いがある。背負うものがあって、背負う覚悟はしてきたつもりだ。

だから、と言うわけじゃないけど、私だけでも余裕を持ち続けるのは間違っていないだろう。気付くこと、学ぶことばかり。それでも、日々勝利のためだけに戦ってきたあの時とは違って、今が一番楽しい。

 

この皆との戦車道を、失いたくない。




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