えーと、夜這い?
白髪に赤目、男にしてはどころか女だとしても華奢な体。とても学園都市第一位の怪物には見えない彼───一方通行は困惑していた。なぜなら、目が覚めて開口一番に見えたのが自分に馬乗りする少女だったからだ。
「…………何してンだ?オマエ」
「えーと、夜這い?」
現在の時刻は午前6時、夜這いと言うには無理がないだろうか。しかもおもいっきりマジックペンを持っているのが見えている。しかし高校生くらいの少女はそんな事実はないかのように小首をかしげ、おどけたような笑みを浮かべる。普通の男であればマジックペンの事など頭から吹き飛び一発KOされそうな容姿であるが、一方通行は動じなかった。そもそも興味がないのもあるが、この少女の本性を知っているからだ。よって彼の脳が弾き出した最適解は、
「色香もねェガキがンな事言ってンじゃねェ………俺は寝る…」
二度寝、であった。
「そうやって誤魔化してるつもり?実は興奮しちゃってるんじゃ………え?マジで寝たの?おい!」
マジのマジである。某有名な青い猫型ロボットの漫画の主人公並みである。尤も彼とは違い、一方通行は特殊な事情から睡眠時間を減らす必要があったため、眠りに入る速さが尋常でないだけなのだが。
それはさておき、彼には一つ誤算があった。
「うっわマジで寝たよコイツ。彼女とか家に泊めても先に寝てるタイプだわ。第一位サマはコミュ障レベルも第一位って事かな?」
いつもならこの辺りで彼女が飽きるはずが、今回は引かなかったのだ。
「まーいいや。奥の手を使うだけだし。最終信号!おもいっきりやっちまえ!」
つまりそこから導かれる答えは。
「はーい!打ち止め、行っきまーす!ってミサカはミサカはおもいっきりボディプレスしてみたりー!!」
「ゲボァ!?」
重撃。
今の一撃を一言で表すならこれしかないだろう。冗談抜きで走馬灯すら見えるほどの衝撃だった。
「起きて起きて起きてー!ってミサカはミサカはあなたの上で転がってみる!」
「起きるからさっさとどけェ!」
少女ほどの体重で体の上を転がり回られてはたまったもんではない。この状況を引き起こしたもう一人の少女は、よほどツボにはまったのか床にうずくまってヒーヒー言っている。
「あァくそ、最悪だ………」
今なお転がり続ける少女にチョップをかまし、既に笑いをこらえきれずにゲラゲラ笑っているもう一人の少女に拳骨を食らわせ、一方通行は一人呟いた。もう何度言ったか分からない言葉を。
最悪な朝だ、と。