正午を少し過ぎた頃、一方通行達を見送った芳川桔梗はゲームをしていた。一方通行達は昼食を外食で済ませるとのことなので、芳川もまだ食べていない。
「ふう……やはりバハムートは強敵ね」
彼女が戦うべきなのは伝説上の幻獣ではなくニートである現実なのだが、この女はそれを分かっているのか。ともあれ時間は正午を過ぎている。空腹も感じてきた頃合いだ。
(そろそろ切り上げてコンビニでも行こうかしら)
さて、ここでソーシャルゲームの話をしよう。基本無料であるこの手のゲームには課金という要素がある。課金による恩恵は種類によってまちまちだが、どれもゲームをする際に有利なものであり、プレイヤーにあの手この手で課金させようとしてくる。そして芳川も課金の魔力に囚われた者の一人であった。彼女の財布には昼食はおろか、菓子類程度を買う分すら金銭は残っていなかったのだ。
「な、なんてこと……………」
空腹とショックに耐えかね、芳川はその場に崩れ落ちた。
所は変わってデパート内、花屋の前に一方通行達は居た。自業自得で倒れた芳川など露知らず、昼食もきっちり済ませている。
「カーネーションだったか?母の日に送ンのは」
そう、一方通行達の目的は母の日の贈り物だ。特殊な境遇である自分達の面倒を見てくれているのだから、贈り物をするのは当然とは打ち止めの弁。もちろん一方通行はパスしたが打ち止めの懇願と番外個体の魔法の言葉で押し切られた。つくづく彼女らには甘い奴である。
「そういえば、どうしてカーネーションなんだろうね?」
花を手に取りながら番外個体が言う。一般的な知識が普通の人間と比べ少ない彼女だが、母の日にカーネーションの由来は普通の人間でも知っているものはなかなかいないだろう。
「普通に花言葉じゃねェのか?確か定番の赤色だと『母への愛』、『母の愛』っつゥ意味だったはずだが」
「それと、母の日の元になった出来事で白のカーネーションが配られたかららしいってミサカはミサカは下位個体から仕入れた情報を自慢げに語ってみたり!」
「ふーん。聞いといて何だけどそんなに興味あるわけでも無いかな」
「まァ意味なンざいちいち考えねェからな。結局贈り物ってな気持ちの問題だろ」
「ぷっ、そーゆーのほんと似合わないねぇ」
「ま、まさかあなたがそんな事を言うなんてってミサカはミサカは驚愕してみる」
ずいぶんと迷惑な話だ。彼女らは一方通行のことをどう思っているのだろうか。
「極悪非道の第一位サマに決まってんじゃん」
「心読んでンじゃねェよ読心能力者か………つゥかさっさと買ってこいよ」
無理やり話をそらすため半ば強引に促す。一方通行も二対一では分が悪いようだ。
「お客様、今こちらのレジを空けますので」
「あ、お願いしまーす 」
三人分の花を持ちレジへと向かい、外面用の口調で会計を済ませる番外個体。一方通行の方に目をやると、勝手におもちゃ売り場へ行こうとした打ち止めを押さえているところの様だ。
「彼氏さんですか?」
ふとそんな声をかけられた。ドキリ、と。番外個体の鼓動がわずかに早まった。
「え、いやーそんなんじゃないです。その………兄弟?みたいな…」
「そうなんですか、すいません」
「い、いえ」
まるで何かを誤魔化すかのように、素早く会計を済ませる。一方通行と打ち止めの元に戻る足取りも若干速くなっていた。
(………ミサカはそういうのじゃない、ハズ…)
戻った頃には既に治まっていたが、番外個体の顔は真っ赤に染まっていた。