黄泉川家の日常   作:祖牙武

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人は学ぶものなのだ。

「これなんて良いんじゃない?」

 

 

「ちょっと黄泉川のイメージには合わないかもってミサカはミサカは評価してみる」

 

 

花屋を後にして十数分後。一方通行と彼女らは別行動をとっている。一方通行は晩御飯の準備があるため、早くプレゼントを買って帰る必要があったからだ。ちなみに、彼女らは今ゲコ太がプリントされたTシャツを見ている。……………彼女らが子供服と大人服を勘違いしているとかではなく、本当に大人服としてゲコ太Tシャツが売られているのである。彼女らのセンスも大概だが、商品の方も年齢層を間違えてはないか。

 

 

「んー、やっぱこれはナシだね。流石に黄泉川には似合わないか」

 

 

「じゃあ次の売り場へごー!ってミサカはミサカは」

 

 

「お店だよ、もっと静かに」

 

 

どうやら世界はゲコ太Tシャツのオトナの女(爆乳)の誕生を望まなかったらしい(おそらくどっかの痴女聖人がいつか着るのだろうが)。その場を後にする彼女らだったが、その時後ろからよく知る声が聞こえてきた。

 

 

 

「なっ………これは新商品!?サイズは合わないけど、一考の余地はあるわね……」

 

 

御坂美琴。彼女は学園都市に7人しかいないレベル5の第三位であり、クローンである番外個体、打ち止めのオリジナルでもある。どうやら彼女は、先ほど番外個体達が見ていた服に目をつけたらしい。

 

 

「やっほう、おねーたま☆」

 

 

「げっ、番外個体………」

 

 

番外個体と御坂美琴は、ここ最近何度か遭遇していた。

そしてそのたびに御坂美琴は番外個体に遊ばれている。主にあのツンツン頭のことで。

 

 

「お姉様は何を買いにきたの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり」

 

 

 

「そんなの聞くまでもないでしょー?どーせあのヒーローさんへのプレゼント(笑)に決まってんじゃん」

 

 

「違うわっ!何勝手なこと言ってんのよ!」

 

 

「本当にぃー?付き合ってもないのにペアリング買うおねーたまのことだからあり得ると思うんだけどにゃー?」

 

 

「アンタねぇ………!」

 

 

怒りと恥ずかしさに震える御坂。毎回毎回この調子では会ったときに「げっ」と言いたくもなるものである。

 

 

 

「あんまりお姉様をからかっちゃダメだよってミサカはミサカは注意してみる」

 

 

「上位個体命令じゃしょうがないね、からかってゴメンね?おねーたま☆」

 

 

正直反省の色など一切見えないのだが言いたい気持ちをぐっと堪える。ここで何か言えばまた繰り返すに決まっている。人は学ぶものなのだ。

 

 

「そういえばアイツ………一方通行の姿が見えないけど」

 

 

話を逸らしつつ、疑問を言う。さっきから気になっていたのだ。彼女らが外に出ているときには必ずと言って良いほど一方通行が一緒にいるはずなのだが。

 

 

「それがね、あの人が今日晩御飯作ってくれるんだよってミサカはミサカは喜びを抑えきれず伝えてみたり!」

 

 

「………え?嘘?」

 

 

「マジマジ、あの白モヤシ、ムカつくぐらい上手いから。ホント便利な能力だよねぇ」

 

 

一方通行が料理。言ったのが彼女らでなければにわかには信じがたいことである。………いや、それでもやはり信じられない。どうにか頭に浮かべて見るものの、狂気的な笑みを浮かべたサイコシェフのような絵面しか出てこない。

 

 

(一方通行なりに、この子達への接し方を変えようとしてるのかしらね)

 

 

御坂美琴は、あの実験のことを赦す気はない。しかしあくまで罪を赦さないのであり、一方通行本人への恨みは薄れてきていると言っても良い。だからと言って馴れ馴れしくはしないが。

 

 

「……ねぇ番外個体」

 

 

「ん、どしたの?」

 

 

「私の手の届かないとこは頼むって、一方通行に伝えておいて」

 

 

「りょーかい、まぁあの人のことだし『言われるまでもねェ』とか言うんだろうけど」

 

 

 

どうやら安心して任せられるくらいには信頼されているらしい。彼女の発言がそのことを物語っている。

 

 

「それじゃ、私はそろそろ行くわね。時間が近いみた………」

 

 

「え?時間?」

 

 

「そういえば何を買いにきたか聞いてなかったってミサカはミサカは改めて尋ねてみる」

 

 

失態。番外個体の顔に凶悪な笑みが浮かび始める。このままでは非常にまずいことになるのは明白だった。

 

 

「時間ってどーゆーことかなー?おねーたまー?」

 

 

「………ご、ごめん!ちょっと急いでるからもう行くわね!」

 

 

逃げ出すようにその場を後にする。彼女らは面食らったようだが、わざわざ追いかけてはこない。

 

 

(流石に、言える訳ない……!)

 

 

走りながら思う。自分が今日ここに来た訳を思い出す。

 

 

(あの馬鹿がこの時間にいることが多いから来ただなんて!)

 

 

結局、番外個体の読みは当たっていた訳である。赤面した顔を隠しながら、御坂美琴はその場を後にした。

 

 

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