…………行きたいです
学園都市の第七学区に位置するとあるマンション。その一室で、朝から彼らは睨みあっていた。
「この間ゴールデンウィークがあったじゃん」
「あったわね」
「けど私らはどこにも出かけてないじゃん」
「出かけてないねぇ」
「そして今日は休日じゃん」
「そォだな」
「どこか遊びに行きたくない?」
「「「行きたくない」」」
即答、しかも満場一致。思わず頭を抱えてしまいそうになる。確かに彼らはインドア派だが(番外個体は夜遊びはする)、休みに全員で出かけることぐらいしたいものではないか。
「たまの休日ぐらい遊びたいじゃん」
「たまの休日ぐらい休みたいのだけど」
「オマエは365日毎日が休みのヒキニートだろォが」
そういう一方通行も学校に通っていないので似たようなものである。というか、この家にいる人間で都合を合わせなければならないのは黄泉川だけなのだ。だから問題なのは、彼らの面倒くさがりなのである。どうすれば心変わりさせられるかを思案していた時だった。
「おはよー………ってミサカはミサカは眠い目を擦りながら言ってみたり…」
ちょうど少女が起きてきたのである。突破口を見つけたとばかりに黄泉川は打ち止めへと詰め寄る。
「打ち止め、今日みんなで遊園地に行くって言ったら?」
「絶対行きたい!ってミサカはミサカは一瞬で眠気を吹き飛ばしてみたり!!!」
思惑通り打ち止めはこちら側についてくれた。そして彼女が行くと言ったのならば、一人は必然的についてくることになる。
「一方通行も来るんだよね!ってミサカはミサカは期待を込めた眼差しを向けてみる!」
「………俺がいる必要はないだろ」
「あなたも一緒じゃなきゃやだー!!ってミサカはミサカは猛抗議してみる!」
「あァ分かったよ行きゃイインだろ!」
「よーしよくやったじゃん打ち止め!」
これで一人。しかし、残る二人を動かす材料を黄泉川は持っていない。だが今の彼女は本気だ。どうにか番外個体と芳川の攻略法を模索していく。
(…めンどくせェことになっちまったなァ)
起きたらいきなり出かけようと言われたかと思えば、いつの間にか参加が決定してしまっていた事実に困惑する。多少はこの生温い日常に慣れてきたとはいえ、遊園地など行く気が全くおきないのだが。しかし打ち止めに懇願されてしまっては、一方通行は断れない。というか、それを見越しての黄泉川の行動だったのだろう。
(だが芳川と番外個体が行かねェのは癪だな……コイツらもどォにか道連れに…)
と、彼女らを参加させるための材料を探している時だった。
「行くのはゲコ太ランドが良いなってミサカはミサカは提案してみたり!」
「……!」
(番外個体のヤツ、今変に反応しなかったか……?)
打ち止めがゲコ太ランドと口にした瞬間、番外個体の肩がピクリと動いたのを一方通行は見逃さなかった。そういえば彼女は、オリジナルの趣味をしっかり受け継いでいたのではなかったか。こいつは使えるとばかりに一方通行は番外個体へ耳打ちする。
(なァ番外個体、オマエ実は気になってンだろ?)
(っ、いや全然?そんなことないけど?ミサカがゲコ太なんてお子ちゃまなもの好きなわけ……ないじゃん)
(じゃあオマエは行かねェってことでいいな?)
(あ、あったり前でしょ?興味なんてないし?)
一方通行には少女趣味がしっかりバレているというのに、今さら何を隠しているのだろうか。ともあれこのままでは話が進まないので、彼女にはオチてもらうことにする。
(そォか。じゃあ金かかるヤツが減る分打ち止めにグッズを多く買ってやンなきゃなァ。誰かさンの分で)
わざとらしく、言葉の一つ一つを強調しながら言う。これで彼女が我慢できるハズがなかった。
(………ミ、ミサカの分まで最終信号に使われるのは納得いかないし、行ってあげてもいいかな~?)
(行きたいのか行きたくねェのかハッキリ言え)
(…………行きたいです)
これで二人。番外個体もゲコ太の魔力の前に屈することとなった。残るは一人…………だったのだが。
「あら、そちらも決定したのかしら?なら早く準備しなさい」
何故か芳川がしれっと参加側にまわっている。しかも準備を黄泉川より早く済ませている。これは、一体?
「……おい黄泉川、オマエ何かしたか?」
「いや……私もどうやって桔梗を連れていくか考えてたところじゃんよ」
謎の心変わりの答えは、彼女のやっていたソシャゲがゲコ太ランドとのコラボをしていたからなのだが、そんなことは彼らの知る由もない。ともあれ、黄泉川家は晴れて、全員で遊園地へと出かけることになったのであった。