FF14 あり得たかもしれないもう一つの道 作:シャムロック
「───────お前にはもう戦う意味がない。戦う目的がない。」
「違うッ!私には成さねばならない悲願が!」
「ハッ、なら精々コイツらに打ち勝つことだ。『光の戦士』。」
☆
──────これはミニオンとなった者が見たとある冒険者の記録である。
「エメトセルク」
第一世界に夜が戻ってから暫くして、私をこんな姿にしたアイツが部屋にいた私に声をかけてきた。
「なんだ、悪いが私は午睡の最中だったのだが?」
「これから古代人の施設らしき遺跡に行くんだけど、よければ来てくれないかな?」
我々の施設……確かに各世界にはある程度我々の建造物等が残ってたりするが氾濫で狭くなった第一世界に残ってるのは少し意外だった。
まぁ、あの世界で重要な施設だけを再現したアーモロートには無いものである可能性も低くはない。癪ではあるが行くのはやぶさかでないが……。
「……まぁ良いだろう。但し、ろくでもない施設だったらそのままお前のカバンで寝るからな。」
「それで良いよ、多分エメトセルクにとっても悪くない場所だと思う。」
・アニドラス・アナムネーシス
その施設は簡単に言えばイデア保管庫であった。
有用、保存すべきと判断されたイデアは大小問わずここに収蔵されていた。十四人委員会でもここにはそれなりに利用する施設だけに、記憶にはあった。
……もっとも長い時間海底にあっただけに外装は浸食が酷かったが、収蔵庫は無事だった。
その最奥。超大型イデアを保管し、管理するコンソールをおいてある場に私とアイツは居た。
「どうかな?」
「お前は、我らにとってただの図書館程度の場所に連れてこられてどうも感じるのか?」
「アハハハ……」
苦笑しながらアイツは答える。
確かに懐かしいといえば懐かしい。
だが確かここは……
「……確か最後の記録を呼び出すには…。」
僅かに残るエーテルを駆使し、コンソールを操作する。
呼び出すのはこの場で行われたであろう会合の記録。
そこには確かに我らと袂を分かれたハイデリン召喚派の会合記録があった。
(我々でさえ、言葉ではなく力で争うことになろうとはな……)
かつての我々は論議によって研鑽し、実証によって歩みを進めてきた。
力による制圧ではなく、言葉によって争ってきたのだ。
だが、星の危機に際し我々は言葉ではなく力を選んだ。その結果がこのザマだ。
全く、このなり損ないよりはマシかもしれないが酷いものだ。
「アシエンはゾディアーク召喚側だったよね……」
「ああ、それがどうした?」
「いや、対のハイデリン召喚側の会合を見て何も思わなかったのかなって……」
「全ては過ぎたこと。それを正すために動いてたのだよ。まぁそんなお役から私はお前によって外されたがね。」
そう、全ては過ぎたこと。もはや私にどうこうできる力は無いし、しようとも思わない。
だが、アイツがくたばるのだけはつまらないから少しだけ世話してるだけのことだ。
「……。」
コンソールを動かし、一つの小さなイデアを呼び寄せる。
「それを取れ。」
「これは?」
「そのイデア自体に大した物は入ってない。ちょっとした御守り程度に持っておけ。」
☆
・クリスタリウム最上階
「決着か……終わりは静かなものだ。」
闇の戦士をアブソリュートテレポによって次元の狭間に飛ばし、決着をつけた。
その様子を見送ったウォーリア・オブ・ライトことエリディブスは静かにこのあとのことを思う。
ここからこの世界を統合させる算段を立てる必要があるからだ。
しかし、その思考はありえないはずの声に止まることとなった。
「はぁ……よりによってここで呼び出すとは全く、もって面倒だ……。」
その声は覚えがある。忘れもしない十四人委員会の一人の……!
「そんな……!エメトセルク!なぜここに!」
まばゆい光輝く魔法陣。その中に立ってたのは紛れもないアシエン・エメトセルクだった。
「ハッ、その名を持つ奴は既に死んだ。今ここにいるのはただの古代人だ。」
「それでも、君は我々と志は変わらない筈だ!さぁ、再び誓いを果たすために……」
「悪いがそれはお断りだ。滅多に人に頼らない奴からの頼みをこなすのが先なものでね。」
エメトセルクは右手を高く掲げ、指を鳴らす。
その快音に呼応するように光の支柱が上がり、飛ばしたはずの闇の戦士が姿を表す。
「────エメトセルク」
「お前はようやくその辺の輩より友を頼ることを覚えたか。」
「聞こえたよ……あの暗い世界で、『私を呼べ』って……」
「私はそんな声を飛ばした記憶はない、捏造するのはやめて貰おう。」
「…………君までそちらに付くというのか。」
「言っただろう、先約を先に果たしただけだと。」
「クッ!」
「エリディブス。お前に記憶は残ってるのか?あのとき誓った者を覚えているのか?」
「当たり前だ!私は!わた…しは……」
記憶を探るエリディブス。しかし探せども出てくるのはノイズがかった映像と声だけ。
誓ったはずの者たちさえ思い出せない。
「エリディブス。お前にはもう戦う理由がない。戦う意味が無い。」
「そんなことは……!」
「否定するというのであれば、精々抗い、勝ってみせろ。『光の戦士』よ。」
「……!」
エメトセルクはそう言いながら回廊に歩きつつ、ヒラヒラと手を振る。
「さぁ集え!『光の戦士達』!」
背後ではエリディブスが幻光の戦士達を呼び出す声が聞こえる。
それでも相対する者らでは五分五分……それすらも怪しいかもしれない。
なにせ……その頭は十四人委員会末席、アゼムの片鱗なのだから。
(私に出来るのはここまでだ。)
戦場を背にしながらエメトセルクは想う。
(そういえば、アイツが頼るのはこれがやっと初めてか。)
かつては世界中を勝手に飛び回り、トラブルはその場で集めてどうにかしてしまっていたトラブルバスター。
エメトセルクでさえ色んな意味で手を焼かせた者がこうしてようやく頼ってきた。
そのことにエメトセルクは少しだけ口の端が上がる。
(恐らくエリディブスは負けるだろう。)
それは確信にも近い考えだった。
アゼムのなりこそないがここまで力を出した以上、負ける可能性は低かった。
(まぁそうしたらまた、カバンの上で眠るだけだ。)
だがエメトセルクは微塵も心は揺るがない。
今はアシエンではなく、ただの心のカケラが入ったミニオンなのだから。
そう思いながらクリスタリウムを下っていく。
いつの間にか身体はミニオンに戻っていた。