雪山と生存者と人狼   作:穏乃

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第1話

「いや、ほんま寒くない?」

 

7月上旬だというのになんでこんな発言をしてるのかと言うと、答えは簡単である。

私を含めるにじさんじ、そしてにじさんじネットワークに所属する8人のバーチャルライバーで雪山に遭難したからである。

多分読み手である人らから聞いても、なんで雪山に遭難したんって思うやろうけど安心してくれ。私もなんで遭難したのかよくわかってないねん。

 

遡ること、24時間前のことである。

 

「なんか、暑くない?」

 

私と同じにじさんじゲーマーズに所属するバーチャルライバーの、笹木咲の一言が確かきっかけやったのは覚えてる。

 

「じゃあ雪山に行けば涼しいんじゃないの」

 

何を言っとるんや、こいつはと思わせる発言をしてくれたのは葛葉。同じくにじさんじゲーマーズのバーチャルライバー。

 

「じゃあ皆でバカンス行こうよ、親睦会ってことで」

 

同じくにじさんじゲーマーズの叶の提案により、突如雪山へバカンスに行くことになった。まぁスキーとかも出来るかもしれんし、私は二つ返事で承諾した。他にも後輩であるリゼ・ヘルエスタとアンジュ・カトリーナ。それからにじさんじネットワークに所属するバーチャルライバー、ふぇありすと天開司の合計八人で某バーチャル雪山へ向かったのだが……。

 

「葛葉、使えそうなものある?」

「いや、殆ど焼けてたり落下の衝撃でどっかいったな」

 

目的地に向かう予定だった飛行機が途中吹雪に巻き込まれ、墜落。

何故かよくわからないが、八人は全員無事ではあったが持ってきていた物資のものは殆ど無くなってしまい何処かもわからない雪山に八人仲良く遭難したわけである。

 

「操縦テクは任せろって葛葉が言ったのに何墜落してんねん」

「ばっか、ゲームとリアルは違うんだって」

 

当然やろ、何言っとんねん。

 

「これからどうします?」

 

にじさんじ所属の錬金術師である、アンジュがふと呟いた。

墜落地点には、奇跡的に暖を取れる小屋があり八人集まることが出来はしたが食料もなくいつまでもここにいるわけにもいかない。

 

「携帯は圏外やし、助けも呼べへんな」

「でもこの通信機って使えるんじゃないの?」

 

小屋―――キャビンの中に置かれていた通信機のボタンを押したりしながらふぇありすは言葉を漏らす。

 

「んー、でも見た感じここって電気通ってないし無理じゃない?」

「でも通信機があるってことは昔誰かがここで使ってたってことだから、周りに発電施設があるかもしれないじゃん」

「この寒い中で探索に行くってのかよ」

 

 

確かに、何か吹雪いてきそうだし少なくとも私は外に出たくない。

 

「とりあえず二人一組か何かで周囲の探索くらいはしとこうぜ、もしかしたら発電施設が案外近くにあるかもしんねえじゃん」

 

そう言って天開が着ていたコートのフードを被り直す。

 

「組み合わせどうする?」

「単純に考えて……」

 

葛葉は即座に叶の横に立った。ああ、こいつほんまコミュ障やな。

 

「とりあえずグチグチ言ってんと行動しようや、アンジュ着いてくるんや」

 

小さくため息をついた笹木が丁度真横にいたアンジュに言葉を吐き捨てれば、そのままキャビンの扉を開いて外へ出る。

 

「じゃあ椎名さん、私達も行きましょうか」

「ん?まぁ、せやな」

 

笹木と行動しようかと思ってたけど、とっととアンジュといってしまった以上、リゼと組むのが妥当やろ。残ってる天開とふぇありすとはまだ接点も少ないやろうし。

 

「んじゃ30分後にまたここで落ち合おうか」

 

まだ時計としては機能していた携帯の待受を気にしながら、キャビンの外へと一歩踏み出した。

 

 

 

 

 

 

「思ったより寒いな」

 

どんどん体温が下がっていき、足取りが重くなっていく。

吹雪いてはいないが、寒いことには変わらず思考も最終的には寒い以外のことを考えられなくなってきている。

 

「何もないし、これキャビンに帰れるんかな」

「一応足跡も残ってますし、多分」

 

雪自体は降ってないから足跡が消えることもないし、それを辿っていけば帰れないことはないが私の体力が持つか心配だ。

 

「はぁ、お腹空いた」

「これ食べれないですかね」

 

クソでかため息をついている隙に、リゼが私から離れた場所にあった木の実のようなものを採っていた。

 

「なにそれ」

「見た感じベリーですけど、何ベリーかわからないし多分火を通さないとお腹下しちゃいます」

 

サバイバル精神心がけとるとかこいつホンマに皇女か。

とはいえ食料を見つけたのは大きい。幸いキャビンに調理出来そうな設備はあったので持って帰えれば腹の足しにはなるだろう。

 

「その辺にもあるし、採れるだけ採って帰ろか」

 

ベリーの木はあちらこちらに生えており、私はポケットに入るだけのベリーを詰める。

 

「リゼ、どれくらい持てた?」

「――なので、叶さんは――ます」

「リゼ……?」

 

リゼはボソボソと背を向けながら、独り言を呟いていた。

 

「あ、それなりには持てましたよ。そろそろ15分ですし往復の時間を考えて一旦戻りますか?」

「せやな、早くこれ調理してご飯にしたいわ」

 

 

 

 

 

 

「発電施設見つけたで!」

 

キャビンに戻るとドヤ顔で報告をする笹木の姿が一番最初に目に入った。

 

「ただ発電機自体が故障してて、修理しないと駄目っぽいですね」

 

笹木と一緒に行動していたアンジュが続くように言葉を紡ぐ。

 

「修理って、私らの中に修理できるやつおんの?」

「アンゲル・カトリーナ錬金術で直せないの?」

「アンジュです!いや葛葉さん簡単に言いますけど、錬金術ってのは等価交換の法則があるので部品がないと修理できないんですよ」

「でもそれって部品があれば修理できるってことだよね?」

 

まぁ、とアンジュは言葉をつなげる。

 

「部品って何がいるんだ?」

「見た感じ、配線が劣化してたんでそれを新しいものと交換すれば錬金術使わなくても直るとは思いますけど。あとは燃料もなかったので、燃料も必要ですね」

「配線や燃料ってそもそもこんな山中で手に入るものなの?」

「こういうのって、加工して配線代わりになんねえのか?」

 

天開はポケットから電子機器の部品を机の上に散らばせる。

 

「あ、ちょっと時間を頂ければ配線代わりにできそうですね」

「あとは燃料か……」

「それなら僕と葛葉が見つけてきたよ」

 

叶はポケットに入ってきた不透明の液体の入ったペットボトルを取り出す。

 

「僕と葛葉で発電施設ではないんですけど、なんかよくわからない施設を見つけて。そこにあった機械の燃料っぽいものをとっといたんですよ」

「これならいけるやん!案内するから発電施設に行こ!」

 

笹木は率先して雪の中を突き進む。他の皆もあとに続くようにキャビンを出て歩いていく。

 

「これやよー」

 

キャビンとはそんなに離れていない位置に建っていた発電施設に皆足を踏み入れる。

 

「さてと、さっき天開さんからもらった部品をっと」

 

アンジュは部品を片手に、修理を始める。

 

「どれくらいかかりそう?」

「んー、1時間は見込んでもらったほうがいいかもですね」

「んならその間にさっきの燃料入れようや」

 

笹木がペットボトルの蓋に手をかけた瞬間、急に目眩を感じた。

 

「あ、待って」

 

目眩というよりは視界がぼやけている感じ。

頭痛とともに不快な感じに襲われる。

 

「うっ……」

 

そしてそれは私だけではなく、その場にいた皆が感じていた。

 

「な……に?」

 

徐々に視界がはっきりとするようになってきた。

私はしっかりと目を開き、再びアンジュに視線を戻した。

 

「……え?」

 

だが、そこにいたのはうさぎとも言い難い、謎の生物だった。

 

 

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