星屑ストレージ   作:藍沢 七星

10 / 13
飽満した大気のように

「あー、まるで天国から地獄だよー。」

「地獄に落とされた気分よ……なんて量なのよ。」

 

 レギュラーサイズ(れぎゅらーとは言ってない)を食べ終える頃には私、神崎 夕ははちきれんばかりのお腹を有していた。

 カレーは大した量ではなかった。しかし、それについてきたナンはまるでピザのLLサイズのようなサイズのナン。これが普通らしいのだが、私は歓喜して、篠崎は冷めた目をしていた。

 結果としては、篠崎の反応が当たりだと思う。

 いくら食べても減らないナンと戦いながら、無言で食べ続けた。結果、なんとか食べきることができたわけで……

 

 

 

 

そして……

 

「はー、ほんとキツイ……」

「まったくよ。あんな場所に行こうだなんて……ふぅ」

「だって、知らなかったんだもん。あんな馬鹿みたいに出てくるだなんてー」

「あんたも少食なんだから、そういうのは事前に……って怒ってたら出てきそう……」

 

 近くのベンチに腰掛けながら、張り詰めるいを休ませる。

 いや、多分休めてはいないと思うけど、立っているよりは何倍もマシにはなった。

 

 そんな中、私の目線は篠崎の顔に流れた。いつもと変わらない雰囲気だが、どうして……と、回らない頭を回して考えてみた。

 だけど、そんなの思いつきはしなかった。それどころか、何かあったんじゃないかと悪いふうに考える。いや、悪いふうになのか?

 多分違うだろう。きっと”良いこと”だと思う。

 

 なのに、私は”悪いふう”に考えてしまった。

 

「ん?どうしたの。夕ってば、なにか考え事?」

「え、あ……ちょっとね。うん。」

「珍しいね。考え事なんて……何かあったの?」

 

 いつものように「何かあったの?」といってくれる篠崎だが、今の私としては全然うれしくなかった。だって、今、私は……

 

「どうしたのよ。どうせ、またくだらないこと考えて――」

「くだらなくなんか――」

 

 思いが溢れて口から溢れる。それは小さい小さいため息のような声だったはずなのに、そんな声は、簡単に届くのだ。

 

 

――思いは届かないくせに――

 

 

 

「――え。」

 

 困惑した顔をする篠崎は、それ以上何も言わなかった。だけど、私は……

 

「その服、どうしたの?」

 

 開けてはいけない扉をノックした。

 篠崎は、少しだけ躊躇するといつものように話し始めた。

 

 「昨日ね。服を買いに行ったの。そこで小野木先輩に出会ったのよ。そしたら、この服を勧められてね。本当は嫌だったんだけど……」

 

 だけど……

 だけどなんだろうか。

 

 その言葉の先を聞きたい。

 それと同時に、聞きたくないという気持ちが強くなっていく。

 

「それで、嬉しくなって着たの?」

 

 思っている言葉が漏れる。言いたくない言葉をぶつけてしまう。それが、思ってない言葉なのか。私には理解できなかった。

 

「嬉しくなったというか……半信半疑かな。本当に私に似合うのかって……でも、ちょっと嬉しかったな。ほら、夕が言ってくれたじゃない?”好きだ”って……」

 

 確かに言ったとおもう。だけど、それは……

 

「そっか……」

 

 

 ココロのことばがこれ以上溢れることはなかった。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。