「あー、まるで天国から地獄だよー。」
「地獄に落とされた気分よ……なんて量なのよ。」
レギュラーサイズ(れぎゅらーとは言ってない)を食べ終える頃には私、神崎 夕ははちきれんばかりのお腹を有していた。
カレーは大した量ではなかった。しかし、それについてきたナンはまるでピザのLLサイズのようなサイズのナン。これが普通らしいのだが、私は歓喜して、篠崎は冷めた目をしていた。
結果としては、篠崎の反応が当たりだと思う。
いくら食べても減らないナンと戦いながら、無言で食べ続けた。結果、なんとか食べきることができたわけで……
そして……
「はー、ほんとキツイ……」
「まったくよ。あんな場所に行こうだなんて……ふぅ」
「だって、知らなかったんだもん。あんな馬鹿みたいに出てくるだなんてー」
「あんたも少食なんだから、そういうのは事前に……って怒ってたら出てきそう……」
近くのベンチに腰掛けながら、張り詰めるいを休ませる。
いや、多分休めてはいないと思うけど、立っているよりは何倍もマシにはなった。
そんな中、私の目線は篠崎の顔に流れた。いつもと変わらない雰囲気だが、どうして……と、回らない頭を回して考えてみた。
だけど、そんなの思いつきはしなかった。それどころか、何かあったんじゃないかと悪いふうに考える。いや、悪いふうになのか?
多分違うだろう。きっと”良いこと”だと思う。
なのに、私は”悪いふう”に考えてしまった。
「ん?どうしたの。夕ってば、なにか考え事?」
「え、あ……ちょっとね。うん。」
「珍しいね。考え事なんて……何かあったの?」
いつものように「何かあったの?」といってくれる篠崎だが、今の私としては全然うれしくなかった。だって、今、私は……
「どうしたのよ。どうせ、またくだらないこと考えて――」
「くだらなくなんか――」
思いが溢れて口から溢れる。それは小さい小さいため息のような声だったはずなのに、そんな声は、簡単に届くのだ。
――思いは届かないくせに――
「――え。」
困惑した顔をする篠崎は、それ以上何も言わなかった。だけど、私は……
「その服、どうしたの?」
開けてはいけない扉をノックした。
篠崎は、少しだけ躊躇するといつものように話し始めた。
「昨日ね。服を買いに行ったの。そこで小野木先輩に出会ったのよ。そしたら、この服を勧められてね。本当は嫌だったんだけど……」
だけど……
だけどなんだろうか。
その言葉の先を聞きたい。
それと同時に、聞きたくないという気持ちが強くなっていく。
「それで、嬉しくなって着たの?」
思っている言葉が漏れる。言いたくない言葉をぶつけてしまう。それが、思ってない言葉なのか。私には理解できなかった。
「嬉しくなったというか……半信半疑かな。本当に私に似合うのかって……でも、ちょっと嬉しかったな。ほら、夕が言ってくれたじゃない?”好きだ”って……」
確かに言ったとおもう。だけど、それは……
「そっか……」
ココロのことばがこれ以上溢れることはなかった。