何かがおかしい。と感じたのはあれから一週間後くらい後だった。
大きな変化は感じなかった。というか、私が気付こうとしなかっただけだったのかもしれない。
私、篠崎 香穂子は教室で一人、サンドイッチを頬張りながらいろいろと考えていた。
最近の夕は少しおかしかった。
訳もなく私を避けるような気がする。それも、毎日のように……
移動教室は先に行ってしまうし、昼休憩や下校時にはどこかへ行ってしまう。私には、特に思い当たるフシがない。
と思いたいだけなのかもしれない。
私は都合の良い人間だ。
それは、相手からしてではなくて私からしてだ。
どんな風になってもよく考えてしまう。ポジティブシンキングと言ってしまえばそれまでだが、あまり褒められたものではない気がする。
自分に都合よく解釈しているだけ、と言ったらそれほど良いものではないと思う。だが、自覚していても、それを治せるとは思ったことはない。
今回のことも、夕がたまたま居なかっただけだ。と信じていた。
その結果、自分が何をしたのかを先延ばしにし、そしてそれが大きな歪みを生むことを私は知らなかった。
いや、知っていた。それを見て見ぬふりをしていただけだ。
―――
避けているわけじゃない。
結果として、避けているだけだ。という言い訳を、私の中で正当化するために、それを続けた。
それは、多分私が悪いのだろうか?それとも篠崎が悪いのか。どちらだろうと私ができることは唯一つだと思う。
このまま、同じことを繰り返すだけだ。
「とはいってもなぁ……はぁ……」
大きな独り言を撒きながら、甘ったるいコーヒーを一口。
自身が振りまいたことを言い訳しながらも巻き戻らないかと。夢にならないかと願った。
それは、誰が受け取るとも思えない言葉だったが、それでも私は吐かずにはいられなかった。
「お困りごとかな?少年よ。」
「いや、少年じゃないです。」
空気を読まずぬらりくらりとやってきた千早先輩の声に、反射的な返しをする。
「ん?どうしたの?浮かない顔して……まさか、先日のデートでなにかあったとか?それは大変だなぁ。」
先輩は知ってか知らずか、茶化すように言う。まるで、私の気持ちを笑うかのようなその顔に、私は苛立ちを隠せなかった。
「あんたの――」
「”私のせい”と言いたげだけど、それはちょっと違うんじゃないかな?」
いつものような、少し間の抜けた。それでいて真っ直ぐな声が帰ってくる。
私の瞳を見ながら、まっすぐに、その言葉を続けた。
「もしかしたら私が関係するのかもしれない。だけど、だからってその場にいなかった人間を責めてどうなのかな。」
「そんなの、原因を作ったあんただって関係あるでしょ。」
噛み付くように言い放った言葉に、先輩はバツの悪そうな顔をして続けた。
「たしかにそうかもね。それはごめんね。何があったかはわからないけど……」
そう言って、大きく頭を下げた。
その姿に、私の頭は少しだけ冷えた。
「え、あ……いえ、私の方も、こんな八つ当たりみたいなことを……すみませんでした。」
「いいのよ、それだけ考えてたことなんでしょ?仕方ないわ。」
先輩は、空を見上げながら何かを思い出したかのように小さく合点すると、一枚のチラシを取り出した。
「そういえば……来週末なんだけど、夜空いてるかな?」
そのときの先輩の笑顔は、いたずら心にあふれた子供のようだった。