椅子の上で眺める。
それは目の前に広げたチラシだろうか。
その目線はもっともっと遠くを覗き、遠くの何かを探していた。
「はぁ……」
タメ息。
その中身は一体なんだろうか?
もしかしたら、答えのわかっている難問なのかもしれない。
そう、答えはわかってるはずなんだ。はずなんだけど……
「どうしようかなぁ……」
「天体観測ですか?」
「そう、みんなで見たいなって思ってね。でも……」
「でも?」
千早先輩は少し困った顔をしながら
「誰も来れないんだって……みんな忙しいんだてさ……で、どうかな?香穂子ちゃんは」
「まぁー、特に用はないですけど……ねぇ……」
「そうそう、夕ちゃんも誘ったのよね。よかったら一緒に……あれ?どうしたの?」
「……え?あ、いえ、特には。」
私が少しだけだしたバツの悪い顔を感じ取ったようだ。
千早先輩は少しだけ困った顔をした。だけど……
「大丈夫だよ。」
とだけ言うと、きれいに笑ってどこかへ歩いて行った。
「大丈夫……って、何が大丈夫なんだろう。よくわかんない」
ぐるぐると巡る考えが、私の答えを更に遠くにする。
きっと会えば、夕はいつものように答えてくれるはず。はず……
もしも、あのときのように……
いや、もしも眼中にすら入らなかったら?
その瞬間を目の当たりにした瞬間、きっと私は耐えられない気がするんだ。
ネガティブな考えは当たり前のように膨らんでいく。
もしかしたら、気にしていないよ。とか、私こそ。とか言ってくれるかもしれない。
考えの隙間から漏れる感情は願望だ。幻想だ。
「どうしたもんかなぁ」
チラシを遊ぶようにヒラヒラとする。
ぼんやりとしていると、突然大きな音が後ろから聞こえた。
急いで振り返るとそこには、分厚い本を数冊抱えながら倒れている夕が居た。
「夕……?」
夕はバツの悪そうな。いや、多分黄昏色に染めた顔をしていた
目が合う。どちらもスキを伺うように見つめ合う。
「……んで……」
先に口を開いたのは夕だった。
小さく、はっきりと、曖昧に何かを言った。
「え?」
聞こえなかった?聞こうとしなかった?
どっちだっていい。私は……
「なんで……」
もう一度聞こえた。でも、その先は……
「夏休みの宿題を片付けてたのよ。ほら、作文があるし。」
押し出すように言葉をつなぐ。ここで逃げてしまったらダメだと、グルグル廻る頭を抑えながら。
「そ、そう……」
ぎこちない返事。気まずい空気。
なにか。何かないかな。
目を泳がせ言葉を探す。夕の持ってる数冊の本に目がいった。
「……天文学?」
溢れるように声が出た。
その言葉が聞こえたのか。恥ずかしそうに本を後ろに隠した。
「そ、その……ひら、前に話したじゃない?えっと……」
「カシオペア座のこと?」
「そう、それそれ……でね。もっと調べてみようかなって……あっ」
夕が指さした先を見る。
床に落ちたチラシ。
千早先輩が持ってきた天体観測の……
「それは何?」
「えっと、うん……これはね。」
床に落ちたチラシを拾い、夕の近くまで歩み寄った。
「夜空を見に行かない?」