星屑ストレージ   作:藍沢 七星

3 / 13
いつかのあの日のオハナシ

 

 私、篠崎 香保子は根暗である。

 自分で公言するはおかしいとは思うが、体格に対してインドア派だ。

 

 身長は175センチを超え始め、バスケやテニスなどの部活から声をかけられたこともあった。

 が、私は運動音痴なことをこの体は語ってはくれず、今でも時々声をかけられてはやんわりと断ってきた。

 そういえば、私が神埼 夕と出会った時も今のように本を開き、群衆の声をかき消すように本を読んでいたときだった。

 

「ねぇ、篠崎さん。」

 

 夕は私の目の前の席から声をかけてきた。

 私の机で腕を組み、そのまま話を続けた。

 

「篠崎さんってどこの中学校だっけ?」

「うん」

 

 目を向けないまま、私は適当に相槌を返す。

 というのも、私は集中すると話を聞かなくなってしまうフシがあるらしい。

 小学校の頃からだが、自分には自覚症状もない。気がつけばそんな状態になっているのだから困ったものだ。

 

「それ、なんて本?どんな内容なの?」

「うん」

 

 列に目を走らせながら、片耳で事を聞けるわけもなく、その返事は粗末なものだった。

 夕は少しだけ考えた。

 なにか面白いことを思いついたのか、不敵な笑みを浮かべた。

 そして、耳元で小さくこう言った。

 

「私が男だったら、付き合ってくれるかな?」

「うん……うん?」

 

 さすがの私も、言葉の不穏さに気がついた。が、時すでに遅し、といった表情の神崎 夕は、その不穏な笑みのまま。

 

「へぇ……そうなんだ。」

 

 意味深な言葉を口走った。

 まるで「そんな趣味があるのか。」と言いたげな雰囲気だった。「

 

「え……は?ちょ……」

 

 勢いよく立ち上がる私の勢いに、夕は尻餅をついた。

 尻をさすりながら、私を見上げる夕の顔は今でも思い出す。

 

「あ……あんたは一体なんて――」

「おんや?もう一回言うべきかな?」

 

 後に友人から聞いた話だと、私はこの時、耳まで真っ赤にしていたそうだ。

 見てくれだけでかいだけでとても臆病。

 現に、思い切り立ち上がっただけで、これから声を上げるわけでもなく、暴れるわけでもなかった。

 わなわなと震える私を見上げながら、夕は勝ち誇った顔を続けている。

 夕は、続けてこう続けた。

 

 「言質は取ったからね。」

 「ッ――」

 

 ここまでが去年の4月、卒業式が終わった数日後に起きた事。

 私と夕の出会いだ。

 

 今思えばとても酷いものだ。と思う。

 今では笑い話になっている。と、思うのだが、たまに思う。

 

 

――あの言葉の意味を――

 

 

 

 

「ねぇ、甘いコーヒーと苦いコーヒー。どっちが好き?」

「コーヒー飲まないから知らない。」

 

 屋上で話す二人。

 言葉の意味なんてあってないもののようだった。

 それでも、交わさないと不安になって、どうしようもなかった。

 

「じゃあ、甘いほうでー」

「そもそも、夕が苦いコーヒーを飲めると思えないんだけど?」

「そ、ソウダネー」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。