最近の篠崎は様子がおかしい。
体調が悪そう。というわけでもないし。女の子の日。というわけでもない。
それじゃあどうおかしいか。というと、最近、あまり話せていない。というだけだ。
「ってだけを言うとなんだかノロケみたいね……」
前方に座る篠崎 香穂子は、なんだか呆れたように聞いていた。
悩む恋人のように、片手に頬を置き、外をうつろに眺めていた。
「……で、それを本人に言うってのもどうかと思うし、サラッと下ネタを言うなし。そういうことは裏で言うべきだと思うけど。」
「やはり、フィアンセに隠し事はできないからねー」
「誰がフィアンセだ。」
やはり、篠崎は反応が面白い。
こんな冗談を真面目に返してくれるのは、篠崎くらいなものだ。
私は篠崎は篠崎が好きだ。それは、Likeであり、Loveでもある。
「私だって忙しいのよ。この時期はね……」
「あー、生徒会の事だっけ。大変だね、生徒会でもないのに。」
篠崎は生徒会を手伝っている。
生徒会にいるわけでもないのだが、生徒会事務の如月先輩に頼まれて手伝っている。
実質生徒会の人間のようなものだった。
少し前に「生徒会長でもなるのか。」と以前に聞いたことがあるが、そのつもりは毛頭もなく、むしろ、懲りている。と言っていた。
「それでも、やると言ったらやりきるわ。先輩のためでもあるし、自分のためでもあるし。」
「そうか。でも、あまり無理はしないでよー」
「はいはい、お粗末様です。――そういえば、今年の夏祭り、どうする?」
毎年、夏休みが始まる7月後半にある夏祭り、豊作の神にたいして、感謝と我々の繁栄を示すという行いだ。土曜日から月曜日という不思議な日程だった。
「そうだなー。とりあえず追試はパスできそうだし……」
「ギリギリでしょ?どうせ」
「あはは……バレたか」
やれやれ。と言ったため息をついた篠崎は、一冊のノートを差し出した。
まとめ売りノートには「対策ノート」と書かれていた。
「これは……えっと……」
「テスト範囲をまとめたもの。まぁ、半分は自分用だったし……」
「なるほど……半分は優しさでできているのか。」
「優しさって……どこの痛み止めよ……全く、現金なんだから」
篠崎はなんだかんだ言って優しい。
もちろん、口うるさいときもあるし、遊んでくれないこともある。だけど、私にとっては親友であり、友であり、親のようだった。
と、言ってしまうと、また怒られてしまうので言わない。が、察しのいい篠崎は、何故か私を睨んでいた。
「なにか変なこと考えてなかった?」
「いやー、特には……」
目を合わせないようにしながらも、ありがたくノートを頂いていく。
「来週には返してよね。私だって使うんだから」
とだけ言い残し、篠崎は教室を出ていった。
放課後の教室には私だけ。というのも当たり前か。
外では野球部の声が聞こえた。その他にも、たくさんの声が響いて来る。
その声を聞いていると、私はひどく不安になる。
「ここで何をしてるんだろうか」
と……