星屑ストレージ   作:藍沢 七星

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サマーフイルム-2

犬乃木公園の銅像は、今日も暑そうだった。

 炎天下の太陽が、さんさんと延々に照らしていく様は、体から心を奪っていく等だった。それでも、どうして姿勢も変えず、彼は待っていられるのだろうか。

 

「まぁ、メスだったんだけどね。」

 

 と、犬乃木公園の銅像である。燻銀という犬に同情しつつ、メスにこんな名前をつけた飼い主を、最後まで信じたこいつはすごい犬だたんだな。と思った。

 燻銀という犬の話を、私 神埼 夕はよく知らない。

 というより、興味が無いんだと思う。

 誰かが頑張った話を、まともに聞いて、お涙頂戴のストーリーを延々と聞かされるのは、耳にタコができてしまいそうだった。

 実際できてしまった人間は聞いたことがないが、私はできてしまうんじゃないかと不安になることもある。それほどまでに、似た話が蔓延しているとおもう。

 ベストセラーの実写版。

 一万冊売れたベストセラー

 そして、全米が泣いた。

 

 そんな言葉をもってしても、私は振り向こうともしない。

 所詮は、た

だの目印にしか過ぎなかった。話を合わせるための物。それ以上でもそれ以下でもなかった。

 

「だからって……」

 

 二枚のチケットを眺める。

 クラスメイトから、「彼氏と見に行く予定だったけど、別れたからあげる。」と言われて押し付けられたものだ。だが、こんなものを見に行くような殿方なんているわけもないし。それなら……と誘ったのが篠崎 香穂子だった。

 篠崎はその映画のチケットを見るなり、少し嬉々とした目をしていたことを思い出す。

 

「いいの?これ!!」

 

 と、前傾姿勢で私に迫ってきた篠崎は、少々おかしい感じだったが、この映画はそんなに面白いのだろうか?

 香穂子に押し付けてしまおうと思ったのだが、そのまま流れで行くことになってしまった。

 まったく、なんでこんなことに……

 

 

 

「それにしても遅いなぁ……篠崎ってば。集合時間とっくに過ぎてるんだけど――」

「ごめんー。遅くなってー」

「まったくだよ……危うく干物になるところだったよ。」

 

 裏手から香穂子の声が聞こえた。その声にいつものように冗談を交えて返す。

 声だけだが、篠崎はいつにもまして息を荒げていた。

 体育会計ではないが、良い体格をした香穂子は一般人よりは運動ができる方。私なんかよりも走るのが速い。

 それもそのはずだ。

 見慣れない姿に目を疑ったが、真っ赤なワンピースに青いサンダル。そのどれもが、私には”見慣れない”モノだった。

 

「ごめん……全然走れなくて……ホント……ごめん」

「え……あ、うん。いや、大丈夫だよ。……って、私より大丈夫じゃなさそうじゃん。」

 

 顔から汗をこぼしながら、荒い息を整えるかのように息をする香穂子に私は、手に持っていたスポーツドリンクを手渡した。

 香穂子は一口含み、首裏に押し当てた。コンビニで売っていた凍ってるタイプのだったが、まさかこんなふうに役に立つとは思ってもなかった。

 

「ごめん……ありがとう」

 

 首のペットボトルはそのままに、私を見下ろすように体を上げる香穂子は、いつもと違った。気がした。

 それは服装だけなのか?違う気がする。

 私はふっと、首筋に目が行く。きれいな肌にうなじ。そこから目を外そうとすると足へ逃げる。

 どこへ逃げても素肌に目が行ってしまう。

 

「それじゃ、行こうか。」

 

 篠崎 香穂子は、私に声を掛けると、先程まで首に付けていたペットボトルを差し出し、いつものような笑顔を私に向けた。

 

「上映時間過ぎちゃうよ。」

 

 その柔らかい笑顔に、少しだけ。私のココロが揺らいだのを、その時は感じられるような心を持っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 映画館は街に一箇所しかない。

 市街地のど真ん中、少し大きいデパートの中の四階に、ひっそりとあった。

 

「は~、涼しいねー。生き返るわぁ~。」

 

 私はいち早く館内へと入る。香穂子は、少し警戒しながらだが、私の跡をついてくるようだった。

 

「どうしたの?さっきまで乗り気だったのに。」

 

 香穂子は「だって」と恥ずかしそうに続けた。

 

「ここって、みんな来るじゃない?こんな格好見られたら……って思ったら恥ずかしくて……ね。」

 

 確かに、いつものTシャツとパンツ姿からは想像できない女の子ではある。だが、私は……

 

「でも、やりたいと思ったからその恰好なんでしょ?だったら、もっと自信を持ちなよ。私は好きだよ。今の香穂子の格好も……」

 

 香穂子は、私の返答が予想外だったらしく。間の抜けた顔をした。

 

 だが……

 

「あ……ありがと……」

 

と、いつものような笑顔が返ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

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