映画の方は――と話したいが、私が語るより、まずは見てほしい。
その後に小説を見て、単行本を買った後、もう一度見てほしい。
とだけ言っておこうと思う。
「はー、終わったー!!」
「中盤で寝るって、ほんと凄いわね。夕ってば」
「いやー、だってさ。話が飛び飛びでよくわかんなかったし。これ、絶対原作ありきで見ないとだめなやつじゃん」
と、神崎 夕は映画館から少し離れたところで語っていた。
夕の言葉に、私は半分だけ賛同する。
二時間の作品内にすべてを詰め込むのは無理だとは思うが、それでももっといい方法はあったと思う。なにより、無理矢理過ぎるこじつけのような展開は、作品を知らないと面白くはないだろう。
「小説版は良かったんだよ?私も期待してたけど……まぁ、悪くはないかな。くらいだし」
「小説版はーって言って、読ませる魂胆とか?いやー私は読みたくないねぇ。文字を読むのとか……アニメ版プリーズってところかな」
「あはは、そこらへんは夕らしいね。」
口では文句を言っているが、終盤で釘付けになっていたのを知っている。多分、アニメ化とか、漫画化したら読んでくれると思う。
二人で映画館を出ると、時間は三時を回って、歩く人影も少し増えてきたところだろうか。
「そういえば、お昼食べてなかったね。どうしようか……あれ?篠崎ってば」
さっきまで忘れていた周りの目を思い出す。
不釣り合いな格好の女がいる。それほど恥ずかしいことはない。それを思い出した。
「なぁ、篠崎ってば!!」
手を引く夕に、高回転の脳がブレーキをかける。慣性で動く脳は変な声を出させた。
夕は私を見上げながら、心配そうに続けた。
「空腹って、思い出すとやってくるものなんだなぁ。ちょっとお腹痛くなってきたし。」
「お腹いたくなるって……それって」
「ほら、何も食べないとさ。お腹と背中がくっつくぞ。って言うじゃんか。あんな感じだよ。ほら、行こう!!」
夕は、私の手を掴み、そのまま階段へ歩き出した。
まるで、エスコートするように……
「……で、ここは一体?」
「いやー、行ってみたかったんだよーここにさ。」
「だからって……」
エスコートされて連れて行かれたのは、二階のフードコートに最近できたカレー屋。「インド人のカレー」という、名が体を表したかのような店。
まぁ、確かに……とは言いたいが、この服で入りたい。とは思わないのに、夕はそんなことも考えずに……
「はぁ、夕らしいなぁ。」
「だめ?」
「……いいよ。食べたいんでしょ?ほんと、子供っぽいものが好きだよね。」
私の了承を得ると、まるで子供のような笑顔を私に向けてくれた。
そこが夕のいいところだと思う。
「いま、さり気なくディスったよね?」
と目先の喜びに遅れてツッコむあたり、夕らしいなぁと感じた。
「イラシャイマセー」
店内に入ると、カタコトの外国人が席に案内してくれて、「ゴチュウモンキマッタラオシテクダサイ。」と言い残すとカウンター奥に帰ってしまった。
店内ははいかにもインド。というかアジアンな雰囲気をしており、、壁やカウンターには象の像がおいてあった。
「なににするー?私は、このチキンカレーと……チーズナンだってー。おいしそうじゃない?」
「チーズナンって、なんだか胃がもたれそうね。私は普通のでいいわ。」
「そう?わかった。それじゃぁ……」
夕がボタンを押す前に、店員さんはすでに横に立っており、二人で顔を合わせていると
「ゴチュモン、ウケタマワリマスー」
と、さも当たり前のように注文伺いを始めた。