見えざる殺戮者   作:獄華

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人生に絶望する石川真海に……ある者が接触してきた。


価値なき人生

 

自宅の前で、石川真海は溜め息を吐いた。

今日は学校で変死体が見つかり全生徒に帰宅命令……いつもより早く帰らなきゃならない。

その現実がただただ苦痛だ。

 

「ただいま」

 

あの人はいないのかな?。

安堵は直ぐ様裏切られる。

 

「お帰り、随分と早いんだね」

 

娘の帰りに、母親は睨み付けながら冷たい物言いで迎えた…。

恐らく帰宅が早いから学生風情がと蔑んでるのだろう。

真海に向けられた、嫌悪な感情がひしひし伝わる。

 

「学校で…死人が出たの。だから帰された」

 

「まぁ、なんて高校なんだい。死人が出た程度で」

 

え…?。

 

思わず、母親を凝視した。

 

「それくらいで馬鹿娘を帰さないでほしいね。あんたの顔なんか見たくもないのに、あー鬱陶しい。バイトもお前は今日休みだから寝るまで面を見合わさなきゃならないんだね。あーやだやだ」

 

真海は母に嫌われていた。

理由は過去に自分が原因で父親と別れたかららしい。

母はすぐにでも殺したかったがまだ小さな真海を殺すのは後味悪く一先ず高校迄は育ててやることにした。

以来女手1つで真海は母親に罵倒や暴力を受けながら育った。

過酷な環境の中で真海はどうすれば母親に殴られないか?どうすれば怒られないか?……どうすれば愛されるか?時に涙を流し必死に考えた。

 

勉強して100点を多くとったり、体育や図工だって必死で打ち込んだ。

……しかし賞を見せても母は笑ってくれない。

どころか、いちいち賞を取ったと煩い子だね!と怒鳴られ……破かれごみ箱に捨てられたこともあった。

以後、真海は中学や高校でも高成績や賞をたくさん取ったが母親に見せることは無くなった……。

だって破かれてしまうから。

無意味どころかマイナスな結果になるのだ。

 

「……お母さんにとって私は邪魔だもんね。ごめんね」

 

「なんだい急に。自殺でも考えてるなら勝手にやりな。むしろそっちのが好都合よ。あたしゃあんたなんて死んでくれれば嬉しいんだから」

 

「……」

 

無表情で、階段を昇り自室に入ると普段着に着替え逃げるように家を飛び出した。

 

 

「……ふん馬鹿娘が。ああいうところは私にそっくりだね」

 

娘の姿と過去の自分が重なり思わず笑っている母がいた。

そう言えば、そろそろ真海の18の誕生日だ。

 

 

あの子も大人になるんだね。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「ハァ、ハァハァ……」

 

 

宛もなく道路を走った。

無理だよ……私にはもう限界だよ。

生きていたくない。

 

疲れ、河川が流れる土手に腰掛け川を見降ろした。

この河川の景色だけは真海が小さな時から変わらない……川を見るのが唯一の彼女の趣味となっていた。

ここにいる間だけは嫌なことも忘れられる。

だけど今日は別だ。

結局自分が馬鹿に思える、母親を喜ばそうと頑張ってもあっちは喜ぶどころか自分に暴力を振るってくるのだから。

 

……なんのための人生よ。

母親の御機嫌取りに徹底し、理不尽を押し付けられただけじゃない。

母親の言う通り、私が死んでも母親は苦しまない……どころか笑うかも。

 

「……だったら。もう死のう、凄く疲れたもの」

 

幸か不幸か回りに人はいない。

真海はポケットから果物ナイフを取り出し、自分のお腹の前に持ってきた。

「さようなら。惨めな私」

 

勢いよく振り下ろしナイフは腹を貫通する筈だったが、見えない壁みたいなものに止められてその先へ進もうとしない。

「どうなってるの……私は死にたいだけなのに。誰が止めてるの……!」

「私ー」

 

背後から若い女の声が聞こえた、振り向くと少し古風な格好の少女が立っていた。

「あなたはだれ?」

 

「知らない方がいいと思うけど、今から90年前に死んだ人間よ」

 

90年前に死んだ人間?。

1929年となる、だから格好も古いのか。

すると、この少女は……。

 

「幽霊、なの?」

 

「まぁ、そうね。この格好がお気に召さないなら。今風の格好にもすぐなれるしね」

一瞬で姿が、髪を染めふんわりとした化粧の現代風へ変わった。

幽霊というよりかは奇術師だ。

 

「この姿なら集団に溶け込んでも違和感ないわね。ねぇ、自殺なんてやめて楽しいことしに行こうよ。死んだ私が言うのもあれだけど、人生は一回しかないんだから」

 

「……言われなくても分かってる。でももう私は限界なの。……耐えられない」

 

 

「そう、じゃあ。楽しくなれる力を渡してあげるわ♪」

 

 

「え……きゃあああああああああ!」

 

幽霊の少女の目が赤く発光した瞬間真海の身体に激痛が走った。

立ってられず地面へ倒れた。

 

「な、にをしたの……?」

 

「あなたが自分の人生を楽しめるようにしてあげたのよ。……人間から見れば悪魔の力かしら?。おめでとうあなたは理不尽から解放されたわ」

「ちょっと、わけが分からないんだけど」

 

「分からなくていい。知らなきゃいいこともこの世にはたくさんあるの……例えば私の正体とかね」

 

ゾクリと震えが走った。

 

「また会いましょうね。真海ちゃん」

 

 

90年前の少女の幽霊は姿を消した。

初対面の者の名前を知っていたり、力を渡すだの……。

あの幽霊を自称する少女は何者なんだろう。

 

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