奇蹟再現領域 エンピレオ 死せる神の落とし子 作:座右の銘は天衣無縫
インド異聞帯は犠牲になったのだ、本編を始めるための犠牲にな
第10話
さて、インド異聞帯の結果だが、特に何も変わらなかった。
精々、俺の発言のおかげで少し余裕が持てた位だろう。
俺は一切知られて無い手札を切らず、神ジュナを攻略。
空想樹の伐採に関しては完全にノータッチだ。
ぺぺだけ回収して自分の異聞帯に引っ込んだ。
そして、本来なら大西洋異聞帯へと行くはずだったカルデアがこちらを先に潰しに来た。
数日前
ノウム・カルデア内、会議室
「はい、という訳で無事に4つ目の異聞帯を攻略し、シャドウ・ボーダーも改良終了の目処が立ちました。
では、そろそろ敵の親玉の所に行くとしましょう。
キリシュタリア・ヴォーダイムの大西洋異聞帯とアレックス・クルスの中東異聞帯。
どちらを先に攻略するかは現場組が決めて下さい。
それぞれのデータはコレですね。」
シオンがそう言えばモニターに地球の絵が映し出される。
その中には4つの円があり、それぞれ大西洋、イギリス、南米、中東を中心としている。
「まず、大西洋異聞帯。
異聞帯の範囲は、この中で2番目に大きく、空想樹の枝が地球上を覆ってる面積は1番。
地球上の5割を覆っています。
空想樹の中心に魔力が集まり始めてますが、そのスピードはそこまで早くなく、目標の魔力量がどの程度かは知りませんが、まだ時間がかかると思われます。
それに対し中東異聞帯。
異聞帯の範囲はぶっちぎりの一位ですが、北欧異聞帯を切除したときの様な異聞帯の急成長は今回は見られませんでした。
とはいえ、異聞帯の成長率はまだ一位をキープし続け、空想樹の枝は地球上の3割5分程を覆っています。
さあ、どちらを狙います?」
「そんな物、クリプターのサーヴァントの割れている中東に決まってるだろう。
なるほど、旧約聖書のノア。
確かにビッグネームだが、直接戦闘能力は皆無に等しい。
戦闘特化型の強力なサーヴァントをぶつければ勝てる相手だろう?」
「まあ、妥当な判断ではあるけど、所長一つ忘れてない?
向こうにキャスターがいる。
それもシャドウ・ボーダーの機能ですら探知できない様な高度な魔術を使える様なキャスターだよ?」
技術顧問のダヴィンチがそう意見を出せば、少し顔を顰めたものの、強気の態度を崩さないまま反論した。
「それはそうだが、それを含めても今回は敵の異聞帯の王の正体が初めから割れているというアドバンテージがある。
確かに強力な相手ではあるが相性という物がある。
旧約聖書関連だというのなら、その旧約聖書から派生した宗教を否定した英霊を呼び出せば良い!
例えばローマ皇帝、ネロ・クラウディウスとかな。
既にある程度の勝ち筋は見えているのだ。
なら、対策される前に強襲をかけると言うのは間違ってはいないだろう?」
「大西洋と中東。
どちらにせよ、強敵な事には変わりないだろう。
だからこそ少なくとも勝算のある方に行くのは間違ってはいない。
とはいえ、最終的には現地で実際に行動する藤丸君、君が決めるべきだ。」
参謀役であるホームズがそうマスター藤丸立夏に話を振れば、振られた藤丸は少し考えた後、自分の意見を述べた。
「……俺はどちらかと言えば中東に行ってみたい。
あの人となら話し合えると思う。」
「話し合えるってトコは俺も賛成だ。
なんせ、アイツは良い意味で魔術師らしくないからな。
本人も性格的には鉱石科より現代魔術科の方が向いてるって認めるくらいだからな。」
藤丸の意見に生き残ったカルデアスタッフの一人であるムニエルが賛同する。
「はい!
私もアレックスさんには色々と良くして貰いました。
まだ、感情というものを理解出来てなかった私に気遣ってくれて、本や映画などを見せて下さったり、沢山話しかけて貰いました。
絶対に悪い人では無いはずなんです。
だからこそ、私もアレックスさんと話をしてみたいと思います。」
マシュがそう続き、それを聞いたシオンが笑顔で纏める。
「では、カルデアの主要人物のほぼ全員が中東と言っているので、次の異聞帯は中東で。
その後、大西洋という順番で行きましょう!
それでは、一時解散!」
そして本日、カルデアの一行は中東異聞帯へと突入した。
「虚数空間からの浮上完了、既にステルス機能を全開にして周囲のスキャンを開始してる。」
キャプテンがそう言えば、シャドウ・ボーダーの内部の雰囲気が少し緩んだ。
「むう、やはり虚数空間へのダイブには慣れないな。
こう、なんというか……身体と精神と魂の波長が一瞬ズレる様な、そんな感じだ。」
『ゴメン、ちょっと何言ってるか分かんないかな。』
「ダヴィンチ君はシャドウ・ボーダーの頭脳体になってるからだろう!?
え、分かる人いないの!?」
「まあ、でも説明の難しい不気味な感覚がするのは分かるぜ。」
「ほう! やはり話のわかる男だなフォンデュ君!」
「ムニエル!!」
と、2人が何時ものコントを繰り広げていると、スキャンを終えたキャプテンがその結果を伝える。
「スキャンが終わった。
やっぱり神秘が濃いけど、神代として考えるなら薄い方だ。
活動には支障は無いと思う。」
『それと、大凡の現在位置だけど、ウクライナのドニエプル川流域、ベラルーシとの国境付近だね。
空想樹は南の方面に確認できた。
多分だけどイスラエルの辺りじゃないかな。』
さらにダヴィンチの報告が続き、それを聞いた所長が少し咳払いをした。
「では、マスター藤丸立夏、そしてマシュ・キリエライト。
まずはサーヴァントを召喚し、その後現地住民と接触、現地召喚されたサーヴァントの情報、この異聞帯の情報を確保。
然るのちに、現地召喚されたサーヴァントと合流。
異聞帯の王を撃破し、空想樹を切除せよ。
ただし、非常時には自分の命を優先する事。
良いな!?」
「「はい!」」
「宜しい! では出発せよ!」
「「了解!」」
そう言って藤丸とマシュの2人はシャドウ・ボーダーの外へと踏み出した。
まず目に着いたのは広大な自然と巨大な河。
そして、遠くの方に見える空想樹だった。
それを見ていると早速通信が入った。
『こちらシャドウ・ボーダー、マシュー?藤丸くーん?
見えてる? 聞こえてる?』
「はい、大丈夫です。」
「何も問題無いよダヴィンチちゃん。」
『なら良し。
取り敢えずその川沿いを南下して行ってみて。
基本的に河のそばには結構大きな街があるものだからね。
それを探してみてよ。
勿論、こっちから何か見つけたらすぐに連絡するから。』
「分かりました。
ではまた後ほど連絡します。」
マシュがそう言うとシャドウ・ボーダーとの通信が切れた。
藤丸はふう、と一息付くと
「よし、行こうマシュ!」
「はい!」
そう気合を入れて歩き始めた。
途中、獣に遭遇したものの、特に汎人類史と姿は変わらず、ただ単に神秘を含んで強くなっていただけだった。
「戦闘終了しました。
今までの異聞帯と違って、生命系統は汎人類史とほぼ同じですね。
特に神話上の生物やキメラなどの人為的に作り出された魔獣もいる様子がありません。」
『ふむ……なるほど。
だけど、やっぱりデータが少な過ぎる。
現地住民と接触して情報を得ない事には何とも言えないな。
それと、ダヴィンチ君が発見したのだが、その先800mほどの地点に霊脈を確認した。
そこでサーヴァントの召喚を試してみてはどうかな。』
「今回は誰が来てくれるかな。」
「大きな戦力になってくれる方か、旧約聖書と関連のある方が来てくれたら心強いですね。」
自分達の声に応えてくれるサーヴァントについて思いを馳せる。
そして霊脈付近の安全を確保した上で霊基グラフあるトランクとマシュの盾を置き、召喚システムを起動させた。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する。
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
サーヴァント召喚の詠唱を行い、召喚システムを動かす。
そして光の中から現れたのは、
「我がクラスはセイヴァー、そして名はイエス・キリスト。
私の全ては貴方を救い、世界を救い、全ての命を救う為にある。
どうかその事をお忘れなき様、我がマスター。」
簡素、もしくは質素とも言い換えて良い服装を着た金髪の美丈夫。
だが、その体から光が発せられている様に感じられる程の何かを持つ男。
あらゆる物を救うエクストラクラス、セイヴァーがこの地に降り立った。
『『『え』』』
「「え」」
「「『『『えええぇぇぇぇぇぇぇーーーっ!!??』』』」」
驚きの絶叫を浴びながら、ではあったが。
そして絶叫が終わった後は嵐の様な相談タイムが始まった。
『ちょ、タイムタイムタイム!!
藤丸君!?
なんて人呼び出してんの!?』
「知りませんよ!?
サーヴァント召喚がランダムなのはダヴィンチちゃんが一番よく知ってるよね!?」
『ハハハハハハッ!!
良くやったマスター君!
超特A級とも言える、かのキリストを召喚出来たならば我々の勝ちはもう決まった様なものだ!』
「み、ミスターキリスト!
お会い出来て光栄です!
宜しければ握手して貰えませんか!?」
「良いですとも、無垢な少女の貴方。
お名前を聞いても?」
「マシュ・キリエライトです!
こちらがマスターの藤丸立夏先輩です!」
『…………取り敢えず一旦、全員落ち着きたまえ。
ビッグネームが呼ばれたからと言って、モニター周りに集まり過ぎだ。
見るのは順番にして探知を続けてくれ。』
『ホームズの言う通りだ。
魚の群れに集まるカモメの様に騒がしい。
一応、ネモ・マリーンズに見て貰ってるけどその分リソースを使ってるんだから早く戻って。』
「おーい、もー良いですかい?」
そして、ある程度騒ぎが収まった所でもう一人のサーヴァントがキリストの後ろから出て来た。
「あ、ごめん!
キリストの後ろにいたから気が付かなかった!」
「……いや、まあ、目の前の聖人サマに文字通り目が眩むのは分かるけど俺の事も気付いて欲しかったぜ。」
やれやれ、と肩を竦めながら首を振るのは全身に蠢く青い刺青の様な物が入れられた青年。
「んじゃ、気を取り直して。
史上最弱の英霊アヴェンジャー。
お呼びと聞いて即参上、ってな。」
『うん? アヴェンジャーと言ったが真名は何なのかね?』
「お、それ聞いちゃう?
名前負けするから言いたく無いんだけど、マスターは知ってるし、遅かれ早かれだから言っちゃうか。
俺の真名はアンリマユ。
何の因果か、ゾロアスターの悪神の名前を付けられた、ただの小僧ですよ。」
『アンリマユ!?
あ、あぁ、いや、本人ではなく古代の呪い写しの一種か。
確か悪神の名前を付けた人間を生贄にする事で『悪神が倒された』という事象を真似ようとしたとかいう。』
「そーそー、それそれ。
お陰で大層な名前つけられた雑魚サーヴァントになっちまってなー。
だから逆にその雑魚さをウリにしようと思ったんだけど…………俺もしかして強くなってない?」
アンリマユが自分の事を指差しながら質問すると、ダヴィンチから返答が返って来た。
『こちらが記録していたアンリマユのそれよりも霊基強度が格段に強くなってるね。
数値にして各パラメータがワンランクからツーランク上がってる。』
「マジで!?
遂に俺の時代が来たってか!?」
アンリマユが喜んでいると、マシュが手を上げた。
「あの、そろそろお二人に状況の説明をした方が良いのでは無いでしょうか?」
『む、そうだな。
では、交渉は私に任せて貰おう。
なに、今日も今日とて私の交渉術が火を吹くから大船に乗った気で待っていたまえ。』
そして、所長による説明が終わった。
無論、2人とも快く協力してくれる事を約束し、圧倒的なカリスマ性を持つキリストと見た目が少なくとも一般人には見えないアンリマユの2人は潜入に向かないと判断され、霊体化した状態で藤丸とマシュと共に川沿いを南下していく。
途中、何回か獣に襲われることこそあったものの、日没前に街を発見する事が出来た。
「見た所、街同士の交流がある程度ある様で、宿なんかもありますね。
街の様子もとても活発で、生活感に溢れています。
念の為という事で物々交換用にダヴィンチちゃんが幾つか物を渡してくれたので宿に泊まれますね。」
「うん、けどその前に情報収集しなくちゃ。
すみませーん、ちょっと良いですか?」
そう言って藤丸が歩いてた女性に声をかけた。
「はい、どうしました?
あら、見慣れない服装ね。」
「はい、私達はあちこちを旅して回ってるんです。
この街はどんな所なんですか?」
「とても良い所よ。
見て分かる通り、すぐそこが大きな川だから魚が豊富に取れるの。
かなり活きが良いからそれを求めてあちこちから商人達が集まってくるわ。
そのお陰で、食べ物も物も豊富にあって貴方達みたいに旅する人達も美味しい食事を求めてやって来るわ。
ただ、エルサレムから遠いから天使様達は中々お目には掛かれないけどね。」
「天使様、ですか?」
「ええそうよ。
貴方達も知ってるでしょ?
天使様達はエルサレムの街の上に浮かぶ、宮殿の中に住んでいて、毎日そこからあちこちを見て下さってるの。」
「エルサレムには行った事があるんですか?」
「いいえ、でも行ってみたいわよね。
ああ、空に浮かぶ空中宮殿、その真下にある中央聖堂、そこでは運が良ければ天使様から天啓を頂けると聞くけど本当かしら。
でも、流石に遠すぎるし今の生活を捨てる訳にもいかないわ。
貴方達はエルサレムには行った事あるの?」
「いや、まだなんです。
本当に遠い所から来たので。」
「そう、残念ね。
もし、エルサレムに行ってここに戻って来たらエルサレムの話を聞かせて下さる?」
「はい、勿論です。」
「ふふ、その時を楽しみにしてるわ。
貴方達の旅に幸のあらん事を祈るわ。」
「ありがとうございます。
では、失礼します。」
「色々教えてくれてありがとうございました。」
そう言って2人は女性と別れた。
「天使、ですか。
この異聞帯の王がルシフェルだと分かっていたから予想は出来てましたが、本当にいるんですね。」
「うん、それにさっきの人が言ってたエルサレムの空中宮殿。
多分そこが敵の本拠地なんだと思う。」
「もはや、空中宮殿という言葉だけでは驚かなくなってきましたね。」
「ははは、いやホントに色々経験してきたからね。」
藤丸が苦笑いすると、マシュも釣られて苦笑いする。
確かに今まで辿って来た旅路を振り返ると、空中宮殿如きでは驚けないほどの経験をしてきた。
特に夏とハロウィンとクリスマスな。
その後も情報収集を続け、ある程度時間が経った所で宿に泊まって、その部屋の中で結界を張りつつシャドウ・ボーダーと通信を繋げた。
まずは今日の情報収集で得られた情報を伝え、それを聞いていたホームズが少し考えてから答えた。
『なるほど、ある程度予測はしていたが、普通に天使がいる異聞帯か。
だが、それでも疑問点は幾つかある。
その最もたるのが旧約聖書における最高存在、唯一神の存在を誰一人として言及しなかった事だ。』
「そうですね。
私も我らが父の事を聞かなかったのは不思議に思います。
そして、父の存在が殆ど感じ取れないこともです。」
「俺としちゃあ、天使サマも神サマも相性がめちゃくちゃ悪そうでおっかないけどなー。」
『神の存在がかなり希薄、つまり存在はするが相当弱っているという事か?
弱っている神の代わりにルシフェルが異聞帯の王を務めていると考えるのが普通だが。』
『まだピースが足りないので何とも言えませんね。』
『ええい、分かってる何時もの『まだ語るべき時ではない』という奴だろう?
それより、明日の情報収集だが、一般人に同じ様な事を聞いても同じ様な答えが返って来るだけだろう。
だから、私に考えがある。』
「考えって何ですか、所長。」
『なに、餅は餅屋という奴だよ、君ィ。
即ち教会の神父ないしシスターに尋ねてみるのだ。
彼らも嬉々として教えてくれるだろう。』
心なしかドヤ顔しながらそう語る所長。
だが、提案自体は名案であった為、翌日はこの街の教会を訪れる事になった。
「教会、ね。
至極真っ当、面白みの欠片も無い発想だが的確ではある。
だからこそ予測しやすかった。
歓迎しようかカルデア、ようこそ我が異聞帯へ。」
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今後の展開に関して、カルデアの異聞帯突入順番
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突入させずに最後まで取っておく
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今後の原作不明なので一旦突入させ、撤退
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突入させて完全に解決