奇蹟再現領域 エンピレオ 死せる神の落とし子 作:座右の銘は天衣無縫
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シャドウ・ボーダーが虚数の海に姿を消してから三ヶ月後。
四ヶ月ぶりのクリプターの会合が行われた。
『空想樹の発芽から90日……
三ヶ月もの時間が経過した。
濾過異聞史現象ーーー
異聞帯の書き換えは無事成功した。
まずは第一段階の終了を祝おう。
これも諸君らの尽力によるものだ。』
一通りの報告を終え、早速本題に入り、キリシュタリアが切り出した。
『うん? そいつは大げさだ、キリシュタリア。
オレ達はまだ誰も、労われる様なコトはしちゃあいない。
一番肝心な事はぜーんぶ、異星の神さまの偉業だからな。』
「同感。
俺たちがやったのは異聞帯の王に空想樹を認めさせて、サーヴァントを召喚して、カウンター召喚された汎人類史のサーヴァントの一部を味方にしただけだ。
割と当たり前の事しかしてない。
おっと、キリシュタリアは別だぜ?
何せ神霊に己の強さを認めさせるなんて事をやってのけたんだからな。」
『……貴方達は分かっていないのね。
異聞帯の安定と[樹]の成長は同義よ。
ならば、異聞帯のサーヴァントの契約と継続。
それに全力を注ぐのは道理でしょう。
貴方達の様な、遊び気分が抜けてないマスターは特に。
しかも、アレックスはキリシュタリアと同じく、私達のリーダーでしょうが。』
『おっと睨むのは勘弁だぜ、オフェリア。
お前さんの場合、シャレになってないだろう。』
「そして訂正だ。
俺もベリルも遊んでなんかいないさ。
死からの復活なんて奇蹟は二度も起きない。
ふざけてる様に見えるのはお前らみたいな気心の知れた奴らと話せるからさ。
なぁ?」
『おうよ。
一度死んでんのに遊び気分でいられる程大物じゃ無い。
そんでもって、また蘇生できるとも限らないなら、
生きている内にやりたい事はやっておきたい。
殺すのも奪うのも生きていてこその喜びだ。
ーーーなぁ、アンタもそう思うだろ? デイビッド。』
『同感だ。 作業の様な殺傷行為は、
コフィンの中では体験できない感触だった。
オレの担当地区とおまえの担当地区は原始的だからな。
必然、その機会に恵まれる。』
『そうとも。 オレたちにその気が無くても向こうから殺されに来る。
遊んでなんかいられねぇよなぁ?』
『………そう。 貴方達の担当の異聞帯には同情するわ。』
『………………』
『あら、平常運行のベリルとアレックスに比べて、元気ないんじゃ無いカドック?
目の隈とか最悪よ?
寝不足? それともストレスかしらね?』
『……その両方だ。 僕の事は放っておいてくれ。
仕事はきっちりこなしてるんだから。』
『それはちょっと無理ね。 凄く無理。
放っておいて欲しいなら、せめて笑顔でいなさいな。
友人が暗い顔をしてたら、私だって暗くなる。
当たり前の事でしょ?
私は私の為にアナタの心配をしちゃうのよ。
アナタの事情とか気持ちとか関係なくね。
分かる? 独りでいたかったら、それに相応しい強さを身に付けないと。
ストレスが顔に出ている様じゃまだまだよ。
何か楽しい事で緩和しないと。
そうねぇ。 定番で悪いけどお茶はどう?
こっちの異聞帯で良いお茶の葉を見つけたの。
アナタのところにも分けてあげるわ。
皇女様もきっと喜ぶわよ?』
「それとも、久し振りに音楽でも聞かせてやろうか?
こっちの異聞帯はそれなりに音楽が盛んでな。
やろうと思えばロックだって作れるぜ?
それと、これは全員にだけど、前々から言ってた交易。
ウチのキャスターの片方が煩くてな。
そろそろ準備が整う。
詳しいことはまた後で。
何か欲しい物があったら言ってくれ。
開戦までは交易するらしいから。」
『そういや、そんな話もしたっけな。
有り難え話だ!
こっちの食文化には飽き飽きしてきた所だ!』
『私の方もよ。 ヨーロッパ圏の食が懐かしいわ。』
『この平常運行組め。
お前らは何処にいっても変わらなそうだな。』
『きゃー! 褒められちゃったわ!
いいわ、殺し文句にしては中々よ、カドック!』
『違う、呆れてるんだ。
オフェリア、やっぱり此奴ら遊び気分じゃないか?』
『それは……まあ。
ペペロンチーノはまだしも、後の二人に関しては否定出来ないわね。』
『…………無駄話はそこまでにして。
キリシュタリア。 要件は何?
こちらの異聞帯の報告は済ませたはず。
私の異聞帯は領地拡大に向いてない。
私は貴方たちとは争わない。
この星の覇権とやらは貴方たちで競えばいい。
そう伝えたわよね、私?』
『…………そんな言葉が信用できるものか。
閉じ篭っていても争いは避けられないぞ、芥。
最終的に、僕達は一つの異聞帯を選ばなければならない。
アンタが異聞帯の領地拡大を放棄しても、その内他の異聞帯に侵略される。
それでいいのか?
座して敗者になってもいいと?』
『……別に。
私の異聞帯が消えるなら、それもいい。
私はただ、今度こそ最後まであそこにいたいだけ。
納得の問題よ。
それが出来るなら他のクリプターに従うわ。』
「ならウチに来るか?
場所に意味があるのか、そこに住む人に意味があるのか。
どちらかは知らないが、そちらの異聞帯を俺の異聞帯が呑み込めば、それなりのクオリティーで再現できるはずだ。」
『……それも良いかもね。
けど、それは最後の手段にして。
私はまだ、ここに、この異聞帯に居たいの。』
「おっとそいつは失敬。
じゃあ、その時になったら連絡をくれ。」
『つっても、異聞帯間の勢力争いには興味ない、か。
まあ、結果が見えてるゲームだからな、このレースは。
オレ達は束になってもキリシュタリアとアレックスのどちらにも敵わない。
地球の王様決めレースは最後の一戦まではほぼ出来レースだ。
オレとデイビッドのところなんざ酷いもんだしな?
あれのどこが[あり得たかもしれない人類史]なんだよ。
その点、あの二人の異聞帯は文句無しだ。
下手すりゃ汎人類史より栄えてる!
ずるいよな、最初からエコ贔屓されてるときた!
やっぱり生まれつきの勝者ってのはいるもんだ。』
『………………』
「はっはっは、よっしゃベリル。
お前がウチの異聞帯に来たら、俺がやってるトレーニングやらせるからな。
覚悟しとけよ。」
『ベリル、私達が誰のお陰で蘇生出来たのか、忘れたのかしら?
異星の神にとって私達は蘇生するのに値しなかった。
そこを二人が直訴してくれたから今があるのよ。
これくらいの差はあって当然だわ。』
『……それでも、私達二人は君達にも世界の覇者になれる素質があると思っている。
油断したらひっくり返される。
それくらいの事はしてのけると思っている。
だからこそ、君達の蘇生を願ったのだ。
とは言え、負けるつもりも無い。
全力でかかってくると良い。
こちらも全力で対応しよう。
さて、遠隔通信とは言え、私が諸君らを報告後も引き止めたのは、他でも無い。
一時間程前、私のサーヴァントの一騎が[霊基グラフ]と[召喚武装]の出現を予言した。』
キリシュタリアのその報告に会議の空気が一変した。
『霊基グラフはカルデアのもの。
召喚サークルはマシュ・キリエライトの持つ円卓だろう。
南極で虚数空間に潜航し、姿を晦ましていた彼女らが、いよいよ浮上する、という事だ。
君の予想通りになったな、アレックス。』
「ですなー。
まあ、特異点を修復してきた英雄だ。
これくらいのしぶとさは予想の範囲内。
なにせ、報告書によれば人理焼却の黒幕はビーストI、魔神王ゲーティア。
第七特異点ではビーストII、ティアマトが顕現。
その後、ウチのキャスターの観測が正しければ、亜種特異点でビーストIIIの片割れが不完全とはいえ、出現。
結果的に三体の人類悪を倒した事になる。
ビーストⅣがあのプライミッツ・マーダーだって言ったらヤバさも分かるだろ?
何の比喩でも無く、現代の英雄なのさ。
カルデアのマスターは。」
『……そうね。
初めて報告書を見た時は虚偽報告だと思ったけど、仮に本当だとすれば頷ける話だわ。』
『と、なると強ち人選ミスって訳では無さそうね。
完全に私たちの想定の上を行ったってわけ。』
『あの方法と人選は最適解だった。
カルデアの護りは強固では無いが万全だ。
新スタッフとして館内から手引きしてもらわなければレイシフトで対応されていただろう。
制圧にはまず内側から潜入し、カルデアスを停止させる必要があった。
コヤンスカヤの計画は良く出来ていた。
唯一、我々側に問題があるとすればーーー
サーヴァントが余り積極的に働かなかった事だ。
とは言え、コヤンスカヤと神父は我々のサーヴァントでは無く、
カドックの送り込んだ皇女もマスターとの物理的な距離が開いた事によって魔力の補給が十分では無かった。』
「つまり、俺たちの失敗はある意味仕方ないもので、カルデアからすればラッキーだったのさ。」
『不確定要素の全てがカルデアに味方したってわけか。
偶然、ではねぇよな?』
『恐らくアラヤの仕業だろう。
ガイアが俺達の邪魔をする理由はない。』
『かーーーっ!
世界も味方してるってか!?
いよいよカルデアのマスターが本物の英雄っぽく思えてきた!』
『……それで、連中が何処に現れるのか判明しているのか?』
『そこまでは予言されてはいない。
あと数時間でこちらに出現する、という事だけだ。』
『なんだいそりゃ。
じゃあ各自、自分の持ち場で警戒しろってーー』
『出現場所はロシアだ。
異聞帯の中に浮上する。』
『……それは、なぜ?』
『? 何故も何も道理だろう。
彼らが[今の地球]で知り得る事象はカルデアを襲ったサーヴァントだけだ。
虚数空間から現実に出るための[縁]はそれしか無い。
オプリチニキは彼らにとっての座標でもある。』
「そうかい。
なら、カドックの所への交易品には少しオマケをつけておこうか。」
『……物によるな。
アレックス、早目に交易について話しておきたい。
この後、すぐに連絡を入れる。』
「あいよ。
キャスターもすぐに連れて来させる。」
そう言って部屋に控えている奴に目を向ければ、すぐに動き出してくれた。
いや、悪いね。
こんな事に使っちゃって。
『まあ、なんだ。
危なくなったら尻まくって逃げちまえ。
オレ達は競争相手だが憎い敵同士じゃあ無い。
異聞帯を失ったクリプターに価値はないんだ。
だったら何処ぞの異聞帯でひっそりと暮らす分には誰も手出ししないさ。
そうだろ?』
『…………そうだな。
カドック、我々クリプターの最終目標は異聞帯による人理再編。
それに比べればカルデアの始末は余分な仕事だ。
雑務と言っても差し支えない。
………とはいえ、脅威であることも否定できない。
実際、デイビッドが言ったように彼らには汎人類史のアラヤが味方している。
ーーーカドック、君の手腕に期待している。
障害を排し、一刻も早くロシアの樹を育てることだ。
それがカルデアの抹殺にも繋がるだろう。
私は全ての異聞帯に同等の可能性を見出したい。
人類史の可能性である異聞帯が矮小な歴史のまま閉じるなど許されまい。』
『……アンタに言われるまでもない。
僕だって負けるつもりは無いからな。
……通信はここで切る。
彼らが来るなら迎え撃つまでだ。』
そう言ってカドックは通信を切った。
それとほぼ同時に俺の所にカドックからの個人通信が入ってくる。
「おっと、カドックからの通信だ。
気の早い奴だな。
ってな訳で俺も切るぜ。
交易交渉の受け付け時間はここの異聞帯の時間で午前十時から午後の三時まで。
日曜は受け付けないから、そこと時差だけ気を付けてくれ。
じゃあな。」
ここで俺も通信を切った。
そして、すぐさまカドックからの通信を繋げる。
「ういうい、お待たせ。
キャスターがまだだから基本的な所だけ決めよう。
こっちが出せるのは食糧と木材、石材。
後は魔術的な資源もいくつか。
木材と石材と魔術的な資源は加工前のと加工後のがある。」
『食糧と加工されてない木材、後はピアノの部品が欲しい。』
『あと、良質なお茶の葉があれば貰えるかしら。
そこまで量は多くなくていいわ。』
『アナスタシア、悪いがそんな余裕はウチの異聞帯には…』
所帯染みた事言ってんな。
ウチには贅沢する余裕は無いのよ、ってか?
「いや、良いよ。
食糧と木材、ピアノの部品に良質なお茶っ葉ね。
そんな量がいらないならお茶っ葉はサービスにしておく。
そっちは何が出せる?」
『……魔獣の死骸。
肉は出せないが、甲殻や骨、毒腺に鱗なんかは魔術的な資源になるだろ?
後は特殊な火薬と氷の結晶くらいなもんだ。』
「そんだけあれば十分かな。
具体的な量に関してはキャスターを通して……おっ、ちょうど来たな。
交易の詳しい事に関してはキャスターに一任してある。
通信は繋げておくから、後はそっちで話し合って決めてくれ。
任せるぞ、キャスター。」
「はぁ〜〜い♪」
やけに機嫌のいいキャスターが先程まで俺が座っていた椅子に座り、交渉を始める。
俺が追加召喚したサーヴァントは三騎。
内一騎がこのサーヴァントだ。
その交渉を横目に部屋から出る。
ライダーにも伝えておかないとな。
城の窓から外を除けば、活気付いた街が見える。
実に良い世界だ。
善性に溢れている。
この世界に悪性は数える程しか存在せず、それ故に善性の汎人類史のサーヴァントが召喚されても、破壊を惜しみ、寧ろ自らが消える運命にある事を知って尚、この世界を守ろうとしてくれるサーヴァントがいる程だ。
さて、カルデア。
この異聞帯は戦闘能力的にはそこまで高くは無い。
だが、これ程までに良い世界を消滅させられるかな?
と言うわけで主人公のサーヴァント追加。
でも分かりやすいかな。
感想、評価どんどん下さい!
予想も応募中!
予想に関しては返信返しませんけど!
今後の展開に関して、カルデアの異聞帯突入順番
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突入させずに最後まで取っておく
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今後の原作不明なので一旦突入させ、撤退
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突入させて完全に解決