奇蹟再現領域 エンピレオ 死せる神の落とし子 作:座右の銘は天衣無縫
呼符単発で水着ジャンヌ来たよ。
でも、ウチのカルデアで一番必要なの回復役なのよね。
マーリンとか普通のジャンヌとか玉藻とか。
北欧異聞帯。
北欧神話の最後、[ラグナロク]によって北欧世界が完全には滅びなかった世界である。
唯一の神、スカサハ=スカディによって人だけでなく、生命体は管理され、護られている。
一見、八つの異聞帯の中では比較的安定している様に見えるが、スカサハ=スカディによってのみ齎されている、まさに薄氷の上に成り立っている異聞帯だ。
その異聞帯にカルデアが訪れた。
無論、これに対してオフェリアは対応するが、スカサハ=スカディの方針により積極的な行動を取れずにカルデアを待ち構え、一度目は捕らえる事に成功するも、城の地下に幽閉していた神霊、シトナイによってカルデアは脱走。
その結果、二度目の城での戦闘ではオフェリアのサーヴァントであるシグルドの天敵、ブリュンヒルデにより、シグルドが倒され、シグルドの中にいた炎の巨人王、スルトが復活してしまう。
更にいつの間にかスルトによってオフェリアに[悪竜の呪い]がかけられていて、正常な思考が奪われ、空想樹をスルトが取り込み、それを元に霊基再臨を果たし、かつて取り込んだフェンリルの権能を取り戻させてしまう。
そして、シャドウボーダーから奪ったペーパームーンを元に虚数世界へと進行し、星の全てを燃やし尽くそうとする。
だが、そこで汎人類史側のカウンターとして召喚されたナポレオンがスキル[皇帝特権]を使用。
オフェリアの[悪竜の呪い]を解呪する。
その後、スルトを倒すべく魔眼の接続を解除する事でスルトとの契約を強制解除した。
そんな北欧異聞帯の最終局面。
そこに俺はいた。
いや、正確には今来た。
「時間稼ぎご苦労、カルデアの諸君。
待たせたな、援軍だ。」
「アレックスさん!?」
『なっ、アレックス・クルス!?
何でこんなとこに!?』
俺が悠々と歩きながら戦場に姿を現せば、驚いてこっちを振り向いて見ている。
敵から目を離すなよ。
「何でって、知ってるかどうかは知らんが北欧異聞帯とは同盟組んでてな。
後、それとは関係なしにスルトを倒さなきゃ世界の終わりだ。
そりゃ、出張ってくるに決まってんだろ。
ああ、他の質問はまた後でな、世界一の探偵。
そんな事してる余裕は無い。」
『ふむ、つまりこの状況に限っては……』
「おう、味方と捉えてもらって構わないぜ。
やっほ、オフェリア。
助けに来た。」
って、血出てんじゃねぇか。
スルトとの契約は切れてるみたいだし、応急処置っと。
持ってきた布をオフェリアの右眼を抑えるように巻く。
特別製だから魔眼だろうが、ちゃんと治癒効果があるはずだ。
「ご苦労さん。 後は任せろ。」
「…………出来るの?」
「勿論。 じゃなかったら任せろなんて言わないさ。
そこで見てな。
シグルド、オフェリアを守ってやってくれ。
…………んで、スルトさんよ。
良かったのか?
絶好のチャンスだったろうに。」
「……脆弱なヒト如き、どの様な状態だろうが倒すのに好機など必要ない。」
「さよで。 慢心ご苦労さん。
けど、すぐに後悔する事になるぜ?
あの時に殺しておけば良かったってな。」
「クッ、ククク。 面白い冗談だ。
だが、それを言ったのが、アレックス・クルス、貴様で無ければな!
貴様こそ後悔するが良い!
ここに来なければ、少しは生き延びられたというのになぁ!」
「……図体でけぇんだから、あんま大声出すなよ。
念話だから余計にうるせぇし。
逆に何言ってんのか分からんわ。
……まあ、いいや。
聞く価値も無いだろうし。」
「ほざけ、ヒト風情がぁ!!」
「んじゃ、誰とは言わないけど頼むわ。」
俺がそういうと、振り下ろされようとしてスルトが振り上げていた剣が弾かれる。
よく見れば人影があり、空中を飛びながらスルトと戦っているのが分かる。
『あれは……ワルキューレの一体か?』
「いんや、全然違うね。
そもそも、ウチの異聞帯から連れて来た奴だし。」
まあ、ウチの異聞帯の中では随一の戦闘のスペシャリストだし、少なからずスルトの霊基が傷付いている今、完全回復するまで戦闘を長引かせるなんてミスはやんないでしょ。
短くて一分、長くて五分ってところかな。
だから、唯一心配すべき点は
「おのれェ!!
貴様ら全員塵すら残らず燃え尽きろ!」
『……っ! 魔力値増大!
負けるのか分かっているのか、再生に使っていた魔力すらつぎ込んでるぞ!
宝具だ!』
宝具を撃ってくる事だけだ。
「アレックス!」
「心配すんな。 この程度なら予測済みだ。」
見れば、再生してないのが分かったのか彼方も攻撃の手を休めてまで、魔力を武器に回している。
なら、一瞬でも良いからあの宝具を止めれば勝ちだ。
「うっし、ライダー、出番だ。」
霊体化していたノアが霊体化を解いて現れる。
「こっちも宝具だ。
一瞬で良いから時間を稼げ。
あんたらも見てないで、力を貸してくれ。」
「行くよ。
宝具解放。 これこそは我が奇蹟。
決して沈まず、希望を繋ぐ神の舟。
その奇蹟を今、ここに! [ノアの箱舟]!」
巨体な舟、ノアの箱舟が現れる。
[ノアの箱舟]の性質として決して沈まず、壊れない事がある。
とはいえ、サーヴァントになった今では霊基の大きさや、つぎ込んでいる魔力、神秘の量ではスルトの方が上なので恐らくは負けて壊されるだろう。
だが、スカサハ=スカディによる神鉄の盾の多重顕現、オルトリンデの白鳥礼装の補助、ブリュンヒルデとシグルドによる原初のルーンの防御付与。
これらが揃えば、拮抗できる筈だ。
「燃え尽きろ!! [太陽を超えて耀け、炎の剣]!!」
振り下ろされるのは神造兵装。
スルトのソレはその中でも特に威力の高い終末装置。
とはいえ、だ。
ノアは生前に世界の終わりに立ち会い、乗り越えている。
防御効果の付与された箱舟がスルトの剣を受け止める。
一つの世界の終わりとも言える大洪水を乗り越えた箱舟は、世界を終わらしかねないものには滅法強い。
宝具となってスペックダウンしているとはいえ、その性質は残っている。
なら、時間を稼ぐには十分だ。
衝撃に舟から軋むような音が出ているが、それだけだ。
「私の舟を軋ませるとは、良い一撃だ。
けどな、この舟を沈めるには、この三倍は持ってこいという奴だ!」
スルトの剣が止まる。
正直、想像以上だ。
流石は英雄、この程度なら笑って乗り越えてくるらしい。
……若干足が震えてるのは見なかった事にしておく。
そして、上空にいるもう一人が太陽のごとく輝きを放つ。
あれが英霊なら対悪宝具とでも言うべき一撃だ。
流石にインド異聞帯の王であるアルジュナの宝具程の出力は無いが、霊基にダメージが入ったままのスルトにとどめを刺すには十二分。
上空の輝きが増し、その光が収束していく。
そして、レーザーの様に放たれたその一撃が、スルトの頭から貫いた。
確実に霊基までも貫かれたスルトは崩れ落ちていく。
僅かにオフェリアへと手を伸ばし、だが、何も言わずに消えていった。
「………………さて、と。
これで味方期間は終了。
北欧異聞帯とは同盟を組んでる以上、ここからは敵同士なわけだが。」
「っ!」
「互いに消耗してるわけだし、ここはお互いに見逃すって事でどうだ?」
『………どうする、立夏君。
恐らく彼の言っている事は本当だ。』
「……分かった。」
「そりゃ良かった。
女王サマ。 予定よりもかなり早いが、異聞帯の消滅が決まった今、やれるのはここしか無い。
今すぐにこの異聞帯の住民を集めてくれ。」
「……そうであるな。
オルトリンデ、統率個体の末の子よ。
残った戦乙女を指揮して、全ての我が子をここへ。」
「了承しました。 今すぐに。」
そう言うとすぐにオルトリンデが全戦乙女と通信を始める。
「一体、何を……?」
「そっちの名探偵なら分かってるだろうから、そっちから聞いてくれ。
シグルド、オフェリアを舟の中へ。
あの中なら絶対に安全だ。」
『……立夏君、その舟はかの名高いノアの箱舟だ。
恐らくだが、あの舟でこの異聞帯の住民達を全て、彼の異聞帯へと運ぶつもりなのだろう。』
まあ、バレるよな。
聖書に描写されているままの舟だ。
とはいえ、ノアの死因は不明。
戦いの逸話も無いので弱点も無い。
神代の人間なだけあってパラメーターは高めではあるが、戦闘経験が全く無いからまともに戦えば負けないが勝てない。
「それじゃあ、ゲルダは」
『少なくともこの異聞帯と共に消える事は無くなる。
だが、』
「問題を先送りにしただけ、だろ?
さて、ここで問題です。
カルデアのマスターに真の自由を与えられた北欧異聞帯の人達を消す覚悟はあるのでしょうか?
殺すんじゃなく、消すんだぜ?
跡形もなく消し、生きていたと証明できるのは己の記憶のみ。
そしてもう一つ質問しておこう。
元は八つ、現在七つの異聞帯は少しずつ拡大している。
では、拡大する先の異聞帯はどんな風になっていると思う?
例えば、この異聞帯。
北欧はこの通りだが、その外は?
ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカまで異聞帯が広がったら、そこはどうなってる?
答え合わせは俺の異聞帯に来た時にしようか。
それまでは精々、異聞帯を滅ぼすのに奮闘するといい。」
そう言って俺も舟の中に入ろうとする、が、
舟の入り口に謎の見えない壁が張ってあって入れない。
「……ノアー?
障壁の設定間違ってなーい?
俺、入れないんだけどー。
……ノアさーん!?
悪い奴嫌いなのは重々承知だけど、別に今の素とかじゃ無いんで入れてくれませんかねー!?
…………ノアさーん!!?
何で無視すんのー!?
悪役ぶってる俺カッケー、とか思っちゃったのは謝るんで、入れてーー!!
このままじゃ格好つかないでしょー!?」
「……いえ、既に格好ついてないかと。」
マシュの突っ込みが刺さる。
だが、無視だ。
反応したら負けだ。
「帰ったら好きなもん買ってあげるでも何でもやるからさーー!」
「子供か、私は!?
ふん、私が散々伝えた事を目の前で破るなんて契約者の風上にも置けないマスターだね!
この異聞帯の全員が中に入るまでそこで反省してるといいさ!」
そう言うとノアは舟の中に引っ込んでしまった。
アレはダメだ。
結構ガチで怒ってる。
序でにスルトの一撃が俺が話したよりも怖かった事にもキレてる。
「仕方ないにゃー。
ってな訳で暫くの間、ご厄介になっていいっすか?」
すんごい微妙な顔で見られた。
軽い情報提供とノアの箱舟に積んである食糧と交換でカルデアに厄介になる事数日。
漸く、全ての住民がノアの箱舟の中に入った。
異聞帯の縮小に関してはちょっと奥の手を使わせて貰って、その縮小速度をかなり落として時間稼ぎをした。
カルデアには知られても構わない情報だけ与えた。
俺が各異聞帯と交易してる事とか、カドックをウチで引き取った事とか、ノアについて軽く触れたりとか。
まあ、あげられない情報に対してはノーコメントで済ませたけどね。
一度俺を捕らえて尋問しようという話も新所長から出たが、すぐそばにノアとオフェリアのシグルド、そしてスルトを倒した奴がいるという事でその話はなかった事になった。
まあ、妥当な判断ではあるけどね。
個人的にカルデアを壊滅させるなら今が一番のチャンスだと思っている。
大戦闘の後でリソースは補給しているものの、枯渇寸前、さらにこの後彷徨海に行けば、拠点と安定した生産ライン、そしてかつて召喚した英霊達を戦闘時以外でも側に置いておける様になる。
さらに、コヤンスカヤの暗殺後は更に警戒度が上がるだろう。
だが、それはやれない。
何故なら原作知識という俺のアドバンテージが無くなるからだ。
それに他の異聞帯が潰れるならそれはそれで楽だし。
少なくとも俺以外の異聞帯の負けは確定している。
なら、次に一番カルデアを倒せる確率が上がるのは俺の異聞帯に来た時だ。
俺の異聞帯に対してのみ負けのシナリオは存在していない。
そこが狙い目だ。
と、言ったところで本当にシナリオ通りに進むかどうかは知らんのやけど。
まあ、途中でカルデア一行がご臨終になられたらそれはそれでラッキーだ。
「ほんじゃ、生きてたらまた会おう。
ウチの王さまの方針でいつでも降伏は受け入れるぜ。」
その言葉と同時に[
ノアのマテリアル開示
真名 ノア
性別 女性
クラス ライダー
属性 善・秩序
ステータス
筋力C 耐久C 俊敏D 魔力D 幸運A 宝具A
クラススキル
騎乗 EX
対魔力C
スキル
啓示 A
奇蹟 B
航海 EX
嵐の航海者 B
動物会話 B
聖拳A
宝具
ノアの箱舟(ノアズアーク)EX
対海宝具
名高い箱舟。
そこが海である限り、どんな事があり、どんな海であろうとも絶対に沈む事なく、壊れる事もなく、乗船したあらゆる命が死ぬ事も無い。
入ることさえできれば、星の内海や虚数の海であろうとも渡る事ができる。
内部でのありとあらゆる暴力行為は禁止されており、また、生命活動に必要な食事や排泄が必要なくなる。
また、ノアの意思によって特定の誰かを中に入れなくする事も可能。
陸地への道標(ピジョンズ・ガイドポスト)A
対海宝具
オリーブの枝。
この枝がある限り、目的の陸地を見つけられない事はなく、上陸出来ないなどと言う事も無い。
感想、評価お待ちしてます。
お待ちしてるけど、感想は穴開きとかで書かないで。
面倒臭い上に、何となくイラっとくるから。
今後の展開に関して、カルデアの異聞帯突入順番
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突入させずに最後まで取っておく
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今後の原作不明なので一旦突入させ、撤退
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突入させて完全に解決