セフレ以上恋人未満   作:ソアさぁん!

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セフレ以上友達以下

「そろそろ許しては貰えませんでしょうか 」

日曜日。せっかくの休日なのに、昼間からオシャレな雰囲気のカフェでアイスコーヒーを飲んでいたら正面に座るセフレに許しを乞われた。原因はわかっている。先日のあの一件以来ろくに返信しなかった事で、私がまだ怒っていると思っているのだろう。正直、今は全く怒っていない。だが、面白いのでそのままにしておこうと思う。

「あの、有彩さん?聞いてますか? 」

「聞いてる聞いてる。続けて 」

適当じゃないですかと栞はうなだれる。本当にこの子は表情がコロコロ変わり、見ていて飽きない。コーヒーをすすり、さっき運ばれたばかりのフルーツパンケーキに手をつける。甘い。口の中に鬱陶しいほど広がった甘味を打ち消すようにコーヒーを流し込む。若い頃はこのくらい、美味しく食べられたのに。私は無言でパンケーキの皿を栞の前へ差し出す。

「食べないんですか? 」

「私には甘すぎるのよ 」

「じゃあ、遠慮なく 」

さっきまでの暗い表情はどこへ行ったのか、栞は頬を緩ませながらパンケーキを食べ進める。

「歳はとりたくないもんね 」

「有彩さんはまだ若いじゃないですか 」

「嫌味にしか聞こえないわ…… 」

私たちの年齢差はたかが6つだけど、栞はピチピチの20歳で私はもうアラサー。そこには天と地程の差がある。特に肌とか。

「それなら、大丈夫ですよ 」

意味がわからずに首を傾げていると、パンケーキを食べ終わった栞は席を立ち私に耳打ちをする。

「今夜も、ホテルに行きましょう 」

「ちょっと、明日仕事なんだけど 」

「無理はさせませんって 」

半ば強引に押し切られ、夜にいつものホテルに行くことになってしまった。栞は用意するものがあるからと一時帰宅。私も夜まで家で休む事にした。まったく。さっきまで必死に謝ってたのにどういう神経をしてるのだろうか。まぁいい。とりあえず、夜まで寝よう。どうせまた朝まで眠れないのだろうし。私は10時にアラームをセットして眠りについた。

 

しっかりとアラームと同時に目を覚まし、私は約束のホテルに向かう。

ホテルのフロントには既に栞がいた。珍しい事もあるものだ。栞の手には何やら大きめの紙袋が握られている。

「何よその荷物 」

「あ、有彩さん! 遅いですよ? 」

荷物の事は部屋についてから話すと言い、栞は私の背中を押すように部屋へと連れていった。何故かテンションが高い栞を不思議に思うが私は押されるまま部屋へと連れ込まれた。

「さ、まずはお風呂入りましょう 」

「絶対襲うじゃない 」

「その節は本当にすみませんでした! 」

既に脱衣所で全裸になっていた栞はそのまま土下座をした。風呂に入るからって服を脱ぐのが早すぎる気がするが、そこはスルーしよう。

「ささ、有彩さんも早く脱いでください 」

「なんで一緒に入るの前提なの? 」

「え?セフレだからじゃないですか? 」

全く持って意味がわからない。しかし、今更何を言っても変わらないだろう。私は勘弁して来ていた服を脱ぐ。胸や尻が顕になる度に栞が満足気な声を出す。こいつはオヤジかなにかか。

「やっぱり、有彩さんの肌綺麗ですよね 」

唐突にそんな事を言ってきた。私も人並みには肌に気を使っているから、当然と言えば当然だとは思うが。

「褒めても何もしないわよ 」

「別に下心あったわけじゃないですよ!? 」

焦ったように弁明する彼女の姿を見てつい頬が緩んでしまう。どうやら、彼女との関係を私は嫌っている訳では無いらしい。この後髪や体を洗い浴槽に2人で入った後、何事もないままあがった。てっきり、襲われるものだと思っていたのだが。すぐに手を出してきた栞が大人しすぎるので不思議に思っていると、着替え用の服が無くなってしまっていることに気がついた。犯人はもしかしなくても栞だ。確信できる。

仕方が無いのでバスタオルを巻いて脱衣場を出た。

「なんで服持っていくのよ 」

部屋を見ると、洋服はテーブルの上に置いてあり、自分はちゃっかり服を着ている栞はベッドに腰掛けていた。

「バスタオル姿もエッチですね 」

「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ 」

服に手をかけようとすると制止され、ベッドに招かれる。渋々バスタオルを巻いたままベッドに腰かけると、強引に押し倒された。

「お預けしてたからって、がっつきすぎじゃない? 」

栞は無言でバスタオルを奪い取り、うつ伏せにされた。やれやれ、どこまで性欲に忠実なのか。呆れてため息をつくと、直後冷たい液体が背中に塗りたくられた。突然の事で情けない声を出してしまった。栞は軽く笑いを堪えているようだった。

「いきなりなんなの? 」

「マッサージですよ。マッサージ 」

そう言うと、背中から腰にかけて手を動かしていく。どうやら、いかがわしい方ではなく普通のマッサージのようだ。なんだか安心する香りもする。気を抜けば眠ってしまいそうだ。

栞の手は腰から肩、腕、太腿へと移っていく。その辺りで私の意識は無くなってしまった。

 

 

「あれ、有彩さん寝ちゃいました? 」

返事はない。代わりに小さな寝息を返してくれた。よっぽど疲れていたのだろうな。せっかくの休日に私に付き合わせてしまって申し訳ない気持ちになる。

気持ちよさそうに寝ている相手を起こすのは可哀想なので、そのまま布団をかけてあげる。私も眠くなってきたし、今日は禁欲して眠るとしよう。私は布団に入り、スマホをいじった後、眠りについた。

「おやすみなさい、有彩さん 」


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