明日香ちゃんをベッドに寝かせて、私は上着をハンガーにかけてシャワーを浴びるために脱衣所へと向かう。
さて、これからどうしようか。いや、寝るだけなのだがあいにくベッドが1つしかない。後輩と同じベッドで寝るわけにもいかないだろうし。
お湯の温度が、じんわりと体に染み込んでくる。ホテルのお風呂だと、どうしてもあの日の夜を思い出してしまう。そういえば、あの日以来1人でもしていない。
疼く。
連絡を返さないようにしていたのは私なのに、なんて自分勝手なんだろう。
触れると、お湯とはまた別の液体が指に指との間に意図を引いた。
人肌に触れたい。体温を感じたい。栞にめちゃくちゃにして欲しい。
彼女の事を考えながら、指で撫でるように弄る。彼女なしてくれたように指を動かすが、全然足りない。やはり、私は下手なのだろうか。
シャワーを手に取り、興味本位で当ててみる。
「ーーーッ!? 」
その感覚に、思わず腰を抜かしてしまった。ギリギリ声を我慢することが出来たが、勢いがもっと強かったら危なかっただろう。
勢いはそのまま、もう一度お湯を当ててみる。口を抑え、明日香ちゃんを起こさないように気をつけながら。
息が荒くなり、切なくなる。自分では限界の直前に加減をしてしまうが、シャワーはそうはいかない。絶頂してもなお、お湯は降り注いだ。
正直、何回イったかわからない。欲求も満たされたため、私は着替えて部屋へと戻った。
「先輩、どこいってたんですか? 」
「あれ? 起きてたの? 」
明日香ちゃんがベッドの中央に腰掛けていた。寝ていたと思っていたから少し驚いたし、バレてないかが気が気でない。
「心配したんれすよ〜? 」
滑舌が回っていない。まだ酔いは覚めていないようだ。手招きされ、ベッドに座らされた。
「ここって、ラブホテルですよね? 」
「ええ、そうね 」
ニコニコしながら続ける。
「それって、そういうことですよね? 」
「え? 」
肩を押され、ベッドに押し倒される。
「先輩〜 」
頭をがっちりとホールドされ、胸に挟まれた。呼吸ができるようになんとかズレるが、限界だろう。
「明日香ちゃん、落ち着いて! 」
訴えかけても、返事がなかった。このままされるがままになってしまうのだろうか。
「明日香ちゃん? 」
再度呼びかける。返事はない。代わりに、小さい寝息が聞こえてきた。どうやら、寝ぼけていただけだったようだ。
仕方がない。今日はこれで寝よう。どうせ動くこともできないし。
「先輩、私、女の人もいける口なんですよ 」
本気か冗談かわからない寝言を聞き流し、私も眠りについた。明日の朝、明日香ちゃんがどんな反応をするのか少し楽しみでもある。
目が覚める。体を起こし、伸びをすると、目の前で後輩が土下座していた。
「どうしたの? 」
「いえ、昨日は先輩に介抱してもらった挙句、襲おうとしてしまったので 」
どうやら、記憶はあるらしい。お酒の力とは恐ろしいものだ。そういえば私が抱かれたのもお酒が入っていたからだった気がする。
「大丈夫よ。襲われてないし 」
「ありがとうございます 」
「昨日そのまま寝ちゃったし、シャワー浴びてきたら? 」
そう促すと、自分の匂いを確認した後、脱衣所へと入っていった。さて、この間にタクシーでも呼んでおいてあげよう。スマホを取りだし、電話番号を入力しようとして、一瞬手が止まった。私はアプリを開き、電話をかける。
『あ、有彩さん!お久しぶりです! 』
「うん、久しぶり。急で悪いんだけど、今日会えるかしら? 」
『いいんですか!? 』
「私が会いたいの。家でいい? 」
『もちろんです! 』
準備してきますねと、栞はすぐに電話を切ってしまった。
何故だろう。声を聞けて、なんだか嬉しい気がする。
「先輩、どうしたんですか? そんなに笑顔で 」
急いで自分の顔に触れてみる。確かに、私は笑っていた。
「やっぱり彼氏いるんですねー!? 」
首を横に振る。嘘ではない。私は笑顔のままで、明日香ちゃんに言った。
「大切な友達よ 」
明日香ちゃんは納得いっていないような表情をしていたが、少し強引にホテルの外へ連れ出し、タクシーを呼んで送り返した。もちろん、タクシー代も渡して。
1人になった私は、少し早歩きで家へと向かった。とりあえず、栞が来る前に片付けとメイクをしよう。鼓動が高鳴る。理由はきっと、久しぶりに友達と会うからだ。それ以外、有り得るわけがない。私は自分にそういいきかせた。