なんなのだろうか。
冷たい水の中を泳ぐ記憶が脳をよぎっている。
──ーいや、これは今、経験している事だ。
俺は水の中で必死にもがき、沈みゆく仲間達を助けに行こうとしている。
俺は戦車のハッチを開け、一気に水が流れ込んでくる前に、乗員を引っ張り上げる。
どうやら、水は戦車の中にまで侵食していたらしく、俺がハッチを開けなければそのまま脱出不可能になっていただろう。
そして、川から顔を出し、乗員を救った。
その代償として、戦車道全国大会で準優勝と言う結果で、黒森峰の10連覇は夢となった。
────
ここ最近、私はおかしいような気がします。
私の中にもう1人、男の子みたいな人がいるのです。
その人の名前は貴明さんと言っていました。
どこからきたのか、どうして私の中にいるのかと聞いてもさっぱり分からないみたいで、だいぶ困っているようです。
「ったく、好き勝手言いやがって。俺たちが助けなかったらアイツら今頃死んでたんだぞ」
(……でも私があの時)
「バカ言ってんじゃねぇ、みほ。結果よりも人命が一番だ。命より尊いものなんてありゃしねぇよ」
今は、私の体を貴明さんに貸して、新聞を読ませています。
私の精神はどうやら入れ替わることが出来るようで、何か嫌なことがあったら貴明さんがこうして守ってくれています。
「まあ、これからどんな事になるかは分からないけど、みほが辛い思いをしたら俺がすぐに出てきてやる」
(…………ありがとうございます)
「……敬語はいらねぇって言ってんだろ? 俺は堅苦しいのは苦手なんだ」
貴明さんは私に優しいです。
あの時以来、私の周りには味方が居なくなりました。
いえ、エリカさんだけは前と変わらず接してくれていますが、こうしてちゃんと味方で居てくれる人は貴明さんだけです。
「さて、学校行くか」
(え?)
「みほは辛いと思うけど、一応、今の状況把握をしときたくてな」
(でも……)
「……まあそうだよな……。今日も辞めとくか」
このままじゃダメだって私にも分かっています。
このまま貴明さんに迷惑をかけ続けるのも。
(いえ、行きましょう)
「……大丈夫か?」
(はい、それになんだか貴明さんと一緒なら大丈夫なような気がします)
「よっしゃ、じゃあ行くか!」
こうして、私と貴明さんは学校へ行くことにしました。
なんだか怖いですけど、やっぱり今の状況をちゃんと確かめなくちゃ。
────
俺はいつのまにかみほの体の中にいた。
いや、精神の中と言った方が正しいのだろうか。
自分でも自分の事は分かってはいないが、それでもみほを守らなくてはならないという使命感だけは、俺の心の中にあった。
俺が持っているものは自分の名前とみほの記憶のみ。
そんな状況でも何故だか俺は焦りは感じなかった。
まあ、なるようになるだろうとしか思わなかったのだ。
そして、黒森峰が10連覇を逃した時の事件。
あの事件はみほの心に大きな傷を負った。
あの時俺たちが助けなければ、あの乗員は全員死んでいた。
戦車は特殊カーボンで守られているのだが、その時だけカーボンの整備が行き届いてなかったのかは知らないが、かなり水が戦車の中に入り込んで、窒息寸前だったのだ。
しかし、そんな事もわからない大人たちがみほの事を批判している。
俺はここ最近みほの中に生まれたばっかりの精神だが、それでもみほのことは妹のように可愛がっている。
そんな可愛い妹を傷つけるやつは絶対に許さねぇ。
俺はそんな思いを秘めて、黒森峰女学園の校舎の足を踏み入れた。
あの事件以来、みほは塞ぎこんでしまい来れなかったが、それでも俺は今の現状を把握する事が大切だと思っている。
みほには少し辛い思いをさせてしまうがな。
「?」
俺はみほの上履きを取ろうとして、少し違和感を感じた。
違和感の正体は上履きの中に画鋲が入っていたのだ。
「ちっ、くだらねぇ事しやがる」
俺は辺りを見渡すと、コソコソとその場を立ち去っている女生徒の姿を見た。
おそらく犯人はアイツらだろう。
今すぐにでも取っ捕まえて、なんでこんな事をするのか泣くまで問い詰めてやりたいところだが、みほの体で問題を起こすのは得策じゃない。
みほに迷惑がかかるしな。
(……やっぱり)
「大丈夫だ、俺が付いている」
心の中でみほが悲しそうな声を上げた。
そんな声を聞いて俺も心が苦しくなる。
まるで、心と心が繋がっているようだ。
「……この調子じゃあ、教室に行ってもめんどくさい事になるだけだな」
(……)
「裏庭に行くか」
みほの記憶で、黒森峰の裏庭を思い浮かべる。
あそこなら誰も来ないだろうし、心を落ち着かせるにはもってこいだろうと思ったのだった。
はじめまして。
こうやってガルパンの二次創作を書くのは初めてなので、至らない点があると思いますがよろしくお願いします。
貴明のモデルは流星のロックマンのウォーロックです。