西住みほのすぐ側に   作:うみうどん

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四話

 朝、目覚ましが鳴り俺とみほは飛び起きた。いや正確に言えばみほが飛び起きたのだが。

 目覚まし時計を手早く止め、布団を綺麗にたたみ、朝のトレーニングに向かうための服に着替えようとした所でみほの動きがピタリと止まる。

 

「そっか! もう家じゃないんだ!」

 

(おう、おはようみほ)

 

「おはようございます! お兄ちゃん!」

 

 そう、今のみほは一人暮らしであり、今日、大洗女子学園に転校する予定なのだ。

 つい、いつもの癖で早起きしてしまったが、今から学校へ向かってもおかしくない時間帯だ。

 

 みほは身支度を済ませ、大洗の新しい制服に身を包む。

 ふむ、前の黒森峰の制服よりこっちの大洗の制服の方が断然可愛いな。

 

(似合ってるぞ、みほ)

 

「えへへ」

 

 いや本当によく似合っている。流石俺の妹だ。頭を撫で繰り回してやりたいが、いかんせん俺には体が無い。生殺しである。

 

 こうして俺とみほは今日から自分たちの母校となる大洗女子学園に出発するのであった。

 途中、パンのいい匂いに釣られ電柱に頭をぶつけてしまったが、それもみほらしいと言えばそうだろう。

 でも、痛覚は共有しているのでめちゃくちゃ痛い。

 

 痛い事は全部俺が引き受けてやりたいんだがな。

 

 さて、学校で何が待ち受けているか、内心俺も楽しみである。それにあれだ、女子学園なのだから女子が一杯いるし、役得役得……。

 

「お兄ちゃん?」

 

 あっ、ごめんなさい。

 俺の可愛い妹から謎の黒いオーラが湧き出た気がしたが、気のせいだと思いたい。

 もう不埒な事は考えないので許してくれ。

 

 ──ー

 

 さて、教室でのみほだが……。

 

(うう……)

 

 いかんせん昼休みになっても友達ができないので精神の中で俺と入れ替わる形で引きこもってしまった。

 おいおい、初日でそんなんじゃ先が思いやられるぞ。

 

 しかし、みほの体はなぜがドジが起きやすく、昼休みになったため、立ち上がろうとしたら机にあたってしまい、上からペンを落としてしまう。

 まあ、今は俺なので、問題なく足で弾いて手でキャッチしたのだが。

 

「おお〜」

 

「すごいですね」

 

 後ろからパチパチと拍手の音が聞こえてきた。

 後ろを振り向くとそこには二人の女子生徒がいる。ええと確か名前は、武部沙織と五十鈴華だったか? 

 

(はい、武部さんと五十鈴さんですね)

 

 何を隠そう、この妹。友達ができるかどうか分からないのに、何故か気合いが入ってクラスメイトの名前と生年月日まで覚えている。

 それに付き合わされた俺も、クラスメイトなら名前だけ覚えてしまっている始末だ。

 

 因みにみほと俺は記憶の共有は出来ているが、どうも覚えたてだとタイムラグが出るらしく、みほが覚えた事は後から俺の頭に入ってくる感覚である。

 

 しかし、せっかく話しかけてくれたんだ、みほのために一肌脱いでやろう。

 

(え? お兄ちゃん、何を)

 

「武部さんに五十鈴さんだったかな? どう? 一緒にお昼食べない?」

 

(お兄ちゃん!?)

 

「わー! ナンパするつもりが逆にされちゃったよー! どうする華!?」

 

「喜んで一緒に食べましょう」

 

 こういうのは初日が大事だ。いつまでもウジウジ悩んでるからこうなっちまうんだぜ? 

 

(うう……ひどいです)

 

 んじゃ、後はみほ自身で頑張れよ。

 そう言って俺は精神の中に引っ込んで、みほの人格を引っ張り出す。

 急に表に出されたみほはあたふたしていたが、二人が食堂へ引っ張ってくれて行った。

 

 その後は概ねみほ自身も楽しい時間を過ごしたらしく、二人と友達になっていた。

 その表情は黒森峰にいた時よりも晴れやかで、今更ながらこの学校を選んで良かったと思う。

 それにこの学校には戦車道は無く、みほのストレスにもならない。

 このまま何事もなく時が過ぎ去ればと、俺は思ったのだが……。どうも西住流の名は俺たちを逃がしてくれるわけではないようだ。

 

 武部と五十鈴と楽しく談笑していたみほの教室に急に生徒会と名乗る三人組が現れた。

 そして、生徒会はみほを見るなり「やあ、西住ちゃーん」と手をフレンドリーに降ってきた。

 俺は瞬時にみほを後ろへ追いやり、俺が表へ出た。

 何か嫌な予感がする。

 

「西住、少し顔を貸してもらおうか」

 

 片眼鏡の女が外へ来るように促してくる。

 俺は睨みつけてくる女目を睨み返す。すると、少し怯えた表情をした後に少し前の顔つきに急いで戻った。

 

「西住さん、ガンを飛ばすのお上手ですね……」

 

「なんで華、ワクワクしてるの……」

 

 そして言われるがまま外に出ると生徒会長と言われた女子生徒に肩を組まれる。

 

「必修選択科目なんだけどさぁ……戦車道取ってねよろしく」

 

「なにっ!?」

 

 確か大洗女子学園は戦車道がない学校だったはず、それなのに何故戦車道を取れという話になってやがる!? 

 

(えっ……)

 

 大丈夫だ、みほ、一応話だけでも聞いてみよう。

 

「……この学校には戦車道の授業は無かった筈では?」

 

「今年から戦車道の授業を復活することになった」

 

「おれ……私はこの学校には戦車道がないと思い、わざわざ転校してきたのだが……」

 

「いやぁー運命だねぇ」

 

 なんだと? この奇妙な事を運命だと片付けやがった。絶対にこいつらは確信している。俺たちが西住流だという事を知っていてこんな事を話しているのだ。

 ふざけるなよ。俺はみほにはちゃんとした戦車道のない学校生活を送って欲しいんだ。こんな奴らのいいなりになるつもりなど毛頭ない。

 

「必修選択科目は自由に選べる筈だ、その生徒の権利を貴様たちの横暴で奪い取るのか」

 

「横暴……とはよく出たねぇ西住ちゃん」

 

「その通りでは?」

 

「西住貴様!」

 

「かーしま、やめろ。ま、そういう事だからよろしくねー!」

 

 バシンと俺の背中を叩いてくる生徒会長。

 何がそういう事なのだろうか。俺は何がなんでもみほには戦車道はやらせない。絶対に守ってみせる。

 

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