「ねぇ、生徒会長に何を言われたの?」
武部がみほを心配して聞いてくるが今は俺だ。とにかく、心配かけさせないように適当に答えねば。
「戦車道を取れとかなんとか」
(……)
あれ? みほさん? さっきから声も聞こえませんけど大丈夫ですか? なんだか精神の中で膝を抱えながら死んだ目をしている光景が目に浮かぶようだ。
クソ! あの生徒会長が変な事を言わなきゃ、みほはこんな事にならなかったのに!
(……)
しかしこんな状態になっているみほを放っておくわけにはいかないな。仕方が無い、次の授業バックれるか。
「あーすま……ごめんなさい武部さん。ちょっと調子がすぐれないから、保健室行ってくるね」
今は心の療養が最優先だ。保健室に行って一眠りすれば、少し冷静になるというものだろう。
一応、武部にも伝えておいたし、まあ……うん……大丈夫だ。
「え!? ちょっとみほ!? あ! 私もお腹が!」
「私も持病の癪が……お供しますね」
何故か二人もついてきちゃった。何かな? 君たちもしかして不良と属される分類の人間なのかな? まあいいか、それじゃあ仲良くバックれましょうとね。
────
「ねぇ、みほ……さっき戦車道とかなんとか言ってたけど……」
「ああ、今年度から戦車道が復活するって」
「戦車道とは、乙女が嗜む伝統的な武芸の?」
「それとみほになんの関係があるの?」
……そうだな、こいつらには話しておいてもいいかもしれない。時間が経った事でみほの方にもなんとか余裕ができたみたいで、ちょっと冷静になれている。
おい? みほ、コイツらに西住の事教えてもいいか?
(はい……。武部さんと五十鈴さんなら大丈夫です)
「まあ……その、戦車道を選択するようにって」
「ええ? なんで? ……何かの嫌がらせ? あ、分かった! 生徒会の誰かと三角関係? 恋愛のもつれ?」
ちげーよ、なんで転校してきて1日目で生徒会の連中と恋愛のもつれにまで発展してんだよ。
「是非、戦車道を選択するようにと乞われるなんてもしかしてみほさん、数々の歴戦を潜り抜けてきた、戦の達人なんでしょうか? 例えば、タイマン張ったり、暴走したり、カツアゲしたり」
ちげーよ、なんでみほの性格でタイマン張れたり出来るんだよ。ちょっと考えて無理があるだろ。いや、俺ならしそうってか? やかましいわ。
この中の一つでも俺はしたことあったか? 無い無い、若干脅した奴はいたものの、あれはノーカン。
「みほさん、先程ガンを飛ばすのお上手でしたので」
おう……先ほどの事を仰られているんですかね? い、いや……あれは睨んできたから睨み返しただけで、別に「おう、タイマン張ろうや……」みたいな思惑がほんのちょっとあっただけで、後は何もないですよ?
「実はな……西住って名前は、代々戦車乗りの家系で名家とも言われる程の伝統的に戦車道と関わりが深い家なんだ」
「まあ」
「へー」
「まあ、俺たちはそこから逃げてきたわけだが……」
みほも心の中で、しゅんと落ち込んだような顔になる。安心しろみほ。逃げるという選択肢も時には必要な事だ。俺たちは何も間違ったことはしていない。ただ世間と相性が悪かった、ただそれだけなんだ。
「えっ」
武部がいきなり素っ頓狂な声を上げる。ん? いきなりどうした。そういえば、男が放って置かないと先程みほに語っていたが、恋愛脳の働きすぎでバグったのか?
「俺たち?」
…………しまった。
つい、癖で俺って一人称を使ってしまった……。
やばいやばい、みほの体には俺がいることは極力バレてはいけない。体の中に男の人格があるってだけで、本来なら精神科案件の事態だ。それが大洗で広まってしまえば、みほはまた学校に居られなくなる可能性がある。
俺のせいでみほに迷惑がかかるのは絶対にあってはならないことだ。上手いこと誤魔化さなければ……。
そう思考をぐるぐるさせてたら、いきなりみほが俺と入れ替わりで表に出てきた。
みほ? 一体何を……。
「あ、あの……その……中学生の時……私、俺って言ってたから、その……癖で言っちゃいました……」
みほおおおおおおおおお!?!?!????
なんてこった! 俺のせいでみほが、中学生の時、俺っ娘だったと捏造してしまった! 今にもみほは顔が沸騰しそうなほどに赤くなっている。
もしかしたら俺はとんでもない事をしでかしたのかもしれない。
「か……」
「うう……」
「かわいい──ー!!」
武部がいきなりみほを抱きしめてきた。
うおおおおおお!? コイツ! いきなり何しでかしてくれてんだ! 今、みほの中には男の俺がいるんだぞ! そんな事されちゃったらダイレクトに感触が伝わっちゃう!
どういうわけか、みほが感じたことはダイレクトに俺に伝わってくる。甘いものを食べたりしたら甘味が俺の脳内にダイレクトに伝わってくるわけだ。
だから感触も伝わってくるわけで……!
た、たわわぁ……。
(お兄ちゃん?)
ひえっ。