んでまぁ、そんなわけでみほの戦車道をやるという発言は概ねうまくいったんだが……。
生徒会長の奴ときたら戦車はVI号しかねぇから自分たちで探せって言ってきやがった。話を聞けば明後日に戦車道の教官が来るらしく、それまでに整備を整えておけとのお達しだ。
生徒会は揃いも揃ってアホなのか? このど素人の集まりで無理があるだろ。
それに手掛かりなんぞ全くねぇときやがった……いっぺん絞めるか?
(お兄ちゃん……そこまで、ね?)
イライラしていたところを俺の思考を読み取ってみほに制止される。
おっといけねぇ。そうだ、俺の本来の目的を忘れるな、この学校の存続は二の次であり、みほの幸せが第一なのだ。
深呼吸だ深呼吸……ダメだやっぱ怒りが収まらん。
というより、俺の考えみほに筒抜けじゃね? 誰だ、考えてることが通じないとか言った奴。
そんなわけであって、戦車を隠すとなったらうってつけの場所である駐車場に来たわけだが……。
「どこにあるって言うのよ──!!」
隣で武部が大声で叫ぶ。ちなみに駐車場に探しに来ると言う訳のわからん事を言い出したのは武部の発案だ。
常識的に考えて戦車が駐車場にあるわきゃねぇだろう……。
一瞬俺もナイスアイデアとか思っちゃったけど。
「だって一応は車じゃない」
うん、俺もぶっちゃけそう思ってた。
だから案外意外なところに置いてあるのかと思ったけど、やっぱり真っ当な場所に隠してあるのか、放置してあるのか……。
だとすると裏の山林辺りが怪しいか……。
(みほ、裏の山林にでも行ってみよう)
みほに言うとすぐに武部に提案して、行くことになった。
まあ、あるかないかはさておいて探す価値のある場所ではあると思う。
……しかし、さっきから後ろでコソコソと付け回してるのがいるな……。犯人はあのモジャ頭の女の子か……。みほも気付いているようでさっきから複雑な表情をしている。話しかけるかかけまいか悩んでいるようだった。
焦ったいなぁ、よおし、こうなったら俺が直接なんの用か問いただしてやるよ……。
「あの! よかったら一緒に探さない?」
なにぃ!? あのみほが俺が入れ替わる前に話しかけやがった!
(だってお兄ちゃん、あの子に何するか分からないもん……)
ああ……そう言う意味で焦って話しかけちゃったのね……。
いやでも、これはすごい進歩だ! みほが自分から話しかけるなんて、少しは心の傷が治ってきた所か……。
というより、みほさん? 俺は女の子には手は出さないぞ? 安心しろ?
(信用が……)
……ごめんなさい。
────
あのあと、俺たちの輪に加わった少女は秋山優花里と名乗った。
どうやらみほの事を大変尊敬しているらしく、すごく感極まったような口調で話す。いやあ、みほの魅力が分かるか、そうかそうか、秋山とはいい酒が飲めそうだなぁ! 飲んだ事ないけど!
そして、山林にやってきた俺たちだが、目の前で急に五十鈴が止まり、鼻を動かす。
「あっちから匂いが……」
「匂いで分かるんですか!?」
これには俺も驚いた。どうやら五十鈴は嗅覚が鋭いようで、遠くから漂ってくる少しの鉄と油の匂いを嗅ぎ分けたのだ。
おいおい、そんなの第二次世界大戦中の軍人だってわかんねぇぞ。
ちょくちょく、五十鈴は常人離れしたパフォーマンスを披露する。俺も、薄々感づいてはいたが、身のこなし方が一般人のそれとは違う。なんだ? 華道の他にも何か武術的なものやってたりすんのかな?
「華道やってるとそんな事まで分かるの!?」
「私だけかもしれないですけど……」
うん、歴とした才能だね。
この後、秋山が「パンツァーフォー!」と言った後武部が「パンツのアホー!?」という秋山とみほが苦笑いしかできない聞き間違いを盛大に俺が笑った後、戦車を発見した。
LT38か……渋いなぁ。
みほと記憶を共有している俺も戦車のことにはそこそこと言った具合だが詳しい。
そして、俺個人の感情としても戦車は大好きだ。だってかっこいいじゃん。男の子のロマンってこういう事なんだろうなぁ……。だからこそ、男の戦車道選手も非公式ながらもいるし、そういう奴らもこの魅力にドップリとハマっちまった被害者であり最高の野郎どもだ。
それにしても、さっきのVI号といい……このLT38もなんだか懐かしいような感情に駆られる。俺の記憶と関係しているのだろうか。モヤモヤしてなんだか気持ち悪いが、まあ、いつか分かるだろう。細かいことは気にしない、それが俺のモットーである。
秋山がめちゃくちゃイキイキとLT38のウンチクを語り、ナチの通称の38tのtとはチェコスロバキアの事であると説明したあたりで我に帰った。
というより、俺の中では38tはLT38って呼びたいんだけどなぁ……。まあ、クソほどどうでもいいか。