新宇宙戦艦ヤマト&ナデシコ ディレクターズカット   作:KITT

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第二十三話 七色星団の死闘! Bパート

 

 

「くっそー! 連中の思惑に乗るしかねぇのかよ!」

 

 GファルコンGXのコックピットの中で毒づくリョーコ。

 自身でも部下に全力で退避を指示しながら安全圏に逃げるしかない。

 逃げながら収束モードの拡散グラビティブラストをヤマト目掛けて突き進む対艦ミサイルに向かって砲撃を繰り返し、少しでもヤマトの負担を軽くすべく努力はしているが、いかんせん数が多すぎた。

 ヤマトも拡散モードのパルスブラストで弾幕を形成し始めたが、前後左右上方と多方向からの攻撃に、増設しているにも拘らず手が足りていない。

 迎撃を免れたミサイルがナデシコユニットが発生させたフィールドに次々と着弾。ヤマトの姿が爆発に飲まれて見えなくなる。

 それでも勢いが衰えぬパルスブラストの砲火とナデシコユニットから撃ち出されたであろう対空ミサイルが爆炎の中から飛び出して、襲い来るミサイルを片っ端から撃ち落としていく光景のおかげでヤマトはまだ健在だと知れたが、かつてない状況に眉根を寄せてしまう。

 ヤマト前方を航行中の戦闘空母も砲戦甲板や艦橋前後の三連装砲に後部のミサイルランチャーを駆使して迎撃に全力を注ぎ、左右を固める指揮戦艦級二隻も対空砲を全力運転させてヤマトにミサイルが着弾するのを少しでも防ごうと努力している。

 しかし艦隊の中央にいるヤマトに照準されたミサイルの数は多く、また艦隊の外周に転送され直進してくるため、ミサイルの一部は戦闘空母と指揮戦艦級にも襲い掛かりその姿を爆炎の内に沈めつつあった。

 

「対空砲を増設していてよかったと思える瞬間ね。ウリバタケさんのオタク趣味に感謝だわ」

 

 とGファルコンのイネスが不安からか軽口を叩いているが、耳を傾ける余裕はない。

 モニターの端に同じようにミサイルの迎撃を始めたGファルコンDXとGファルコンデストロイの姿もある。特にGファルコンデストロイは拡散グラビティブラストだけでなく、両腕のツインビームシリンダーで頑丈な対艦ミサイルのボディをハチの巣にしている。合体の恩恵は大きいようだ。

 対照的に、戦闘機形態でほぼ固定状態のGファルコンバーストは迎撃には参加せず、追撃で現れるかもしれない航空戦力を警戒している。こればかりはしょうがない。

 

「悪いけど私たちは迎撃に参加できそうにないよ!」

 

「ごめんリョーコ! アルストロメリアじゃ無理そう!」

 

 ヒカルとイズミは無念さを吐露しながら距離を取っていた。

 すっかり力不足を感じなくなったアルストロメリアであってもこの物量だと余波だけで致命傷だろう。

 ここは逃げの一択しか選択しかない。むしろ本命はこれからだと考えれば、英断だ。

 

 

 

「ちっ! 最初の攻撃がミサイルの雨とはな! つくづくむかつく連中だぜ!」

 

 愛機のコックピットでバーガーが激しく毒づく。予想されていた敵の攻撃の中でも最も苛烈で、転送戦術の強みを最大限生かした戦い方。

 それが理解できるだけにむかついた。

 

「落ち着けバーガー。この程度で沈むほどわが艦隊は脆くはない。なんせ、あのヤマトが旗艦なのだからな」

 

 諫めるクロイツも少々不安な様子だが、それでもここまでガミラスと渡り合ってきたヤマトが容易く沈むとは考えていないようだった。

 それに関してはバーガーも同感である。それにそのヤマト相手に戦うべく召集された自分たちの力量も疑ってはいない。

 開発には紆余曲折あったとはいえ、戦闘空母は十分な性能を持って完成しているし、ヤマトと戦うために同行している指揮戦艦級も装甲を中心に改修されている。だからこそ簡単に沈むことはないと確信を持てる。

 

「……ああ、すまねえクロイツ。隊長ともあろうものがこの程度で動揺してちゃだめだよな」

 

 頭が少し冷えたバーガーはクロイツにそう返すと、腕を組んでシートに身を預ける。そしてこの空間を哨戒している同僚を思う。

 

(――頼むぜゲットー。早いところ敵の本体を見つけ出してくれ)

 

 

 

 

 進は被弾の衝撃で揺れる第一艦橋でじっとりと汗を掻いていた。

 ヤマトはガミラス艦と一丸となって必死に対空砲と対空ミサイルを打ち上げ、主砲に副砲までも動員して対艦ミサイルの迎撃を続けている。

 艦隊の速度や進路を変更しつつ移動して転送座標を変化させ、少しでも攻撃の頻度を落とさせようと努力しているのだが、ミサイルは遅滞なく喰らい付いてくる。

 ――想像以上に使いこなしている様子だ。

 すでにヤマトには一〇発以上の対艦ミサイルがフィールドに接触している。だがいまヤマトを守っているフィールドの発生装置はナデシコユニットに装備されたガミラス製だ。エンジン出力の高さでガミラス艦以上の防御力を叩き出したヤマトではあるが、単純な装置の性能はガミラスのほうがやはり上だった。

 いまはその装置にナデシコユニット内のエンジンのすべての出力を注ぎこみヤマトを守っている。

 しかし敵のミサイルの威力はかなりのものだ。発生装置の負荷がどんどん蓄積されていっている。

 

「いかん……! フィールド出力が六〇パーセントにまで低下しているぞ……!」

 

「まずいな……ナデシコユニットとヤマトは通路で繋がっているわけではないから、戦闘中の修理作業は絶望的だ。それにあれはバラン星の戦いで出たジャンク品の寄せ集め。このままでは長くは持たん……!」

 

 額に汗を浮かべるゴートと真田。

 急増のオプションパーツでしかないナデシコユニットは欠陥も多いし信頼性にも難がある。真田は制作者の一人として熟知しているだけに、不安を隠せないのだろう。

 

「爆発の影響でセンサーの乱れも激しく、これではワープ航跡の特定は無理です!」

 

 電算室のルリも悲鳴を上げている。

 被弾の衝撃も相まってセンサーの感度低下が著しい。爆炎のせいで光学カメラも役に立たない。間接的ではあるがヤマトの目と耳はミサイルによって塞がれてしまっていた。

 

「直撃してないだけマシとはいえ、なんとか打開策を見つけないと持たないぞ……!」

 

 ジュンもなにかしら打開策がないかと思考を巡らせているようだが、具体的な対策は思いつかないでいるようだった。

 データリンクによるとヤマトほど攻撃が集中していない戦闘空母も指揮戦艦級も持ち堪えているようだが、このままでは消耗しきってしまう。

 艦長代理としてなにか打開策を指示したい。

 そう思えど妙案は浮かんでは来ない。ドメルも沈黙を保っている。彼ほどの名将も、この状況では現状維持がやっとなのかと思うと、改めて転送戦術の脅威が知れる。

 

「――進、聞こえてる」

 

 第一艦橋にユリカの声が届いた。

 

「聞こえています艦長。どうかしたんですか?」

 

「ヤマトの正面一一時一八分、上下角プラス二〇度、距離推定四光秒の地点でなにかしらの空間歪曲が起こったよ。確定はできないけど、調べてみる価値はあると思う」

 

 妙に落ち着いた声で話すユリカに一抹の不安を覚えながらも、進はすぐにその情報を各艦と先行しているDMF-3隊に転送するように指示した。

 出所については事前に考えていた内容で誤魔化すことも忘れない。

 

「ありがとうございます艦長。この情報を頼りに、反撃の糸口を見つけて見せます」

 

「がんばってね……ふ、あぁぁ~~~。悪いけど、おねむみたいだからお休みさせて~……」

 

 返事をするより早く規則正しい寝息が聞こえてきた。傍から見ればとてもマイペースな行動にも思えてしまうが……。

 

「やはり、無茶ではない程度に探ってくれたとみて間違いないだろうな。今後に影響しなければいいのだが」

 

 戦闘指揮を続けながら、守が心配そうな声を出した。

 

「ミスマル艦長……あなたの献身、心に染みました。私にもガミラスの将としての意地がある。頂いた情報を頼りに必ず逆転してご覧に入れます……!」

 

 ボロボロの体でも未来を諦めないユリカの姿勢に感動したドメルが気合を入れなおしていた。

 どうやら黙ってやられていたわけではなかったようで、彼なりに敵の次の手を読んでいた。

 

「古代艦長代理、航空部隊が離れヤマトの防空網に穴ができた。敵はすぐに爆撃機と護衛の戦闘機を差し向けてくるはずだ。これらの行動で艦隊行動を乱した最大の目的はドリルミサイルで波動砲を封じつつヤマトを破壊することのはずだ」

 

「なるほど、たしかに。艦長の示唆した方向に敵がいるのなら、敵はヤマトの波動砲が装甲で守られていることも確認できていると考えてもいいかもしれませんね。――ドメル将軍、ドリルミサイルであの装甲を突破可能ですか?」

 

 進の問いに「できると考えたほうがいいでしょう」と答えた。

 

「敵も無能ではないでしょう。バラン星の戦いを経験すれば、遠からずヤマトとガミラスが手を組むであろうことは明白。となれば、限られた時間の中でヤマトの波動砲を封じるための手段としてあのドリルミサイルを活用するのが早道。もともとが採掘用の特殊削岩弾を転用した代物なので、あのドリルの刃はガミラスでも最高強度の超合金でできています。装甲の厚い艦体ならまだしも、構造上脆弱な発射口であれば苦もなく突破できると踏んでいました。ただ、われわれとしても波動砲を完全に破壊してしまうのは今後を考えると都合が悪かったので、封印さえできればそれでよしとしていたのですが……」

 

 あいもかわらず恐ろしい人だ。

 進は尊敬するやら恐れるやら。

 指摘されたとおり波動砲の発射口の防御性能は低い。特に奥の装甲シャッターは脆弱だ。よほどのことがない限りピンポイントで狙うのは難しいとは考えられていても、弱点には違いなかった。

 

――結局、ガミラスが味方になっても『アレ』の脅威からは逃れられないのかなぁ?――

 

 不意に木霊したヤマトのぼやきに心底同情を覚える。

 ああ、やっぱり平行世界で喰らってたのか。そりゃトラウマにもなるわ。

 進は再びドリルミサイルを喰らわないようにするための策を考えるべく、思考を巡らせる。

 さて、どのタイミングで来るか。

 

 

 

「ヤマトにドリルミサイル……船は昔から女性名詞……ドリル……掘る……ヤマトには自我……擬人化と合わせて……ムフフ……」

 

 応急処置に備えて絶賛待機中の技術者一名、眼鏡を怪しく光らせながらよからぬことを考える。

 ちなみに彼は『ヤマト擬人化計画の会』の会長であった。

 

 

 

「被害状況は!?」

 

 戦闘空母の艦橋でハイデルンが損害報告を求める。戦闘空母も少なくない被弾で激しい揺れに見舞われていた。

 

「左舷に二発、右舷に一発被弾! 第七、第一〇区画に火災発生!」

 

「第一主砲に障害発生! 現在対処中です!」

 

 このサイズの対艦ミサイルの被弾は応える。

 戦闘空母は最新鋭艦であるし、対ヤマト用としてドメルが引っ張り出してきただけあって、ヤマトの攻撃に少しでも耐えられるようにと装甲が強化されている。

 そのおかげでなんとか耐えられているが……。

 

「ヤマトの状況はどうなっている!?」

 

「健在です!」

 

 さすがはヤマト、ここまでガミラス相手に単艦で抗ってきた実力は伊達ではない。

 ハイデルンは素直に感心しつつもままならぬ状況に唇を噛む。

 幸い指揮戦艦級も健在のようだが、ヤマトや戦闘空母に比べるとやはり装甲もフィールドも劣っているので被害は徐々に蓄積されている。

 ……このままではなぶり殺しにされるだけ。だが戦況を変える一手は、いまだに見つかっていなかった。

 

 

 

 必死に対空砲を全開にしていたヤマトに突如静寂が訪れた。

 

「ミサイル攻撃が止んだ……?」

 

 必死に対空砲の指揮をしていたゴートが不振がって思わず天井を仰いでいる。

 ナデシコユニットのフィールドは発生装置はオーバーヒート寸前で、冷却のため数十分は使えそうにない状況にあった。

 そんな緊迫した状況にあったためか、つい気を緩めそうになるクルーが出てきてしまう。

 

「油断するな! おそらくこれは航空攻撃への切り替えだ!」

 

 すぐに進が叱咤して気を緩めないようにする。するとすぐにレーダーを睨んでいたハリから警告が。

 

「ヤマト直上に空間歪曲反応多数! エネルギーパターンから敵の航空部隊と思われます!」

 

「対空戦闘! コスモタイガー隊は迎撃開始だ!」

 

 進の怒鳴るような指示にすぐに応えるクルーたち。

 さきほどまでミサイルを迎撃していたパルスブラストが、冷却もままならないまま再度稼働させられる。だが、オーバーヒート寸前まで追いやられているためその弾幕は疎らであり、さきほどまでの威勢はなかった。

 仕方ない。特に排熱が必要な砲を停止して、穴埋めのために煙突ミサイルからリフレクトディフェンサーを八基打ち上げ、ヤマトの直上に八つの円盤状のディストーションフィールドを展開する。

 戦闘空母と指揮戦艦級二隻も勢い衰えた対空射撃を開始している。

 これで、敵の攻撃はもちろん突入コースを変えられれば御の字なのだが……。

 出現した一〇〇には届こうかという戦闘機の群れと、その中に混じる二〇機ほどの爆撃機。数の上では少数の爆撃機であっても、ミサイル攻撃で消耗したいまのヤマトには途方もない脅威となる。

 結局、ミサイル攻撃の余波を避けるために距離を取らざるをえなかったコスモタイガー隊の迎撃はギリギリのところで間に合わず、散発的になった弾幕とリフレクトディフェンサーに攻撃や軌道を逸らされながらも食らいついた一〇機の爆撃機の砲火が、ヤマトを襲った。

 

「右舷コスモレーダーに被弾! 機能低下!」

 

「第一主砲被弾! 損害軽微!」

 

「第一七対空砲損壊! 使用不能!」

 

「煙突ミサイル被弾! 異常は認められず!」

 

 第一艦橋内に次々と被害報告が届く。ヤマトも自身のフィールド発生装置を使用して防御を固めていたが、敵爆撃機の攻撃力は極めて高く、至近距離で撃たれたこともあって減衰しきれず本体に到達していた。

 防御力の低いレーダーアンテナや対空砲の一部が破壊され、表面に塗られた防御コートが劣化して白くなる。

 さらに三本の触角のようなビーム砲は相も変わらずプレキシブルに動き、機体の向きに関係なくヤマトを追尾して至近距離から強烈なビームを打ちかけてくる。おまけにバラン星では搭載されていなかった強力な爆弾も追加装備されたようで、巨体に似合わぬ俊敏さで迎撃を掻い潜ってヤマトに叩きつけてくる。

 敵爆撃機はすべてヤマトのみをターゲットとして、ほかの艦艇には目もくれない。

 俊敏なイモムシ型戦闘機も対空砲のターゲットを自ら取りに来るような動きで翻弄し、爆撃機への迎撃を許さないように立ち回っていた。

 

「コスモタイガー隊に迎撃を急がせろ!――ゲットー隊長からの連絡はまだないのか?」

 

「まだありません」

 

 エリナの報告に進は一度目を閉じてからドメルに、

 

「いつでも爆撃機と雷撃機は出せますか?」

 

 と問う。

 

「ミサイルの雨が止んだいまなら出せる」

 

 ドメルも力強く答えた。

 しばし考えたあと、進はドメルに発進させるように願い出た。

 

「――なるほど、ゲットーとミスマル艦長を信じて賭けに出るというのですね……いつまでも敵に主導権を取られるというのは不愉快でもあるし、ここは一つ、賭けに出るのも悪くない。やりましょう」

 

 とても獰猛な笑みを浮かべて応じるドメルに進も頷く。

 DMF-3隊の速力なら、もうそろそろ艦隊に接近できていてもおかしくはない。位置情報さえ送ってもらえればこちらから打って出ることができる。

 それは連中の大編隊に勝るとも劣らない猛反撃となって、この戦局を一変することだろう。

 ――転送戦術の威力を噛み締めてしまったがために、彼らはきっと艦隊の防空を疎かにしているに違いない。また、こちらが同じ戦法で逆転を狙っているは考えてはいないだろう。

 強過ぎる力を持たされると、どこかに必ず驕りが出るものだ。まして手に入れてから一度たりとも痛い目を見ていなければ、なおさらだ。

 戦場において慢心は命取りになると、改めて伝授して進ぜよう。

 その授業料は高くつくだろうがな。

 

 

 

 

 

 

 デーダーはヤマトの前方を航行中の武装空母が甲板の武装をひっくり返して格納し、次々と艦載機を出撃させているのを見て嘲笑した。

 

「ふん、いまさら艦載機の追加か。それも爆撃機と雷撃機とは――よほど艦載機に余裕がないらしいな」

 

 デーダーはヤマトがまだこちらを発見していないという確証があった。もしも発見していたら、あのタキオン波動収束砲を使っているに違いないと確信していたのだ。

 あれほど素晴らしい威力を持つ大砲を死蔵するなどまずありえない。われわれだったらもう使っている。

 それにあの増設ユニットも、解析した限りでは単なるミサイルユニット兼防御フィールド発生機に過ぎないようだ。ドリルミサイル対策は、発射口を塞ぐあの装甲板だけと見て間違いはないだろう。

 

「デーダー司令。ガミラスの戦闘機部隊を補足しました。まっすぐこちらに向かっています」

 

 部下の報告にデーダーは鼻で笑ってから「適当にあしらっておけ」と指示を出す。とはいえ心の中では少々の――いや結構な驚きがあった。

 

「……もうこちらを見つけたのか。思ったよりも早かったな。だがここまでは予想どおり……敵から奪い取った兵器の優位性など過信してはいない。ワープ航跡を追えたかたまたま哨戒部隊が正しい方向に進めたかは知らぬが、こちらを見つけた以上ヤマトが取る行動は……」

 

「デーダー司令、ヤマト艦首をこちらに向けました。装甲板も展開しています」

 

 やはりだ! ヤマトは形勢逆転の為にタキオン波動収束砲を使うつもりだ!

 ドリルミサイルの存在を知っていても、その威力に縋るしかないだろう。

 あれだけ対艦ミサイルの雨に晒されたのだ。決して損害は軽くないはず。焦りも生まれただろう。

 なにより連中は早急にイスカンダルとガミラスに行きたがっている。そのイスカンダルとガミラスにわが暗黒星団帝国の大艦隊が攻撃を仕掛けたことくらいすでに知っているはずだ。

 ならばなおさらわれわれに構っている時間も惜しければ、損害を抑えたいと考えるが必至。タキオン波動収束砲の威力で一気に戦局をひっくり返そうとするのは当然の選択。

 読みどおりだ!

 

「ドリルミサイル転送開始! 撃たれる前に封印してやる!」

 

 あらかじめ待機させておいたドリルミサイルと撹乱用の爆撃機二〇機にすぐワープ光線を照射、転送する。

 これでヤマトは終わりだ。このドリルミサイルがヤマトの波動砲を封じて一発逆転を奪い、そのまま内部から粉々に粉砕してくれることだろう。

 ――そして、こちらには旗艦プレアデスがある。

 決戦兵器を持っていないガミラス艦など物の数ではない。

 こちらには連中の戦艦クラスに劣らぬ火力の巡洋艦が計九〇隻。そこに巨大空母一〇隻からなる大量の航空戦力。

 これだけ圧倒的な戦力差があれば負けるはずがない。勝ちは決まったも同然だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ルリさん、ワープアウト反応には細心の注意を払ってくれ。失敗したらヤマトは一巻の終わりだ」

 

「任せてください。絶対に見逃しません!」

 

 進の発破にルリも真剣な面持ちで答える。

 敵艦隊発見の報を受けたとき、進はすぐに波動砲を準備――する『フリ』を指示した。

 

「しかし古代、敵にはドリルミサイルが……」

 

 説明を飛ばして指示した進に大介が疑問の声を上げた。

 進はそれに答えるべく、作戦を語り始める。

 

「それが狙いさ。敵はヤマトがミサイルの雨に晒されて焦れたと考えたはずだ。戦力でこちらに勝っていて気が大きくなっている。『直接ヤマトと対峙した経験のない指揮官』ならなおさらそういう結論に至るはずだ。先遣隊やバラン星での交戦経験があるにしても、それが正しく指揮官に伝わっていなければ、有利な状況に立てば立つほどに驕りになる」

 

 進はゲットーが送ってきた敵艦隊の画像データにいままで戦場で見かけたことのない大型戦艦の存在を確認した。艦隊の中央に位置している。あれが敵の旗艦だろう。

 

「そして、そんな状況で波動砲の威力だけを見せつけられればそちらに気を取られ、波動砲さえ封じれば勝てると必ず思い込む。――かつて冥王星のシュルツ司令が、超大型ミサイルや艦隊戦力でヤマトの波動砲を封じて、反射衛星砲で仕留めようとしたことを思い出してくれ。あれはヤマトの戦艦としての力を知りつつも、波動砲に注意が向き過ぎたがゆえの戦術だったんだ。堅牢強固な宇宙要塞や惑星上の基地施設であっても、規格外に近い防御装置でなければ防げない威力を、波動砲は持っている。恐れて当然、意識が向いて当然なんだ」

 

「――古代艦長代理の言うことには一理ある。私とてヤマトの波動砲が恐ろしく、ドリルミサイルや瞬間物質転送器を用意して、いかに波動砲を封じるか、封じたあとヤマトをどうやって追い込むかを戦術の要として見ていた。……波動砲はそれほどまでに脅威に映るものだ。前線の指揮官や拠点の指揮官ほど、その威力で一挙に壊滅させられることを恐れるのだ」

 

 進とドメルの言葉にクルーは納得してくれた様子。

 ヤマトの航海における安全保障としても役に立った波動砲の威力。味方として見れば頼もしいが、敵に回せばこれほどの脅威はそうそうない。そこに、こちらが付け入る隙も見いだせるのだ。敵の注意を嫌というほど引いてくれる。

 

「あの黒色艦隊も同じだ。そして彼らはいま、波動砲を封じる策を手に入れている。さっきのミサイルの真意は航空隊を剥ぎ取ってヤマトの防空網に穴を開けることだけが目的じゃない。あれだけの爆撃を受ければ消耗を強いられる。そこに敵艦隊発見の報を聞けば、最も強力で射程の長い波動砲で一発逆転を図るに違いない、そこをドリルミサイルで完封する。それが連中の狙いなんだ」

 

「……なるほど。なら、その思惑に乗るフリをして波動砲を構えてやれば、相手は貴重なドリルミサイルを勝手に使ってくれるというわけだな」

 

 真田も右手を顎に当てて納得する。

 

「とすると、ドリルミサイルを無力化したあとに波動砲を使うのか?」

 

 封印の危険性さえ回避できれば波動砲で一気に撃滅するという選択肢も取れる。

 いまの状況ではそれが最善と思ったであろうゴートが訪ねてきたが、ハリが即座に指摘した。

 

「この七色星団の中で安易に波動砲を使うのは賛同できません。ここはスターバースト宙域――それもかなり活動が活発な部位にあたりますから、波動砲の余波がどんな被害をもたらすのかまるで予測がつきません」

 

 ハリが手元のパネルを操作してメインパネルにヤマト周辺の宙域図を写す。

 

「このように、ヤマトの周辺は『凪』にあたる空間となっていますが、その範囲は全体から見るとごくごくわずかなもので、周囲には星間物質の嵐があちこちに点在しています。もし波動砲を使用した場合、タキオンバースト波動流がもたらす空間歪曲の干渉によってこれらの流れが変化してしまう可能性が高く、ヤマトへの影響も考えられます。予期せぬトラブルを避けるためにも――波動砲の使用は控えるべきだと進言します」

 

「……たしかにそれらに波動砲が作用した場合、どうなるか予測が付きにくいな……敵艦隊を撃滅するには、この広がり方だと六発を使った広域破壊を行う必要があるだろうし、撃滅できても敵艦隊の爆発でより広範囲に影響をもたらす危険性も否定できないか……マキビ君の言うとおり、波動砲の使用は控えたほうがよさそうだ」

 

「そうだな……今回は波動砲はなしでいこう」

 

 進はあっさりと、未練なく波動砲という選択肢を捨てる。

 一発逆転の威力は魅力的ではあるが、なければないでほかの選択肢を選ぶだけだ。ヤマトには威力こそ格段に劣るとはいえ、戦局を左右するに足る威力の武器が、あと三つ残されている。

 

「ハーリー、サテライトキャノンの場合はどうだ?」

 

「いま解析してみます――そうですね、あれは波動砲に比べると格段に作用が劣りますし、GXの単装タイプなら大きな被害はないと思われます。それと、使用数を制限すれば信濃の波動エネルギー弾道弾も大丈夫かと」

 

「なら、敵艦隊への決定打は予定どおりガミラス爆撃機・雷撃機部隊とGXのサテライトキャノンとして、そこに信濃の波動エネルギー弾道弾を加えるものとする。――島、ゴートさん。ドリルミサイルを躱したら信濃に移譲して発進に備えてくれ。ヤマトの操舵はハーリーに任せる」

 

 進は迷わずサテライトキャノンの使用を決断した。

 使わずに済めば越したことはない力でも、使わずにクルーを、ひいては地球の未来を危険に晒すわけにはいかない。

 ――指揮官として、辛い選択だと常々思う。

 

「……わかった。任せたぞ、艦長代理」

 

 島もゴートも心得たと信濃の格納庫に出撃準備の指示を出し、ハーリーも「了解しました」と緊張した面持ちで応じた。

 バラン星の戦いで全部撃ち尽くしてしまっているので、補充が間に合ったのはたったの四発。かなり少ないが、戦艦の二隻くらいなら十分始末できるだろう。

 いまはこれが切り札になるだろう。

 

「あとは、信濃出撃のタイミングだな。敵の行動がもう少し読めるなにかがあればいいんだが……」

 

 

 

 第一艦橋でドリルミサイル排除の流れが決まったときも、コスモタイガー隊は敵航空部隊と派手な空戦を演じていた。

 度重なる強化改修で性能を増したアルストロメリア。その性能をいかんなく発揮して互角の戦いを演じていたが、数の暴力、そして敵機の火力の高さには手を焼いていた。

 全機が今回から配備された中央で折りたためる展開式の大型シールドを使用して敵の攻撃を凌ぎつつ、返す刀で撃ち落としていく。

 

「すまん! そっちは任せる!」

 

「おうっ! 任された!」

 

 コスモタイガー隊の面々は互いに声を掛け合いフォローし合いながら、群がる爆撃機とその護衛の戦闘機に果敢に立ち向かう。

 いずれもアルストロメリアよりも大きい、現在の地球では大型機動兵器と言われる部類の機体は頑丈で、撃墜するにも一苦労だ。

 オプションで用意された武装でもロケット砲やレールカノン、Gファルコンの主砲たる拡散グラビティブラストなどの高火力兵装を中心に、場合によっては接近してハサミを閉じたアトミックシザースを突き立てて装甲をこじ開け、その隙間にビームを撃ち込むなどの工夫を凝らして効率的にダメージを与えていく。

 Gファルコンから計二〇発のミサイルを撃ち放ち、続けて両腕の内臓ビームライフルを発射。

 アトミックシザースからのビーム砲の追撃に拡散グラビティブラストで面制圧。

 接近してクローを突き立てシザースを突き立て。

 黙ってやれてはくれない敵機も次々とビームを撃ちかけてくる。危うい攻撃を盾の表面を溶かされながら受け止め、反撃――できずに機体を損壊させながらも後退して体勢を立て直して反撃。

 

 ――熾烈極まる攻防が続く。

 

 ヒカルはイズミが乗るアルストロメリアと互いの死角をフォローしながら爆撃機迎撃任務に勤しんでいた。

 

「うぇ~ん! 相変わらず触角がグネグネ動いて気持ち悪いよぉ~」

 

 まるで虫のような――しかも触角がわさわさ動いて黒いボディーとあって――生理的嫌悪感を感じながらレールカノンとアトミックシザースのビーム砲を撃ちこんで目障りな触角を切断、各所に備わった連装機銃が撃ちかけてくるビームを避けながら急接近、アトミックシザースのハサミを閉じて機首下側設置されているコックピットに向けて容赦なく突き刺す。

 

「……機体の下のほうにコックピットがあるってことは、やっぱり対地爆撃も考慮してるってことかなぁ?」

 

 漫画のネタ探しだったりウリバタケの蘊蓄だったりで、そこそこのミリタリー知識を持っているヒカルがぽつりと感想を漏らす。

 ――すっかり戦争に慣れてしまったと頭の片隅で自虐的な感想が浮かんでくる。

 ナデシコ時代にも思ったが、あの時よりもさらに深刻で容赦のない戦いに足を踏み入れてしまった。

 もちろんヒカルなりに理由があってヤマトに乗って戦う道を選びはしたが――まさかここまで容赦のない攻撃ができるほどになってしまうとは……。

 

(ま、コックピット外したって撃墜するんなら同じことだけどね)

 

 いまさらそんなことを考えている自分に冷ややかに突っ込みながらも手は休めない。

 少し離れた敵に向かって収束モードの拡散グラビティブラストを撃ちこんで撃墜。地球を発って以来、この砲には幾度となく助けられてきた。アルストロメリアの量産成功もそうだが、Gファルコンなくしてコスモタイガー隊の活躍はあり得なかっただろうと心底思う。

 ――やっぱり、ロボットには強化パーツの合体が不可欠だ。

 

「ヒカル、右舷のガミラス戦艦がちょっとヤバ目だ。支援に行こう」

 

「りょーかい!」

 

 イズミに促されて素直に応じる。幸いほかの機体も頑張ってくれるしなにより――

 

「オラオラァッ! 近づく奴ぁ、容赦しねえぞ!!」

 

 開きっぱなしの通信機から聞こえてくるサブロウタの威勢のいい声にちらりと視線を向けると、そこには大量の弾薬を惜しみなく吐き出しているGファルコンデストロイの姿があった。

 Gファルコン側に増設した対空ミサイルと宇宙魚雷も、左足に増設したセパレートミサイルポッドもさっさと撃ち切って、スタビライザーやポッドを切り離して身軽にしつつ敵陣の真っただ中に突撃。

 両腕のツインビームシリンダーから、両肩のショルダーランチャーからビームを吐き出しつつGファルコンに懸架された巨大な大型爆弾槽のハッチをオープン、中から片側二六八発の高性能炸裂弾を吐き出して機体の両側面に眩いばかりの花火を咲かせる。

 その中に突っ込んでしまった不運な機体はたちまち撃墜され、慌てて避けた機体は突入コースを著しく逸脱して――。

 

「もらった!」

 

 レオパルドのおこぼれを狙ったエアマスターが撃ち落としていく。

 Gファルコンバーストとなったエアマスターの機動力や凄まじく、DMF-3やイモムシ型戦闘機と言った異星人の宇宙戦闘機すら引き剥がす圧倒的な速度、そこにノーズビームキャノンと拡散グラビティブラストの火力が加わったとあれば、並大抵の戦闘機ではまるで歯が立たない。

 なんとか後方に回り込んでビームを撃ちかけたイモムシ型戦闘機も、軽々と回避された挙句後方に向けられた拡散グラビティブラストから放たれた重力波の散弾でコックピットを射抜かれて宇宙に散った。

 まさかGファルコンバーストが後方射撃にも対応しているとは思わず虚を突かれたのか、不用意な隙を晒した機体を周辺にいたアルストロメリアが容赦なく撃ち落としていく。

 

「うひゃ~。ガンダムすごいなぁ~」

 

 今度自分も乗ってみたい。

 なんとなくオタクな心境が顔をのぞかせた。

 

 数の上で絶対的な不利を抱えながらも、登場して以来変わらぬ(非常識な)優位性を見せつけるガンダムを起点として、コスモタイガー隊の懸命の反撃が続けられていた。

 ――しかし数の暴力というのは覆しがたいもので、奮戦しながらも徐々に徐々に損傷を蓄積していった。

 いまは戦闘空母が本体攻撃用の爆撃機と雷撃機を懸命に吐き出している最中。ほとんど標的にされていないとは言ってもいくらかの敵機が発艦中の艦載機を沈めてしまおうと踵を返している。

 それをカバーするコスモタイガー隊の負担は急激に増大していた。

 そして――。

 

「ぐあっ!?」

 

 一瞬判断を迷った一機のアルストロメリアが、イモムシ型戦闘機と接触事故を起こして弾き飛ばされてしまった。

 接触したイモムシ型戦闘機はGファルコンアルストロメリア程度の質量との接触でどうにかなるほど軟ではないらしく、すぐに軌道修正して吹き飛ばされたエステバリスを撃墜しようとしたが――。

 ビームが一閃。

 真上から撃ちこまれたビームに機体を貫かれ、明後日の方向に飛び去り雲海へと突っ込んでいく。あれは――無事では済まないだろう。

 

「大丈夫か? 帰還できそうか?」

 

 イモムシ型戦闘機を容易く仕留めたのは、ヤマト最強の地位を揺るがぬものとしたGファルコンDX。

 増設された武装の内、ミサイルと魚雷とレールカノンは使い切っている様だ。機体表面には何度か被弾したであろう『擦過傷』が見られるし、左手のディフェンスプレートも脱落しているが、こちらとは比べ物にならないほど、いっそ嫌味すら感じてしまうくらい奇麗な状態だった。

 

「な、なんとかな……でも右腕が駄目そうだ、切り離す」

 

 右肩の付け根で起こった小規模の爆発で右腕が丸ごと切り離される。爆発ボルトを使った強制排除機構が作動したのだ。

 右腕は肘から下は無傷だが、肩のあたりが大きく拉げている。どう見ても作動できそうにはない。

 

「護衛するからすぐに戻って応急処理を。このままの戦闘継続は危険だ」

 

「言われなくてもそうさせてもらう――隊長、修理と補給のため帰還させてもらいます!」

 

 パイロットはすぐに隊長のリョーコに報告を入れる。勝手に戻って戦線に穴を開けてしまうわけにはいかないのだ。

 

「わかった! 命あっての物種だからな!」

 

 許可も取れたのでヤマトに引き返そうとしたアルストロメリアに敵機が迫る。

 対処を――!

 とパイロットが行動するよりも先に、なにを思ったのか、咄嗟に切り離された腕を空いていた左手で掴んで、Gハンマーの要領でグルグルと回して勢いをつけるダブルエックスの姿が視界に映った。

 そして!

 

「ゲキガンパンチッ!」

 

 と叫んで敵機の眼前に放り投げる。

 まさかまさかの手動式ロケットパンチが炸裂!

 破損した機体の部品を放り投げるとは思っても見なかった敵機はつい慌ててしまって姿勢を乱す。命中こそ避けたが無防備な姿をダブルエックスの眼前に晒す結果となった。

 そこに頭部バルカンとGファルコンの大口径ビームマシンガンを全力で叩き込んでハチの巣にする。

 防御フィールドとそこそこ頑強な装甲を持つとはいえ、そこは最強の代名詞ガンダムの攻撃だ。敵機は耐えきることができずに爆ぜて消えた。

 いまの攻撃で頭部バルカンの弾を使い切ってしまったようで、空しい作動音が通信機を通して伝わってきた。

 ダブルエックスはまた一つ武器を失った。

 今後に差し支えるかもと思うよりも先に口から、

 

「おまっ、ゲキガンパンチて……」

 

 とツッコミが飛び出していた。

 

 突っ込まれたアキトはひどく狼狽えてしまった。

 ついガイのことが頭に過ってしまったがゆえの言動だったが……冷静になってみると気恥ずかしい。

 

「まあ、その機体もヤマトもゲキ・ガンガーみたいなものだけどさ……。いや、妙なこと考えてる時間はないか。ありがとうテンカワ、今度なにか奢らせてくれ」

 

 感謝の言葉と共に彼は傷ついた機体を労わりつつ、ヤマトの下部発着口へと滑り込んでいく。

 

「……ダブルエックスとヤマトはゲキ・ガンガー、か」

 

 人型――ワンオフ生産のスペシャル機――その誕生経緯故にガイの事を重ねたダブルエックスのことしか目に入っていなかったがなるほど、たしかにヤマトの立ち位置を物語に置くのであればまさしくゲキ・ガンガーのようなスーパーロボットそのものだろう。

 悪の大群相手に孤軍奮闘、しかもそれ以外の戦力はあまり役に立たないとくればまさしくだ。

 ある意味では、かつてアキトが、ガイが、木連の人々が焦がれたゲキ・ガンガーの現身と呼べる存在と考えても、当たらずとも遠からずなのだろう。

 ならば、物語の結末はハッピーエンドが望ましいのだが……。

 敵機の迎撃を続けるべく振り返ったダブルエックスのメインカメラが、ヤマトの周囲に出現した新しい爆撃機の編隊と、遅れて出現した件のドリルミサイルの姿を捉えていた。

 

 

「ワープアウト反応! 敵爆撃機さらに追加!」

 

 ハリの報告に守とゴートはすぐに対空迎撃を指示する。

 ヤマトからの対空攻撃はミサイルに止め、パルスブラストは使わない。傷ついたコスモタイガー隊も、残された力を振り絞って必死に艦隊上空を飛び回って攻防を続ける。

 正面に陣取っていた戦闘空母を右に移動させ射線を確保、いかにも波動砲で狙っていると示した瞬間にこれだ。たしかに波動砲に追加した装甲板を開放しているとはいえ所詮はブラフ。これは――

 

「さらに正面にワープアウト反応!――ドリルミサイルです!!」

 

 ワープアウトした物体の形状と質量からヤマトにとって最大の脅威――ドリルミサイルが撃ち込まれたことを確認する。

 

「島!!」

 

「全速後退!! 波動砲口よりエネルギー噴射!!」

 

 波動砲からタキオン粒子が猛烈な勢いで噴出され、ヤマトが全速で後退を始める。

 ベテルギウス以来となるヤマトの全力逆噴射。吹き出すタキオン粒子の奔流はヤマトを猛烈な勢いで逆進させた。

 メインノズルと同等の推力を持つ噴射はヤマトを急加速で後退させることに成功、予想どおりドリルミサイルとの着弾を遅らせるという目論みを果たした。

 ――が。

 

 

 

 

 

 

 

「――ふん、ブラフだったか。だがその程度で逃げられると思うなよ」

 

 デーダーはヤマトに謀れたことを不愉快に思いながらもドリルミサイルの制御を部下に命じる。

 こういった事態を想定して簡易ではあるが改造してある。すでに撃ち放ってしまった以上命中させなければこちらが終わりだ。なにがなんでも命中させなければ……。

 デーダーの額にわずかだが、汗が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

「ドリルミサイル、増速を確認! 追尾してきます!」

 

 ハリの報告に苦い顔をしながら、大介は操縦桿を操ってヤマトの進路を左に変更している。だがドリルミサイルは食いついてきた。

 

「どうやら爆撃機に積まない代わりに本体にエンジンを増設したようだな」

 

 メインパネルに映し出される拡大映像を冷静に分析するドメル。

 ドメルが発注したときのドリルミサイルは探査用の特殊削岩弾に爆薬を追加したり、侵入者対策を施した程度であまり大規模な改造は施されていなかった。

 だがいまのドリルミサイルは後部にエンジンユニットが、本体に固定用のマニピュレーターと思われる部品が増設されているのが見て取れる。

 おそらくあれでヤマトの艦首をがっちり掴んで確実にドリルミサイルを波動砲口に送り込むつもりなのだろう。

 なかなか考えている。鹵獲品とはいえ使えるものは有効に使う姿勢は素直に評価すべきだろうか。

 波動砲からのリバースで全速後退を続けるヤマトにドリルミサイルが迫る。このままでは直撃は避けられない。

 

「真田さん、Nユニット分離! 盾にするんだ!」

 

「わかった! ユニット分離! ヤマト前方で交差させて盾にするぞ!」

 

 真田が艦内管理席からの操作でナデシコユニットをヤマト両舷から切り離すと、後部エンジンに点火。切り離されたナデシコユニットは先端のブレード部分をヤマトの艦首前方で交差するようにしてヤマトの盾となる。

 そのナデシコユニット――前方に出ていた左ユニット目掛けてドリルミサイルは正面から激突、激しい火花を散らす。

 先端のドリルを回転。

 トルクを相殺すべく姿勢制御スラスターを噴射して本体の回転を防ぎつつ、ナデシコユニットの装甲をガリガリと削る。さらに先端からプラズマトーチを出力して掘削スピードを上げていた。

 本来備わっていなかった機能だ。制御室があるドリル中心のスペースにこれほどの出力を持つプラズマトーチを内蔵するとは……!

 その勢いのまま左ユニットのブレードを貫通し、後方にあった右ユニットのブレードに食い付いて火花を散らす。

 想像以上の掘削力にさしものドメルもも緊張を隠せない。やはり急増品のユニットの装甲で防げる代物ではなかった。

 ドリルミサイルはそのまま右ユニットのブレードを貫通してヤマトに迫ってくる。

 しかしヤマトはドリルミサイルがナデシコユニットを突破するまでの時間を利用して大きく艦尾を左に振って波動砲をドリルミサイルの正面から退けることに成功している。装甲も閉鎖完了。

 ドリルミサイルは依然ヤマトに向かって突き進み、増設された四本のマニピュレーター(爆撃機の触角型ビーム砲と形状が似ている)を展開してヤマトの艦首を抱え込もうとしていた。

 逆噴射を諦めたことで減速したヤマトに追いついたドリルミサイルの先端が、波動砲を覆い隠す装甲板に接触、プラズマトーチと頑強なドリルが激突して激しい火花を散らして装甲を削り取っていく。

 激しい振動に揺さぶられながらも、ヤマトはなおも艦尾を左に振って、艦首を軸に艦を回転させる。

 ミサイルのマニピュレーターがヤマトの艦首を抱え込もうと伸びる。

 左舷のロケットアンカーをドリルの根本付近に撃ち込んで強引に進路変更。

 ――熾烈な攻防の末、ドリルミサイルは波動砲を隠す装甲板を剥ぎ取り発射口右側に接触して削り取り、アンカーのチェーンを引きちぎりながら波動砲に突き刺さることなく通り過ぎてしまった。

 追加された装甲は、時間稼ぎという宿願を見事果たして七色の宇宙の藻屑と消え去る。

 通り過ぎたドリルミサイルは懸命に進路を修正しようと宙を泳ぐが、ヤマトは回転を止めて右舷スラスターを全開して水平移動。ドリルミサイルから距離を取りながら第一主砲を旋回。ドリルミサイルを狙う。

 ドリルミサイルが速いか。主砲が速いか。

 緊迫して一秒が一〇秒にも感じられる攻防が続く。

 その結末は――ヤマトの第一主砲から放たれた重力衝撃波が、ドリルミサイルを射抜いたときに決した。

 確実にヤマトを破壊すべく爆薬を増やしていたのだろう、至近距離で激しい爆発に晒されたヤマトは大きく揺れ、破片の直撃を受けた右舷コスモレーダーアンテナがもぎ取られ、艦長室右側のアンテナもへし折られ、右舷パルスブラスト数基の砲身が折れ曲がる被害を被りはしたが、最大の懸念であった波動砲の封印と破壊を回避することに辛うじて成功したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「ばっ、馬鹿な……!!」

 

 デーダーは思わぬ結末にシートから立ち上がって驚愕する。

 まさか、あの増設ユニットが切り離し可能な作りになっていたとは――!

 

(ガミラスに与した以上、対策を取られることは想定していた……! あの発射口を塞ぐ装甲板がそうだと思っていたが……あれはこちらの誤認を誘うためのものだったのか……! あの増設ユニットも単なる武装とフィールド発生装置ではなく、これすらも視野に入れた装備だったとは……っ!!)

 

 実際はデーダーの推測どおり、装甲板だけがドリルミサイルの対策で、進が咄嗟にナデシコユニットを盾にすることを思いついたに過ぎないのだが、デーダーにそれを知る術はない。

 ギリリッ! と歯軋りしながらも艦隊に散開を指示する。こうなれば少しでも間隔を取って一気に壊滅することを避けなければならない。

 

「デ、デーダー司令! 艦隊後方に未知の粒子反応を検出! 重力場の変動も確認しました! これは――!」

 

 オペレーターの報告よりも早く、デーダーは艦隊の後方――空母が隊列を組んでいた付近にさきほど武装空母から出撃したばかりの爆撃機と雷撃機――そして一際活躍が目立っていたヤマトの人型二機が出現したのを見た。

 

「ヤ、ヤマトの転送戦術だと!?」

 

 瞬間物質移送器の反応ではない!

 デーダーの知らない未知の転送技術を持ってヤマト・ガミラス艦隊はこちらの心理的有利に付け込んだ反撃を開始したのだ。

 デーダーがそう理解したときには、爆撃機・雷撃機編隊の雷撃で空母が五隻も沈み、残された五隻もヤマトの人型の一機が放った(機動兵器としては異例なまでに)巨大なビームの奔流に貫かれ、呆気なく四散してしまっていた。

 想定外の事態に思考停止仕掛けたデーダーの耳に、オペレーターから悲鳴に近い報告が飛び込んできた。

 

「デーダー司令!! ヤマトが向かってきます!!」

 

 声に反応して頭上のメインパネルを見ると、艦首を真っ直ぐこちらに向けて前進してくるヤマトとガミラスの艦艇の姿が映し出されている。

 そう、増設ユニットを全て使って守り抜かれたヤマト最大の兵器。

 そしてわが暗黒星団帝国にとって致命的な威力を発揮するであろうタキオン波動収束砲の砲口が、真っ直ぐこちらを向いている。

 それを塞ぐはずだったドリルミサイルは仕損じ、砲口の端っこを削るだけに終わった。

 デーダーは死神に心臓を鷲掴みにされたような冷たい感覚を腹に感じながらも、即座にヤマトとの砲撃戦を指示する。

 こうなれば距離を詰めて至近距離で撃ち合うしかない。チャージの暇も与えず力押しするしかないと悟る。

 

 こうして、暗黒星団帝国優位に進んでいた戦局は一変し、ヤマト・ガミラス艦隊と正面からの砲撃戦に移行するのであった。

 

 

 

 予想されていた七色星団の艦隊戦は熾烈を極め、一時は暗黒星団帝国が優位に立ちまわっていた。

 

 しかし、切り札であるドリルミサイルを辛くも退けたヤマトとガミラス複合艦隊の猛反撃が、いままさに開始されようとしていた。

 

 ヤマト行け! 危機に窮している三つの惑星を救えるのは君しかいないのだ!

 

 人類滅亡と言われるその日まで、

 

 あと、二四三日。二四三日しかない!

 

 

 

 第二十三話 完

 

 次回、新宇宙戦艦ヤマト&ナデシコ ディレクターズカット

 

    第二十四話 激戦! 封じられた波動砲!?

 

    切り札を失い、ヤマトはどう抗う?

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