また新たな仲間が合流です。たった一人で戦い抜いてきた勇者--
隠しておく事も優しさの1つなのかもしれません。
総勢15名となり、賑やかになった勇者部。
香澄「どうみんな、こっちの生活にはもう慣れた?」
あこ「とっても快適だよ!昨日なんて8時間以上スヤスヤ寝たもん。」
香澄「紗夜さんは?」
紗夜「私は…環境の変化に戸惑ってます。だから西暦組のクラスが校内で孤立してる計らいは、気に入っています。」
そこへリサがやって来る。
リサ「お楽しみのところごめんねー。実は嬉しいお知らせがあるんだー。新たな神託があったんだけど……。」
高嶋「もしかして新しい勇者!?」
リサ「そうだよ!もうすぐまた1人、勇者が召喚されるみたいなんだ。頼もしい限りだよ。」
有咲「思ったより勇者っているんだな。戦力が増えるのは大歓迎!」
友希那(新しい勇者…それはもしかして……予感が当たると嬉しいのだけれど。)
友希那の脳裏に浮かぶのは、あの勇者の声--
会った事も無い盟友の姿--
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次の日、勇者部部室--
僅かな期待を胸に抱き、友希那が部室へとやって来た。
友希那「あら?今日は山吹さんだけなのね。部室に来ているのは。珍しいわね。」
沙綾「天気も良いから、みんな外に出たり思い思いに過ごしてます。」
友希那「そう…。折角2人きりですし、改めて聞いてみたい事があったの。自分がもう1人いるという状態は、大丈夫なのかしら?物理的に自分と向き合うというのは、中々強烈でしょう?花園さんは、心底楽しんでるみたいだけど。」
沙綾「はい、すぐに慣れましたよ。心配してくれてありがとうございます。」
沙綾は深々とお辞儀する。
沙綾「でも、悩みもあります…。」
友希那「私で良かったら聞くわよ。」
そう言って、友希那は沙綾の隣に座った。
沙綾「私は、沙綾ちゃんが……自分がこれからどうなるのか運命を知っています…。それを話すべきか、それともいっそ話さないべきかで悩んでるんです。」
友希那「今は造反神を鎮めるのが先という事で、話していない訳ね…。」
沙綾「そうです。この世界優先で、実際の世界の話は、今のところは置いといています。私とおたえの意見は…話すべきだと思う方に傾いているけれど、大事な問題だから良く考えています。」
どっちを取るのも難しい問題に、友希那は即答出来ない。
友希那「それは確かに悩ましい問題ね…。山吹さんは知りたがってるとは思うけれど……。」
沙綾「良いんですよ。聞いてもらっただけで楽になりましたから。」
友希那「どちらにしろ、この世界をどうにかしてからね。それまでは私も一緒に考えるわ。」
そして、次は友希那が質問をした。
友希那「…ちなみに西暦の…私達の詳しい話を知っているかしら?人類を守れたのなら良いのだけれど、もっと詳しい情報があるのなら…。」
沙綾「西暦時代の勇者の話は、大赦が情報を操作してるから、私でもほとんど分からないんです。でも、知っている限りなら…。今、話しましょうか?たいした量では無いので。」
友希那「お願いするわ。リーダーとして知っておきたいの。受け止めてみせる。」
友希那の覚悟を聞いて、沙綾は話し出す。
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友希那「何ですって!壁の外は一面の炎で、バーテックスの世界になっている…。私達の時代は、まだ荒廃した世界が残っていたのだけれど。…何かが行われたのね。」
沙綾「でも、人類はまだ生きている。だから…。」
友希那「分かってるわ。驚きはしたけど御役目に支障は無い。ありがとう、教えてくれて。」
沙綾「強いんですね。きちんと受け止めて…。」
友希那「私個人ではそんなに強く無いわ。ただ強くしてくれる存在がいる。」
沙綾「分かります、その気持ち。」
友希那(四国の外は灼熱の世界…あそこは大丈夫なのかしら…。)
沙綾からの話を聞き、思いを募らせる友希那なのだった。
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一方同時刻--
高嶋香澄の部屋に小学生組が来ていた。
小沙綾「高嶋さん、何か困った事はありますか?」
夏希「寄宿舎暮らしは私達の方が長いから、助けになると思いますよ。」
高嶋「2人ともありがとう、大丈夫だよ。」
あこ「とっても快適だよ!りんりんも。未来の小説を沢山読んでるよ。」
燐子は嬉しそうに小説のページをめくっている。
高嶋「紗夜ちゃんも神世紀のゲームを色々とやってるよ。何だかんだで楽しんでる。」
小沙綾「それは何よりです。夏希、友希那さんの様子も見に行こうか。」
夏希「そうだね。ここ数日ちょっと口数少なくて心配だよ。」
2人の会話にリサが入ってくる。
リサ「おっ、夏希鋭い眼を持ってるね。確かに、ここ数日は様子が変だった。」
小沙綾「リサさんから見てもそうなんですね。」
リサ「私が相談に乗ろうと思ったんだけど、あんまり相談に乗りすぎても友希那の為にならないしね。だから、ここ数日様子を見てたんだけど、限界だからこれから話を聞きに行くところだったんだ。」
高嶋「それは確かに心配だね。よし、私も行くよ。」
小たえ「みんな行くの?じゃあ私も行くよ。役に立つと思うから。」
こうしてみんなは友希那を探しに行ったのだった。
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探しに出ようとしたちょうどその時、自室に戻ろうとする友希那とばったり出くわす。
友希那「みんな揃ってどうしたの?」
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寄宿舎、友希那の部屋--
夏希達は友希那の部屋に入って、事情を説明した。
友希那「そう、それで…。嬉しいけど、心配かけたみたいね。ごめんなさい。」
友希那は頭を下げる。
友希那「実は…諏訪の事を考えていたの。つまり、美竹さんの事ね。」
西暦時代、友希那が定時で連絡を取り合っていた人が、諏訪の勇者である美竹蘭。彼女も、友希那と志を共にする離れた場所にいる仲間だった。
夏希「諏訪?」
小沙綾「かつての長野県にあった街で、諏訪湖に接してるんだよ。」
リサ「実は西暦では、四国以外にも勇者がいたんだ。彼女も…そこで結界と人々を守ってたんだよ。」
高嶋「確か今度みんなで調べに行こうって話になってたんだよね。」
友希那「けれど神世紀では、壁の外は大変な事になっている……諏訪は大丈夫なのかしら。美竹さん…。」
リサ「友希那、それで色々考えてたんだね。」
その時、部屋が光に包まれる--
友希那「っ!?この光は……まさか新しい勇者が!?」
リサ「うん。どうやら到着したみたいだね。」
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しばらく経ち、光が弱まりだし、やがておさまると--
友希那「…光がおさまったようね。っ!?」
友希那は目の前の光景に驚く。
?「あれ……?こ、ここはどこなの?」
?「蘭、さっき話してたやつだよ。私達は神樹様に呼ばれたの。神樹様は土地神様の集合体。私達を守ってくれていた神様と関わりの深い神様が沢山いるから。」
目の前にいたのは2人の少女だった。
友希那「この声……まさか、美竹…さんなの?」
蘭「私を知ってる?その声は……まさか。」
友希那「湊……友希那。湊友希那よ!美竹さん!!」
友希那は目に涙を浮かべながら叫んだ。
蘭「本当に…湊友希那さん…。うどんと蕎麦、優れてるのはどっち?」
友希那「うどんよ。」
蘭「間違いなく、湊さん…!!こうした形で会えるなんて。」
蘭と一緒に現れたもう1人の少女、青葉モカは2人の会話に戸惑っていた。
モカ(蘭、いきなり会話が弾みすぎだよー。どうしよっかな。)
リサ「これはみんなを部室に召集しないとね。」
小沙綾「みんなを集めるのは私達に任せてください。夏希、おたえ、先輩達の役に立つよ!」
沙綾の掛け声を待つ間もな無く、夏希は駆け出していた。
小たえ「夏希もう行っちゃったよ。張り切ってるー。」
小学生組がみんなを呼んでいる間に、ここにいた人達は先に部室へと向かった。
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勇者部部室--
みんなが揃い、諏訪組が挨拶をする。
蘭「改めて、諏訪の勇者、美竹蘭です。皆さん宜しくお願いします。趣味は花道と農業です。」
モカ「諏訪の巫女、青葉モカですー。お願いしまーす。趣味は特に無いです。」
香澄「今回は巫女さんまで来てくれたんだね。良かったね、リサさん。」
リサ「そうそう!私1人だとそろそろ大変だったから、もう大歓迎だよ!」
モカ「精一杯頑張りますよー。」
友希那「声だけは何度も聞いた事があるけれど、こうして直接会えるとは思ってなかったわ。」
蘭「こちらもです。これから宜しくお願いします。」
2人は握手を交わす。その時、端末のアラームが鳴り始めた。
蘭「これは?諏訪のサイレンとはまた違う音だけど…。この時代特有のアラーム?」
有咲「樹海化警報だ。敵が来たって事。来たばかりで何だけど、戦闘だ。」
蘭「成る程…手荒い歓迎だね。私の力見せてあげる!」
リサ「蘭!取り敢えず携帯端末を持ってって。使い方はみんなが教えてくれるから。」
そう言って、リサは蘭に端末を手渡した。
モカ「蘭、頑張って。」
蘭「まかせて、モカ。」
勇者達は樹海へと急ぐ--
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樹海--
勇者達は端末で一斉に変身する。
蘭「なっ!?」
香澄「よし、変身完了……って、蘭ちゃんどうしたの?」
蘭「みんなボタン1つで変身出来るなんて……。」
友希那「そうだったわね。美竹さんは変身する時は着替えていたと言っていたわ。」
諏訪では端末は無く、境内に安置されていた勇者装束をいちいち引っ張り出して着替えてから戦闘していたのである。
りみ「しゅ、手動ですか。」
蘭「そうだけど…。私の勇者装束はどこ?」
ゆり「ここでは勇者システムは最新版になるから、端末のボタン1つで変身出来るよ。」
蘭「これで……。」
そうして、蘭も端末のボタンを押し、金糸梅の勇者へと変身する。変身した蘭は周りを見回して言う。
蘭「それで、この辺り一面の木の根みたいな世界は?」
中沙綾「ここは樹海と言って、勇者達が安全に戦える結界みたいなものです。」
蘭「樹海……。私の時は敵が来たらサイレンが鳴って、みんなや周りはそのままだった。」
あこ「それは驚くよね。あこたちも精霊が具象化?実体化?した時は驚いたもん。」
友希那「私達の時代では、精霊は体の内部に入れてたものね。」
蘭「精霊?私には無かったな、そんなの。」
燐子「美竹さんのところには精霊も無かったんですね…。」
蘭は精霊も無く、強化された肉体と武器のみで諏訪をたった1人で守り抜いてきた勇者なのだ。1対多の戦闘に関しては彼女の右に出るものはいないだろう。
蘭「それより、戦闘力も飛躍的に向上してる。力が漲ってくるのが分かる。」
夏希「戦闘力も最新ですから、ガンガンいけますよ!」
紗夜「素敵な事です。思う存分、敵を刈れますから。この世界に来て嬉しい事の1つです。」
神世紀組の勇者達は次々明かされる西暦組の勇者システムとの違いに驚いていた。
りみ「神世紀の勇者システムは基本的な部分では、恵まれてたんだね。」
中沙綾「御先祖様達の積み重ねのお陰だね。私達は感謝しないと。」
その時小学生沙綾が敵が来た事を知らせる。
蘭「征くよ!諏訪の誇りを胸に!」
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蘭は武器である鞭を使って、星屑を次々打ち倒していく。
燐子「鞭…意外と応用が効く武器ですね…。それを巧みに使いこなしています。」
紗夜「そうですね。攻撃と防御を補えるのは、美竹さんの力の賜物でしょう。」
勇者部達は戦いながら蘭の戦闘スタイルを見ていた。
蘭(1人じゃない……仲間と一緒に戦うってこんな感じなんだね。凄く心強い。)
蘭を中心に、勇者部はバーテックスを殲滅したのだった。
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勇者部部室--
蘭「ただいま、モカ。怪我なかった?」
モカ「蘭、それはこっちの台詞だよー。」
蘭「でも、樹海化してる時ってモカとかはどうしてるの?」
中たえ「私がついてるから大丈夫だよ。」
リサ「みんな、お疲れ様。それじゃあ、蘭にも詳しく説明するね。」
リサは蘭にこの世界の事や御役目について説明をする。
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蘭「ありがとうございます、しっかり理解しました。外の時間が止まってるなら諏訪の畑も大丈夫だね。」
友希那「……っ!?」
その言葉に、友希那の顔が少し険しくなった。
蘭「ところで、私とモカは御役目の途中でここに飛ばされて来たんだけど、未来の時間で、諏訪がどうなってるのか誰か知ってる?」
友希那は迷っていた--
言うべきか言わないべきか--
それはこの前中学生の沙綾が悩んでいた事と全く同じ状況だったのだ。少しの間を置いた後、友希那が口を開く。
友希那「…そのへんについては、この神樹様の世界を救ってから考える。…そう決まってるの。」
友希那は黙っている事を選択した。諏訪は既に灼熱の世界で、蘭とモカも生きているかは分からない、などとこの世界に来てすぐの人に言える筈が無い。それは余りにも酷な事だ。
蘭「そう…。」
だが、蘭は友希那の迷いを見抜いている様だった。
蘭「と言うか湊さん、そのリアクションだと、諏訪が大変な事になってそうな事は想像付きますよ。」
友希那「うっ……。」
蘭「まぁ、変な未来にならないように、諏訪に戻ったらまた全力で頑張ろうか、モカ。」
蘭は動揺は見せなかった。
モカ「…蘭ならそういう前向きな事を言うと思ってたよ。」
蘭「それは未来の私に任せたよ。今の私は、みんなの名前を覚えるところから始めようか。」
友希那「…美竹さんが勇者に選ばれた理由が、今とても良く分かった気がするわ。」
モカ「蘭はいつもあんな感じで、みんなを鼓舞してましたから。後は畑の1つでもあれば蘭は大丈夫です。」
リサ「モカもついてるしね。」
友希那「美竹さん。語り合いたい事が沢山あるわ。後でゆっくり話しましょう。」
蘭「こちらも同じです……湊さん。」
会いたかった親友に会う事が出来た友希那。いつの間にか友希那の悩みは消え、その顔にはいつも通りの笑顔が広がっていたのだった。