一癖も二癖もある勇者達が物語を新たなステージへと進めていくでしょう。
とある日、勇者部部室--
香澄「リサさんリサさん。ここも大分賑やかになってきたね。」
リサ「そうだね。これだけ勇者が揃ってると、頼もしいよ。」
勇者部のメンバーは現在で17名。かなりの大所帯となってきた。だがその分部室に全員が入るとなると、多少狭くなってもいる。
紗夜「正直狭いですね…。牛込さん、何とかなりませんか?」
ゆり「家庭科準備室だし、元々は6人くらいの部屋だからね。そこは我慢して。」
高嶋「じゃあ、空間を確保する為に、私は紗夜ちゃんの膝に座ろーっと。」
そう言って、高嶋香澄は紗夜の膝上にちょこんと座った。すると、紗夜の顔がみるみる赤くなり始める。
紗夜「…まぁ人が多いという事は戦力も増えて……良い事です。」
香澄「リサさん、モカちゃん質問!これで召喚される勇者は全員なのかな?」
モカ「えっとねー、後2人来るんだって。だけど、ちょっと特殊なケースみたい。」
りみ「それは、神樹様が特殊なケースっていう言葉を使ってるんですか?」
香澄「神託ってどんな感じで来るの?」
モカ「明確な言葉じゃなくて、イメージで伝えてくるって感じかな。」
神託は基本的に神樹から巫女への一方通行のお告げである。巫女は受け取った神託を自分なりに解釈して勇者達に伝えている。
?「へーそうなんだね。ウチのところは精霊が色々と教えてくれるけど。」
モカ「ほー。それは便利だねー。」
有咲「えっ!?いきなり誰だ!?」
モカ「あれ?ねえ蘭、知ってる人?」
モカは気付かずに会話をしていたが、その相手は勇者部メンバーが誰も知らない人だった。
蘭「聞いてみれば良いじゃん。あの、誰ですか?」
何処からともなく現れた少女--
奥沢美咲はみんなに挨拶をする。
美咲「私は奥沢美咲。北海道から来た勇者だよ。宜しくお願いします。」
香澄「北海道!!……北海道?」
高嶋「神世紀の人たちはピンと来ないよね。上の方にある寒ーい所だよ。」
香澄「あ、あーーー!北海道!試される大地!勇者部へようこそ!握手握手!」
美咲「握手握手。ははっ、面白い人達で良かった。」
その時、小学生の沙綾はいつの間にか隣にいたもう1人の人物に気が付く。
小沙綾「あの……ここにも1人いるんですが…。」
?「……儚い。」
小沙綾「えっ?」
?「何て素敵な場所なんだ。」
燐子「ええと……どちら様でしょうか?」
燐子の質問に、もう1人の少女--
瀬田薫が自己紹介をする。
薫「私の名前は瀬田薫…。沖縄から来た勇者だよ。」
ゆり「2人とも宜しくね。じゃあ早速なんだけど、この世界の事を教えていくね。」
ゆりは2人にこの世界についての説明を始めた。
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ゆり「…以上が、それぞれの自己紹介とこの世界の状況だね。だいたい分かったかな?」
薫「ああ。分かりやすい説明をありがとう。」
美咲「右に同じです。状況は精霊からだいたい聞いてたけど、更に理解が出来ました。」
有咲「ん?精霊から聞いたって…美咲の精霊も喋ったりするのか?」
有咲が美咲の言葉に引っかかる。
美咲「そだよ。まぁ心の中で…テレパシーで会話するって感じだけどね。」
友希那「驚いたわね…テレパシーとは言え、会話出来るまで明確な言葉を話す精霊がいるなんて。」
美咲「神様の性質の違いじゃないですか?お互い土地神の庇護って点は同じでしょうけど。」
燐子「北海道の神様と神樹様では…神様の系統が違うんですね…。」
美咲「こっちの神様は"カムイ"って呼ばれてるんだ。確か沖縄の神様も、独自の系統ですよね?」
薫「そうだね、私の神様は海の神。こう…とても儚い感じだよ。」
夏希「何となくだけど、分かった気がします。」
薫「それは何よりだよ。」
すると紗夜がある事を思い出す。
紗夜「私達の時代で、北の大地と南西の諸島から生命反応があったと聞いていましたが…。それはもしや……。」
西暦の時代、北と南の二箇所に生命反応をキャッチし、隙を見て調査に行くという計画があったのだが、美咲と薫は当の本人だったのである。
美咲「それは多分私達の事ですね。今回はうちの神様と神樹様とで同盟を結んだって感じで、そのお陰でこの世界に来れたって訳です。」
薫「現実の世界でも、同じ様に合流出来ると良いが…どうも神樹の中と現実では随分勝手が違うようだ。」
美咲「でも良いな。ここにいるみんなはチームで戦えて。ちょっとは楽が出来るんじゃないですか?」
友希那「楽な事は無いわよ。毎回必死で戦っているわ。」
美咲「こっちはずっと独り身だったから、戦う最中歌とか歌って気分を盛り上げてましたよ。」
友希那「…それは大変だったわね。」
モカ「蘭と同じ感じなのかなー?」
蘭「私には…モカがいたから…1人じゃ無い。」
モカ「おぉ〜。」
美咲「なんかみんな真面目だね〜。そこそこで良いのに。」
小沙綾「御役目でそこそこなんて…。」
どうやら美咲には何か抱えているものがあるように見える。その時、樹海化警報のアラームが鳴り始めた。
りみ「あ、あの…これは出撃の合図なんですけど…。いきなりで大丈夫ですか?」
薫「分かったよ、りみちゃん。戦闘は任せてくれ。」
りみ「……めっちゃカッコいい…。」
りみは思わず薫に見惚れてしまう。
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樹海--
美咲と薫は、早速勇者アプリを起動して勇者へと変身する。
美咲は藍色を基調としたペチュニアをモチーフとした勇者に--
薫は白を基調としたギンバイカをモチーフとした勇者へとそれぞれ変身した。
薫「全身に力が漲ってくるのが分かる。この時代の勇者システム……ああ、儚い。」
美咲「思ってたより凄くてびっくり。あ、ちょっと素振りするんで離れててください。」
そう言って、美咲は武器である投槍を振り回した。
美咲「チューニング終わり。薫さんは体動かさなくて大丈夫ですか?」
薫「大丈夫。移動してる時に慣れたよ。」
美咲「まぁ、新参者同士仲良くしましょう。」
薫「こちらこそ。」
2人は握手をする。
中沙綾「っ!?バーテックスを複数体確認!この世界に来てから、最大規模の侵攻です!!」
中学生の沙綾はみんなに警告した。
燐子「大きい敵が…沢山。で、でも…みんながいるから…頑張ります。」
あこ「頑張ろう、りんりん!あこがちゃんと守ってあげるからね。」
有咲「えっと…。薫、大丈夫か?」
薫「……。」
有咲は気にかけるが、薫は目を閉じて呼吸を整えていた。その姿を見た有咲は少し笑って、
有咲「こりゃ、全然大丈夫だな。既に気を練ってる。頼もしいな。」
りみ「凛とした佇まい…。私、薫さんのファンになりそうだよ。」
美咲「おおー、敵が大きい。そして多い。すみません、今日は初戦闘って事で自分見学良いですか?」
ゆり「…本当に怖いならそれもありだけど、美咲ちゃん絶対強いでしょ。」
美咲「これを相手にするのは中々骨ですねー。」
友希那「だから連携するのよ。」
香澄「そうだよ、美咲ちゃん!みんながいるよ!」
高嶋「力を合わせれば、大抵何だって出来るよ!」
夏希「前衛は私に任せろーー!!」
小たえ「ここにいる全員、とっても頼れる仲間ですよ。」
蘭「あなたは今まで、1人だったから個人技で戦わざるを得なかったと思いますけど…。今は頼れる仲間がいます。その心強さにびっくりしますよ。仲間との連携…やってみれば分かります。」
みんなが美咲を鼓舞する--
力を合わせれば何だって出来ると、みんながそれを信じている--
美咲「単独で戦ってたっていうあなたの言葉だと流石に説得力が違うね。そういう事ならやってみましょうか。奥沢美咲、そこそこにやるよ!!」
薫「さぁ、戦闘を始めようか。人類の敵よ……儚く散れ!」
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美咲は遠距離から武器である投槍を"進化型"目掛けて投擲する。投げた槍はすぐ様空間から補充され、槍が尽きる事は決して無い。そして、接近して来た敵に対しては投槍を薙いで対応していく。蘭と同じくたった1人で戦い続けてきたその戦闘スタイルは、何処と無く蘭と通じるものがあった。
一方の薫は、武器のヌンチャクを使って近接戦闘で星屑を次々砕いていく。洗練された戦闘スタイルは有咲に近いものがあった。
薫「っ!?」
突如飛んできた巨大な板を、薫は気配で察知し後ろに飛んで躱す。
りみ「あれは…"蟹型"!薫さん、援護します!」
りみがワイヤーを構えるが、薫は首を横に振る。
薫「大丈夫だよ、りみちゃん。これくらいなら、私1人で充分さ。」
そう言って薫は"蟹型"へ突撃する。下部のハサミを躱しつつ、巨大な反射板を1枚1枚砕いて間を詰める。
薫「これで終わりさ…行くよ"水虎"!」
薫が叫んだ瞬間、半虎半魚の精霊が現れ、薫に憑依する。そして薫は青いオーラを纏い、ヌンチャクの先が虎の爪の如き形に変化した。
薫「一撃で終わらせるよ。」
そう言い放ち、ヌンチャクを振り上げる。同時に"蟹型"は残ってる反射板全てを重ねて盾を作った。
薫「はっ!!」
薫は渾身の力を込めてヌンチャクを振り下ろす。すると反射板は瞬く間に全て砕け散り、その勢いそのままに"蟹型"をも砕いてしまい、"蟹型"は光となって消える。
りみ「やっぱ、薫さんカッコいい…。」
りみはその姿に見惚れるしかなかった。
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有咲「よっと。取り敢えずは退けたけど、まだまだ来るぞ。気合い入れろー!」
香澄「どう、美咲ちゃん?チームプレイは。」
美咲「良い感じ。連携結構楽しいよ。にしても、みんな強いねー。」
ゆり「美咲ちゃんもね。投槍なんて中々ワイルドだよ。」
美咲「遠距離でも、近接でも戦えるから便利だよ。」
薫「さぁ、敵の増援だ。儚い。」
あこ「夏希、あこに超着いて来て!三日月の陣だよ!」
夏希「了解です、あこさん!超着いて来ます!」
燐子「前衛を援護します…。」
美咲「みんなが張り切ってると、こっちも燃えてくるね。私も、どんどん投げるよ。」
みんなは果敢に攻め立てるが、蘭は違和感を感じていた。
蘭「何か嫌な感じがする…。燐子さん。敵の動き、少し変じゃないですか?」
燐子「はい…。ワザと目を惹く動きをしている…。何か企んでる…かもしれません。」
刹那、違和感の正体に燐子が気付く。
燐子「これは…!敵の数が合わない…。1体、地面を潜行しています…!皆さん、気をつけてください!」
次の瞬間、地面から"魚型"が飛び出して来た。
りみ「えっ!?きゃあっ!地面から出てきた!?」
"魚型"にりみが吹っ飛ばされるが、美咲がりみをキャッチする。
りみ「美咲ちゃん、ありがとう。」
美咲「どう致しまして。ここは私に任せて!」
美咲は気力を投槍に込めた。すると、投槍が巨大化する。
美咲「あんな魚なんか、私の槍で一本釣りだよ!……そぉれ!」
美咲は"魚型"の動きを察知し、投槍を投擲する。そして、槍は見事に"魚型"を貫いた。
有咲「おお、美咲もやるな!」
高嶋「おっと、敵がまとめて来るよ!」
りみを攻撃された怒りからか、ゆりの目から光が消えていた。
ゆり「妹を襲うなんて、許せない…潰してやる!!」
その姿を見た友希那がゆりに言う。
友希那「牛込さん!気持ちは分かるが冷静に!私も以前に熱くなりすぎて叱られたわ!」
友希那の言葉で、ゆりの目に光が戻る。
ゆり「…分かった。まありみも無事だし、ここは冷静に。」
勇者達は連戦に入るのだった。
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夏希「ふぃー。一旦退いたかな?まだ来るみたいだけど…。」
小沙綾「夏希、ずっと前線で大丈夫?」
夏希「沙綾が矢で援護してくれるから大丈夫だよ!」
そんな小学生組を美咲が見ていた。
美咲「タフな小学生組だなぁ。ホントみんな頼もしくて嬉しくなるね。」
ゆり「美咲ちゃん、さっきはりみをありがとう。」
美咲「どう致しまして。あれくらいだったら、りみでも大丈夫でしょ。」
りみ「本当に助かったよ。」
美咲「無事ならそれで良かったよ。それにしても、みんな本当に仲が良いんだね。それがチームプレイの秘訣?」
香澄「美咲ちゃんも、もう友達だよ!仲良しになろうね!」
美咲「……何だか優しさが目に沁みるよ…。学ぶ事が多い。みんなとはもっと早く会いたかったな。」
有咲「…その沁みるって言葉分かるよ。」
紗夜「皆さん、また敵が動き出しました!注意してください。」
あこ「どんな攻撃も鉄壁のあこが防いで!」
夏希「私が押し返すよ!!」
薫「良い気合いだ。さすがは小学生組だよ。」
あこ「あこは中学生だよーー!!」
高嶋「よーし、やっつけちゃうよ!勇者パンチが火を噴くよー!」
高嶋香澄は腕をぐるぐると回す。
美咲「死なない程度に、征きますか。」
この戦いの中で、美咲と薫はすっかり勇者部達と打ち解けていた。
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勇者部部室--
勝鬨をあげた勇者部達が樹海から戻ってきた。
モカ「みんなお帰りー。そば茶用意してあるよー。」
蘭「ありがと、モカ。」
美咲「うどんの国で蕎麦を推してくとは…。私はラーメン派だけど。」
薫「私は沖縄そば派だよ。」
あこ「また新たな麺類が!」
中沙綾「おたえ、リサさん、モカ、ただいま。」
中たえ「おかえり、沙綾。その様子だと、みんな戦いを通じて仲良くなったみたいだね。」
有咲「美咲も薫も凄腕の勇者だったし、戦力的にも大収穫だな。このまま敵の土地に攻め込みたいくらい!」
高嶋「薫さん、今度稽古に付き合ってください。」
薫「ああ、構わないよ。」
結束力が高まった勇者部を見て、リサが言う。
リサ「戦力的に大収穫、ね…。まさに今が次のステージに行くタイミングなのかもね。」
小沙綾「何かあったんですか、リサさん。新しい神託とか…。」
モカ「そう、まさに神託があったんだー。みんなが戦ってる間にね。」
そして、リサとモカはみんなに神託を説明する。
リサ「みんな、最初の目的を覚えてる?造反神を鎮める事だよ。」
紗夜「造反神が神樹の中で暴れている…それを私達が何とかするんですよね。」
モカ「うん…鎮める為には、奪われた土地を取り戻さないといけない。」
リサ「今までは防戦一方だったけど、みんなの頑張りでついに攻める事が可能になったんだ。」
有咲「言ってみるもんだな…実現するなんて。」
美咲「何か良いタイミングで呼ばれたみたいだね、薫さん。」
薫「そうだね、美咲。腕の振るい甲斐があるよ。」
リサ「神託に従って、次の満月に仕掛けるよ。土地を奪還していこう!」
友希那「ようやくスタートラインに立ったという事ね…。」
高嶋「うん!みんなと一緒に頑張っていこう!」
仲間が揃い、ようやく攻撃に移り出す勇者達--
いよいよ土地奪還の為の戦いが始まるのだった--
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その日の夜、寄宿舎、薫の部屋--
夜も深くなる頃、薫の部屋のドアがノックされる。
薫「おや、こんな時間に誰かな?」
薫が扉を開けると、そこには美咲がいた。
美咲「こんな時間にごめんね。ちょっと話聞いてもらっても良いかな?」
薫「私にかい?…構わないよ。さあ、中に入って。」
薫は美咲を部屋に入れ、お茶を用意した。
薫「で、話とは何だい?」
美咲「……異世界に来た同期だし、薫さんには聞いて貰いたいんだよね。私の事を…。」
美咲は一呼吸おき、自分が過ごしてきた北の大地での日々を語り出した--