そして香澄が慕うお姉様とは……?
バーテックスを倒した香澄達は、部室に戻って早速リサに樹海であった事を伝える。
勇者部部室--
リサ「赤嶺香澄…。謎の存在だね…こっちが予想しなかった事態だよ。」
モカ「じゃあ、これからは造反神側の勇者と戦う事になるんだよね…。勇者対勇者の戦いに。」
夏希「バーテックスを倒すのは良いけど、対人はなぁ…どうにも…。」
その時、部室に一陣の風が吹き荒ぶ。
紗夜「っ!?何ですか!これは…まさか!?」
勇者達の目の前にいたのは、赤嶺香澄だった。
赤嶺「みんなー。もしかして私の話をしてたのかな?どうも、赤嶺香澄です。」
香澄「ど、どうも…って、赤嶺さん!?」
赤嶺「あはは。今井リサさんも見ておきたくてついて来ちゃった。」
赤嶺はそう言ってリサをまじまじと見つめた。
赤嶺「…さすが強力な伝説を残した人だね……。」
美咲「良い度胸してるねぇ…。この勇者だらけの部屋に単身乗り込んでくるなんて。」
赤嶺「あれ?もしかして私を捕まえようとしてる?無理だよ。捕まえる事は出来ない。私も攻撃意思は無いけどね。」
中沙綾「…どうにも分からない。敵と言いながら今はあまりあなたから緊張感が伝わってこない。」
赤嶺「今は戦う気無いから。私はね、試合開始ってなったら勝つ為に一生懸命になるけど…ゴングが鳴る前から襲いかかったりはしないよ。今来てるのは挨拶の続き。」
薫「樹海化してない今は戦闘の意思が無いと言う事だね…。」
赤嶺「1つ知っておいて欲しいんだけど、わたしはあなた達を倒す気はあるけど、戦闘で殺めようとは思ってない。」
小沙綾「私達を殺める気は無くても、神樹様が分裂してしまったら私たちには死活問題ですよ。」
赤嶺「……まぁ何が言いたいかって、"対人"だからって暗くならずに全力でぶつかってきてって事。」
赤嶺の言葉に勇者達の顔が一斉に険しくなる。
赤嶺「ふふふ。私が負けを認めれば、私達香澄に関する謎も造反神様の正体もぜーんぶ教えてあげるよ。だから思う存分腕を競い合おうよ?こちらの数の不利は擬似バーテックスで埋めるから。」
中たえ「ん?何だか不思議な人。まるで対人戦の不安を取り除くかの様に…。」
赤嶺「じゃあそういう事でバイバイ…次の神託の日…樹海化がゴングだよ。そしたら全力で行くから。」
そう言って、赤嶺が消えようとするが、
美咲「うん、まぁ逃がさないんだけどね。捕まえた!ほらみんなで押さえて!!」
美咲達は赤嶺をしっかりと逃げない様に捕まえるのだが--
赤嶺「だから無理なんだってば。戦いの決着はしっかりと樹海でつけようよ。じゃあね。」
赤嶺の周囲に風が巻き起こり、赤嶺に逃げられてしまった。
紗夜「また突風!?しっかりと足を掴んでたのに逃げられました…。」
ゆり「嵐の様に去っていったね…。一体なんだっていうの?」
--
ゆり「それじゃあ赤嶺香澄に関しては、樹海で捕まえて話を聞くという事で対応しましょう。」
友希那「分かったわ。それが最善でしょうね…。今、細かい事を考えていても仕方ないわ。」
有咲「敵であるという事は間違いないんだろうけど、一応香澄な訳だし…非道って感じには見えなかった。」
蘭「早めに捕獲して、色々と教えてもらうしかないでしょ。」
香澄「私達に関する謎だって、高嶋ちゃん。」
高嶋「何なんだろう、気になるね戸山ちゃん。」
夏希「どーんと構えてるあたりさすがだよね。沙綾、私達も香澄さん達の力になろう!」
小沙綾「それは勿論…。夏希、赤嶺…さんは競い合おうと言ってきた。だから遠慮はしなくて良いからね。」
夏希「ああ、ぶつかっていくよ。私に対してそんな心配する必要ある?」
小沙綾「夏希は優しいから……。」
夏希「沙綾…。照れるなぁ、大丈夫だって。」
美咲「私なんか敵である以上、気にせず槍を連射しちゃうけどなー。ねぇ、薫さん?」
美咲が薫に話かけたが、薫は考え事をしており、美咲の声かけに気付く事がなかった。
美咲「ん?変な薫さん。」
---
寄宿舎、高嶋香澄の部屋--
高嶋の部屋に友希那が来ている。どうやら心配して訪ねてきたようだった。
友希那「本当に大丈夫、香澄?自分と似た人が敵として現れて。」
高嶋「驚いたけど、赤嶺ちゃん悪い人には見えないし、何だか私に懐いてた気もするよ。」
友希那「……香澄は本当に優しいわね。」
高嶋香澄のその誰とでも分け隔て無く接する事が出来る優しい心が取り柄であり強さである。
---
同時刻、牛込宅--
同じ様に、ゆりも香澄の事を心配して家へ招いていたのだった。
ゆり「香澄ちゃん、大丈夫?もう1人、香澄ちゃんに似た人が現れたけど。」
香澄「色々と気にはなりますけど、友達になれる気もしますし大丈夫です!」
ゆり「そっか…。それが香澄ちゃんらしいね。」
---
翌日、勇者部部室--
神樹からの神託があり、勇者達は今まさに樹海へと移動を開始するところであった。
ゆり「さあみんな、出撃準備は良い?愛媛奪還作戦の新たなラウンド開始だよ。」
紗夜「いつでも行けます。…赤嶺香澄…高嶋さんに似た人への攻撃は気が進まないですが。」
リサ「神託は激戦を予想してるから、気を付けてね。」
香澄「ありがとうございます。行ってきます!」
そして勇者達は樹海へと転送されていく。
リサ「もどかしいね、たえ。戦いたいのに戦えないのは。」
中たえ「うん。でも、香澄は気にしてない雰囲気を出してるけど、赤嶺香澄の事が気になってると思うんだ。」
リサ「そうだね…。」
中たえ「力になってあげたいのになー。私本当に緊急時の切り札なのかな?」
夏希を助けて以降、変身出来ずみんなの帰りを待っているだけの状態。更にそこへ赤嶺香澄の出現。たえの不安は一層膨らんでいった。
---
有咲「さぁさぁ、花咲川中学勇者部が来たぞ!赤嶺香澄ぃ!いざ勝負!!」
しかし赤嶺香澄の声は聞こえず、有咲の声だけが樹海にこだまする。
燐子「…?赤嶺さんがいませんね…。何かの作戦なんでしょうか?」
すると樹海の奥から赤嶺では無く、バーテックスの群れが現れた。
中沙綾「これが敵の第一陣って事?」
友希那「消耗させてから本命が来るつもり…?確か数の不利はバーテックスで埋めると言っていたわね。」
紗夜「どの道敵は倒さなければなりません。行きましょう!」
友希那「そうね。みんな、ここは私と紗夜が相手をするわ。」
友希那はなるべく戦力を削らない様にする為に、最小限の人数でバーテックスを殲滅するつもりでいた。
ゆり「分かった。でも危ないと思ったらすぐに参戦するからね。」
友希那「……ええ。行くわよ、紗夜。」
紗夜「たまの共同戦線も良いでしょう。」
2人は見つめ合い、少し微笑んで飛び出していった。
--
友希那「はああああっ!!」
紗夜「せやっ!!」
2人は互いに背中合わせで敵を斬り伏せていく。
友希那(この世界に来て、仲間と共に戦う事の大切さを学んだ…。互いに支え合う事で、力が何倍にも膨らんでいく事が分かる。)
紗夜(私を必要としてくれる人…信頼してくれる人がいる…。私は今、その人達の力になりたいと心から思える。…この世界も案外悪い事ばかりじゃないわね。)
夏希「凄い……。互いの息がピッタリと合ってる…。」
小沙綾「そうだね…。声かけ無しでアイコンタクトのみでお互いの死角をカバーしてる…。」
小たえ「私達もこんな風な絆を築いていきたいね…。」
小学生組は2人の戦う姿に見とれていた。
高嶋「紗夜ちゃん………。」
紗夜が笑顔で戦っている姿を高嶋は涙目で見ている。
--
ゆり「倒したけど、また敵が出てきた!?」
友希那「……おかしいわね。倒しても倒しても赤嶺香澄が出てこない。」
美咲「これって…消耗以外の何かがあるよね。私の勘だけど。」
薫「それはありえるよ…美咲の勘は結構当たるからね。」
燐子「消耗以外の何か……ま、まさか…!」
美咲の言葉で燐子は最悪の展開に気付く--
---
同時刻、勇者部部室--
中たえ「みんなは大丈夫かなー。なんか凄く嫌な予感がするんだよね。」
リサ「大丈夫だよ。なんたって西暦の風雲児たる友希那がいるんだから。」
その時、部室に衝撃が走り、周りが煙に包まれた。
モカ「いきなり何!?」
リサ「これは…敵襲!?激戦って言う神託が出てたけど、まさかここが直接狙われるなんて……。」
赤嶺「ふふふ、作戦成功ーっ。本命はこーっち。今頃、あっちは慌ててると思うよ。」
煙の中から出てきたのは赤嶺香澄だった。
モカ「か、香澄という名前の人がこんな作戦を使ってくるなんて…。」
赤嶺「予め言っておいたと思うんだ。闘いのゴングが鳴った以上は…戦闘が始まった以上は…。もう何でもありで攻撃するって。さぁみんな出てきて出てきて。」
赤嶺がそう言うと、部室に擬似バーテックスが現れたのである。
---
同時刻、樹海--
赤嶺が部室を襲撃したと同じ頃、燐子も同じ答えに辿り着いていた。
小沙綾「なるほど…。敵の狙いが本拠地への奇襲である可能性……。もし本当なら急いで戻らないと。」
勇者達は部室へ戻ろうとするも、この中で唯一"カガミブネ"が使える沙綾を集中的に攻撃され部室に戻れる状態では無かった。
香澄「さーやに近づくなぁ!!勇者ぁ、パーンチ!!」
中沙綾「確かに危機的状況だけど…私達だって無策だった訳じゃないよ。拠点を空に出来るのはこっちにだって"切り札"があるから!」
そう、勇者部のみんなは部室に残っている"切り札"に希望を託していたのだ--
---
同時刻、勇者部部室--
赤嶺「さぁて、一気に…嵐のように攻めるよーっ!」
リサ「……っ!?」
その時だった--
中たえ「そうは……させないよ!!」
赤嶺「っ!?」
リサとモカの前にたえが立ち塞がった。
赤嶺「あなたに何が出来るの?」
中たえ「出来るんだな、それが。」
たえの手に握られていたもの、それは勇者システムの端末だったのである。
中たえ「たった今、勇者への変身が可能になったんだよ。」
赤嶺「えぇ……それはびっくりだね。」
リサ「緊急時の切り札……ここで発動って事だね。」
中たえ「私に任せて!久しぶりにいくよ!」
たえは端末のアプリを起動して勇者装束を身にまとう。
赤嶺「たかだか1人、バーテックスで押し流しちゃうよ。それいけ!!」
赤嶺の号令を合図にバーテックスが一斉にたえに襲いかかってくる。
中たえ「部室はみんなの拠点なんだよ。その周囲を荒らそうなんて。…ここから、出て行けー!!」
たえの嵐のような槍捌きでバーテックスは一瞬にして消滅してしまう。
赤嶺「っ!?うわぁ。あっという間に…全滅した。」
リサ「これほどとは……圧巻だね。切り札と呼ぶに相応しいよ。」
赤嶺「なるほど…1人の戦力を見誤ってたね…。それ以外は上手くいってたのに。」
そこへ樹海でバーテックスを倒し終えた勇者部が戻ってきた。
蘭「みんな、無事!?モカ!!」
モカ「蘭!」
友希那「リサ…。良かったわ。」
赤嶺「戻ってきたか…しょうがない。最大戦力プラスの…私自身で相手だよ。」
夏希「おぉっ!また変身出来たんだね。やっぱカッコいいなー。」
中たえ「待たせてごめんね。これからは私も一緒に戦うから。」
薫「こちらも最大戦力で相手出来そうだ。赤嶺香澄…捕獲させてもらうよ。」
勇者達と赤嶺は再び樹海へ消え、勝負を始めるのだった。
---
樹海--
中たえ「せいやーー!!」
赤嶺「うわっ!!」
中たえ「どう?これが私達の力だよ!」
赤嶺「はぁ…今回はダメだねぇ。お見事だよ。」
ゆり「随分と神妙にしてるね。本当あなたの作戦には肝が冷えたよ。」
赤嶺「でも負けたよ。さすが現実でも勇者をやってた人間は手強いね。」
紗夜「その口ぶり、あなたは違うのですか?私達と似たような服を着ているのに。」
赤嶺「私は勇者服を着て戦ってたタイプじゃないんだ。神樹様から直接力を貰ったというか。湊友希那さん達なら分かるかも。初めて勇者の力に目覚めた時、力が湧いてきたよね?」
友希那「ええ。その力で私達は危機を切り抜けて、島根から香川まで戻ってこれたのだから。」
赤嶺「私はそういう力で戦ってたから…本来勇者服は無いんだ。この服はこっちの世界に召喚された時に造反神が用意してくれていたものだよ。」
薫「…一体君は何者なんだい。赤嶺と言えば沖縄で見かける事が多い苗字だが。」
赤嶺「そうだよ…。赤嶺は元々は沖縄の人間。赤嶺家はかつて、沖縄を脱出する時にある勇者に守られ無事港を出て、四国へと逃げ延びた……。その時に守ってくれた勇者の名は、瀬田薫……。あなたなんですよ、お姉様。」
薫「そうだったのか……。」
赤嶺「そうです、お姉様。お噂通り凛々しい。こうして話せて良かった。」
薫「お、お姉様!?」
珍しく薫が動揺する。
赤嶺「今回はそちらの勝ちだけど、次はもっと激しく攻めてみせるから。」
小沙綾「次?まさか逃げる!?……うっ!」
その瞬間、赤嶺の周りを突風が吹き荒れる。
赤嶺「今回は一本取られたから、いくつかの情報は話したけど、まだまだこれからだよ。」
中沙綾「撤退する!そうは…させない!!」
赤嶺が飛び立とうとした瞬間、沙綾は赤嶺にしがみついた。だが、
香澄「さーや、私、私だよ!」
確かに赤嶺にしがみついた筈だったのだが、いつの間にか赤嶺が戸山香澄に入れ替わっていたのである。
赤嶺「ごめんね、戸山さん。変わり身の術。それじゃみんな、またね。次はもっと激しいの行くから。」
そう言い残し、赤嶺は飛び去ってしまう。
美咲「また逃げられた!今回は結構気をつけてたのに。」
ゆり「これはあの子が負けを心から認めるまで続きそうだね…。」
リサ「逃げられはしたけど、さしあたり愛媛の一部は解放されたし、今回の作戦も成功だよ。」
友希那「厄介な敵が現れたけど…結局は今後も今まで通りにやっていけば良いのよ。」
中たえ「みんな、おまたせ!これからは私もいっぱい頑張るからねー!!」
小たえ「ダブルたえで頑張るよー!!」
赤嶺との最初の勝負は、たえの助けもあり勝利する事が出来た。
だがこの戦いはまだほんの始まりに過ぎなかったのである--