今日も今日とて勇者部の勇者達は愛媛を奪還する為に赤嶺が放った擬似バーテックスを倒していく。切り札であるたえも加わり、勇者部の快進撃は続いていく--
かに見えたが--
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勇者部部室--
リサ「みんなお帰り。今日もお疲れ様。」
友希那「ただいま、リサ。戦闘もつつがなく終わったわ。」
リサ「今日は出てこなかったんだね、赤嶺は。諦めちゃったのかな?」
どうやら先の戦闘で赤嶺香澄は勇者たちの前に現れなかったようだった。
友希那「だと良いのだけれど…引き続き警戒しとかないと。大胆な奇襲をしてきたから…。」
リサ「そうだね。」
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だが次の日も、その次の日も勇者達の前に赤嶺香澄が現れる事は無く、勇者達は順調に愛媛の土地を取り戻していく。
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勇者部部室--
あこ「最近の攻防戦は余裕だね。あこ1人でも良いんじゃないかってくらいだよ!」
中沙綾「…なんだか最近の戦いは上手く行きすぎてる気がする。燐子さんはどう分析しますか?」
燐子「私も気になってました…。勝たせ続けた相手を油断させる…兵法にはそんな戦い方もありますから……。」
小たえ「こちらも警戒はしているけど、その気持ちが緩むまで待つつもりなのかな?」
リサ「油断させてからの一撃にかけてるのかも。勇者部の拠点は神樹様の世界において中心部に近い所だし。」
モカ「ここを取られちゃうと、とっても危ないからね。」
加えて美咲が気になっていた点を挙げる。
美咲「それに、何だかここを離れる程に敵がやたら強くなってない?」
リサ「中心の拠点から離れる訳だからね。加護から離れれば離れる程に敵は強くなる…。」
紗夜「まるでRPGですね…。進めば進むほどに敵が強くなる。」
薫「もしも…この快進撃が油断させる作戦じゃないとしたら…。」
夏希「敵は何か秘密兵器の準備をしてて、こっちに手が回らないんですかね?」
有咲「案外そういうのありそうだな…。神様が関わってくると、ホント何が起こるか未知数だ。」
果たしてこの快進撃は赤嶺の作戦なのか。勇者たちの不安は募っていくばかりだった。
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愛媛--
赤嶺「よーし準備完了と…。その間に結構土地を奪われちゃったなぁ。まぁ、ここからだよね。」
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樹海--
勇者達は今日も愛媛を奪還する為樹海へと来ていた。
友希那「今日も愛媛を奪還していきましょう。勝ち続けているからといって気を緩めないで!」
勇者達の警戒は充分であった。例え何が起こっても大丈夫だと--
中沙綾「…?敵の姿が何処にも無い……。」
紗夜「透明とかステルスの敵の可能性は?」
薫「それは無いね…。気配を感じないよ。」
友希那「ともかく警戒態勢は維持していて。ここは樹海よ。何が起こるか分からないわ。」
その時だった。
赤嶺「全く油断してないのはさすが。少しくらい隙があっても良かったのに。」
目の前に赤嶺香澄が現れた。
友希那「今回は出てきたのね。」
赤嶺「前は一本取られたから色々と準備してきたよ。今回は"精霊"を使うんだ。」
そう言うと赤嶺の周りに白い光が幾つか現れた。
赤嶺「私が持ってきた精霊は造反神が作ったオリジナルでね。人の姿に変身するんだよ。………こんな風にね。ばぁーーん!」
赤嶺が指を鳴らすと、光の1つが小学生の沙綾の姿に変わっていく。
小沙綾「わ、私…そっくりな人間が……!?」
突然の出来事に沙綾は驚く。
りみ「これが新しい攻撃方法…なの?」
ゆり「何かまた嫌な予感がしてきたよ…。」
赤嶺「見ての通りそっくりさんの登場だよ。」
赤嶺はそっくりだと言うが、よく見るとコピーの方は若干くすんでいる。
中沙綾「私達の攻撃を躊躇わせるのが狙い…?」
赤嶺「それが狙いじゃ無いよ。今回のテーマは自分との戦いといったところかな。」
夏希「自分…自身?」
赤嶺「例えば、この小学生の山吹沙綾そっくりになった精霊に対して…勇者パーンチと攻撃を仕掛けると……。」
そう言って赤嶺は精霊に思いっきりパンチを繰り出す--
が、精霊には全く効いていない。
赤嶺「ほら元気そのもの。結構強く攻撃したのにね。変身した精霊は、その姿の元ネタの人じゃないと倒せないんだ。」
小たえ「凄いルールだ。何かしら制約があるのかな?」
赤嶺「そうだね。すぐバレるから白状するけど、変身した精霊は肉体的な攻撃が一切出来ない。つまり物理的には無害なんだよ。安心安全。」
小沙綾「じゃあ何の為の存在なの?ただの嫌がらせ?どっちみち、私がただ射抜けば良いこ…とっ!」
沙綾が精霊に向かって矢を放つ。しかし、矢が命中した筈の精霊は消える事はなかった。
赤嶺「例え本人だろうと物理的な攻撃じゃ倒せないよ。精神的に倒さないと。」
小沙綾「えっ……?」
すると沙綾の姿をした精霊が喋り出した。
小沙綾?「簡単な事だよ、沙綾。」
夏希「うわぁ!し、喋った!」
赤嶺「この精霊はね、変身した人に対して質問を投げかけたり、論戦を仕掛けてきたりするんだ。その質問に対して答えられなかったり…論戦の末に論破されちゃったりしたら……悲しい事が起こる。」
有咲「悲しい事って何だよ!」
赤嶺「死にはしないけど、もうこの神樹の中では戦えなくなるだろうね。この精霊に取り憑かれるんだから。」
有咲「んなっ!?」
赤嶺「議論は本人の精神世界で行われるの。だから、負けたら飲み込まれちゃうよ。」
美咲「たちの悪い妖怪だね、こりゃ。」
赤嶺「元々精霊は妖怪が多いでしょ。"牛鬼"だって"青坊主"だって。」
蘭「とにかく口喧嘩に勝てば良いって事でしょ。これは得手不得手分かれるね。」
赤嶺「ち・な・み・に質問や議論は、本人にとってかなりエグい話題が飛んでくるから気をつけてね。どうかな、この趣向?ある意味自分自身との対話とも言えるね。中々出来ない体験だよ。」
中沙綾「自身との対話なら何度もやってるけど…。」
中たえ「私も私とよく話すよ。」
赤嶺「あっ、そういえばそうかぁ。まぁ良しとしちゃおう。説明と警告はしたからね。……そろそろ始めようか。」
ゆり「怪しい技を使ってくるねぇ。みんな、気をしっかり持って!」
蘭「今度は自分自身との戦い…それでもいつも通りにやるだけだよ。」
香澄「自分との戦い…良く分からないところもあるけど、成せば大抵何とかなーる!」
赤嶺「それじゃあまずは小学生の山吹沙綾ちゃん。バトルに行ってらっしゃーい。」
小沙綾?「どーーーーーん。」
沙綾の姿を模した精霊が襲いかかってくる。
小沙綾「…くっ!?うぅっ!?あっ……!」
夏希「沙綾?ねえ沙綾!?」
夏希が沙綾に声をかけるも、目が虚になり返事は返ってこなかった。
赤嶺「精霊との対話が始まったんだよ。彼女の意識は今、ここじゃなくて精神世界にいるよ。」
夏希「こんのーー!!沙綾を解放しろ!!」
赤嶺「だから私を倒したところで、対話は終わらないよ。自分の事は自分で決着つけないと。」
そう言い残して赤嶺は消えてしまう。
蘭「これ以上は無駄だろうね。ずっとこの罠を作ってたんだろうし。」
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精神世界--
小沙綾「こ、ここは…私の精神世界なの?」
沙綾が目を覚ますと、そこは何処までも真っ白な空間で、目の前には沙綾の姿を模した精霊が立っていた。
小沙綾?「その通りよ。私はあなたの合わせ鏡。問うわ、山吹沙綾…。あなたにとって、花園たえとは何?目の上のたんこぶで合ってる?」
小沙綾「目の上のたんこぶ?意味不明な事を。おたえは友達だよ。」
小沙綾?「おたえは友達。それがあなたの回答ね。もし今の意見が偽りであった場合、あなたの魂に寄生させてもらう。」
小沙綾「偽りなんかじゃない!おたえは友達!!」
小沙綾?「……私は今、あなたの精神世界にいる。あなたが体験した記憶を映画の様に見る事が出来る。見える………。」
精霊は少しの間目を瞑り、何かを悟ったかの様に語り出した。
小沙綾?「ふふ…御役目が本格的に始まってすぐ…3人の中から隊長を決めた事があったでしょう。」
小沙綾「!?」
精霊が話し出した記憶--
それは確かに沙綾が体験してきた本物の記憶だった。
小沙綾?「隊長がおたえに決まって…それが血縁ではなく実力からの査定だと分かった時をキッカケに…あなたは、天才とも言えるおたえに劣等感を抱いているでしょう、沙綾。」
小沙綾「…何を言うの。おたえは凄い、ただそれだけだよ。」
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樹海--
夏希・小たえ「「沙綾………。」」
樹海では沙綾の帰りを夏希とたえが待っていた。
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精神世界--
小沙綾「何度でも言うよ。おたえは大事な友達だよ!」
小沙綾?「…あなたは3人で御役目を果たす時、自分が1番足を引っ張ているかもしれないという恐怖がある。」
小沙綾「っ………!?」
沙綾の顔に動揺が現れる。
小沙綾?「その恐怖を与えてるのは、ある意味出来の良い仲間2人に他ならない。あなたは妬んでいる。おたえの天性の才能を。その負の感情を向ける相手を友達と言うの?」
小沙綾「………。」
--確かに最初はそうだったかもしれない。
2回目の御役目で"天秤型"を追い返した際、安芸先生から隊長はたえだと指名され、資質を安芸先生に見せる為に合宿にも力を入れてきた。
だけど--
小沙綾「痛いところを突いたつもり?記憶を眺める事は出来ても、心情は全然読めてないね。」
小沙綾?「何……!?」
小沙綾「私は確かに夏希やおたえを眩しく思う時がある。でも、それは敬意だから。自分の力不足を他人のせいにしない!」
そう、沙綾は痛感していた--
"山羊型"との戦いでの自分の力不足を--
そして、それを受け止めてくれる2人の優しさを--
小沙綾「下衆の勘繰りで私達の仲は裂けない!消えろっ!!」
小沙綾?「…自分が至らない部分を既に自分のせいと受け入れていたか……。」
次の瞬間目の前が光に包まれ、沙綾を模した精霊が消えていくのだった。
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樹海--
小沙綾「うっ……ここは、樹海?」
夏希・小たえ「「沙綾!!」」
小沙綾「夏希…おたえ…。」
沙綾が目を覚ますと夏希とたえが抱きついてきた。
小沙綾「……ふふっ、相手もバカな質問をしたものだね。」
赤嶺「おー。自分との決着をつけてきたんだね。小学生なのに凄いな…もっと迷うかと思ってたよ。」
夏希「あっ、また出てきた!」
小沙綾「随分手の込んだ攻撃をしてくるね…。こんな方法じゃ私は揺るがないよ!」
赤嶺「確かに君はそうみたいだね。でも他の人はどうかな?」
小沙綾「えっ……?」
赤嶺「あっ先に言っておくと、精神に取り憑かれるとこの世界では再起不能になるけど…元の世界に戻れば精霊の影響は消えるから元通り。紳士的な攻撃でしょ。血を見ずに無力化だもんね。既に他の勇者達にも、この攻撃が通じそうなみんなには精神攻撃を仕掛けたよ。」
夏希「なっ、いつの間に……!?」
ゆり達が周りを見回すと、
紗夜「………。」
燐子「………。」
友希那「………。」
高嶋「………。」
既に西暦組の勇者達が精神世界に取り込まれていたのだった。
ゆり「西暦組が重点的にやられた…。」
りみ「お姉ちゃん!有咲ちゃんも!!」
有咲「………。」
加えて有咲も精霊からの攻撃を受けていたのだった。
香澄「そんなっ!!」
赤嶺「準備に時間がかかったんだよね。そのお陰で愛媛を半分以上も取られちゃった。今まで調子が良かった分の反動だと思って、自分の幻影と論戦してよね。」