2人の苗字の辻褄をどう合わせるか結構苦労しました。
勇者部部室--
愛媛奪還戦も終わりが迫ってきたある日、部室では2人のたえが夏希と小学生沙綾に話をしていた。
小たえ「それでね、オッちゃんがー……。」
夏希「はあ……。」
中たえ「やっぱりオッちゃんの角度は23センチで見るのがねー……。」
小沙綾「あはは………。」
2人のたえは真剣に話しているのが、いかんせん2人が話について行けてなかった。
友希那「…………。」
そんな2人のたえの様子を友希那は遠巻きから眺めていた。
リサ「どうしたの、友希那。そんなに気になる?オッちゃん。」
友希那「いや、それにはあまり興味が無いわ。」
リサ「じゃあ何でそんな訝しげな顔してるの?」
友希那「花園さん達…というより、神世紀での子孫の事が気になってね。」
リサ「たえ達の事?」
友希那「勇者部を見ていると、やっぱり子孫の暮らしぶりが気になるのよね。花園さんの家庭環境、幼少期の育ち方、そして…神世紀で、幸せかどうかをね。」
リサ「同世代手間こう言うのは何だけど、たえは良い子に育ってると思うけどな。」
友希那「それは分かるわ。だけど、どうも掴み所が無くて。笑顔の裏で何かに苦しんでるんじゃないかってね…。」
悩んでいるのは分かっていた。だが、リサは一線を超えないよう友希那に諭す。
リサ「……ダメだよ、友希那。私達はいずれ元の時代に戻る人間なんだから…。例え子孫とは言え、過度の情は……友希那が辛くなるだけだよ。」
友希那「リサ……。」
そこへたえがやって来た。
中たえ「友希那さん。」
友希那「何かしら?」
たえは友希那に意外な誘いをしてきたのだった。
中たえ「今度の週末、良ければうちに遊びに来ませんか?」
友希那「…?急にそんな事をして大丈夫なのかしら?」
中たえ「もちろん内緒でね。他のみんなだって、自分の家がどうなってるか知りたいと思うから。」
友希那「でも、それなのに私だけが内緒でなんて…それは良くないでしょ?」
過去の人間が今の人間の家には行かない。これはこの世界に来て友希那が決めたルールの1つである。
リサ「せっかく誘ってくれたんだから、行ってきたら良いよ。」
だが意外にもリサはこの提案に賛成のようだった。
中たえ「リサさんも一緒にどうぞ。」
リサ「え?良いの?部外者の私まで…。」
中たえ「友希那さんとリサさんは、一蓮托生、比翼連理。セットみたいなものですから。」
友希那「セット…。」
リサ「ありがとう!友希那、ここは素直にお誘いを受けようよ。」
顔を赤らめながらリサは友希那に言った。
友希那「……………分かったわ。じゃあ、週末……お邪魔する事にするわ。」
中たえ「うん!待ってるね!」
少し考えながらも、友希那はたえの誘いを受ける事に決めたのだった。
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週末--
友希那とリサは路上を歩いていた。
友希那「ねえ……リサ。」
リサ「何、友希那。」
友希那「教えてもらった住所に着いた筈なのだけれど、歩いても歩いても壁しか無いわ……。」
リサ「門がなかなか見えてこないね……。」
教えてもらった住所に辿り着きかれこれ10分。2人は壁が続く道をひたすら歩き続けていたのである。
友希那「まさかと思うけど…家が全て壁に覆われていて、上から飛び込むとかじゃないわよね……。」
リサ「そ、そんな馬鹿な……。」
友希那「いいえ、あの花園さんの家よ。それくらい意味不明な造りでも不思議ではないわ。」
リサ「"あの"って……友希那の子孫じゃん。」
友希那「きっとあれは突然変異じゃないかしら?それくらい……私には理解が及ばないのよ。」
リサ「それは言い過ぎだよ……あ、やっと門が見えてきたよ。」
そうこうしている内に2人はやっと門まで辿り着く。
友希那「これは……。」
リサ「ち、ちょっとこれは……一般家庭とは言い難い門だね…。」
2人は呼び鈴を探すが、その時たえの声が聞こえてきた。
中たえ「友希那さん、リサさん。ようこそ神世紀の花園家へ。」
友希那「花園さんなの!?まだ呼び鈴も押してないのに何故分かったのかしら?」
中たえ「警備の監視担当の人が教えてくれたんだ。今、門を開けるから入って。」
門が開くと、道はまだまだ続いている。
友希那「まだ道が続くのね。」
リサ「進むしかないね。」
2人は再び歩き出した。
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15分後--
行けども行けども家は見えず、周りは木々に囲まれた森。だが、所々に色鮮やかな花々が咲いている。その中を2人は歩き続けた。
友希那「はぁはぁ……。いったい、ここは何処かしら………。」
リサ「あっ、あそこに誰かいるよ。」
リサはその人に話しかけた。だがその人は深々と頭を下げたまま、指で奥を示すだけだった。
友希那「この先って……これは!?」
遂に2人は花園家の外観を目の当たりにする。
友希那「こ、これが神世紀の花園家……。」
リサ「家というより、御屋敷…豪邸、いや…大豪邸と呼ぶに相応しい建物だよ。」
そこへたえが現れる。
中たえ「2人とも遅いですよ。」
友希那「ええ……ごめんなさい。」
中たえ「どうしたんですか?ポカーンとして。」
友希那「それくらいするわよ…。」
リサ「ああ…良かった。このまま遭難するかと思ったよ…。」
中たえ「?」
取り敢えず、たえは2人を自分の部屋へと案内するのだった。
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たえの部屋--
友希那「ここが花園さんの部屋……もの凄く広いわね…。」
たえ「これがオッちゃんだよ。」
たえは2人にぬいぐるみのオッちゃんを紹介する。
リサ「オッちゃん……ど、どうも。」
友希那「ところで、ご家族はご在宅かしら?手土産を持ってきたから、ご挨拶を……。」
中たえ「今いないし、そういうのは無しで良いですよ。流石にみんな驚くだろうしね。」
友希那「そう……でも、さっき敷地内で誰かに会ってしまったのだけれど…。」
中たえ「使用人の誰かかな?でも、緊張して目も合わせなかったんじゃないですか?」
リサ「そうだね……最敬礼したまま固まってたよ……。」
中たえ「私の大切なお客様が来るから、くれぐれも失礼の無いようにって、言っておきましたから。」
友希那「それだけであんなに……?なんだか私まで緊張してきたわ。少しお手洗いを借りても良いかしら?」
中たえ「この部屋のは私専用だから、お客様用のを使ってください。」
友希那「個人用の手洗いまであるのね…。」
中たえ「各部屋に1つずつですけどね。お客様のはここを右に出て、2本目の十字路を左で……マクシミリオン甲冑が並ぶ廊下の方へ進んで、鹿の壁飾りを斜めに入って、その先に……景徳鎮の壺が飾ってあるから、そこを左で、突き当たりの白いドアの所です。」
友希那「…………こ、この部屋のを使わせてもらう訳にはいかないのかしら……?」
中たえ「お客様に対してそれは失礼ですから。」
友希那「わ、分かったわ………無事に戻ってこれる自信は無いけれど、取り敢えず行ってくるわね。」
そう言い残し友希那は出て行った。
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30分後--
リサ「友希那……帰って来ないね。」
中たえ「いざとなったら、監視システムで探せるから大丈夫です。」
リサ「あはは……。あのさ、たえ。この後はどんな事をして過ごすの?」
中たえ「フフフ……。あのね、友希那さんにご飯を作ってあげるんですよ。」
リサ「え?たえが料理を作るの?」
中たえ「シェフに頼もうかと思ったんだけど、私が頑張った方が良いと思ったから。私、大した物は作れないけど、ちゃんと普通に料理出来るし……別に、いつも変に自分を装ってる訳じゃ無いって所を見せてあげたくて。」
たえは最初から友希那が思っていた事を見破っていたのである。
リサ「たえ……もしかして、友希那が心配してる事に気付いて…?」
中たえ「何となく伝わってきたんだ。私の事、気にしてくれてるなって。」
リサ「友希那は不器用だから、直接たえに聞けなかったんだよ。」
中たえ「そうですよね。でも、それで手料理って変ですか?やっぱりプロの味でおもてなしするべきですかね?」
リサ「そんな事ないよ。子孫の手料理なんて誰も食べられないし、きっと喜ぶよ。」
中たえ「リサさんにそう言ってもらえると安心します。」
リサ「でも……友希那には、言葉で言ってあげないと、たえの考えは伝わらないと思うよ。」
中たえ「そうですよねー。何て言ったら良いかなー。」
リサ「たえでもそんなに悩む事があるんだね。少し意外だよ。」
中たえ「友希那さんにはそんな所無いですか?」
リサ「そんな所?」
中たえ「友希那さん、普段は強くて頼もしい感じだけど、本当は色々不安で考え込んだりとか。」
リサ「ああ………言われてみれば、そんなトコは2人ともそっくりだね。」
中たえ「だから私、少しだけ友希那さんの心配が解るんです。私がちゃんと愛情を受けて育ってきたのか……この時代で幸せに生きているのか……。それを気にしてくれてて…でも、もしも私が不幸だったらって思って、聞けないんです……。」
リサ「それで、気持ちを交わす手段として手料理を?」
中たえ「はい。私、誰かと食卓を囲むって事……あんまり経験してこなかったんです。だからって不幸とは思ってないけど、友希那さんとリサさんと一緒にテーブルにつけたら……。きっと、家族といるみたいな気持ちで、一緒に過ごせるんじゃないかなって思って………。」
リサ「たえ……。普段、孤独感とか寂しい気持ちを胸に抱えてたりしてない?」
中たえ「ううん。勇者になって色々あったけど……勇者部に入って、みんなと出会えたし…。いたずらしたらゆり先輩が叱ってくれて、沙綾が慰めてくれて、香澄が笑ってくれて………りみや有咲がツッコミを入れてくれて…………それに、この世界に来て、私は御先祖様に会えた!それに………夏希にも。だから、生きていて本当に、今はとってもとっても楽しくて嬉しい!!」
たえは最初の御役目の際に身体中を散華し、人並みの生活を送る事が出来なかった。だから、たえにとって今この瞬間が何事にも代え難い楽しい思い出の1つなのである。
リサ「…………今言った事をそのまま友希那に伝えてあげれば良いと思うよ。」
中たえ「……そうですね。不思議です。どうしてリサさんには、素直に言えるんだろう?」
その時扉が勢いよく開き、友希那が駆け込んできた。
友希那「はぁ、はぁ……。や、やっと戻って来れたわ……。」
リサ「友希那。今日はたえが手料理を振る舞ってくれるんだって。」
友希那「それは嬉しいわ。私も何か手伝いましょう。」
中たえ「お客様なのに?」
リサ「良いじゃん良いじゃん。2人で作ってご馳走してよ。」
友希那「リサは美味しいとこ取りね。」
リサ「でしょー。」
中たえ「あの……友希那さん。」
友希那「?何かしら?」
中たえ「…………心配してくれてありがとうございます。でも……私、ちゃんと………幸せに生きてますからっ!」
友希那「…………そう。……そうなのね。それで、今日は何を作るのかしら?」
中たえ「ソース焼きそば!!さっ、厨房へ移動しましょう!!」
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花園家、門の前--
友希那「今日は楽しかったわ。ありがとう。」
中たえ「こちらこそ。また来てくださいね。」
リサ「オッケー。また手料理楽しみにしてるね。それじゃあね。」
友希那「ちょっと待って、リサ。最後に2人だけで話しても良いかしら?」
リサ「………分かった。少し離れた所で待ってるね。」
リサは2人と少し距離を置き、友希那はたえに話し出した。
友希那「1つ教えてくれないかしら?」
中たえ「どうしました?」
友希那「何故あなたの苗字は花園なのかしら?」
中たえ「それは………。」
たえは悩んだ。本当の事を言うべきなのかを。西暦時代の湊家の顛末は友希那自身が残した勇者御記に残されている。つまり、勇者達の事も。
友希那「言えない事なら大丈夫なのだけれど……。」
少し考え、たえは口を開いた。
中たえ「私達勇者の装束が花をモチーフにしてるって知ってましたか?」
友希那「ええ、聞いた事はあるわ。」
中たえ「その勇者達をいつまでも忘れない様に……沢山の花々が咲く花園の様に……そんな思いを込めて湊家は花園家に変わったんです。そしてこの庭にはその花々が綺麗に咲いています。」
たえは悲しい事実は伏せて友希那に伝えた。
友希那「来る時に見た………。そう………素敵な理由ね。」
中たえ「はい。私はこの苗字を誇りに思ってます。」
友希那「なるほどね………。ありがとう。それじゃあまた来るわね。」
友希那は微笑んで、リサの元へと歩いて行った。
中たえ「さようなら、御先祖様。」
中たえ(御先祖様にはこれから悲しい未来が待ってるかもしれない。でも、それを乗り越えてこの今がある………。私は友希那さんの子孫である事を誇りに思ってます。)
夕日が沈んでいく中、たえは2人が見えなくなるまで眺め続けているのだった。